血液型性格分類

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血液型性格分類(けつえきがたせいかくぶんるい)とは、血液型と人の性格との間に特定の関連性を見出し性格を分類しようとすること、およびそのような分類が可能であるとする説のこと。あるいはそのような見解に基づいた様々なコンテンツ血液型性格診断など)のこと。

血液型性格分類(血液型性格診断)には科学的な根拠が認められない[1]。第三者が統計の作法に従って統計的に検証してみると、実際には有意な相関が認められないので、誤った説であると断定できる。つまり迷信の類であり、科学を装っている点では疑似科学病的科学の類と言える。血液型と性格には相関関係がないことが明らかになっているにも関わらず、血液型と性格に関連があるかのように決めつけたり、特定の血液型の人間を疎外するといった差別が日本社会に存在し、人権問題にもなっている[2]。血液型による差別や偏見、嫌がらせなどを「ブラッドタイプ・ハラスメント」と呼ぶ。 狭義にはABO式血液型による分類を指すが、白血球型なども含めた血液型全般による分類を指すこともある[3]。「血液型気質相関説」や「血液型人間学」とも呼ばれる。

血液型性格分分類は占いと似通ったコンテンツであるため血液型占い」とも呼ばれ、中には星座占い干支等の他の占いと組み合わせた判断法なども存在する。

概要

当初は医学者教育学者心理学者などによって、新しい学説の候補として提案されたが、その後にその妥当性を巡って学会で議論が起き、紆余曲折を経た後、1933年日本法医学会総会で正式に否定された[4][5]。日本社会に広く流布していることから、多くの研究者が実証を試みたが、追証にたえうるような有意な発見はされなかった。 だが、この説を説く一般向けの本が多数出版されたことや近年日本のマスコミにより繰り返し流布されたことによって、日本韓国台湾等一部地域で、それを信じる人やそれを信じている言説が増えた。それらの国々では「血液型」はブーム時は経済的価値を生み出すコンテンツの一種となっており、無数の関連商品及びソフトが市場に流通していた。

血液型と性格との間に特殊な関連を設定した統計的な検証も行われてはいるが、そのような関連を裏付けるような統計データは得られていない。科学的な根拠が存在しないにもかかわらず、一部の人達の間で根強く科学的な説として扱われることがあるので、今日では疑似科学の1つにも数えられる[注釈 1]

日本でもっとも普及しているABO式血液型性格分類は、統計方法が正確でない能見正比古が提唱したものである。

日本と欧米諸国の現状

現在の血液型性格分類は、かつて頻繁に出版されていた「雑誌に掲載されている血液型特集」や血液型関連書籍、出版物と時を同じくして頻繁に放送されていた血液型関連番組などにより一部の者に信じられているが[6]科学的検証では性格や気質と血液型との意味があると思われる関連性は発見されていない。欧米諸国を筆頭に大多数の諸外国ではそのような血液型性格分類は支持されておらず(というより血液型と性格を関連付ようとする慣習そのものが存在しない)、また、自分の血液型を把握していない人が多い。日本でも学識者を中心に関連性は否定されている。

血液型と気質の関連研究

原来復らによる研究

前史、西欧の類型論

あらかじめ断っておかなければならないが、そもそも西洋では性格分類論(性格類型論)の長い歴史があるのである[7]。 例えば、医学の基礎を作ったヒポクラテスは「体内には血液、黄胆汁、黒胆汁、粘液という4種類の体液があり、これらのバランスが崩れると病気にかかる」と述べ、また「体液のバランスが気質にも関わる」と述べた[7]四体液説)。ヨーロッパでは中世まで、こうした説が信じられていた[7]。(現代の医学としては、医聖ヒポクラテスに敬意を払ってはいても、これらの説に関してはナンセンス、と判断している[7])。 また、ドイツのクレッチマーは、体型と気質の関連に関する分類を行い、1921年に『体型と性格』という書を出版した[7]第二次世界大戦時代のドイツはナチスが政権を握っていたわけであるが、人種差別を正当化するために、血液型性格診断が利用されていた[7]。「血液型=性格」とする説は、「ドイツ人遺伝子は優秀」だとしたい彼らにとって好都合だった[7]1932年にドイツで出版された『血液型便覧』には「ドイツ人に多い血液型」を優れた血液型とし、「高い知能」「勤勉」などと肯定的なことが書かれ[7]、一方で「ユダヤ人やアジア人に多い血液型」を劣った血液型として、「暴力犯罪者」「精神薄弱」「感染に弱い」などと非常に否定的なことが書かれた[7]

