血液型性格分類

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血液型性格分類(けつえきがたせいかくぶんるい)とは、血液型と人の性格との間に何らかの関連性を見出し性格を分類しようとすること、およびそのような分類が可能であるとする説のこと。あるいはそのような見解に基づいた様々なコンテンツのこと。

狭義にはABO式血液型による分類を指すが、白血球型なども含めた血液型全般による分類を指すこともある[1]。既存の血液型性格分類の多くが科学的でないとされており、過去に能見説が流行した当初から血液型性格関連説が科学的に正統な知識と認められたことはない[2]。それらのことから血液型診断は疑似科学の一種とされることもある[3][注釈 1]。このように血液型と性格には関連が見られていないにもかかわらず、日本において血液型診断が広く流布されているため、不快な体験をしたり差別やいじめを受けたと感じる人々もいる[4]

概要

現時点で流布している血液型性格分類は、科学的には支持されていない。研究者らによって統計的調査・再調査・追試験が何度も行われているものの、現在に至るまで結論の一致が見られないのが実情である[5][6]

だが、血液型性格分類を説く一般向けの本が多数出版されたことや近年日本のマスコミにより繰り返し流布されたことによって、日本韓国台湾等一部地域で、血液型性格分類を信じる人がいまだ一定数存在している[7]。それらの国々では「血液型ブーム」は経済的価値を生み出すコンテンツの一種となっており、血液型占いなどの関連商品及びソフトが市場に流通している。

欧米諸国を筆頭に大多数の諸外国ではそのような血液型性格分類は支持されていない。そもそも、血液型と性格を関連付ようとする慣習そのものが存在せず、自分の血液型を把握していない人もいる。

血液型性格分類が広まった経緯

西洋における類型学

西洋では歴史的に見て、性格を類型に分類し、それとは別の類型との関係を論じる説が提唱されてきた歴史がある(類型学[8]。例えば、医学の基礎を作ったヒポクラテスは「体内には血液、黄胆汁、黒胆汁、粘液という4種類の体液があり、これらのバランスが崩れると病気にかかる」と述べ、また「体液のバランスが性格にも関わる」と述べた(四体液説)。ヨーロッパでは中世まで、こうした説が信じられていた(現代の医学は、医聖ヒポクラテスに敬意を払ってはいても、これらの説に関してはナンセンス、と判断している)[8]

ドイツでは当時ハイデルベルク大学のガン研究所の教授だったE・フォン・デュンゲルン(Emil von Dungern)博士が動物の血液型を調べたところ、「チンパンジーは全て同一の血液型であることがわかり、他の動物はチンパンジーと異なる血液型であることが多い」ことを発見。このことから「チンパンジーと同じ血液型の動物は“高等な動物”」「チンパンジーとは異なる血液型の動物は“下等な動物”」という考え方に至った。ドイツに留学しデュンゲルン博士のもとで学んだ医師の原来復(はら・きまた)は、1916年に「血液ノ類属的構造ニツイテ」という論文を発表。血液型と気質の関連を科学的な研究対象にしようとする試みであった。しかし、原のこの論文では、まだ関係性を断定するような言い回しは使っていなかったようである[9]

当時は、(現代からは想像できないくらい)人種差別が激しい時代だったので、デュンゲルンや原はその時代における風潮の影響を受けた可能性がある[9]。この時代は西欧に限らず優生学(人間を遺伝によって選別しようという人種差別的発想を多く含む学問や疑似科学類)が大きな影響力を持っており、その根拠として血液型分類が論理的にまとめられようとしていた。「○○人は血液型が...型だから優秀なのだ。○○人は血液型が...型だから劣るのだ」といったような説明(現在では間違いとされる)がまことしやかに学説として唱えられていた[注釈 2]

第二次世界大戦時代のドイツはナチスが政権を握っていたわけであるが、人種差別を正当化するために、血液型性格診断を利用していた[8]。「血液型=性格」とする説は、「ドイツ人遺伝子は優秀」だとしたい彼らにとって好都合だった[8]1932年にドイツで出版された『血液型便覧』には「ドイツ人に多い血液型」を優れた血液型とし、「高い知能」「勤勉」などと肯定的なことが書かれ、一方で「ユダヤ人やアジア人に多い血液型」を劣った血液型として、「暴力犯罪者」「精神薄弱」「感染に弱い」などと非常に否定的なことが書かれた[8]

