Amazon Web Services
URL |
aws |
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タイプ | Webサービス |
ジャンル | クラウドコンピューティング |
運営者 | Amazon Web Services, Inc. |
設立者 | アンディ・ジェシー(CEO) |
株主 | Amazon.com |
営利性 | 営利 |
開始 | 2006年3月 |
現在の状態 | 現行 |
Amazon Web Services(アマゾン ウェブ サービス、略称:AWS)とは、Amazon Web Services, Inc. により提供されるクラウドコンピューティングサービスである。2006年にサービス提供が開始され、クラウド全体(SaaS なども含む)における世界的シェアが33%で1位[1]。世界で数百万以上、日本国内においても数十万を超える顧客が AWS を利用している[2]。
クラウドサービスの中でも、企業システムなどに用いられる IaaS 分野において他のサービスを圧倒的にリードしており、クラウド分野におけるデファクトスタンダードとなっている[3]。ガートナーが発行するマジック・クアドラントのクラウドインフラストラクチャとプラットフォームサービス (CIPS) においては、11年連続で AWS がリーダーに選出[4]。顧客を起点に考える顧客中心のイノベーションアプローチが採用され、サービスや機能の90%が顧客要望をベースに開発およびリリースされている[5]。
AWS が提供する、コンピューティング、ストレージ、データベース、ネットワーク、セキュリティ、ハイブリッドクラウド、モバイル、アナリティクス、機械学習/人工知能 (ML/AI)、IoT、仮想および拡張現実 (VR/AR)、ロボット工学といった様々な分野の様々なサービスを組合せることで、ユーザーが求める IT インフラを速やかに構築することが可能。2004年の Amazon Simple Queue Service(SQS)の提供開始から始まり[注 1]、現在のサービス数は200を超える。最も有名なサービスとしては Amazon Elastic Compute Cloud (EC2) や Amazon Simple Storage Service (S3) がある。
アーキテクチャ
AWS は2022年10月現在、アメリカ東部(北バージニア、オハイオ)、アメリカ西部(カリフォルニア、オレゴン)、カナダ(中部)、南アメリカ(サンパウロ)、ヨーロッパ(アイルランド、フランクフルト、ロンドン、ミラノ、パリ、ストックホルム)、東南アジア(シンガポール、ムンバイ)、東アジア(東京、大阪、ソウル、香港)、オセアニア(シドニー)、中東(バーレーン)、アフリカ(ケープタウン)の27の地域(リージョン)で展開されている[6]。基本的にこれらは全て同一の AWS アカウントで利用可能。どの地域も全てのデータとサービスは指定された地域のサーバーで運用される。データセンターの具体的な場所はセキュリティ上の理由から非公開。
アメリカ政府専用の "GovCloud"、並びに中国(北京、寧夏)の特殊なリージョンも存在し、これらについては当該リージョン専用のアカウントが必要。また、当該アカウントでの他リージョンのサービスを利用することはできない。
どの地域も複数のアベイラビリティーゾーン(AZ)を持つ[注 2]。AZ は1つ以上の独立したデータセンターで構成される。システム障害に備えたり、規模を拡大したりするために AZ を超えたマルチサイトシステムを設計し、実行することができる。オンプレミスでは構成や構築のハードルが高かったマルチサイトシステムを、現地に足を運ぶこともなく GUI 操作のみで構築することが可能。
価格
すべてのサービスや機能の価格が Web 上で公開されており、無料利用枠もある[7]。また、サービスを開始してから109回以上の値下げが実施された(2021年11月現在)。IT 業界でありがちな保守費用の値上げが発生せず、利用期間中に発生する IT コスト単価が低減し続ける。
歴史
Amazon Web Services は2006年7月に公開され、他のウェブサイトやクライアント側のアプリケーションに対しオンラインサービスを提供する。これらのサービスの多くはエンドユーザーに直接公開されているものではなく、システムの開発者が使用可能な機能を提供するものである。
2003年の終わりごろ、クリス・ピンカムとベンジャミン・ブラックはアマゾンのサーバーインフラの将来の展望についての論文を発表した。その論文では新たなサーバーインフラは完全に標準化、自動化され、ストレージやネットワークは最終的にはウェブサービスに依存することになると書かれている。またその論文の終わりでは、企業の新たな IT インフラとして、仮想上のサーバーサービスが普及する可能性に対して言及している。
2004年の11月に AWS は Simple Queue Service としてスタートした。アマゾン EC2 は南アフリカのケープタウンでピンカムと開発のリードである、クリス・ブラウンによって設計された。元々は EC 事業の赤字に苦しむ Amazon の打開策として企画されたものである。
2007年6月、アマゾンは18万人以上の開発者が AWS と契約したと発表した。
2010年11月、アマゾンの小売ウェブ関連のサービスを全て AWS 上に移行。
2011年4月20日、大規模な停電により、AWS の一部機能が一時的な停止に見舞われた。
2019年8月23日、AWS 東京リージョンの障害により、日本国内の多くの Web サービスやスマートフォンアプリが影響を受けた。
2020年10月8日、日本政府が総務省の「第二期政府共通プラットフォーム」を AWS ベースの情報システム基盤で運用開始[8][9]。
2021年9月2日、日本国内の AWS データセンターにおいて障害が発生し、証券会社や気象庁のデータ更新に通常より時間がかかったり、NTT ドコモや航空会社でも不具合が発生したりするなど、広範囲において影響を受けた[10][11]。