このように西洋では、(動機は様々であるが)歴史的に見て、性格を類型に分類し、何らかの類型と性格類型との間の関係を論じる説が提唱されてきた歴史があるのである。

1926年、当時の大日本帝国陸軍軍医の平野林と矢島登美太が、「人血球凝集反応ニ就テ」を『軍医団雑誌』に発表した。血液型から兵隊としての資質を判定しようとしたものであった。しかし、統計的に有意とは言えない代物であり、ここでもまた確かでない説明が科学的考察を加えるに足るものとして唱えられていた[8]

古川竹二の『血液型と気質』

昭和初期には、東京女子高等師範学校(現お茶の水女子大学)教授であった教育学者古川竹二が、血液型と性格の関連を科学的な研究対象にしようとする一連の試みが広く注目を浴びた。古川の最初の論文は、1927年に『心理学研究』誌上に発表された「血液型による気質の研究」で[注釈 2]、その後に一連の試論の集大成として1932年に『血液型と気質』が出版された。同書の内容が古川学説とされることが多い。主な手法は、ABO式血液型別の質問項目(自省表)をそれぞれ10項目程度ずつ作成し、質問紙法により血液型との一致率を測定するものである。古川自身によると、自省表は80%以上の一致率があるとされた。これとは別に、職業別にABO式血液型を調査して、職業特性と比較したりしたが、被験者の数は30人未満であり、統計的なデータではない[8][9]

古川学説は、当時金沢医科大学教授であった古畑種基らに支持され、心理学だけではなく、医学、教育など多くの分野で注目を集め、その影響下に多くの調査がなされた[注釈 3]。このため数多くの追試が行われたが、例外が多過ぎるため古畑は懐疑的になり、結局、当時の学会でも否定された。

大日本帝国陸軍においても上記の影響を受け、血液型から将兵の気質・能力を分類することで、部隊編成の際に最も適した兵科・任務にあてることができるとの考えから、各部隊から将兵の調書を集め研究が行われたが、期待した結果は全く得られず、1931年に中止された。

また東京朝日新聞に、「児童の気質調べに奇怪な血液検査-小石川窪町小学校の保護者から厳重な抗議申し込み」という記事が掲載された(1928年)。このように当時から一般庶民からの批判もあった。

能見正比古による再度の注目

第二次世界大戦後は長らく取り上げられることがなかったが、上記のような批判にもかかわらず、1971年に古川に影響を受けた能見正比古が『血液型でわかる相性』[9]など一連の世間向けの著作を発表・出版。これによって世間に広く知られる元になった。この本で説を根拠づけるために能見正比古は様々な調査を挙げていき独自の理論を展開したが、これらも論拠を伴っていないものであり、多くの専門家や学会からは無視されている[9]。また「気質」が「性格」に替えられたのもこの能見正比古の代からである。

原来復らの研究

血液型と気質の関連を科学的な研究対象にしようとする試みは、1916年に医師の原来復らによるものが最初とされている[注釈 4]。しかし、原のこの論文では、研究対象にしようとしたにとどまり、まだ関係を断定するような言い回しは使っていなかったようである[1]。ただ、ドイツでは当時ハイデルベルク大学のガン研究所の教授だったE・フォン・デュンゲルン博士(Emil von Dungern)が動物の血液型を調べたところ、「チンパンジーは全て同一の血液型であることがわかり、他の動物はチンパンジーと異なる血液型であることが多い」と発見した。こういったところから「チンパンジーと同じ血液型の動物は“高等な動物”」「チンパンジーとは異なる血液型の動物は“下等な動物”」という考えに至った。それに加え当時は、(現代からは想像できないくらい)人種差別も激しい時代だったので、デュンゲルンや原はその時代の影響を受けた可能性がある[1]

1926年、当時の大日本帝国陸軍軍医の平野林と矢島登美太が、「人血球凝集反応ニ就テ」を『軍医団雑誌』に発表した。血液型から兵隊としての資質を判定しようとしたものであった。しかし、統計的に有意とは言えない代物であり、ここでもまた確かでない説明が科学的考察を加えるに足るものとして唱えられていた[10]