古川竹二の『血液型と気質』

昭和初期には、東京女子高等師範学校(現お茶の水女子大学)教授であった教育学者古川竹二が、血液型と気質の関連を科学的な研究対象にしようとする一連の試みが広く注目を浴びた。古川の最初の論文は、1927年に『心理学研究』誌上に発表された「血液型による気質の研究」である[注釈 3]。その後に一連の試論の集大成として1932年に『血液型と気質』が出版された。同書の内容が古川学説とされることが多い[注釈 4]

古川学説は、当時金沢医科大学教授であった古畑種基らに支持され、心理学だけではなく、医学、教育など多くの分野で注目を集め、その影響下で多くの調査がなされた[注釈 5]。このため数多くの追試が行われたが、血液型と気質の関連を論じる際に例外が多過ぎることから最終的に古畑は懐疑的になり、結果的には当時の学会でも関係性が否定された。

大日本帝国陸軍においても上記の影響を受け、血液型から将兵の気質・能力を分類することで、部隊編成の際に最も適した兵科・任務にあてることができるとの考えから、各部隊から将兵の調書を集め研究が行われた。1926年、当時の大日本帝国陸軍軍医の平野林と矢島登美太が、「人血球凝集反応ニ就テ」を『軍医団雑誌』に発表した。これは、血液型から兵隊としての資質を判定したものであった。統計的に意味のある結果は出なかったものの、科学的考察を加えるに足るものとして唱えられていた[13]。しかしその後の同様の研究では、期待した結果は得られず、1931年に中止された。

また東京朝日新聞に、「児童の気質調べに奇怪な血液検査-小石川窪町小学校の保護者から厳重な抗議申し込み」という記事が掲載された(1928年)。このように当時から一般庶民からの批判もあった。最終的には、1933年日本法医学会総会において古川学説は正式に否定された[14][6]

能見正比古による再度の注目

第二次世界大戦後は長らく取り上げられることがなかったが、古川学説に影響を受けた能見正比古が、1971年に『血液型でわかる相性』など一般人向けの著作を発表・出版。これによって血液型性格分類が広く知られることとなった。この本で能見正比古・能見俊賢親子は、様々な調査を行い独自の理論を展開したが、現在では多くの専門家や学会からは正当性のないものだとされている(病的科学)。また戦前の「血液型と気質」という言い方が「血液型と性格」という言い方に替えられたのも、この能見正比古の著書からである。その後、台湾や韓国でも若干数、血液型と性格に関する論文が書かれている。

血液型性格分類への否定

医学の立場から

ABO式血液型の違いは脳細胞へ影響を及ぼさないことがわかっている[注釈 6]。人間の気質に影響を与えるモノアミン酸化酵素と血液型のはっきりとした関係性も見出されておらず、仮に差異が確認された実験があったとしても、他の遺伝子や育った環境などの影響による偶然の一致と考えるのが現在の科学的定説である[18][注釈 7]

ただし、ABO式血液型で病気のリスクが変わるという報告は散見される[20][注釈 8]。また、2011年にソウルベンチャー情報大学院大学の金らが4000人以上の成人の脳波を測定したところ、血液型によって性格には差が出ないもののストレス抵抗力に違いがあると報告している[22]。また、東海大学の灰田宗孝による光トポグラフィーを使った実験では、血液型によって脳の活性化部位が違う可能性も示唆されている[23]

したがって、血液型が体質に影響を及ぼし、次いで体質が性格や人格形成に影響を及ぼすとする主張がある[24]。しかしその場合には、性格に影響する遺伝子の存在を軽視することになり、性格に影響する要因として血液型だけを取り上げる行為は、合理的でないものの見方と言える(遺伝子に関する情報は現状では手に入りにくいため、血液型だけが取り上げられてしまうようである)。

心理学の立場から

心理学の分野において、血液型と性格(パーソナリティ)について因果関係を示す結果は出ていない[25]村上宣寛がABO血液型と性格の相関関係を複数回検証しているが、いずれも統計的な有意差は見られなかった[6]社会心理学者縄田健悟は、血液型と性格の関連性に科学的根拠はないとする統計学的な解析結果を発表している[26][27][28]。 社会心理学者の山岡重行の研究では統計的な有意差が認められたが、予言の自己成就によるものだったと著書で述べている[29]

