認識票

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第2次世界大戦中の米陸軍兵士の認識票
戦死者の葬儀の様子。銃に認識票がかけられている

認識票(にんしきひょう)とは、軍隊において兵士の個人識別用に使用されるものである。アメリカ軍のスラングでは、これを指してドッグタグDog tag)と呼ぶ。近年ではIDタグID tag)へ呼び名が変わり始めている。

歴史[編集]

世界で最初に認識票を導入したのはプロイセン軍で1870年から普仏戦争のために導入した。それは同じころに首都ベルリンで導入された犬用の鑑札(ドイツ語:Hundemarken)と比較され、自嘲気味にHundemarkenと呼ばれた、これが英語になったものがdog tagである[1]

概要[編集]

第二次世界大戦中のイギリス軍では切れ目のついた円形の金属板を手首にチェーンで巻きつけ、アメリカ軍では長円形の金属板に穴を空けチェーンなどに通して首から提げて使用した。旧日本陸軍では小判型の真鍮板を上下の穴に紐を通して胴体にたすき掛けにして装着していた。アメリカ軍では首から下げた認識票を鑑札狂犬病予防法に基づく登録票)になぞらえてドッグタグと呼ばれるようになった。その意味合いとして、自嘲的な皮肉が多分に込められている。

認識票の形状や材質、打刻される兵士の情報は各国の軍によって異なる。多くは5cm程度の大きさのアルミニウム製やステンレス製で、氏名生年月日性別血液型、所属軍(国籍と同義)、認識番号、信仰する宗教等が打刻される。たとえ戦死時に遺体が原形を留めないほど損壊しても、認識票が無事ならば個人識別が可能である。

使用する枚数も国によって異なるが、二枚式の場合は両方に、一枚式の場合は折り取れるようにしておきその上下双方に、同じ内容を打刻する。戦場において戦死した際に一方を回収、これを戦死報告用とし、残りは判別用に遺体に付けたままにする。アメリカ軍においては、保持者が爆発に巻き込まれて胴体がちぎれてしまったような場合に、足にも付けるために2枚あるのだという[2]。二枚使用の場合、相互に触れ合って金属音を立てるため、サイレンサーと呼ばれるゴムの外周カバーをはめる場合がある。

近年は一般人の装身具としても用いられる。また、事故や災害に巻き込まれた人が、認識票を付けていたことで身元確認が容易となった事例も存在する。

各国の認識票[編集]

日本[編集]

自衛隊にも認識票が存在する。ステンレススチール製の二枚式であり、基本的な形状は第二次世界大戦時のアメリカ軍の形状に類似しているが、アメリカ軍の認識票が専用タイプライター(刻印機)を用いて、キャッシュカードクレジットカードの様に裏までエンボスとなるように打刻するのとは違い、レーザーによる細いエッチングの、浅い彫り込みである。内容は自衛隊名、氏名、認識番号、血液型が英大文字・数字で表記されるが、下記の様に、陸海空ごとに刻印内容と順に差異がある。アメリカ軍との違いは材質がアルミニウム製でなく若干重い事、氏名が「名・姓」の順であること、血液型は「BLOOD TYPE」と前置されRh式の記述が無い事、宗教の記載がないことが挙げられる。

また、自衛隊の認識票は現在でも本体に欠けのような切り込みがされている。これは戦場などでの殉職の際に所有者のをこじ開けるためのもので、自衛隊の規則でも明文化されている[3]。この切り込み加工は米軍でも、ベトナム戦争までの形式には存在した。なお、陸上自衛隊にはサイレンサーとして透明ビニールの全体カバーが掛かっているが、航空自衛隊・海上自衛隊には付属しない。

アメリカ軍[編集]

1974年認識番号が廃止されてからは社会保障番号が刻印されている。以下は2008年現在のフォーマット

脚注[編集]

  1. ^ Law, Clive M. Article in Military Artifact, Service Publications
  2. ^ ジュネーブ第1条約 第16条の4:「紛争当事国は、死亡証明書又は正当に認証された死者名簿を作成し、且つ、捕虜情報局を通じて相互にこれを送付しなければならない。紛争当事国は、同様に、死者について発見された複式の識別票の一片又は、単式の識別票の場合には、識別票、遺書その他近親者にとって重要な書類、金銭及び一般に内在的価値又は感情的価値のあるすべての物品を取り集め、且つ、捕虜情報局を通じて相互にこれらを送付しなければならない。それらの物品は、所属不明の物品とともに封印して小包で送らなければならない。それらの小包には、死亡した所有者の識別に必要なすべての明細を記載した記述書及び小包の内容を完全に示す表を附さなければならない。」
  3. ^ 認識票に関する達

外部リンク[編集]