JR東海キヤ97系気動車

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JR東海キヤ97形気動車
R3編成・定尺レール運搬用(2008年6月・袋井駅)
基本情報
製造所 日本車輌製造
主要諸元
編成 2両固定(R1-4編成)
最大13両(R101編成)
最高速度 110km/h
車両定員 非営業車両(事業用
最大寸法
(長・幅・高)
キヤ97形 18,200×2,800-2,935×3,998-4,080(mm)
キヤ96形 18,200×2,706×3,541(mm)
キサヤ96形 18,200×2,700×2,070(mm)
台車 軽量ボルスタレス台車
* C-DT66形(動力)
* C-TR254形(付随)
軸箱支持:ウイング円筒積層ゴム+コイルばね 枕ばね:空気ばね
機関出力 360PS(C-DMF14HZC)×1 / 両(キヤ97形・キヤ96形)
変速段 変速2段・直結3段
駆動方式 液体式
制動装置 電気指令式ブレーキ
機関ブレーキ・リターダブレーキ
自動空気ブレーキ
保安装置 ATS-PT ATS-ST EB装置 TE装置
備考 2M編成(定尺レール運搬用)
8M5T編成(ロングレール運搬用)
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キヤ97系気動車(キヤ97けいきどうしゃ)は、東海旅客鉄道(JR東海)が所有する事業用気動車である。

概要

JR東海における在来線のレール輸送は、日本国有鉄道(国鉄)以来となる、レールを積載した貨車に機関車を連結して輸送する方法がとられていたが、製造後30年以上が経過し、老朽化が進行していた[1]。これらの置き換えを行うに当たり、JR東海に所属する大多数が電車・気動車であり、機関車は少数であったことから技術継承の観点や検査周期の違いなどの保守管理の観点や機回しなどの運用の煩雑さをなくすことを念頭に検討した結果、自力走行が可能な気動車方式による動力分散構成のレール輸送車として開発されたのが本系列である[2]

25m定尺レール運搬用の2両編成4本と、200mのロングレール運搬用の13両編成1本があり、それぞれR1 - R4R101の編成番号を称する。いずれもメーカーは日本車輌製造で、前者は2008年(平成20年)4月、後者は同年7月に運用を開始している。配置されている車両基地は、前者が名古屋車両区、後者が美濃太田車両区に配置されている。

構造

車体

ロングレール運搬用(R101編成)
乗務員室上部が丸い形状になっている。

車体長は、従来のロングレール輸送用チキ車とほぼ同じ18.2mとしている[2]。台枠側バリは、床下の機器艤装スペースを確保しつつレール積載荷重に対応した強度を有する構造とするため、従来の貨車を上下逆向きにしたような形である逆魚腹構造とした[2]。乗務員室は定尺レール用(キヤ97形0・100番台)とロングレール用(キヤ97形200番台)で構造が異なり、0・100番台はキヤ95系の準じたものとなっている[2]。対して200番台は、レール卸し作業の際にレール方向に下すことになるため、乗務員室を高床構造とすることでレールを通すスペースを確保している。そのため、乗務員室上部は車両限界に沿って丸い形状となっている[2]

主要機器

駆動機関、充電発電機、蓄電池、空気圧縮機などの主要機器は、動力車に集中搭載されている。

駆動機関・ブレーキ

エンジンは電子燃料制御方式の C-DMF14HZC を動力車1両あたり1基搭載する[3]。定格出力は360馬力、定格回転速度は2,100rpmである[4]液体変速機は加速性能を高める目的で変速2段・直結3段式に多段化され、レール卸し作業の効率化を図るために定低速機能[* 1]を内蔵した C-DW19A を採用した。ブレーキシステムはキハ75形・キヤ95系と共通の電気指令式空気ブレーキであり、常用(増圧制御有)・非常(増圧制御有)・直通予備・耐雪ブレーキの4系統を備える[5]。機関車などに連結され、無動力扱いで牽引時に使用する自動空気ブレーキ機能を搭載し、常用・非常ブレーキのみが作用する[5][4]

台車

台車には円錐積層ゴムによる軸箱支持機構を備えるボルスタレス台車である C-DT66(動台車)・C-TR254(付随台車)を採用する[3]。レール積空差によらない走行安定性や積載レール横圧に対応した強度と横圧低減、旅客車レベルの走行安定性を目標として設計され、軸ばねには最大荷重15t、積空差30t/両に対応するために上下非線形の二重コイルばねを使用する[3]。枕ばねには、積載荷重に対応した有効径560mmの空気ばねを使用する[3]。台車旋回抵抗を低減し、曲線通過時の横圧低減を図るために空気ばね前後剛性を左右剛性の50 - 60%に低減させている[3]

性能

空車時の最高速度は110km/h、レール運搬時は95km/hである[3]。最大レール積載量は、定尺レール運搬用が50Nレール25m×46本でロングレール運搬用が60kgレール200m×16本となっている[2]

形式・編成

定尺レール運搬用

キヤ97-1 - 4
東海道本線上で東京向きの先頭車。キヤ97形100番台と2両固定編成を組成する。
キヤ97-101 - 104
東海道本線上で神戸向きの先頭車。

ロングレール運搬用

キヤ97-201・202
ロングレール運搬用の先頭車。運転台下にレール排出器を左右2基ずつ装備しており、0/100番台とは運転席部分の構造が大きく異なる。方向転換可能。
キヤ96-1 - 6
キヤ97形200番台編成の中間車。長物車そのものの外見だがれっきとした気動車であり、排気筒を装備している。
キサヤ96-1 - 5
キヤ97形200番台編成の中間付随車。キヤ96形に近い外見だが機関を搭載していないので排気筒がない。1と5には作業用電源としてディーゼル発電機が設置されている。

配給運用

2010年に佐久間レールパークの保存車両をリニア・鉄道館に移動するために、配給列車が設定された。佐久間レールパークのある中部天竜駅は、道路事情が悪く、トレーラーによる車両輸送ができず、列車で輸送されることとなった。JR東海は、除雪用を除き機関車を保有していなかったため、キヤ97系R101編成を3両組成にした上で、保存車両を日本車輌製造まで運搬した。

2012年10月、事故で損傷した213系H2編成を日本車輌から名古屋工場まで輸送した。

脚注

注釈

  1. ^ 2・4・6km/hの3段階において、一定速度で運転できる機能。

出典

参考文献

  • JR東海東海鉄道事業本部車両部車両課「キヤ97系レール運搬用気動車」『鉄道ファン』第566号、交友社、2008年6月、74 - 78頁。 

外部リンク

  1. ^ 地球環境保全への貢献”. 東海旅客鉄道. 2023年11月29日閲覧。