日本パーソナリティ心理学会では、一般からの問合せに回答する形式で「いまのところ血液型と性格に関係があるとはいえない」と、理事の渡邊芳之が解説している。パーソナリティの類型論の誤りの事例(体型など、本来パーソナリティとは関係ない要素をパーソナリティと結びつけようとするもの)のひとつとして、心理学教育の場で血液型性格判断が紹介されることもある。

統計学の立場から

テレビや雑誌などの媒体では、統計の素人(テレビのスタッフやライターなど)が“関連性が出た”と主観的に判断しているが、統計学的には相関関係が認められない程度のものである場合が多い。また前提となるデータ自体が、価値のある統計とは呼べない、少人数を相手にしたものであったり、極端に被験者の性質が偏っていたり、単なる局地的アンケート調査であったり、すでに血液型の類型の概念や固定観念が刷り込まれた人で、なおかつ設問が(誘導的で)不適切なものとなっていることが多い。また、調査対象や論拠を全く示さずに既成事実として報じることも少なからずあった。

本来、統計調査を行う時は、標本(サンプル)の数を十分確保することと、標本集団を偏り(バイアス)なく選定することが理想であり、それができない場合には(通常、できないのだが)安易に結論は得られないとされている。学者による、十分な数の標本集団で、十分管理された統計においては、複数年にわたって特定の血液型と特定の性格に明確な関連性を示すデータが得られたことはほとんどない[注釈 9]

血液型性格分類が普及するきっかけをつくった能見正比古・俊賢親子は、10万人分以上のデータを集めているため、一見母集団からの標本抽出にムラがないものと感じられる。しかし能見親子のデータの収集は、能見の著書『血液型でわかる相性』の読書カードを送り返してきた人だけを対象に行ったものだと息子の俊賢が語っている。そのため最初から母集団に大きな偏り(バイアス)が生じており、偏りのないことを前提とした通常の統計手法を用いたこと自体が間違いだったと指摘されている[注釈 10]

例として、日本とアメリカ合衆国における1万例以上の社会調査データを用いた2014年の研究においても、血液型と性格に意味のある関連性は見出されなかった[28]。 一方で、統計的な相関が見られたという報告も複数存在している[30]。統計的に相関があるという報告の多くは、原因を予言の自己成就によるものとしているが、その存在を直接的に証明した研究はまだない。このため、統計的に相関がないのか、あるいは統計に相関はあるとしても予言の自己成就によるものなのか、あるいはこれらの相関は血液型によるものなのか、現時点では研究者の見解は一致していない。

人類学の立場から

A型の祖先が農耕民族などとする「血液型人類学」と呼ばれるものは、学問的な人類学と大きく矛盾している。日本が1500年に渡る農耕文化を有していたことから、日本人に最も多いA型の祖先を農耕民族としている(それに適した食事法を導き出そうとするものまである)。しかし、2000年弱の農耕文化があっただけで農耕民族に分類されるのならば、世界の民族のほぼ全てが農耕民族となるはずである。したがって農耕民族=日本人という前提が間違いであると言える。

現在では、分子生物学による遺伝子分析の結果、人類の祖先はA型であり、B型やO型はA型の遺伝子から変化したものと考えられている。また、血液型遺伝子の変化には数百万年以上の歴史があるとされている[31]

論理的な面から

  • 血液型の分類にはABO型以外にもRh型やMN型など様々な分け方があり、ゆえにABO型だけ気にするのがおかしいとされる。ABO型の分類は赤血球に関するものだが、白血球についてはヒト白血球型抗原 (HLA) 型や、他にも血小板抗原型など、26系統229種類が確認され、その組み合わせは無数である[32]
  • 4類型した際の性格についての明確で統一された基準が存在しない。
  • 仮に骨髄移植を受けて血液型が変化した場合には、性格も変わるのかという疑問点が生じる。また、血液型には複数のものが混ざったキメラモザイクなども存在することが知られている。その場合、性格がどうなってしまうのかという疑問点が生じる(特に、相反する血液型性格をあわせ持つキメラであった場合)。
  • 仮に「筋肉質な人にA型が多い」という統計学的な「傾向」を発見することはできたとしても、そこから「A型以外の人は筋肉がつきにくい」と結論づけるのは論理の飛躍(安易な逆向きの推論)であり、血液型≒性格という結びつけはできない。
  • 仮にある人の血液型を言い当てられたとしても、それだけでは仮説の正当性の根拠にはならない(もちろん、否定の根拠ともなりえない)。日本人総人口に占めるA・O・B・AB型の割合はそれぞれ4:3:2:1なので、毎回A型と言えば約40%(3回に1回以上)の高確率で正解することになる。「A型かO型」のように言ってO型も含めれば70%に増すため3回に2回は的中する。