古川竹二の『血液型と気質』

昭和初期には、東京女子高等師範学校(現お茶の水女子大学)教授であった教育学者古川竹二が、血液型と性格の関連を科学的な研究対象にしようとする一連の試みが広く注目を浴びた。古川の最初の論文は、1927年に『心理学研究』誌上に発表された「血液型による気質の研究」で[注釈 2]、その後に一連の試論の集大成として1932年に『血液型と気質』が出版された。同書の内容が古川学説とされることが多い。主な手法は、ABO式血液型別の質問項目(自省表)をそれぞれ10項目程度ずつ作成し、質問紙法により血液型との一致率を測定するものである。古川自身によると、自省表は80%以上の一致率があるとされた。これとは別に、職業別にABO式血液型を調査して、職業特性と比較したりしたが、被験者の数は30人未満であり、統計的なデータではない[8][9]

古川学説は、当時金沢医科大学教授であった古畑種基らに支持され、心理学だけではなく、医学、教育など多くの分野で注目を集め、その影響下に多くの調査がなされた[注釈 3]。このため数多くの追試が行われたが、例外が多過ぎるため古畑は懐疑的になり、結局、当時の学会でも否定された。

大日本帝国陸軍においても上記の影響を受け、血液型から将兵の気質・能力を分類することで、部隊編成の際に最も適した兵科・任務にあてることができるとの考えから、各部隊から将兵の調書を集め研究が行われたが、期待した結果は全く得られず、1931年に中止された。

また東京朝日新聞に、「児童の気質調べに奇怪な血液検査-小石川窪町小学校の保護者から厳重な抗議申し込み」という記事が掲載された(1928年)。このように当時から一般庶民からの批判もあった。

能見正比古による再度の注目

第二次世界大戦後は長らく取り上げられることがなかったが、上記のような批判にもかかわらず、1971年に古川に影響を受けた能見正比古が『血液型でわかる相性』[11]など一連の世間向けの著作を発表・出版。これによって世間に広く知られる元になった。この本で説を根拠づけるために能見正比古は様々な調査を挙げていき独自の理論を展開したが、これらも論拠を伴っていないものであり、多くの専門家や学会からは無視されている[8]。また「気質」が「性格」に替えられたのもこの能見正比古の代からである。 台湾や韓国でも若干数、血液型と性格に関する論文が書かれている[注釈 5]

台湾や韓国でも若干数、血液型と性格に関する論文が書かれている[注釈 5]

テレビでの扱い

テレビ番組は頻繁に血液型気質相関説を紹介していた。例えば捏造で話題となった『発掘!あるある大事典』の報道が代表として挙げられる。その内容はスタッフの都合によって作られた捏造だらけのものであったことが、過去のニュースで取り上げられた。上村晃弘らの調査によると、地上アナログ放送では2004年2月21日からの1年間だけでも、約70本もの血液型性格関連説に関するテレビ番組が放映されたという[12]

血液型性格分類が題材にされた代表例

  • 1985年、シンガー・ソングライターのさだまさしによるヒット曲「恋愛症候群」(および同年の「もーひとつの恋愛症候群」)では恋愛感情を血液型で分析した歌詞が歌われた。
  • 同じく1985年、コミックバンドのバラクーダーが「演歌・血液ガッタガタ」[13]を発売。ABO式の各血液型の特徴とされる性格を歌詞にして男性が女性を揶揄する内容。後に、女性お笑いコンビのピンクの電話が、同じ曲で男女の立場を入れ替えた歌詞の「血液ガッタガタPARTII」[14]を発売。2曲とも、4つの血液型すべて「嫌いな性格」と歌っている。
  • はなわの「B型ロックンロール」は特定の血液型に対する偏見や差別意識を助長させる可能性のある内容であった。
  • 嘉門達夫の「血液型別ハンバーガーショップ」では、前奏で「人間の性格がたった4種類に分類されるわけがない」と前置きした上で、各血液型の性格の「欠点」とされる行動・言動をコミカルに風刺した。
  • 2002年大学入試センター試験の「現代社会」の設問において、下記の大村政男による血液型性格分類についての調査結果が資料問題として使われたことがある(バーナム効果を示す調査)。
  • 韓国では2005年、映画『B型の彼氏』が公開された。翌年には日本でも公開された。
  • 2006年松岡圭祐の小説『ブラッドタイプ』が出版された(血液型性格分類のブームが過熱しすぎた日本を描いたもの)[注釈 6]
  • 2009年フジテレビで2月の23日から26日の四夜連続ドラマ『血液型別 オンナの結婚する方法』が放送された。
  • 1987年三菱ミラージュのCMでは、血液型別にCMを放送されていた。
  • 1990年前後、森永ハイチュウで血液型別のCMを出していたことがある。
  • 1990年からダイエーホークスの監督に就任した田淵幸一は、血液型を考慮に入れてメンバーを決めたことがある。また、2011年東北楽天ゴールデンイーグルスのコーチになったときも、血液型による捕手の配球を選手に指導した。余談ではあるが、田淵氏は阪神時代から血液型性格分類に凝っており、阪神監督だった星野仙一氏に、そのことに関して否定的な指摘を受けたことがある。

