コンテンツにスキップ

コンニャク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。60.44.26.229 (会話) による 2012年4月21日 (土) 12:47個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (→‎製造法)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

コンニャク
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 単子葉植物綱 Liliopsida
: サトイモ目 Arales
: サトイモ科 Araceae
: コンニャク属 Amorphophallus
: コンニャク A. konjac
学名
Amorphophallus konjac K.Koch
シノニム

Amorphophallus rivieriAmorphophallus rivieri var. konjac[1]

和名
コンニャク

コンニャク(蒟蒻、菎蒻、学名Amorphophallus konjac)は、サトイモ科植物、あるいはその球茎から製造される食品。

コンニャクを食用としている地域は日本中国ミャンマー韓国の各国であり、コンニャクの原料となるコンニャクイモの2007年度(平成19年度)の日本での収穫量は66,900t。主産地は群馬県(89.5%)で、第2位栃木県(4.1%)、第3位茨城県(1.7%)と続き、全国の約95%は北関東で生産されている[2]

植物としてのコンニャク

サトイモ科の夏緑多年草植物で、学名はAmorphophallus konjac。英名はelephant footあるいはdevil's tongueとも言う。地下茎はコンニャクイモ(蒟蒻芋)と呼ばれる。原産地はインドまたはインドシナ半島ベトナム付近)とされ、東南アジア大陸部に広く分布している。扁平な円形の地下茎があり、地上には葉だけを出す。茎(実は葉柄)は高さ1mほどに伸び、先端は平らに開いて鳥足状に小葉をつける。小葉は柔らかくてつやがあり、楕円形。

株は次第に大きくなるが、ある程度大きくならないと花はつかない。栽培下では5-6年で開花する。開花するときには葉は出ず、また開花後に株は枯れる。花は全体の高さが2mほどにもなる。いわゆる肉穂花序の付属体は円錐形で高くまっすぐに伸び上がり、仏縁苞は上向きにラッパ状に開き、舷部(伸び出した部分)は背面に反り返る。花全体は黒っぽい紫。独特の臭いを放つ[3]

生のコンニャクイモはシュウ酸カルシウムのエグ味が強く、食用とするためには茹でるなどの下処理を行う。

なお、近縁種のヤマコンニャクA. kiusianusまたはA. hirtus var. kiusianus)が四国南部から九州、南西諸島台湾に自生している。

食品として

加工されたこんにゃく
赤こんにゃく

通常コンニャクと呼ばれる食品は、コンニャクイモに含まれるコンニャクマンナンという多糖糊化アルカリ液(通常水酸化カルシウム水溶液が用いられるが、かつてはを水で溶いた汁を使った)を用いて凝固させたもので、ぷにぷにとした独特の食感をもつ。一度凝固させたこんにゃくは水溶性を持たず、強い弾力を示す。またカロリーが極めて低く食物繊維が豊富という理由もあって、ダイエット食品(健康食品)としても人気がある。

なお独特の臭みがあり調理に際しては一度煮込んで灰汁抜きをするが、今日では灰汁抜きが必要ないこんにゃくも多く見られる。

成分

コンニャクは96-97%が水分からなり、水分を除くと主成分はグルコマンナンである。グルコマンナンはグルコースマンノースが2:3-1:2の比率で重合した多糖類の一種でコンニャクマンナンとも呼ばれ、ヒトの消化管ではほとんど消化されず腸内微生物により一部脂肪酸に変換されて利用される。このため、カロリーが極めて低い食品(100gあたり5-7kcal)の一つとされ、摂取カロリーを制限する必要のある場合の食品素材としてよく利用される。

