U・ボート (映画)

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U・ボート
Das Boot
監督 ウォルフガング・ペーターゼン
脚本 ウォルフガング・ペーターゼン
製作 ギュンター・ロールバッハ
音楽 クラウス・ドルディンガー
撮影 ヨスト・ヴァカーノ
編集 ハンネス・ニーケル
配給 日本の旗 日本ヘラルド映画
公開 ドイツの旗 1981年9月17日
日本の旗 1982年1月23日
上映時間 135分
製作国 西ドイツの旗 西ドイツ
言語 ドイツ語
フランス語
英語
製作費 $14,000,000
興行収入 $11,487,676[1]
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U・ボート』(原題:Das Boot、英題:The Boat)は、1981年に公開されたドイツ戦争映画ウォルフガング・ペーターゼン監督。コロンビア映画制作。日本での公開は1982年、日本ヘラルド映画配給。1997年(日本では1999年5月1日)には、ペーターゼン自ら編集したディレクターズ・カット版が公開された。

概要[編集]

第二次世界大戦中に原作者ロータル=ギュンター・ブーフハイムU96U 96(ドイツ語)に同乗して取材した経験を基に、当時大西洋を席巻したドイツ潜水艦Uボートの艦内を舞台として、極限状態における人間のありようをリアルに描写した戦争映画。当初はテレビシリーズとして製作が開始され、これを編集したものが1981年にドイツで映画として公開、それから4年後の1985年2月からテレビ版が放映された。

1982年アメリカで公開されると、同年のアカデミー賞で6部門にノミネート(監督、撮影、視覚・音響効果、編集、音響、脚色)されるなど、国際的に広く評価された。また、監督・脚本を手がけたウォルフガング・ペーターゼンは、本作をきっかけにハリウッドへと進出することになった。

構想から完成まで4年の歳月を費やし、3200万マルク(当時のレートで1850万ドル)という巨額の製作費の下[2]でUボートの実物大レプリカが建造された。このセットを用いたリアルな艦内描写が作品の中心に据えられており、物語が進むにつれ薄汚れ・髭だらけになり匂い立つばかりにまで演出される乗組員の有り様が、他に類を見ない迫力を出している。本作の出演者は当時無名の俳優たちであったが、本作を出世作として以後活躍している者も少なくない。

また、クラウス・ドルディンガーによるテーマ曲は、1991年にテクノ風にリミックスされヨーロッパを中心にヒットした。

あらすじ[編集]

第二次世界大戦中の1941年秋、ナチス・ドイツの占領下にあったフランス大西洋岸のラ・ロシェル港から、1隻のUボート「U96」が出航する。彼らに与えられた任務は、大西洋を航行する連合国側の輸送船の撃沈であった。報道班員のヴェルナー少尉はUボートの戦いを取材するため、歴戦の艦長と古参のクルー、若者ばかりの水兵を乗せたU96に乗り込む。荒れ狂う北大西洋での孤独な哨戒航行、思いがけず発見した敵船団への攻撃と戦果、深海で息を潜めながら聞く敵駆逐艦のソナー音と爆雷の恐怖、そして目の前に突きつけられた死に行く敵の姿…。長い戦いに皆が疲れ、クリスマスには帰港できることを願うが、母国から届いた指令はイギリス軍の地中海要衝であるジブラルタル海峡を突破してイタリアに向え、という非情なものであった。中立国スペインビゴにて偽装商船から補給を受けたU96は絶望的な戦いに赴く。艦長、ヴェルナー少尉、そして乗組員たちの前には過酷な運命が待ち受けていた。

本作は、「海の勇者」、「灰色の狼」、「深海の英雄」と美辞麗句で持て囃されながら、実際には出撃した隊員のうち実に4分の3にも及ぶ犠牲を出したUボート乗組員たちの生き残りを賭けた苦闘を描く、戦場の物語である。

スタッフ[編集]

主な登場人物[編集]