血液型性格分類を信じる心理状態

血液型性格分類に科学的根拠がないとされるにもかかわらず、血液型占いが当たっているように感じる理由として、以下のことが挙げられている。

  • 占いに使われている性格の表現というのは、誰もが「あ~、そうかも」と思えるものが多い[33]。「思いやりがある」「さみしがりや」などがわかりやすい例であるが、誰にでも多かれ少なかれ当てはまるものである[33]。明るい性格の人であっても暗い気分の時があり、しっかりした人であっても、いつでもどこでもしっかりした人でいられるわけではない[33]。そのため、「××型だから○○」という表現を多く並べれば並べるほど、たいがいの人に当てはまる性格分析が出来上がってしまう[33]。このことを心理学では「バーナム効果」と言い、誰にでも当てはまる”あいまいで一般的な性格をあらわす記述”を、自分だけに当てはまる正確なものだと誤解してしまう現象として知られている。
  • 例えば「A型は几帳面」という思い込みがあると、A型の人が几帳面に行動する場面ばかりに目が向くようになり、A型の人がいいかげんな行動をする場面があっても「めずらしい」の一言で済ませてしまうようになる[34]。このことを心理学では「確証バイアス」と言い、自分の信念を裏付ける情報を重視・選択し、これに反する情報を軽視・排除してしまうという現象として知られている。
  • 例えばA型の人が「A型は几帳面」という情報を何回も聞くと、それを意識した行動を無意識のうちにとるようになってしまう[35]。行動が多少なりとも変わった状態で再び「A型は几帳面だ」という情報が入ってきた場合に、当たっていると感じてしまう。このことを心理学では「予言の自己成就」と言い、根拠のない予言であってもそれを信じて行動すると、予言通りの結果になってしまうという現象として知られている[35]

社会問題

血液型のように本人によって選択できない遺伝情報に基づいて、人を否定的に捉えること自体が差別行為とされる[29]。このような「血液型差別」は人種差別と同様の構図を持っており、実際に血液型性格分類は人種差別を肯定するために研究されてきた歴史がある[29]。現在の日本では「血液型を根拠に人格否定やレッテル貼り、気に入らない血液型の人間を疎外することは差別行為に該当する」という認識を持ちあわせた人間が少なく、かつそういった意識が低い点に問題がある。人種差別が優生学という擬似科学によって権威付けられていたのと同様に、血液型性格分類も科学的裏付けがあるかのように謳うテレビや書籍などによって、日本社会で単なるお遊び以上の影響力を持つようになっていった。

社会学的見地からして、多数派ではない血液型が否定的な扱いをされるであろうことは予想がつく。少数派の軽視や意図的に特定の血液型の人間を差別する行為や、特定の血液型に悪い印象を持たせるように誘導する行為は基本的人権の侵害に繋がる可能性が高い。心理学的見地からしても先入観や偏見、差別意識などによるステレオタイプに基づいて人間を観察すると、その人間に対する印象が大きく違ってくるのは明らかであり、そのために人物像を正確に把握できなくなる可能性が生じる。また、学校や職場などといった社会で血液型差別を受けた場合、事によっては利権問題や死活問題に関わってくる可能性も少なからずあると言える(具体的に言えば学校においてはイジメの原因になる可能性、職場においては雇用問題、人間関係の構築や昇進などといった問題に関わってくる可能性)。

テレビ番組は頻繁に血液型性格関連説を紹介してきた。例えば捏造で話題となった『発掘!あるある大事典』の報道が代表として挙げられる。その内容はスタッフの都合によって作られた捏造だらけのものであったことが、過去のニュースで取り上げられた。上村晃弘らの調査によると、地上アナログ放送では2004年2月21日からの1年間だけでも、約70本もの血液型性格関連説に関するテレビ番組が放映されたという[2]。中には特定の血液型を肯定的に扱い、特定の血液型を差別的に扱うものもあった。一般社会への浸透にはテレビが大きな役割を果たし、でっち上げやヤラセの演出を含んだテレビ番組が血液型への偏見、固定観念を広めた[4]。そして、テレビ番組によってイジメや差別が助長され、放送局に多くのクレームが殺到することとなった。BPO(放送倫理・番組向上機構)は2004年に、「血液型によって人間の性格が規定されるという見方を助長することのないよう要望する」との声明を発表[36]。民放連の放送基準「第8章 表現上の配慮」54条に抵触するとして、「血液型判断に対し、大人は“遊び”と一笑に付すこともできるが、判断能力に長けていない子どもたちの間では必ずしもそういうわけにはいかない。こうした番組に接した子どもたちが、血液型は性格を規定するという固定観念を持ってしまうおそれがある」とした[36]