2022年、4月にアマゾンウェブサービスジャパン合同会社がホワイト企業ランキング[12]で13,000社中の3位にランクイン。10月には Google が2024年までに日本へ1000億円を投資する計画を明らかにしたこと[13]を受け、AWS も日本への投資額を公表し、本年だけで3,480億円、東京リージョンが開始した2011年からの12年間合計で1兆3,510億円であったことが判明[14]。
AWSサービス一覧
計算資源
- Amazon Elastic Compute Cloud (EC2) - Xen[15] と KVM の技術などをもとにしたスケーラブルな仮想サーバーを提供するサービス
- VMware Cloud on AWS (VMC on AWS) - AWS と VMware が共同で開発した、拡張性、安全性、革新性に優れた企業向け統合クラウドサービス[16]
- Amazon Elastic MapReduce - Hadoop 処理に AWS の様々なサービスを組み合わせることで、大量のデータを効率的かつ容易に処理できるウェブサービスを提供
- Amazon Elastic Container Service
- Amazon Elastic Kubernetes Service
- Amazon Lightsail
- AWS Batch
- AWS Fargate
- AWS Lambda
ネットワーク
- Amazon Route 53 - 可用性と拡張性に優れたクラウドドメインネームシステム (DNS) ウェブサービスを提供
- Elastic Load Balancing - アプリケーションへのトラフィックをクラウド内の複数の Amazon EC2 インスタンスに自動的に分散するサービスを提供
ストレージとコンテンツ提供
- Amazon Simple Storage Service (S3) - AWS によって提供されるオンラインストレージの Web サービス
- Amazon Glacier - コールドデータのストレージ
- Amazon CloudFront - エンドユーザに関係するデータセンターへのコンテンツデリバリネットワークをサービスを提供
- Amazon Virtual Private Cloud (VPC)
- Amazon Elastic Block Store (EBS)
- Amazon Elastic File System (EFS)
- AWS Import/Export
データベース
- Amazon DynamoDB - 自動的にテーブルのデータとトラフィックを、複数のサーバーに分散させるNoSQLデータベースサービスを提供
- Amazon DocumentDB
- Amazon Relational Database Service (RDS) - Amazon Aurora、MySQL、MariaDB、PostgreSQL、Oracle、Microsoft SQL Server などのリレーショナルデータベースサービスを提供
- Amazon RDS on VMware[17] - Amazon RDS を VMware ベースのデータセンター上で提供
- Amazon Aurora
- Amazon Redshift
- Amazon SimpleDB - 分散データベースサービス、Erlang で実装されている[18]
- Amazon ElastiCache
- Amazon Neptune
- Amazon Quantum Ledger Database (QLDB)
- Amazon Timestream
展開
- AWS CloudFormation
- Amazon Elastic Beanstalk - AWS クラウド内のアプリケーションのデプロイと管理を簡単にするサービスを提供
管理
- Amazon CloudWatch - システム全体のリソース使用率、アプリケーションパフォーマンス、およびオペレーションの状態を可視化できるモニタリングサービスを提供[19]
アプリケーションサービス
- Amazon DevPay - オンライン請求およびアカウント管理サービスを提供
- Amazon Flexible Payments Service (FPS)
- Amazon Simple Email Service (SES)
- Amazon Simple Notification Service (SNS)
- Amazon Simple Queue Service (SQS)
解析
- Amazon Machine Learning
その他
- Amazon Fulfillment Web Service (FWS)
- Amazon Mechanical Turk
- Auto Scaling
- Jaspersoft Reporting and Analytics for AWS[20]
AWS クラウドコンピューティング認定プログラム
2021年6月時点では AWS クラウドに関する以下の認定試験が提供されている[21]。AWS 認定資格は3年間有効で、資格更新には上位試験または現行の同一レベルの試験に合格する必要がある[22]。試験はピアソン VUE および PSI を通じて配信されている。
基礎レベル
- クラウドプラクティショナー
アソシエイトレベル
- ソリューションアーキテクト
- SysOps アドミニストレータ
- ディベロッパー
プロフェッショナルレベル
- ソリューションアーキテクト
- ソリューションアーキテクト アソシエイトの上位資格
- DevOps エンジニア
- SysOps アドミニストレータ アソシエイトの上位資格
- ディベロッパー アソシエイトの上位資格
専門知識(スペシャリティ)
- アドバンスドネットワーキング
- セキュリティ
- データベース
- データアナリシス
- 機械学習
スポンサーシップ
2018年7月に、自動車レースのフォーミュラ1(F1)を運営するフォーミュラワン・グループと Amazon.com が提携を結び、以後 F1 のテレビ中継で AWS の機械学習を用いたピットインタイミングの予測、タイヤ消耗量(推定)の表示などが使われている[23]。2022年カナダグランプリのように、AWS が冠スポンサーとなるレースも行われている。