艦長のモデルとなった、ハインリヒ・レーマン=ヴィレンブロック大尉(写真中央)。1940年から1942年までU96の艦長に就任、エース級の戦果を出した者のみに与えられる騎士鉄十字章を叙勲している。
艦長
ドイツ海軍Uボート潜水艦U96」の艦長。歴戦のベテランであるが故に、前線の状況も知らずに大言壮語する上層部には冷ややかで、出撃に浮かれる若い乗組員には憂いの目を向ける。劇中では自国のプロパガンダ放送に嫌気がさして、敢えて敵国イギリスの愛唱歌「ティペラリー・ソング」のレコードをかけさせたこともあった。戦争前は帆船の船乗りで、生粋の海の男である。モデルは、U96艦長でUボートエースの一人だったハインリヒ・レーマン=ヴィレンブロック大尉。彼も潜水艦乗りの前は水上艦勤務の経歴を持っていた。
ヴェルナー少尉
Uボートを取材するために同乗した海軍報道班員。海軍報道班員だった原作者のブーフハイムが潜水艦を取材した際の体験が投影されたキャラクター。専用のベッドを与えられるなど序盤は“お客様”扱いされていたが、徐々にUボートの戦いの過酷な現実を知る。テレビドラマ版では物語の語り部を務めている。
機関長
多くの航海を艦長と共にしてきた、ベテラン機関長。妻が出港前日に出産のため入院し、出撃前夜祭でそれを気遣っていた。今回が12回目の出撃で、これを最後に艦を降りる予定。艦長の命令通りに舵を操るため、艦橋下の発令所にいることが多い。
先任士官
メキシコ育ちで農園の若旦那だったが、ドイツ国内の情勢変化に伴い帰国。ヒトラー・ユーゲント団長を経て海軍士官に任官した青年。生真面目な性格で、常に髭を剃って小奇麗にしているため、むさ苦しい艦内の雰囲気から浮いている。手の空いているときは士官候補生に講義を行っている。口先だけの人物というわけではなく、魚雷発射時には照準指揮をとる。
次席士官
元銀行員で、先任士官とは対照的に陽気で空気の読めない冗談好き。暗号で届く指令をエニグマで解読し報告するのが仕事の一つ。発令所その他においてヴェルナーの取材に積極的に協力し、現在の状況を素人であるヴェルナー(及び視聴者)に説明する。
航海長
機関長同様に、長らく艦長と航海を共にしてきた下士官。浮上中には艦橋で天測を担当し、それを元に艦の現在位置を測定する。クールな性格で淡々と仕事をこなす。後にジブラルタルで敵機から機銃掃射を受け重傷を負う。
ウルマン
ヴェルナーの向かいの寝台を割り当てられている士官候補生。フランスの花屋の娘を妊娠させ、内緒で婚約している。写真を眺めながら彼女の身を案じつつ、暇をみては手紙を書きためている。
ヨハン
機関兵曹長。発令所から機関部に指示を出す機関長に対して、機関科の現場責任者。滅多に機関室から外に出ないため、(機関室の)“幽霊”と渾名される。出撃経験も少なくないが、敵駆逐艦からの激しい爆雷攻撃に錯乱してしまう。しかし、ジブラルタルでは自分の職責を果たした。
ヒンリッヒ
聴音・通信を担当し、衛生兵も兼ねる。潜行中はヘッドフォンを耳に当てて音を頼りに外部の様子を探り、負傷者には献身的な手当てをする。持ち場が艦長室の向かいにあるため、艦長と会話する場面も多い。
兵曹長
水兵をまとめあげる役目を担う。出港後すぐヴェルナーに艦内を案内する。魚雷命中の際に興奮して水兵を騒がせてしまい、あわてて黙らせた。無線で届いたサッカーの試合の結果に激しく落胆するなど感情豊かな人物。ディレクターズ・カット版の冒頭では泥酔しており、出撃前夜祭に向かう艦長の車を止めた。
ピルグリム
下士官。髪につけているグリースがとても臭いらしい。荒天下の浮上航行中、艦橋に打ち寄せた波にさらわれて転落しかけ、骨折した。尻毛で結び目が作れるのが自慢。
アリオ
機関兵。短気な男で、作業中の艦内を取材していたヴェルナーにイラついて汚れた布を投げつけたり、戦闘中に神に祈っていた兵士を殴りつけたりする。
その他の兵士
平均年齢19歳で構成される経験の浅い水兵。現実主義者の艦長からは「子供十字軍」だと思われている。

キャスト[編集]

役名 俳優 ソフト版 フジテレビ版 テレビ東京版
艦長 ユルゲン・プロホノフ 羽佐間道夫 内海賢二 大塚明夫
ヴェルナー少尉 ヘルベルト・グレーネマイヤー 池田秀一 野沢那智 堀内賢雄
機関長 クラウス・ヴェンネマン 小林恭治 樋浦勉 金尾哲夫
第一当直士官 フーベルトゥス・ベンクシュ 松本大 津嘉山正種
第二当直士官 マルティン・ゼメルロッゲ 桑原たけし 鈴置洋孝
一等航海士 ベルント・ダウバー 西尾徳 池田勝
ヨハン アーウィン・レダー 池田勝 青野武
ウルマン少尉 マルティン・マイ 岸尾大輔 塩沢兼人
ヒンリッヒ ハインツ・ヘーニッヒ 緒方文興
兵曹長 ウーヴェ・オクセンクネヒト 遠近孝一 千田光男
アリオ クロード=オリバールドルフ 大友龍三郎 郷里大輔
ピルグリム ヤン・フェダー 山中一徳
トムゼン オットー・ザンダー

潜水艦U96[編集]

ドイツのハンブルク国際海事博物館に展示されているVIIC型U96の模型。左上には「笑うノコギリ鮫」のエンブレム、右下にはブーフハイムの原作本「Das Boot」がある。
フランスラ・ロシェルで撮影に使用されたUボート・ブンカー(整備と防空機能を兼ねた係留施設)。