ABO型血液型分類への否定

血液型の分類にはABO型以外にもRh型やMN型など様々な分け方があり、ゆえにABO型だけ気にするのがおかしいという考え。確かにABO型の分類は赤血球に関するものだが、白血球についてはヒト白血球型抗原 (HLA) 型や、他にも血小板抗原型など、26系統229種類[15]が確認されている。その組み合わせは無数である。なお、血液型にはキメラモザイクなどが存在することが知られている。その場合、性格がABO型の赤血球の分量に応じて混在するかどうかという疑問点も十分に残る。特に、相反する血液型診断の特徴を持つキメラであった場合、骨髄移植を受けて血液型が変化した場合にはどうなるのかという疑問点も十分に残る。

医学・心理学的検証

脳への影響

ABO式血液型の反応率は、胃に対する反応率を100%とすれば、十二指腸 (90%) などと比較して脳細胞は最も低く、有無の判定ができない程度の反応 (8%) しか検出できなかった[16][17][18]。モノアミン酸化酵素の働きと血液型のはっきりとした関係性は見出されておらず、仮に差異が確認された実験があったとしても、他の遺伝子や育った環境などの影響による偶然の一致と考えるのが現在の科学的定説である[19]

疾患への影響

白血球のHLA型により罹患しやすい疾病はあることが知られており、ABO型においても罹患しやすい「病気」に影響があるとの報告は多数あるが、その多くは再現性がなく、胃腸管に関するいくつかの形質との間に弱い相関関係が認められること以外は、信頼できないとされる[20]。前出の「血液型別ダイエット」もこの一環で提唱されたものであり、性格の違いを問うものではない。この考え方が正しいとすれば、血液型はまず体質に影響を及ぼし、次いで体質が性格や人格形成に影響を及ぼすものであると考えられなくはないと主張する者もいる。しかしその場合は、気質に影響するものとして血液型だけを取り上げる行為は、他の明確に判明している気質に影響する遺伝子を軽視することになり非常に筋の良くないものの見方と言える。しかし、そのような遺伝情報は血液型と比べて現状では手に入りにくいという事情もある。

心理学

心理学の分野において、血液型と性格(パーソナリティ)との関連について、それらを提示するような因果関係を示す結果は出ていない[注釈 7]

パーソナリティの類型論(体型など、本来パーソナリティとは関係ない要素をパーソナリティと結びつけようとする理論)の誤りの事例のひとつとして、心理学教育の場で血液型性格判断が紹介されることもある。

統計的検証

能見正比古・俊賢親子は、10万人分以上のデータを集めているため、一見母集団からの標本抽出にムラがないものと感じる。しかし能見親子のデータの収集は、能見の著書『血液型でわかる相性』の読書カードを送り返してきた人だけを対象に行ったものだと息子の俊賢が語っている。それでは最初から母集団に大きなバイアスがかかる恐れがあり、その集団に対して、バイアスがかかっていない(偏りのない)ことを前提とした通常の統計法を用いたこと自体が間違っていたのだ、と村上宣寛は指摘している[21]。血液型性格分類は、この点について、第三者による追試・査読を経て有意な関係性を証明できたことは今のところはない、というのが常識である。

