オオタカ

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オオタカ
オオタカ(亜種ヨーロッパオオタカ)Accipiter gentilis gentilis(雄成鳥)
保全状況評価
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
ワシントン条約附属書II類
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: タカ目 Accipitriformes
: タカ科 Accipitridae
: ハイタカ属 Accipiter
: オオタカ A. gentilis
学名
Accipiter gentilis (Linnaeus, 1758)
和名
オオタカ
英名
Northern Goshawk
Accipiter gentilis

オオタカ(蒼鷹[1]、大鷹、Accipiter gentilis)は、タカ目タカ科に属する鳥類で中型の種である。名前は大きさからではなく、羽の色が青みがかった灰色をした鷹を意味する「蒼鷹(アオタカ)」に由来する[1]

日本における鷹類の代表的な種である。古今、タカといえば、オオタカを指すことが多い。

形態

雄の全長約50cm、雌の全長約60cm、翼開長約100-130cm。大きさとしては同じタカ科であるトビよりも一回り小さく、カラスと同程度であるが[2]、尾羽は長いのが特徴。小さめの体は森の中で木々や茂みの間を飛行する際に有利であるほか、長い尾羽は空中でのブレーキや方向転換に役立つと考えられている[3]

幼鳥の体毛は褐色をしているが、成鳥になると頭から尾羽にかけた上面が灰色になる。灰色の体毛は光の当たり方によっては青っぽくも見えるため「蒼鷹(あおたか)」と呼ばれるようになり、これが名前の由来となった[3]

日本の亜種は白い眉斑と黒い眼帯が特徴である。北海道ではユーラシア大陸の亜種が往来するので別種とされていたが、現在は本州の亜種と同じものとして扱われている

分布

オオタカの分布域

北アフリカからユーラシア大陸、北アメリカ大陸にかけて分布する。日本列島では、留鳥として南西諸島南方諸島を除く九州以北に分布する。

渡り

留鳥として周年生息するオオタカもあるが、一部のオオタカは、越冬のため南下を行う場合もある。(鷹の渡り[4]

生態

平地から山岳地帯にまで生息している。飛翔能力が高く、中小型の鳥類(ハトカモ等)や小型哺乳類ネズミウサギオコジョ等)を空中あるいは地上で捕らえる里山猛禽類である。食物連鎖の頂点に位置するため、生態系自然が健全でないと生息が困難であったが、都市に多いドバトを主食にすることで、現在では都市部にも進出している[5](後述)。飛ぶ速さは、水平飛行時で時速80km、急降下時には時速130kmに達する。 一度狙いをつけた獲物は執拗に追い続け、それゆえ狩りの時間は長くなることもある。一日に一度の狩りで食を満たすことができる。

人間とのかかわり

人里への進出

1980年代までめったなことでは森から出てこなかったが、野鳥の保護により人を怖がらなくなり街中に進出している[6]。2009年には、東京近郊のダム湖ではオオタカが体格的に互角のカラスを狩っていると報道されている[6]首都圏のオオタカについて、日本野鳥の会でも情報の収集を行っている[7]

東京では都心に近い明治神宮上野恩賜公園にも定着し、都市部でドバトムクドリなどを狩り、時にはカラスの古い巣を土台に営巣して繁殖する第2~第3世代が誕生している。都市部進出の背景には、保護による個体数増で餌を巡る競合が厳しくなったことがあると推測されている[5](「#生息数」で詳述)。

近年では道路事業や都市計画などの工事に伴う調査によってこれらの生息域が工事予定地と重なることにより、工事に大幅な遅延や変更が生じることがある(上尾道路#オオタカ問題などに詳述)

鷹狩り

鷹狩りは仁徳天皇の時代には既に行われていたが、当初は多くの小鳥を捕まえられるハイタカハヤブサが使われた。16世紀に自身の身体より大きい鶴や雉を捕るようにオオタカを用いた鷹狩をするようになり、江戸時代中期には盛んに行われた[8]。オオタカは優れたハンターだが、鷹狩に必要な技術は前者の鳥よりも高いものが求められたので、扱うには厳しい訓練が必要である[9]。現在、国内のオオタカの捕獲が禁止されているため、海外から輸入されるオオタカで伝統技術の承継が行われている。