性格分類の肯定者の中には「血液型による性格分類は根拠がないという立証はされていない」(ゆえに間違いではない)といった見解を述べる人もいる。テレビ番組制作側は、こうした意見を後ろ盾に血液型性格分類を扱う番組を作っていた部分もある。実際、BPOからの指摘に対し、一部のテレビ局はそのような趣旨の回答をしていた。しかし、医学的・心理学的な裏付けがないものを既成事実としてメディアが流し誤った認識や偏見、差別意識を世間に植え付けたことが最大の問題であり、良識ある人々からの批判を受けることとなっている。そのような指摘を受け、血液型性格分類を扱う一部の番組では最後に「血液型ですべてが決まるというわけではありません。決めつけや偏見は絶対にやめましょう」等といった免罪符とも受け取れる、形ばかりの注意喚起がなされるケースもあった。現在、テレビ番組などにおいては血液型性格分類に関する特集や出演者によるそのような話題は無くなりつつあるが、一部の週刊誌などでは(激減したとは言え)こういった話題を取り上げるものが根強く残ってる。

偏見ステレオタイプや認知のひずみといった問題を重要な研究テーマとしている社会心理学科学社会学)でも近年研究が進んでいる。血液型性格分類が社会に流布する仕組みや、このような説が流布することによって人の認知にどのようなひずみが生じるのか、あるいは「信じているように振舞う人の動機は何か」といった角度から研究されており、論文が多数書かれている(そのような研究をするために、念のためABO式血液型と性格の間に関連があるかを統計的に検証することもあるが、そこでも両者には明確な関連は見られていない)。近年では、「血液型」および「性格」という言葉がタイトルに含まれる論文では、こういった社会心理学側からの論文が主流になりつつある。

血液型性格分類にまつわる事例

  • 1985年、シンガー・ソングライターのさだまさしによるヒット曲「恋愛症候群」(および同年の「もーひとつの恋愛症候群」)では恋愛感情を血液型で分析した歌詞が歌われた。
  • 同じく1985年、コミックバンドのバラクーダーが「演歌・血液ガッタガタ」を発売。ABO式の各血液型の特徴とされる性格を歌詞にして男性が女性を揶揄する内容。後に、女性お笑いコンビのピンクの電話が、同じ曲で男女の立場を入れ替えた歌詞の「血液ガッタガタPARTII」を発売。2曲とも、4つの血液型すべて「嫌いな性格」と歌っている。
  • 嘉門達夫の「血液型別ハンバーガーショップ」では、前奏で「人間の性格がたった4種類に分類されるわけがない」と前置きした上で、各血液型の性格の「欠点」とされる行動・言動をコミカルに風刺した。
  • 1987年、三菱ミラージュのCMでは、血液型別にCMを放送されていた。
  • 1990年前後、森永ハイチュウで血液型別のCMを放送していたことがある。
  • 1990年にある国会議員が刺され失血死した(とされている)事件の際に、異なる型が輸血されるという医療事故が生じた。 議員が公表していた血液型が実際とは異なっていたからであるが、これは選挙における有権者への印象を考慮したためで、背景には当時流行していた血液型占いがあるのではないか、という指摘がある[37]
  • 1990年福岡ダイエーホークスの監督に就任した田淵幸一は、血液型を考慮に入れてメンバーを決めたことがある。また、2011年東北楽天ゴールデンイーグルスのコーチになったときも、血液型による捕手の配球を選手に指導した。余談ではあるが、田淵氏は02~03年期の星野仙一政権期でコーチを務めた時にも相変わらず血液型性格分類に凝っており、監督である星野仙一氏から、そのことに関して否定的な指摘を受けたことがある。
  • 2002年大学入試センター試験の「現代社会」の設問において、下記の大村政男による血液型性格分類についての調査結果が資料問題として使われたことがある(バーナム効果を示す調査)。
  • はなわの「B型ロックンロール」は特定の血液型に対する偏見や差別意識を助長させる可能性のある内容であった。
  • 2005年、韓国で映画『B型の彼氏』が公開された。翌年には日本でも公開された。
  • 2006年、血液型性格分類のブームが過熱しすぎた日本を描いた松岡圭祐の小説『ブラッドタイプ』が出版された。白血病の女性が骨髄移植により血液型がB型に変わるのを嫌い(骨髄移植は白血球抗原 (HLA) 型の一致が必要とされるため、赤血球の型であるABO式の血液型より優先される)、輸血を拒否し生命の危機に陥るなど、迷信に基づく騒動が頻出、臨床心理士らがその非科学性をどう証明し混乱を鎮めるか、というストーリーである。なお、松岡はこの小説を執筆する前に、「究極の血液型心理検査」という血液型性格診断を行うウェブサイトを立ち上げた。それをのべ450万人が利用し、診断後にこのサイトの血液型診断が当たっているのかという問いに対して、9割以上の利用者が「この血液型性格診断は当たっている」と答えた。だが、後に松岡がこのウェブサイトについての仕掛けを公表、心理診断は行っているものの血液型の問いに関する分析はプログラム上で全く行っていないことを明らかにした。
  • 2009年、フジテレビで2月の23日から26日の四夜連続ドラマ『血液型別 オンナの結婚する方法』が放送された。
  • 2011年7月4日には、岩手・宮城両県知事への発言を問題視された松本龍復興担当大臣(当時)が記者会見で、自身の血液型と出身地を発言の原因だとする弁明を行なった。欧州メディアからは「失敗を血液型のせいにできるのか」といった反応があった[38]BBC東京特派員のローランド・バークは松本復興担当大臣の弁明の解説として「血液型のせいにするなど荒唐無稽に聞こえるかもしれないが、日本では血液型は性格に影響すると信じられている」とコメントしている[39]