製造法

しらたきを入れた料理

球茎を粉状(実際には単に球茎を粉砕した荒粉とマンナンを精製した精粉に分かれ、コンニャク製造の際は双方を混合して用いる)にしてとともにこねたあと石灰乳(消石灰を少量の水で懸濁したもの。水酸化カルシウム水溶液)、炭酸ソーダ(炭酸ナトリウム)水溶液、または草木の灰を水に溶いたものを混ぜて煮沸して固める。生のコンニャク芋から作る場合は芋をすりおろし、後は同様に作る。純粋なコンニャクは白灰色をしているため、彩りのために細かく砕いたひじきなどの海藻を固める際に入れて黒くしたものがもっとも一般的なコンニャクである。四角形の板状のものは板こんにゃくといい、ところてんつきのような「コンニャク突き」と呼ぶ刃物の付いた道具を使用したり、包丁で細長く切ったものを糸コンニャクと呼ぶ。製法が異なり、材料を細い穴から押し出してから凝固させて作る細い糸状のものはしらたき[4]と呼ぶ(大阪ではしらたきを含めて糸コンニャクと総称されることが多い)。近江八幡では三二酸化鉄を加え、赤色に加工した赤コンニャクもある。コンニャクには劇物のシュウ酸カルシウムが含まれるため、加工には細心の注意が必要である(ゴム手袋を使うのが理想的)。

1776年安永5年)、水戸藩那珂郡山方町農民の、後に名字帯刀を許された中島藤右衛門(なかじま とうえもん)(1745年-1825年)が乾燥した球茎が腐らないことにヒントを得て粉状にする事を思いついたとされる[5][6][7]。コンニャクにひじきなどで色をつけるのは、昔は皮ごとすり下ろした芋を使っていた名残である。江戸時代に製粉法が開発されて白いコンニャクを作ることが可能になったがコンニャクらしくないと評判が悪かったため、意図的に色をつけるようになった。

こんにゃくはビニール袋やプラスチック製のパック詰めで販売されることが多いが、缶詰などで販売されているものもある。

調理法

コンニャクはおもにおでん煮物味噌汁豚汁など汁物や鍋物の具に使われる。また、串を刺して味噌田楽の素材としても用いられる。「しらたき」はすき焼きなどに使用される。板こんにゃくは味がしみ込みやすいように手でちぎって調理されることもある。

玉コンニャク

玉こんにゃく

玉状のコンニャクを3~4つくらいずつ割り箸に刺していき、大鍋の中で醤油ベースの汁で煮込んだもの。玉こんにゃくを煮るときは だしを使用し日本酒を入れると美味しくできる。食べるときはカラシをつけることが多い。 山形県では、観光地・祭り・学園祭などで必ずといっていいほど売られている。また、東京などにある山形の郷土料理を売り物にする居酒屋でメニューに載せられていることもある。

略して「玉こん」と呼称することがあるが、これは株式会社平野屋(山形県)の登録商標である(商標登録番号 第762418号)。山形県内陸部で玉こんにゃくが浸透した理由として、地域的に貧しく砂糖米粉が十分に手に入らなかった江戸時代当時に、羽州街道筋の茶屋において、団子の代わりとして供されたのが始まりとする説がある[要出典]

刺身こんにゃく

コンニャクは精粉から作ったものは灰汁が少ないため、生のまま刺身にして食べることもできる。角型に成型されたものを薄く切って食べることもできるほか、刺身専用に作られたものも市販されている。刺身こんにゃく用に作られたものは食感のためか表面をやや粗くしてある、風味や外観を変えるため青海苔胡麻人参などで着色してあるなどの特徴がある。またコンニャクは味が淡白なため、刺身こんにゃくには醤油ではなく酢味噌を付けて食べることもある。

手綱こんにゃく

手綱こんにゃく

薄く切ったこんにゃくの中央部に切れ込みを入れ、切れ込みの部分をひねりねじったもの。

コンニャクゼリー

粉末のコンニャクに果汁等を混ぜて固めたもの。食物繊維が多いコンニャクの特徴に着目したものであり、ゼラチンを原料としたゼリーに比べてかなりカロリーが低く、ダイエットによいと宣伝されている。普通のゼリーは常温で溶ける場合があるが、こんにゃくゼリーは常温でゲル状を保つ。