科学的否定論者の見解

  • 安易な逆向きの推論はできない。
    • 同じ血液型の人でも様々な体質に分かれるものであり、仮に「筋肉質な人にA型が多い」という統計学的な「傾向」を発見することはできたとしても、そこから「A型以外の人は筋肉がつきにくい」と結論づけるのは論理の飛躍であり、血液型≒性格という結びつけはできない。
  • 仮にある説を使って日本人のA型の人を言い当てられても、それだけでは仮説の正当性の根拠にはならない(もちろん、否定の根拠ともなりえない)。
    • 日本人総人口に占めるA・O・B・AB型の割合はそれぞれ4:3:2:1なので、毎回A型と言えば約40%(3回に1回以上)の高確率で正解することになる。仮にA型の人を高確率で言い当てたとしてもそれだけでは仮説の正当性の根拠にはならない。O型も含めれば70%に増すため3回に2回は的中する。
    • テレビや雑誌などの媒体で、統計の素人(テレビのスタッフやライターなど)が少人数対象の調査などを行って、多少の統計的なブレをとらえて、“関連性が出た”と短絡的に結論を出しているに過ぎない。だが、統計調査を行う時は、標本(サンプル)の数を十分確保することと、標本集団を偏り(バイアス)なく選定することが理想であり、それができない場合には(通常、できないのだが)安易に結論は得られないことは当然のことである。
    • TVなどで時折流される血液型性格分類の“調査”とされるものは、前提となるデータ自体が、価値のある統計とは呼べない、少人数を相手にしたものであったり、極端に被験者の性質が偏っていたり、単なる局地的アンケート調査であったり、すでに血液型の類型の概念や固定観念が刷り込まれた人で、なおかつ設問が(バイアスが入り込みやすい)不適切なものである。また、調査対象や論拠を全く示さずに差別的な内容を既成事実として報じることも少なからずあった。
    • 学者による、十分な数の標本集団で、十分管理された統計においては、複数年にわたって特定の血液型と特定の性格に明確な関連性を示すデータが得られたことはない[注釈 8]

データの確度

能見の説が学術の体をなしていないという批判も存在する。特定の血液型に偏った人口構成になっている各国と比べて、4種類の血液型いずれもが一定数の割合を占めているアジア諸国の方が多様な性格の人で構成されているなどというデータも存在せず、まだまだ血液型と気質の間に特定の関連性を発見することはできていない。心理学的見地からも「血液型と性格に科学的因果関係は発見できていない」[22]とされている。

人類学との矛盾点

雑誌など血液型性格分類で用いられる血液型人類学は、一般の人類学と大きく矛盾している。一般に日本が1500年ほどの農耕文化を有していたことから、日本に最も多いA型を農耕民族とし、そこからそれそれに適した食事法を導き出そうとした。人類学に関しては血液型は関係なしに誤解が定着している。2000年弱ほどの農耕文化で農耕民族に分類されるのならば、世界の主要民族のほぼ全てが農耕民族となるが、日本では日本人のみを農耕民族としている風潮があり、農耕民族=日本人ということを前提として語る間違いが多い。

マスメディアでの取り扱い

性格分類の肯定者の中には「血液型による性格分類は根拠がないという立証はされていない」(ゆえに間違いではない)といった理屈を述べる人もいたが、これは明らかな詭弁である。テレビ番組制作側は、こうした意見を後ろ盾に血液型性格分類を扱う番組を作っていたこともある。また、この理論は悪魔の証明でもある。実際、BPOへの苦情に対し、一部のテレビ局はそのような趣旨の回答をしていた。しかし、医学的・心理学的な裏付けがないものを既成事実としてメディアが流し誤った認識や偏見、差別意識を世間に植え付けたことが最大の問題であり、良識ある人々からの批判を受けることとなっている。そのような指摘を受け、血液型性格分類を扱う一部の番組では最後で「血液型ですべてが決まるというわけではありません。決めつけや偏見は絶対にやめましょう」等といった免罪符とも受け取れる形ばかりの注意喚起がなされる。現在、テレビ番組などにおいては血液型に関する番組放送や血液型に関する話題を番組内で出演者が口にすることは、ほぼ消滅しているが、一部の週刊誌では(激減したとは言え)こういった差別的報道が根強く残ってる。

過去の経験的・観察的事例に基づく意見

骨髄移植によって血液がドナーのものに変わった時に、性格または気質に明確な変化があるのかといった問題もある。4類型するための性格についての基準が何かなどに関しても極めて問題が多い。相手の血液型に対して事前に情報を得て、相手を知った錯覚に陥った場合、適切な人間関係を構築する上で障害となる可能性もある。

論争の現状

現時点で流布している血液型性格分類は、科学的には支持されていない。血液型性格分類については実際に調査して仮説の真偽を判断せざるを得ないものなので、実際に再調査・追試験をせざるを得ないのである。結局、学者らによって実際に統計的調査が何度も行われているものの、その結果現在に至るまでいずれでも明らかな相関は見られないのが実情である[23]

社会心理学からの研究

ABO式血液型と性格の間に明確な関係は見られないという多くの結果を踏まえて、社会心理学[注釈 9]では近年、血液型気質相関説を研究の題材として取り上げ、このような説が社会に流布する仕組みや、このような説が流布することによって人の認知にどのようなひずみが生じるのか、あるいは血液型相関説を「信じているように振舞う人の動機は何か」といった角度から研究されており、論文が多数書かれている(そのような研究をするために、念のためにABO式血液型と性格の間に関連があるかを、改めて実際に被験者を選び統計を取り検証することもあるが、そこでも両者には明確な関連は見られていない)。近年では、「血液型」および「性格」という言葉がタイトルに含まれる論文では、こういった社会心理学側からの論文が主流になりつつある。