注釈

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  1. ^ 2006年3月、田崎晴明・学習院大教授(統計物理学)の提案により、血液型性格分類なども含めて「科学的に見える非科学」にどう対応すべきか考えるシンポジウム日本物理学会(佐藤勝彦会長)によって愛媛大学(松山市)で開かれた。
  2. ^ ドイツのクレッチマーは、体型と気質の関連に関する分類を行い、1921年に『体型と性格』という書を出版した。
  3. ^ 古川は東京女高師に訓導(教師)として任官し、児童の選抜(入学試験)にも関わることになって、知能検査を補うものとして気質に着目した。古川は児童の親などから何か言われたような節があり、根拠を説明するために気質論が必要になった、ともされる[10]
  4. ^ 主な手法は、ABO式血液型別の質問項目(自省表)をそれぞれ10項目程度ずつ作成し、質問紙法により血液型との一致率を測定するものである。古川の発表によると、自省表は80%以上の一致率があるとされた。これとは別に、職業別にABO式血液型を調査して、職業特性と比較したりしたが、被験者の数は30人未満であり、統計的に有効なデータではない。
  5. ^ 古川説の影響力の大きさについて。1928年(昭和3年)から1935年(昭和10年)の間に、血液型気質相関説の影響下に書かれた論文の数は、医学、心理学、教育学などを分野を中心に総計約290にもおよぶと言う[11][12]
  6. ^ ABO式血液型の反応率は、胃に対する反応率を100%とすれば、十二指腸 (90%) などと比較して脳細胞は最も低く、有無の判定ができない程度の反応 (8%) しか検出できなかった[15][16][17]
  7. ^ 一方で、胎児の発生期には血液型物質が大量に脳や神経に発現しているという報告もある[19]
  8. ^ 一方で、胃腸管に関するいくつかの形質との間に弱い相関関係が認められること以外は、信頼できないとする報告もある[21]
  9. ^ ある年だけ見ると相関性が見られることもまれにあるが、同一調査を長期に渡って行うと逆方向の相関となる可能性もある。もしも長期に渡ってコンスタントに一定方向の相関が見られるならば、明らかに相関があると言えるのだが、そのようなデータが得られたのは次の論文だけである。
    • 山崎賢治、坂元章(1992) 「血液型ステレオタイプによる自己成就現象~全国調査の時系列分析~」『日本社会心理学会第33回大会発表論文集』 - 血液型性格関連説が社会的に広まり始めたころから数年後の1978年を起点に1988年まで、日本人延べ約3万人の自己評価による性格の経年変化を調べ、自己評価の性格がステレオタイプに沿ったものへとより強化される傾向があることを示した。ただし最も大きな偏りを示した項目でも大量のデータでないと有意味とされない程度の微弱なものであった。
  10. ^ また能見は、「特定の血液型に偏った人口構成になっている各国と比べて、4種類の血液型いずれもが一定数の割合を占めているアジア諸国の方が多様な性格の人で構成されている」としているが、この説が学術の体をなしていないという批判も存在する