生息数

日本国内では、生息地の大規模開発などによって数が激減し、1984年の調査で約400羽とされ、絶滅の恐れも指摘された。そのため、1993年に種の保存法が施行されると、オオタカは「希少野生動植物種」に指定され、保護対象となった。結果、数は急速に回復し、2006年にはレッドデータブックから外され、2008年の調査では関東地方とその周辺だけでも生息数は約5800羽が確認された[10]

2017年8月には、「希少野生動植物」の解除が決定された。解除の施行は2017年9月となる。個体数の増加を理由とする指定解除は、ルリカケスについで2例目となる。なお、規制解除後も鳥獣保護法に基づき、学術研究などを除き、捕獲・流通・輸出入は規制される[11]

保全状態評価

画像

脚注

注釈・出典

  1. ^ a b オオタカ 日本の鳥百科 サントリーの愛鳥活動”. サントリー. 2020年8月9日閲覧。
  2. ^ NPO法人 オオタカ保護基金 オオタカの生態”. NPO法人 オオタカ保護基金. 2021年1月13日閲覧。
  3. ^ a b オオタカ:都市部に進出した猛禽類|野鳥写真図鑑|キヤノンバードブランチプロジェクト”. キヤノン. 2021年1月13日閲覧。
  4. ^ 10月 峠や岬の上空を優雅に舞う「タカの渡り」を撮ろう”. 興和株式会社. 2022年11月14日閲覧。
  5. ^ a b 都市と生物(7) オオタカ、街で再び王者に日本経済新聞』朝刊2020年6月28日(サイエンス面)2020年7月9日閲覧
  6. ^ a b NHK (2009年4月放送分). “第145回「オオタカ 街で驚きハンティング」”. ダーウィンが来た! 〜生きもの新伝説〜. NHKオンライン. 2009年4月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年5月13日閲覧。
  7. ^ 日本野鳥の会東京・研究部 (2009年4月17日). “4月19日・NHK・ダーウィンが来た!でオオタカ登場”. 日本野鳥の会東京 研究部ブログ. 2013年5月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年5月13日閲覧。
  8. ^ 福田千鶴 (2020). “豊臣秀吉の鷹匠とその流派”. 鷹・鷹場・環境研究: pp.59. doi:10.15017/2560398. 
  9. ^ 福田千鶴 (2021). “鷹の種類と調教 Varieties of Taka (taka 鷹) and their Training in the Edo Period”. 鷹・鷹場・環境研究: pp.109. doi:10.15017/4377875. 
  10. ^ “オオタカ、「希少野生動植物」指定解除を検討”. 読売新聞. (2013年5月1日). オリジナルの2013年5月13日時点におけるアーカイブ。. https://megalodon.jp/2013-0513-0729-35/www.yomiuri.co.jp/eco/news/20130501-OYT1T01110.htm 2013年5月1日閲覧。 
  11. ^ “オオタカ、絶滅の恐れがある「希少種指定」を解除へ 生息数300羽→9000羽に”. 産経新聞. (2017年8月24日). https://www.sankei.com/life/news/170824/lif1708240009-n1.html 2018年5月3日閲覧。 
  12. ^ IUCNレッドリスト、Accipiter gentilis、2010/03/05閲覧
  13. ^ 2006年12月公表の環境省鳥類レッドリストにて絶滅危惧II類 (VU) から準絶滅危惧種 (NT) にランクが変更された(レッドリスト改定 環境省報道発表 2006年12月22日)。同月公表のオオタカ保護指針調査結果によればオオタカの繁殖個体数は約2000羽であり、従来の推計値1000羽より大きい。ただし、この違いは調査の精度向上によるものであり、個体数の増加を示すものではないとされる(オオタカ保護指針調査結果 環境省報道発表 2006年12月17日)。

参考文献

  • 柴田佳秀 著、樋口広芳 編『街・野山・水辺で見かける野鳥図鑑』日本文芸社、2019年5月、145頁。ISBN 978-4537216851 

関連項目

外部リンク