社会問題

血液型差別の最大の問題点と言えるのは「血液型を根拠に人格否定やレッテル貼り、気に入らない血液型の人間を疎外をすることは差別行為に該当する」という認識を持ちあわせた人間が少なく、かつそういった意識が低い点である。血液型差別が広がった背景には血液型ブームに乗って、疑似科学による偏見や根拠を伴わない差別的な血液型判定本などが人気を博したことで、世間に誤った血液型への先入観や差別意識、偏見、固定観念などが持ち込まれたとされている。現在までに血液型などをテーマにした多くのテレビ番組などが作られたが、一部ではいじめ問題にまで発展したとして、多数の放送局などに多くのクレームが殺到した[2]。社会学的見地からして、少数派を占める血液型が否定的な扱いをされる事は明白である。少数派の軽視や意図的に特定の血液型の人間を差別する行為や悪意で特定の血液型に悪い印象を持たせるように誘導する行為は基本的な人権侵害に繋がる可能性が高い。こういった番組や血液型関連書籍は単に血液型別の性格を科学的裏付けがないまま断定するにとどまらず、血液型に優劣があるかのように暗に示す内容(場合によってはもっと直接的に優劣があるかのように記されている場合あり)や、そのように思わせるように誘導するかのような内容が多い。血液型は遺伝情報の1つである。すなわち血液型差別は遺伝子に関連した差別であり、人種差別と基本的構造が酷似しているとも言える。心理学的見地からしても偏見、差別意識、先入観などによる色眼鏡をかけたうえで少数派を占める血液型の人間を観察すると、その人間に対する印象が大きく違ってくるのは明らかであり、そのためにその人物像を正確に把握できなくなる可能性が生じる。また、学校や職場などといった社会で血液型差別を受けた場合、事によっては利権問題や死活問題に関わってくる可能性も少なからずあると言える。(具体的に言えば学校においてはイジメの原因になる可能性、職場においては雇用問題、人間関係の構築や昇進などといった問題に関わってくる可能性)2004年に放送された「血液型性格診断」をテーマにした番組で極端な差別報道がされたとして、制作した局や放送倫理・番組向上機構青少年委員会への特定の血液型に関しての苦情や問い合わせが殺到したと発表された。しかし、その他血液型の番組も対象が違えど差別的な報道がされていたが、それについては問題視されたかどうか番組に対する視聴者の反応すら発表されることはなかったので、それらその他血液型番組には苦情が殺到しなかったかどうかは不明である。また書籍についても、苦情がないかどうかは不明である。 これらのテレビ局など製作側の姿勢が視聴者に対しての配慮を欠いて、民放連の放送基準の第8章などに抵触しているのではないかと問題視された[2]


2011年7月4日には、岩手・宮城両県知事への発言を問題視された松本龍復興担当大臣(当時)が記者会見で自身の血液型と出身地を発言の原因とした弁明を行なった。海外からは「失敗を血液型のせいにできるのか」(欧州メディア)、「これから閣僚にはA型の人物を任命すべきだ」(南アフリカの経済紙)といった反応があるが、この発言もA型以外の血液型の人間を差別しているといえる[24][25]BBC東京特派員ローランド・バークは松本復興担当大臣の弁明の解説として「血液型のせいにするなど荒唐無稽に聞こえるかもしれないが、日本では血液型は性格に影響すると信じられている」とコメントしている[26]

文献

発表年順

ABO式以外の血液型と性格・気質の相関についての研究を含むもの

  • Cattell, R. B. et al. (1980) The realation of blood types to primary and secondary personality factors. (Mankind Quarterly 21, 35-51)(ABO式血液型、MN, Rh, P, Kell, Duffy, Colton, 血清型5種、酵素型5種との一時的および二次的性格要因との関係があるかどうかの研究)ただしMankind Quarterlyは優生学と人種隔離政策を擁護する団体 (International Association for the Advancement of Ethnology and Eugenics) によって設立された雑誌であるためほとんどの学会で学術雑誌として認められていない。
  • Harburg, E. et al. (1982) Twelve blood markers and measurement of temperament. (J. Psychiat. 140, 401-409)(ABO式血液型、MN, Rh, P, S, Kell, Kidd, Duffy, Lewis, 血清型3種と気質との関係があるかどうかの研究)