出典

  1. ^ 溝口元(1993)「ABO式以外の血液型と性格との関連をめぐって」『日本性格心理学会大会発表論文集』2, 7.
  2. ^ a b 上村晃弘、サトウタツヤ(2006)「疑似性格理論としての血液型性格関連説の多様性」『パーソナリティ研究』15(1), 33-47. - この論文の末尾には(論文中で言及されている)TV番組名が20ほど一覧として記載されている。捏造で話題になった『発掘!あるある大事典』も含まれている。
  3. ^ 菊池聡『なぜ疑似科学を信じるのか―思い込みが生みだすニセの科学』
  4. ^ a b 山岡重行「テレビ番組が増幅させる血液型差別 (PDF)
  5. ^ WU Kunher, LINDSTED Kristian D., LEE Jerry W. (2005). Blood type and the five factors of personality in Asia - 台湾の論文。この調査では、血液型と外向性の関連性を否定する結果が出た。そのかわり、女性のBMI(=肥満度)と外向性の間に関連性あり、との結果が出た。Wuらは、"Research investigating the association of blood type with personality has yielded mixed results."と述べている。
  6. ^ a b c 村上宣寛(2005)『「心理テスト」はウソでした。 受けたみんなが馬鹿を見た』日経BP社 - 村上は学生に対しても調査してみたが、やはり有意差は出なかったと述べている。
  7. ^ MARI YAMAGUCHI (2005年5月6日). “Myth about Japan blood types under attack”. The Canadian Press. 2013年2月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年4月5日閲覧。
  8. ^ a b c d e 松尾友香(2009)『図解入門 よくわかる最新血液型の基本としくみ:血液型のメカニズムを図解で学ぶ』p.12
  9. ^ a b 大阪大学大学院 生命機能研究科 認知脳科学研究室「血液型と性格は関係があるか?
  10. ^ 佐藤達哉、渡邊芳之(1995)「古川竹二の血液型気質相関説の成立を巡って」『性格心理学研究』3(1), 59.
  11. ^ 溝口元(1986)「古川竹二と血液型気質相関説」『生物科学』38, 9-20.
  12. ^ 佐藤達哉、渡邊芳之(1995)「古川竹二の血液型気質相関説の成立を巡って」『性格心理学研究』3(1), 51-65
  13. ^ 安斎育郎 『だまし博士のだまされない知恵』など
  14. ^ 松田薫(1994)『「血液型と性格」の社会史―血液型人類学の起源と展開』河出書房新社
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    • Brian M. Wolpin et al. (2009). ABO Blood Group and the Risk of Pancreatic Cancer. Journal of the National Cancer Institute, 101(6), 424-431. - 膵臓がんはB型はO型に比べると1.72倍リスクが高いなど。
  21. ^ Risch NJ. (2000). Searching for genetic determinants in the new millennium. Nature, 405(6788), 847-856.
  22. ^ Choong-Shik Kim, Seon-Gyu Yi. (2011). A Study on the effects of one's blood type on emotional character and antistress of adults, Journal of the Korea Academia-Industrial cooperation Society, 12(6), 2554-2560. - 2006年9月から2009年12月までに韓国精神科学研究所に脳波測定を依頼した成人(20歳-59歳の4636人)のデータを分析した結果、O型は他の血液型に比べて注意指数や抗ストレス指数が有意に高かった。
  23. ^ 2010年2月、血液型人間科学研究センターの主催により、ミニシンポジウム「血液型を考える~ヒトABO式血液型遺伝子を理解する為に~」が東京で開かれた際に、灰田宗孝教授(東海大学医学部)が光トポグラフィーを使った実験結果を発表した。A型は左脳、B型は右脳が活性化しやすいという(報告書はここから読める)。
  24. ^ Donna K. Hobgood. (2011). Personality traits of aggression-submissiveness and perfectionism associate with ABO blood groups through catecholamine activities. Medical Hypotheses, 77(2), 294-300.
  25. ^ 広島修道大学人文学部助教授 中西大輔のページ「血液型性格判断をやめよう」 - 血液型性格判断の持つ問題点や差別性が心理学者の立場から詳説されている。
  26. ^ “科学 血液型と性格「関連なし」…日米1万人超を調査”. 読売新聞(YOMIURI ONLONE). http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20140722-OYT8T50051.html 2014年8月17日閲覧。 
  27. ^ “B型はマイペース?…研究者「関係ありません」”. YOMIURI ONLINE KODOMO. http://www.yomiuri.co.jp/kodomo/newspaper/compare/20140723-OYT8T50076.html?from=yartcl_popin 2014年8月17日閲覧。 
  28. ^ a b 縄田健悟(2014)「血液型と性格の無関連性 ―日本と米国の大規模社会調査を用いた実証的論拠―」『心理学研究』85(2), 148-156.
  29. ^ a b c 山岡重行(2001)「第二夜 血液型性格診断に見るダメな大人の思考法―思いこみと勘違いのメカニズム」 『ダメな大人にならないための心理学』(pp.35-73)
  30. ^ 統計的な相関が見られたという報告の例
  31. ^ Saito N., Yamamoto F. (1997). Evolution of Primate ABO Blood Group Genes and Their Homologous Genes. Molecular Biology and Evolution, 14(4), 399-411.
  32. ^ 南山堂、医系免疫学第11版
  33. ^ a b c d “信じていいの、この占い。☆バーナム効果☆”. BONITA message. http://bonitamessage.jp/ww/cont/id/1152 2014年7月25日閲覧。 
  34. ^ “「確証バイアス」にご用心 ~血液型と性格との相関について~”. ITmedia オルタナティブブログ. http://blogs.itmedia.co.jp/tani/2014/07/16-4800.html 2014年7月25日閲覧。 
  35. ^ a b “予言の自己成就”. JAW 安全衛生ホームページ. http://www.jaw.or.jp/anzen/letter/no_25.htm 2014年7月25日閲覧。 
  36. ^ a b 「血液型を扱う番組」に対する要望”. BPO(放送倫理・番組向上機構)青少年委員会. 2014年4月5日閲覧。
  37. ^ 支倉逸人(2002) 『検死秘録』 光文社 (p.118 -)
  38. ^ 「失敗を血液型のせいに」 前復興相弁明に欧州驚き”. 朝日新聞. 2011年7月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年4月5日閲覧。
  39. ^ “あえてリスクを選ぶには信頼が必要、では原発は?”. ダイヤモンド・オンライン. http://diamond.jp/articles/-/13003 2014年8月17日閲覧。 

