ペンチ

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さまざまなペンチ
電工ペンチ

ペンチとは、先端同士が噛み合う構造の2つの金属製ステーをピボット(軸)で結合し、自由に開閉できる構造をした工具である。

銅線や針金を切る、曲げる、挟む、引っ張る、ねじるなど多くの作業が出来るため電気工事に使うたいへん便利な工具であるため電工ペンチとも呼ばれる。また、英語ではLineman's pliers(架線工事士用プライヤ)またはSide-Cutting pliersと呼ぶ。

ペンチの先の方で物を強くホールドするのに使用される他、鋼鉄などの硬いものを曲げる、線材を切断する、刃部の裏側は丸くえぐってありナットなどのネジを回すこともできる。料理ではギンナンを割るのに非常に便利なため、この部分をギンナンと呼んでいる。

語源はpinch(挟む)がペンチに聞こえたからだと言う説がある。英語ではpliers(プライヤ、常に複数形)と呼びペンチはpliersの一種であるが、逆に日本でプライヤと言うと、ペンチの一種を指すほどペンチはモンキーレンチと同じように一般家庭に汎用工具として普及している。 JISについては、1951年6月にフジ矢㈱がペンチの指定工場(認可番号No.651)となったのが最初である。

JIS規格について

JISでは、プライヤは、■ JISB4623ペンチCutting pliers  ■ JISB4614コンビネーションプライヤ Slip joint combination pliers with cutters  ■ JISB4631ラジオペンチRound nose chain pliers with side cutters  ■ JISB4626ウォータポンププライヤ Water pump pliersに分類して規格化されている。

進化し続けるペンチ

1986年発売のスリーピークス技研の「パワーペンチ」は、JISを取得していない。JISの指定寸法から逸脱して、作業性を良くする事を優先しているからである。JIS規格では、支点の中心と結合部の滑り接触面が同心で、支点側の刃はその接触面部までに刃を付ける事になっているが、3.peaksが「偏芯テコ原理」と呼ぶ、支点を刃部方向に近づける事でレバー比を良くし従来のペンチを遥かにしのぐ切断力により被切断材を軽く切る事が出来る様にした。また、刃を長くしてVA線の3芯コードを一回で切断出来るようにした。電気工事における利便性を高めている。もちろん一般ユーザにとっても切断力が軽くなり使い易くなった。この方式は、同業メーカも取り入れJIS表示無しのペンチが市場には増えてきている。当然主要メーカのこれらのペンチはJIS同等以上の品質を保有している。

  • 切断力を軽くすると言う事では、マルト長谷川工作所 KEIBAの「パワーアップペンチ」というのがある。これは、握力の弱い女性が華道手芸針金ピアノ線を使う時をターゲットに開発された商品であり従来の1/2の力で切断が出来る。方式は2段テコの原理で1988年グッドデザイン(Gマーク)商品に選定されている。
    パワーアップペンチ

他に、ハンドルの支点より握り側に圧着端子の圧着機能を付けたり、バネを使用してハンドルの開閉を楽に出来るようにした商品。より線の皮むき用刃穴を付けた商品。手が痛くならないように、ハンドル部に樹脂グリップをつけた商品、最近は塩ビ樹脂成形品に変わって環境にやさしいエラストマー樹脂製のものも出てきている。それぞれの用途に応じてユーザが選定できる。

  • ネジザウルス (2010年、話題のヒット商品)
㈱エンジニア(2002年9月に1948年創業の双葉工具株式会社から社名変更)の「ネジザウルスGT」が2010年ヒット商品として話題になっている。この工具の分類をサイドカッティング機能が付いている事よりペンチの記事とした。ネジの頭をなめてしまったビスをはさんで回せる工具である。
トラスビスやつかむ所のない丸く平たいキャップなども、工具の先端部に設けられた縦溝でつかむ構造となっている。最初のネジザウルスは、2002年に発売され、累計販売数は56万丁に達している。GTは、2009年8月から12月までで7万丁の販売である。
国内特許登録3486776  USA PAT.6923097[1]の他、台湾韓国にも登録済みである。また、「ネジザウルス」は国内商標第4744142号(2004年)登録となっている。[2]

主要メーカ

  • 国内主メーカ
フジ矢
室本鉄工
スリーピークス技研
マルト長谷川工作所
マーベル
  • 海外主メーカ
クニペックス
クレインツール(アメリカ)

脚注

  1. ^ Google patent USA PAT. No.6923097
  2. ^ 「工具の本2010」 ㈱学研パブリッシング発行

参考文献

「工具の達人」 講談社 2007年発行、 「DIY工具選びと使い方」 ナツメ社 2008年発行、 「TOOLS NOW道具大全」 美術出版社 1997年発行

関連項目

電気工作用の小型ペンチで先端が尖っているもの。
ピボットがスライドするもの