本作で主人公艦として扱われるUボートは一般に「U96」と称される。原作では「UA」と表記されているが、作者のブーフハイムが戦時中にそのU96に同乗取材していたことや、艦橋両舷に描かれた「笑うノコギリ鮫」のマーキングが実在のU96のものと同一であることから、DVDの字幕などでも「U96」の表記が見られる様になった。

実在のU96は、第二次世界大戦期に最も多い659隻が建造されたVIIC型と呼ばれる中型Uボートの1隻である。1939年9月16日起工、1940年9月14日竣工し、本作の「艦長」のモデルとされるヴィレンブロック大尉が初代艦長を務めた。同艦長のもと1943年3月28日までに8回出撃し、28隻・199087tを撃沈破した。この功績により潜水戦隊司令へと栄転したヴィレンブロックが下艦した後も別の艦長の指揮のもと活動を続け、1943年3月に前線を退いて訓練艦となり、1945年2月に除籍となったあと、1945年3月30日ヴィルヘルムスハーフェンにてアメリカ軍の攻撃により沈没。連合軍の対潜戦術向上により作戦行動中に撃沈されたUボートが多い中、計11度もの作戦行動を生き延びた稀有な例である。

「U96」という明確なモデルは存在するものの、劇中に描かれる哨戒行動及び戦闘は概ねフィクションである。物語中に描かれる1941年秋頃には、実艦のU96もヴィレンブロック艦長のもとで哨戒任務を行っていたが、連合軍の対潜戦術の向上や船団護衛方針の転換によってか、戦果虚しく帰港している。また、登場人物の運命もモデルとなった人物のものとは少なからず異なっている。

撮影背景[編集]

1979年より制作が開始され、完成まで2年の歳月を費やした。長期間に及ぶ撮影により出演者はしだいに疲労し、伸び放題の髪に無精ひげを生やし青白い顔をした実際のUボートの乗組員の姿を再現することになった。

艦内シーンの撮影は実物大のセットで行い、特撮シーン及び特殊効果は模型を用いて撮影された。なお、このレプリカUボートは後に、アメリカ映画『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』にも登場している。現在はミュンヘン郊外のバヴァリアフィルム(Bavaria Filmstadt)のガイド付き見学コースで、艦内セットに入ることができる。

音楽[編集]

クラウス・ドルディンガーによるテーマ曲は、1991年にテクノ風にリミックスされヨーロッパを中心にヒットし、海釣り、海上危機管理など、海にまつわる日本ドキュメンタリー番組BGMとしてしばしば使われる定番楽曲でもある。

劇中で2度に渡り流れる「遙かなるティペラリー(ティペラリー・ソング)」は戦前戦中期に収録された音源ではなく、1956年ソビエト連邦赤軍合唱団Alexandrov Ensemble)によって収録された物である。この時ソロを務めたのはコンスタンチン・ゲラシモフ(Konstantin_Grigorievich_Gerasimov)であり、特に2度目の演奏の際の赤軍合唱団とのコーラスパートはU96乗組員の歓喜の合唱シーンと相まって名シーンとして名高い。なお、映画と同じ音源は現在も幾つかのCDにて入手可能である[3][4]

関連媒体[編集]

書籍[編集]

  • 『Uボート』(ロータル=ギュンター・ブーフハイム著、松谷健二訳、早川書房、1977年
  • 『Uボート(上)』(ロータル=ギュンター・ブーフハイム著、松谷健二訳、早川文庫<NV616>、1991年4月19日)ISBN 4-15-040616-2
  • 『Uボート(下)』(ロータル=ギュンター・ブーフハイム著、松谷健二訳、早川文庫<NV617>、1991年4月19日)ISBN 4-15-040617-0

DVD[編集]

  • 『U・ボート ディレクターズ・カット』(パイオニアLDC(現ジェネオン・エンタテインメント))、1999年11月26日
  • 『U・ボート ディレクターズ・カット』(ジェネオン・エンタテインメント、2005年1月26日)※上記のリパッケージ版。
  • 『U・ボート パーフェクト・コレクション』(ジェネオン・エンタテインメント、2005年1月26日)『ディレクターズ・カット』、『TVシリーズ』、『オリジナル劇場版』を同梱した限定セット。
  • 『U・ボート TVシリーズ完全版』(ジェネオン・エンタテインメント、2005年1月26日)
  • 『U・ボート ディレクターズ・カット』(角川書店、2011年11月25日)※『ディレクターズ・カット』の廉価盤

ブルーレイ[編集]

  • 『U・ボート ディレクターズ・カット』(角川書店、2011年11月25日

サウンドトラック[編集]

  • 『Uボート オリジナル・サウンドトラック』(1998年)※廃盤

脚注[編集]

  1. ^ Das Boot (1982)” (英語). Box Office Mojo. 2010年2月8日閲覧。
  2. ^ ドイツ映画としては「メトロポリス」に次ぐ規模。
  3. ^ CD:EMI:Soviet Army Chorus & Band, CDC-7-47833-2 DIDX-1015, "Tipperary".
  4. ^ CD:EMI Classics:Red Army Ensemble, 0946-3-92030-2-4, "Tipperary".

外部リンク[編集]