出典で扱われていない文献

  • 大村政男(1990, 1998新訂, 2012新編)『血液型と性格』福村出版
  • 白佐俊憲&井口拓自(1993)『血液型性格研究入門―血液型と性格は関係ないと言えるか』川島書店 - 2人の心理学者による検討
  • 前川輝光(1998)『血液型人間学―運命との対話』松籟社 - 肯定的な見解
  • 詫摩武俊&佐藤達哉編(1999)『現代のエスプリ 血液型と性格―その史的展開と現在の問題点』至文堂 - 海外の学術文献リスト他
  • Jamais Jamais(2007)『B型自分の説明書』文芸社
  • Sung Il Ryu, Young Woo Sohn (2007). A Review of Sociocultural, Behavioral, Biochemical Analyses on ABO Blood-Groups Typology. The Korean Journal of Social and Personality Psychology. - 先行研究を著者独自のメタアナリティックな方法(メタアナリシスのことではない)で分析したもの。心理学者による肯定的な結果
  • 鈴木芳正(2008)『血液型別ウラ血液型診断書』ミヤオビパブリッシング
ABO式以外の血液型と性格・気質の相関についての研究を含むもの
  • Cattell, R. B. et al. (1980). The realation of blood types to primary and secondary personality factors. Mankind Quarterly, 21, 35-51. - ABO式血液型、MN, Rh, P, Kell, Duffy, Colton, 血清型5種、酵素型5種との一時的および二次的性格要因との関係があるかどうかの研究。ただしMankind Quarterlyは優生学と人種隔離政策を擁護する団体 (International Association for the Advancement of Ethnology and Eugenics) によって設立された雑誌であるため、ほとんどの学会で学術雑誌として認められていない。
  • Harburg, E. et al. (1982). Twelve blood markers and measurement of temperament. J. Psychiat, 140, 401-409. - ABO式血液型、MN, Rh, P, S, Kell, Kidd, Duffy, Lewis, 血清型3種と気質との関係があるかどうかの研究