ウィンナ・コーヒー

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アインシュペナー
メランジェ
フランツィスカーナー

ウィンナ・コーヒー (Vienna coffee[1]) は、オーストリアウィーン発祥とされるコーヒーの飲み方の一つ。ウィンナとは「ウィーン風の」を意味する。ウィンナー・コーヒーと表記されることもある。あえてドイツ語表記すれば「Wiener Kaffee」(ヴィーナー・カフェー)となり、後述のように用例もあるが、ドイツ語では文字通り「ウィーン風コーヒー」という意味でしかなく、特定の飲み方を具体的に示す言葉ではない。 また、ウインナ・ソーセージとは「ウィーン」に由来する名称以外に関係はない。

概要

日本では、コーヒーの上にホイップクリームを浮かべたものを、一般的に「ウィンナ・コーヒー」と称する[2][3]が、この名称の由来となったウィーンには「ウィンナ・コーヒー」ないし「ヴィーナー・カフェー」という名称のコーヒーは存在しない。日本のウィンナ・コーヒーに近いものとして「アインシュペナー」(Einspänner) [2]や「カフェー・ミット・シュラークオーバース」(Kaffee mit Schlagobers) などがある。アインシュペナーはコーヒーにほぼ同量の生クリームが載っていて、カップではなくグラスに注がれている。アインシュペナーとは一頭立ての馬車を意味し[2]、かつて馬車の御者が暖を取るために飲んでいたことから名付けられた[3]。カフェー・ミット・シュラークオーバースは、コーヒーカップとは別の器に砂糖をかけたホイップクリーム(シュラークオーバース, Schlagobers)が添えられている。

ウィーンの人々が日常的に多く飲んでいるのは、エスプレッソと温かいミルクを加えた上にミルクの泡を載せた「メランジェ」(フランス語で「混ぜる」の意)という種類で、カプチーノとほぼ同じものである[2]。またメランジェのミルクの泡の代わりにホイップクリームを載せた「フランツィスカーナー」(Franziskaner) と呼ばれるものもある。これはフランシスコ会修道士という意味で、その僧服の色が似ているからという説があり、カプチーノの名の由来(一説にカプチン会修道士の僧服の色より)とも共通する。

オーストリアは地方によってもコーヒーの呼び名が違い、また、コーヒーや入れるミルクの状態などによっても名前が変化する。たとえば「フェアレンゲルター」(Verlängerter, 「薄めたもの」の意)と呼ばれるミルク入りのコーヒーや、さらに温かいミルクを若干多めに入れた「ミルヒカフェー」(Milchkaffee) などがある。

アメリカイギリスフランスなどでは、エスプレッソにホイップクリームを載せた「エスプレッソ・コン・パンナ」(espresso con panna, イタリア語でクリームを添えたエスプレッソの意)を、同じくウィーン風コーヒーという意味である「カフェ・ヴィエンヌ」(café vienne) または「カフェ・ヴィエノワ」(café viennois) と呼ぶことがある。

ウィンナー・コーヒーが登場する作品

トーマス・マンが1947年に発表した小説『ファウストゥス博士』の執筆の過程を記した自伝的作品『『ファウストゥス博士』の成立』(Die Entstehung des Doktor Faustus. Roman eines Romans, 1949年)の第6章で、マンと同様にアメリカに亡命していたアルノルト・シェーンベルク宅で、Wiener Kaffee を飲んだことが記されている。

Zum Abendessen bei Schönbergs in Brentwood. Vorzüglicher Wiener Kaffee.(ブレントウッドのシェーンベルク家で夕食。素晴らしいWiener Kaffee)

ただし、この Wiener Kaffee がどんなコーヒーであるかは、作中では説明されていない。

脚注

関連項目