脚注
注釈
出典
- ^ “ワールドワイドのIaaSクラウド市場シェア、2021年は1位AWS、2位マイクロソフト、3位にはAlibaba、4位がGoogleとの調査結果。ガートナーが発表”. www.publickey1.jp. 2022年6月9日閲覧。
- ^ “AWS の クラウドが選ばれる 10 の理由 | AWS”. Amazon Web Services, Inc.. 2022年5月19日閲覧。
- ^ 日経クロステック(xTECH). “[1]IaaSの選択基準が変わった”. 日経クロステック(xTECH). 2022年5月19日閲覧。
- ^ “2021 Gartner Magic Quadrant for Cloud Infrastructure & Platform Services (CIPS) において、AWS が 2021 年に 11 年連続でリーダーに選出”. Amazon Web Services (2021年8月4日). 2022年6月1日閲覧。
- ^ “顧客中心のイノベーションの必要性 | AWS Executive Insights”. Amazon Web Services, Inc.. 2022年8月4日閲覧。
- ^ “AWS グローバルインフラストラクチャ | AWS”. Amazon Web Services, Inc.. 2022年5月17日閲覧。
- ^ “AWS クラウド無料利用枠 | AWS”. Amazon Web Services, Inc.. 2022年10月17日閲覧。
- ^ [ Amazon Web Services ブログ 内閣官房・総務省より「第二期政府共通プラットフォームにおけるクラウドサービス調達とその契約に係る報告書」が発表されました by AWS Japan Staff | on 06 AUG 2020 | in Best Practices, Government, Public Sector, Thought Leadership | Permalink | Share 内閣官房と総務省より「第二期政府共通プラットフォームにおけるクラウドサービス調達とその契約に係る報告書」(以下、『報告書』)が発行されました(令和2年8月5日付)。 https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/cas-mic-seifu-kyotsu-platform/ ]
- ^ [ CLOUD USER by ITmedia NEWS 2020年10月14日 日本政府、AWSベースの情報システム基盤を運用開始 デジタルシフトの起爆剤になるか 日本政府が「第二期政府共通プラットフォーム」の利用を始めた。これまで各省庁が個別に運用してきたシステムを、AWSを基盤とするITインフラに集約したものだ。AWSジャパンの宇佐見潮執行役員(パブリックセクター統括本部長)が、記者向け説明会でその概要と利点を解説した。 [濱口翔太郎],ITmedia https://www.itmedia.co.jp/news/spv/2010/14/news053.html ]
- ^ “Amazonクラウドの障害復旧 ネット証券や航空会社影響”. 日本経済新聞 (2021年9月2日). 2021年9月2日閲覧。
- ^ “アマゾンのクラウドサービスで障害、ネット証券や官庁HPに影響”. 読売新聞 (2021年9月2日). 2021年9月2日閲覧。
- ^ “【2023年卒版】新卒で入りたい一流ホワイト企業ランキングTOP100 | 就活塾はホワイトアカデミー 一流・ホワイト企業内定率No1”. 就活塾はホワイトアカデミー 一流・ホワイト企業内定率No1 - Just another WordPress site (2022年1月8日). 2022年4月26日閲覧。
- ^ “グーグル、日本に1000億円投資”. 日本経済新聞 (2022年10月8日). 2022年10月17日閲覧。
- ^ “AWSの日本への投資と経済効果 | Amazon Web Services ブログ”. aws.amazon.com (2022年10月11日). 2022年10月17日閲覧。
- ^ [ITpro EXPO]今のAmazon EC2は「1998年のLinux」と同じ---ITpro高橋記者が指摘 - ニュース:ITpro
- ^ “VMware Cloud on AWS”. Amazon Web Services, Inc.. 2022年5月17日閲覧。
- ^ 「[速報]Amazon RDS on VMware発表。オンプレミスのVMware環境でもAmazon RDSを提供へ。Oracle、SQL Server、MySQLなど対応。VMworld 2018 US」『』。2018年8月28日閲覧。
- ^ What You Need To Know About Amazon SimpleDB
- ^ Varghese, Jinson (2020年11月16日). “AWS Penetration Testing: A DIY Guide for Beginners” (英語). www.getastra.com. 2021年12月14日閲覧。
- ^ JasperReports|Jaspersoft Reporting and Analytics for AWS
- ^ AWSクラウドコンピューティング認定プログラム
- ^ AWS再認定
- ^ Formula 1®、AWSクラウドによりイノベーションを加速、AWS機械学習サービスや映像サービスを導入 - Amazon.com 2018年7月13日
外部リンク
- Amazon Web Services (日本語)
- Amazon Web Services ブログ (日本語)
- Amazon Newsroom - AWS (日本語)
- AWS/アマゾン ウェブ サービス/クラウド (@awscloud_jp) - X(旧Twitter) (日本語)
- アマゾン ウェブ サービス (600986860012140) - Facebook (日本語)
- Amazon Web Services Japan 公式 - YouTubeチャンネル