F-15SE (航空機)

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F-15SE

F-15SEは、ボーイング社がマクドネル・ダグラスF-15E ストライクイーグルをベースに開発中の戦闘爆撃機である。愛称はサイレントイーグル(Silent Eagle:沈黙の鷲の意)。

概要[編集]

F-15SEは、(1996年ボーイング社に合併される前の)マクドネル・ダグラス社製のF-15から改良・派生したF-15Eをベースとして、ウェポンベイ化したコンフォーマル・フューエル・タンク[1]レーダー波吸収材F/A-18E/Fのような外側に10°傾斜させた垂直尾翼エンジン吸気口にレーダーブロッカーを装備してステルス性の付与を図った輸出市場向け改修型である。なお、レーダーブロッカーについてはオプションで、標準装備ではないとされている。これらの改修により、機体前面のステルス性は、F-22F-35などの第5世代ジェット戦闘機に匹敵する程度にまで向上させることが可能であるとしている。また、アビオニクスも、レーダーAESAレーダーに、電子戦機器はBAEシステムズ社製のデジタル式電子戦システム(DEWS)[2]に、コックピットはF-35と同様のタッチパネル式大型液晶ディスプレイを取り入れた新型コックピットシステムに換装されることが発表されている。機体に関しては、元となるF-15Eよりさらに軽量に設計されており、さらなる低燃費化が図られている。コントロールシステムには最新のデジタル・フライ・バイ・ワイヤが装備される[3]

このSE型は、2009年3月17日シアトルのボーイング社で発表され、2010年7月8日セントルイス空港において、F-15SEのデモ機であるF-15E1の初飛行が、80分間にわたって秘密裏に行われた。 また、飛行中に左側のコンフォーマル・ウェポンベイの開閉を行い、そこにはAIM-120のテスト用ミサイルが装着されたが、発射は行わなかった。AIM-120の発射試験は同年7月14日に実施され、成功している。

現在も開発は続けられており、フライ・バイ・ワイヤ操縦システムやDEWSは2012年中に量産型が完成し、新型コックピットシステムの量産移行と、コンフォーマル・ウェポンベイや垂直尾翼の最終形態風洞試験は2015年から始まる予定。また、F-15SE用に開発された技術は米空軍のF-15Eやその輸出型にも順次適用されていく見込みである[4]

2014年7月30日、デモンストレータ機にJHMCS II/Hがインテグレーションされた[5][6]

輸出[編集]

現在、F-15ファミリーを採用しているアメリカ空軍以外の5ヶ国(イスラエルサウジアラビア日本韓国シンガポール)に提案しており[7][8][9]、今後、提携する総合商社を通じて販売を行っていくとしている。1機あたり1億USドル(約100億円)で販売する予定だが、採用した国はない。

アメリカ外交筋からの話では、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が2010年7月6日に行われたオバマ大統領との直接会談の際にF-15SEの輸出を促進してほしい旨を要請したが、オバマ大統領はこの要請に対しての返答はしなかった[10]。その後イスラエルはF-35を採用している。

韓国ではボーイング社と2009年よりF-15SEに関する暫定的な協議を重ねてきているが、合衆国政府からの輸出ライセンスを取得するまで海外の顧客に販売することができないでいる[11]。この件に関して2010年の頭にボーイング社は政府に対して輸出ライセンス取得の申請をおこなっている[12]。その後、ボーイング社は2010年7月に輸出ライセンスを取得[13]。同年11月には、韓国航空宇宙産業(KAI)と共同でF-15SEにおけるコンフォーマル・ウェポンベイの設計と製造を行っていく契約を締結した[14]。KAI自体はF-15に関与することはこれが初めてではなく、以前にF-15KおよびF-15SGの翼と前部胴体を製造している。日本がF-35Aを採用したことで、韓国も日本の選択を真似ると見られており、販売の可能性は消えつつある[15]といった見解もあったが、韓国空軍F-4E後継機たる第3次FXの60機において、F-15SEはRFPに応じている[16]2013年8月18日、韓国防衛事業庁は韓国軍が2017年から実戦配備する同計画において、欧州4ヶ国が共同開発したユーロファイターが入札書類の不備により脱落したと発表。F-35Aは入札額超過ですでに脱落しており、これによりF-15SEが最終候補となったと思われた[17]。しかし、2013年9月24日、韓国防衛事業庁(DAAP)はF-15SE採用を否決し、入札を白紙からやり直す事を発表した[18]。ゴールデンイーグル工学研究所の全ヨンフン所長は、この決定の理由について日本と竹島をめぐって紛争が起きた際、ステルス機を保有していない事で不利になるからだ、と指摘している[19]。 その後、韓国はF-35Aを40機導入することを事実上決定した[20]

脚注・出典[編集]

  1. ^ このコンフォーマル・ウェポンベイはアタッチメント式であり、ボーイング公式の動画では、従来通りのコンフォーマル・フューエル・タンクと併用して使用できるとしている
  2. ^ Digitel Electronic Warfare Suite:デジタル電子戦スイート。デジタル無線周波数メモリ(DRFM)技術を使用した全デジタルの電子戦システムで敵レーダーの周波数を解析して同周波数の電波を発信、自機位置を欺瞞するディセプション・ジャミングが可能である
  3. ^ Warwick, Graham. "Silent Eagle - How Stealthy?" Aviation Week Ares blog, 12 June 2009.
  4. ^ 航空ファン』No.716、2012年、51頁
  5. ^ Boeing integrates Joint Helmet Mounted Cueing System into F-15SE
  6. ^ 보잉, 사일런트 이글에 차세대 헬멧 장착 조준 시스템 (JHMCS) 통합
  7. ^ Butler, Amy. "Boeing Unveils New Stealthy F-15." Aviation Week, 17 March 2009.
  8. ^ Frost, Patricia, Damien Mills and Paul Lewis. "Boeing Unveils New International F-15 Configuration: The F-15SE." Boeing, 17 March 2009.
  9. ^ Lake, Jon. "Boeing Unveils Stealthy Eagle Variant." Air International, Volume 76, Issue 5, May 2009.
  10. ^ "Obama rejected Netanyahu request for F-15E in 'tough' session." worldtribune.com, 12 July 2010.
  11. ^ Reed, John. "Boeing Anticipates Approval To Export F-15 Silent Eagle." Defense News, 7 July 2010.
  12. ^ Trimble, Stephen. "Boeing applies to export F-15SE to South Korea." Flightglobal, 25 June 2010. Retrieved: 26 June 2010.
  13. ^ Trimble, Stephen. "F-15 Silent Eagle scores two firsts with export license, flight test." Flight International, 9 July 2010.
  14. ^ Boeing, Korea Aerospace Industries Sign Agreement for Production of F-15 Silent Eagle Conformal Weapons Bay
  15. ^ サウジアラビア向けF-15SA販売が実現に 航空宇宙ビジネス短信・ターミナル2、2011年12月30日
  16. ^ 「J-WING」 2012年09月号 イカロス出版
  17. ^ 『F15SEが最終候補に 韓国次世代機、欧州機脱落』(産経新聞 2013年8月18日)
  18. ^ 『韓国次期戦闘機選定、ボーイング「F-15SE」の採用否決』(ロイター 2013年9月24日)
  19. ^ 『F-15SE 최종 선정 안 된 이유는?…'재검토' 공군전력 차질 없나』(MBCテレビ イブニングニュース 2013年9月24日)
  20. ^ 韓国の次期主力戦闘機、事実上F35に

関連項目[編集]

外部リンク[編集]