ベックレスピナクス

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ベックレスピナクス
生息年代: 133 Ma
Becklespinax.jpg
1850年代に描かれたホロタイプ(BMNH R1828)
地質時代
白亜紀前期
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
: 竜盤目 Saurischia
亜目 : 獣脚亜目 Theropoda
階級なし : テタヌラ類 Tetanurae
: ベックレスピナクス属 Becklespinax
学名
Becklespinax
Olshevsky1991
シノニム

ベックレスピナクスBecklespinax)は白亜紀前期、現在のイングランドに生息していた大型で捕食性の獣脚類恐竜の属の一つである。

発見と命名[編集]

おそらく1850年代前半頃、化石収集家のサミュエル・ベックルスイースト・サセックスバトル英語版の採石場で恐竜の骨を含むノジュールを発見した。ベックルスは化石をリチャード・オーウェンに送り、オーウェンはこれを1856年に報告した[1]。オーウェンはJoseph Dinkelにこの標本の主要な化石である神経棘の長い胴椎リトグラフを作らせた。 この図版はオーウェンのイギリスの化石爬虫類についての代表的な研究である1884年の版の1855年の巻で示され[2]、この化石が1884年近くに発見されたという誤解を招いた。オーウェンはこの標本をMegalosaurus bucklandii のものであり、椎骨は肩の領域のものであると考えており、1853年の時点では既にこの化石を知っていたと推定できる。なぜならオーウェンはベンジャミン・ウォーターハウス・ホーキンス英語版水晶宮公園に置くための背中にこぶのあるメガロサウルスの等身大像の制作を指示しているからである。この彫刻は19世紀以降の復元に影響を与えている [3] [4]

ロンドン水晶宮公園に展示される背中にこぶのあるメガロサウルスの像

1888年、リチャード・ライデッカーはこの椎骨をドイツで発見された歯に基づく白亜紀の種であるMegalosaurus dunkeriの標本と関連付けた[5]。1923年、フリードリヒ・フォン・ヒューネはM. dunkeriを分離して新たな属を創設し、この際に3つの椎骨をこの属のものとし、その概観に基づいてアルティスピナクスAltispinax)(「高い棘を持つもの」の意味)と命名した。M. dunkeriはこの結果新たな組み合わせAltispinax dunkeriとなったが、この組み合わせは実際には1939年になってオスカー・クーン英語版により始めて使用された[6]

最初の歯の化石は属を特徴付ける特徴を持たないため、後にアルティスピナクスは疑問名(nomen dubium)と考えられるようになった。そのため1988年、これらの椎骨はグレゴリー・ポール英語版によりアクロカントサウルス属の新種としてAcrocanthosaurus? altispinaxと命名された。種小名は意図的に旧属名と同じものとして、両者が同じ椎骨についての名であることを強調したものである[7]。疑問符が付いているように、ポール自身この同定には確証がなかった。そこで1991年、ジョージ・オルシェフスキー英語版は新属ベックレスピナクスと命名した。属名は最初の化石の発見者であるベックルスに献名されたものである。新しい名前の組み合わせによりタイプ種 Acrocanthosaurus? altispinaxBecklespinax altispinaxとなった[8]。種名Altispinax altispinax[9][10]Altispinax lydekkerhueneorum[11] は同じ標本に対するものであり新参同物異名であるがBecklespinax altispinaxに優先権がある。

特徴[編集]

ベックレスピナクスのホロタイプ BMNH R1828はおそらくヘイスティング層(en)の白亜紀前期、バランジュ期の地層から発見されたものである。標本は一連の3つの後部の胴椎で構成される。オーウェンはノジュールの中の2つの右側の肋骨と2つの連続した胴椎の椎体を報告している[1]。オルシェフシキーはホロタイプは第8番、第9番、第10胴椎であると考えた。しかし、後の研究では第10、第11、第12であると推定されている[12]

フォン・マイヤーによる長い神経棘を持つメガロサウルスの骨格復元図

ポールは1988年に A. altispinaxは体重で1 tで、体長は8 mほど推定したAcrocanthosaurus atokensisよりも小さいだろうと推定している[7]

サセックスで発見されたB. altispinaxの3つの胴椎の神経棘は約35 cmでイクチオヴェナトル(Ichthyovenator)のものとだいたい同じくらいの長さである[13]。 これらの神経棘は上部の1/3に不規則なしわがある。ラルフ・モルナー英語版によれば頭骨に近い側の2つの神経棘は強直もしくは癒合している。もう一つの椎骨は他の神経棘の2/3ほどの長さで、壊れているように見えるが、その一方で後半部分はギャップに向かって成長している。この事についてモルナーは背中のひだを損傷し、後に後側からふさがった結果であると説明している [12]。これに対して2003年、ダレン・ナッシュ英語版はギャップは自然なものであるという、違った解釈を示している。ナッシュは前側の2つの椎骨の強直を否定し、第11、第12胴椎の棘突起は上部で結合していたのだと気づいた。神経棘は横方向にさらに広がっていて幅は約55 mmである。ナッシュはさらにオーウェンは神経弓の側面に大きなくぼみがある事に気づき、これが含気化によるものだと説明しており、これは初めて恐竜に含気化があることを明示したものだと指摘した[14][15]。 しかし2006年、恐竜に含気構造があることは1837年にヘルマン・フォン・マイヤーにより竜盤目一般について述べられていたと報告された[16]。2010年、たった2本の長い突起を持つ椎骨のみで構成された背中の隆起をもつコンカヴェナトルConcavenator)が発見されたことで、ベックレスピナクスの後方の短い棘突起も完全なものである可能性が実証された[17]