缶詰麺

ラーメンやうどん等の麺類の缶詰だが、麦の麺では缶内のスープに浸かり続けるとのびてしまうため、コンニャクの麺が使われる。

食品以外の用途

耐水性高分子素材

布や紙等の防水・気密加工には軟質のゴム合成樹脂などが利用される。しかし第二次世界大戦当時の日本では東南アジア方面のゴム資源が得られにくくなっており、合成樹脂の大量生産は技術的にも経済的にも確立されていなかった。これらの代用としてコンニャクを煮溶かして塗り付けると防水性気密性を発揮することから防水加工用の素材として盛んに利用された。耐久性こそゴムに劣るものではあったが、国内調達が可能なことが大きな強みであった。元々は和傘などで「コンニャク糊」として利用されていたものの応用だが、果ては風船爆弾のような兵器にまで利用された。今日見られる紙製バルーンなどの気密にはコンニャク芋原料の多糖類高分子素材ではないが、環境に配慮して生分解性のある素材が選択されている。

お化け屋敷の小道具

お化け屋敷肝試しにおける恐怖演出の小道具として、コンニャクが利用されることもある。糸などでコンニャクをぶら下げ、通りかかる人の顔や首筋を狙ってぶつける。すると冷やっとしたコンニャク独特の質感で何とも言いがたい気色悪さを与えることになる。

ただ今日では、このような用法は学園祭などのような「素人芸能」的な活動以外ではほぼ見られない。食品であることから、もったいないとして忌避されたり、衛生上の問題があるためである。代用としては、保冷剤や濡れふきんなども利用される。

言葉・イメージ

  • コンニャクはぷよぷよして柔らかい、柔軟性と弾力性を兼ね備えたもの、とのイメージがある。たとえば野球における梨田昌孝の「コンニャク打法」や佐藤政夫の「コンニャク投法」、また「あしたのジョー」の「コンニャク戦法」などの使われ方もある。
  • 内ではいばりかえり外では弱気な者をさす「内弁慶」と同義の「こんにゃく閻魔」という表現がある。閻魔大王は蒟蒻を好むといい、東京都文京区小石川の浄土宗寺院・源覚寺には「こんにゃく閻魔」と称される閻魔像がある。この像に好物の蒟蒻を供えて祈願すれば眼病に霊験があるという。
  • 意味不明でかみ合わない問答を「こんにゃく問答」という。寺の和尚に成りすましたコンニャク屋が禅僧と問答する落語の演目から。

自民党こんにゃく対策議員連盟

こんにゃく農家の保護・育成のために活動。小渕恵三も会長を務めていた。

国内生産者保護のため、こんにゃく芋は関税割当制度の対象で[8]、2008年の1次税率(267トン以内)は40%、2次税率は2796円/kgである[9]。結果的に、2次税率適用の輸入分については、国産製粉価格(2004年は2255円/kg)を上回る価格となることもあるが、国産こんにゃく芋が高値で取引されている場合には、2次税率が適用されても輸入こんにゃく芋の方が安くなる場合もある(例えば2008年の国産品価格は3735円/kgだったのに対して、輸入品価格は800円/kgだったために関税を支払っても輸入品の方が安価だった[10] )。なお、こんにゃく製品の輸入は自由化されており、関税率は20.3%である[11]

2009年8月31日、こんにゃく芋に対してセーフガード(緊急輸入制限)が発動し、2次税率が1kgあたり2796円から3728円へ上げられた[12]

ウルグアイ・ラウンド合意によってこんにゃく芋の関税化が始まった1995年当時は輸入品価格が安価であったために、それに対する2次税率の関税率は1706%に相当した。しかし、近年は輸入品価格も上昇し、2008年は1キロ当たり800円程で取引されているため、関税率は350%程度である[13] [14]

脚注

参考文献

  • 武内孝夫 『こんにゃくの中の日本史』 講談社現代新書 講談社 ISBN 4061498339

関連項目

外部リンク