注釈

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  1. ^ 2006年3月、田崎晴明・学習院大教授(統計物理学)の提案により、血液型性格分類なども含めて「科学的に見える非科学」にどう対応すべきか考えるシンポジウム日本物理学会(佐藤勝彦会長)によって愛媛大学(松山市)で開かれた。
  2. ^ a b 古川は東京女高師に訓導(教師)として任官し、児童の選抜(入学試験)にも関わることになって、知能検査を補うものとして気質に着目した。古川は児童の親などから何か言われたような節があり、根拠を説明するために気質論が必要になった、ともされる。(出典:佐藤達哉、渡邊芳之「古川竹二の血液型気質相関説の成立を巡って」p.59。1995, Vol.3, No.1)
  3. ^ a b 古川説の影響力の大きさについて。1928年(昭和3年)から1935年(昭和10年)の間に、血液型気質相関説の影響下に書かれた論文の数は、医学、心理学、教育学などを分野を中心に総計約290にもおよぶと言う(出典:溝口元、1986「古川竹二と血液型気質相関説」(生物科学, 38, 9-20)および、佐藤達哉、渡邊芳之「古川竹二の血液型気質相関説の成立を巡って」p.53, 性格心理学研究 vol.3, No.1 (19950331) pp.51-65)
  4. ^ 原来復(1882年 - 1922年)はドイツに留学しデュンゲルン博士のもとで学んだ。当時は西欧に限らず優生学(人間を遺伝によって選別しようという人種差別的発想を多く含む学問や疑似科学類)が大きな影響力を持っており、動物の血液型や地域によって血液型が異なることから、優生学の根拠としても血液型が論理的にまとめられようとしていた。「白人は血液型が...型だから優秀なのだ。アジア人は血液型が...型だから劣るのだ」といったような説明(現在の水準で見れば間違った説明)がまことしやかに学説として唱えられていた(出典:松田薫『血液型と性格の社会史』、大村政男『血液型と性格』など)
  5. ^ a b 台湾の論文の例。WU Kunher, LINDSTED Kristian D., LEE Jerry W., 2005, Blood type and the five factors of personality in Asia, (Personality and individual differences), ISSN 0191-8869 CODEN PEIDD9 台湾や韓国でも、同国での血液型性格診断ブームも視野に入れ、研究者がテーマに選ぶようになった。
  6. ^ 小説「ブラッドタイプ」について。白血病の女性が骨髄移植により血液型がB型に変わるのを嫌い(骨髄移植は白血球抗原 (HLA) 型の一致が必要とされるため、赤血球の型であるABO式の血液型より優先される)、輸血を拒否し生命の危機に陥るなど、迷信に基づく騒動が頻出、臨床心理士らがその非科学性をどう証明し混乱を鎮めるか、というストーリーである。なお、この小説を執筆する前に、「究極の血液型心理検査」という血液型性格診断を行うウェブサイトを立ち上げて、それをのべ450万人が利用し、診断後にこのサイトの血液型診断が当たっているのかという問いに対して、9割以上の利用者が「この血液型性格診断は当たっている」と答えた。だが、後に松岡がこのウェブサイトについての仕掛けを公表し、この血液型性格診断のサイトは心理診断は行っているものの血液型の問いに関する分析はプログラム上で全く行っていないことを明らかにした。
  7. ^ 心理学者の中には例えば村上宣寛がABO血液型と性格の相関関係を検証するために、被験者を選び調査をし統計を取り統計学的に分析しているが、毎度、統計的には明確な有意差が出ないとの見解である。
    村上宣寛は実際に学生と調査してみたが、やはり有意差は出なかったと述べている(村上 宣寛『「心理テスト」はウソでした。 受けたみんなが馬鹿を見た』日経BP社、2005/3、ISBN 4822244466
    日本パーソナリティ心理学会では、一般からの問合せに回答する形式で「いまのところ血液型と性格に関係があるとはいえない」と、理事の渡邊芳之氏が解説している。
  8. ^ ある年度だけ見ると、わずかに相関があるかのようなデータも含まれることもまれにあるが、同一調査を4年、5年に渡って行うと、反対の向きの相関を示すかのようなデータも得られるのである。つまり、単なる統計的な偏りである。もしも毎年、5年でも10年でもコンスタントに一定方向の相関が見られるならば、相関があると言えるのだが、そのようなデータは得られていない
  9. ^ 社会心理学は偏見ステレオタイプや認知のひずみといった問題を重要な研究テーマとしている学問である。
  10. ^ Blood type and the five factors of personality in Asiaのアブストラクト - 台湾の論文。この調査では、血液型と外向性の関連性を否定する結果が出た。そのかわり、女性のBMI(=肥満度)と外向性の間に関連性あり、との結果が出た。