分類[編集]

オルシェフスキーは最初ベックレスピナクスをエウストレプトスプンディルス科Eustreptospondylidae)に分類した。2003年ナッシュはアロサウルス科Allosauroidea)に属すと考えた[14]。しかし、一般的にはよりあいまいにテタヌラ類所属不明と考えられている[18][19]

参照[編集]

  1. ^ a b Owen, R., 1856, Monograph on the fossil Reptilia of the Wealden Formation. Part IV. Palaeontographical Society Monographs 10, 26 pp
  2. ^ Owen, R., 1855, Monograph on the fossil Reptilia of the Wealden and Purbeck formations. Part II. Dinosauria (Iguanodon). (Wealden). Palaeontographical Society Monographs 8. 54 pp
  3. ^ Re: _Becklespinax_”. Archives of the DINOSAUR Mailing List. The Cleveland Museum of Natural History (18 Feb 1997 15:42). 2012年6月閲覧。
  4. ^ Naish, D. 2010. "Pneumaticity, the early years: Wealden Supergroup dinosaurs and the hypothesis of saurischian pneumaticity". In: Moody, R. T. J., Buffetaut, E., Naish, D. & Martill, D. M. (eds) Dinosaurs and Other Extinct Saurians: A Historical Perspective. Geological Society, London, Special Publications 343, pp. 229-236
  5. ^ Lydekker, R. 1888. Catalogue of the Fossil Reptilia and Amphibia in the British Museum (Natural History), Cromwell Road, S.W., Part 1. Containing the Orders Ornithosauria, Crocodilia, Dinosauria, Squamata, Rhynchocephalia, and Proterosauria. British Museum of Natural History, London, 309 pp
  6. ^ Kuhn, O., 1939, Saurischia — Fossilium catalogus I, Animalia, Pars 87. 's-Gravenhage, W. Junk, 1939, 124 pp
  7. ^ a b Paul, G.S., 1988, Predatory Dinosaurs of the World. Simon & Schuster, New York 464 pp
  8. ^ Olshevsky, G., 1991, A revision of the parainfraclass Archosauria Cope, 1869, excluding the advanced Crocodylia. Mesozoic Meanderings 2, 196 pp
  9. ^ Rauhut, O.W.M., 2000, The interrelationships and evolution of basal theropods (Dinosauria, Saurischia). Ph.D. dissertation, University of Bristol, 440 pp
  10. ^ Rauhut, O.W.M., 2003, The Interrelationships and Evolution of Basal Theropod Dinosaurs. Special Papers in Palaeontology no. 69, London, The Palaeontological Association 213 pp
  11. ^ Pickering, S., 1995, Jurassic Park: Unauthorized Jewish Fractals in Philopatry, A Fractal Scaling in Dinosaurology Project, 2nd revised printing, Capitola, California, 478 pp
  12. ^ a b Molnar, R. E., 2001, Theropod paleopathology: a literature survey: In: Mesozoic Vertebrate Life, edited by Tanke, D. H., and Carpenter, K., Indiana University Press, p. 337-363.
  13. ^ Allain, R., Xaisanavong, T., Richir, P. & Khentavong, B. 2012. "The first definitive Asian spinosaurid (Dinosauria: Theropoda) from the Early Cretaceous of Laos". Naturwissenschaften 99(5): 369-377
  14. ^ a b Naish, D., 2003, "A definitive allosauroid (Dinosauria; Theropoda) from the Lower Cretaceous of East Sussex", Proceedings of the Geologists’ Association 114: 319-326
  15. ^ Naish, Darren; Martill, David M. (2007). “Dinosaurs of Great Britain and the role of the Geological Society of London in their discovery: basal Dinosauria and Saurischia”. Journal of the Geological Society 164: 493–510. doi:10.1144/0016-76492006-032. 
  16. ^ O’Connor, P.M. 2006. "Postcranial pneumaticity: an evaluation of soft-tissue influences on the postcranial skeleton and the reconstruction of pulmonary anatomy in archosaurs". Journal of Morphology, 267: 1199–1226
  17. ^ http://scienceblogs.com/tetrapodzoology/2010/09/09/concavenator-incredible-allosauroid/
  18. ^ Holtz, T. R.; Molnar, R. E.; Currie, P. J. (2004). “Basal Tetanurae”. In Weishampel, D. B.; Dodson, P.; Osmolska, H.. The Dinosauria (2nd. ed.). Berkeley: University of California Press. pp. 71–110. 
  19. ^ M. T. Carrano, R. B. J. Benson, and S. D. Sampson, 2012, "The phylogeny of Tetanurae (Dinosauria: Theropoda)", Journal of Systematic Palaeontology 10(2): 211-300

外部リンク[編集]