出典

  1. ^ a b c 大阪大学大学院 生命機能研究科 認知脳科学研究室「血液型と性格は関係があるか?
  2. ^ a b c 「血液型を扱う番組」に対する要望]”. PBO(放送倫理・番組向上機構)青少年委員会 (2004年12月8日). 2011年3月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年4月5日閲覧。
  3. ^ 溝口元「ABO式以外の血液型と性格との関連をめぐって」p. 7(日本性格心理学会大会発表論文集、No.2 (19931115))
  4. ^ 松田薫『「血液型と性格」の社会史』
  5. ^ 村上宣寛『「心理テスト」はウソでした。』
  6. ^ MARI YAMAGUCHI (2005年5月6日). “Myth about Japan blood types under attack”. The Canadian Press. 2013年2月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年4月5日閲覧。 http://aol.mediresource.com/channel_health_news_details.asp?news_id=6661&news_channel_id=11&channel_id=11
  7. ^ a b c d e f g h i 松尾友香『図解入門 よくわかる最新血液型の基本としくみ:血液型のメカニズムを図解で学ぶ』2009、p.12
  8. ^ a b c d 村上 宣寛『「心理テスト」はウソでした。 受けたみんなが馬鹿を見た』日経BP社、2005/3、ISBN 4822244466
  9. ^ a b c d 血液型性格判断の謎
  10. ^ 安斎 育郎 『だまし博士のだまされない知恵』など
  11. ^ 能見正比古: 血液型でわかる相性. 青春出版社, 1971, 283p. ISBN 4413011015
  12. ^ 上村晃弘、サトウタツヤ「疑似性格理論としての血液型性格関連説の多様性[リンク切れ]」p.34(パーソナリティ研究、2006、第15巻第1号 33-47) この論文の末尾には(論文中で言及されている)TV番組名が20ほど一覧として記載されている。捏造で話題になった『発掘!あるある大事典』も含まれている。
  13. ^ 「演歌・血液ガッタガタ」作詞:岡本圭司、作曲:ベートーベン鈴木
  14. ^ 「血液ガッタガタPARTII」作詞:岡本圭司・ピンクの電話
  15. ^ 南山堂、医系免疫学第11版より
  16. ^ G. Hartmann (1941) Group Antigens in Human Organs. Copenhagen, Munksgaard
  17. ^ L. E. Glynn, E. J. Holborow (1959) Distribution of Blood-Group Substances in Human Tissues Brit. med. Bull. 1959
  18. ^ Zmijewski, C. M. (1978). Immunohematology. 3rd ed. New York: Appleton-Century-Crofts
  19. ^ Beitchman J, Mik H, Ehtesham S, Douglas L, Kennedy J (2004). “MAOA and persistent, pervasive childhood aggression.”. Mol Psychiatry 9 (6): 546-7. doi:10.1038/sj.mp.4001492. PMID 15024395. 
  20. ^ Risch NJ. Searching for genetic determinants in the new millennium. Nature. 405(6788):847-56, 2000
  21. ^ 村上宣寛『「心理テスト」はウソでした』pp.37-38
  22. ^ 広島修道大学人文学部助教授 中西大輔のページ「血液型性格判断をやめよう」 - 。血液型性格判断の持つ問題点や差別性が心理学者の立場から詳説されている。
  23. ^ 統計的に調査し、仮説を棄却している文献類。
    • WU Kunher, LINDSTED Kristian D., LEE Jerry W., 2005, Blood type and the five factors of personality in Asia(血液型と外向性の間に相関があるかどうかを統計的に調査し、あるとの仮説を棄却している論文の1つ)
    • 村上 宣寛『「心理テスト」はウソでした。 受けたみんなが馬鹿を見た』日経BP社、2005/3、ISBN 4822244466
  24. ^ 「失敗を血液型のせいに」 前復興相弁明に欧州驚き”. 朝日新聞. 2011年7月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年4月5日閲覧。asahi.com:「失敗を血液型のせいに」 前復興相弁明に欧州驚き
  25. ^ 「失敗を血液型のせいに」 前復興相弁明に欧州驚き2011年7月13日
  26. ^ ダイヤモンド・オンライン:あえてリスクを選ぶには信頼が必要、では原発は?

関連項目