コードレス電話
コードレス電話(コードレスでんわ)とは、固定電話回線などに接続された親機と子機との間を無線通信で結ぶ電話機およびそのシステムである。原則として、電話回線に接続された親機を加入者が設置し、その親機が設置された宅内あるいは構内とその近傍でのみ通話可能である。基地局を通信会社が設置する携帯電話・公衆モードのPHSなどの移動体通信とは異なる。
以下は、日本のことについて述べる。
目次 |
[編集] 歴史
- 1970年(昭和45年) 大阪万博で初めて登場[1]した。
- 1979年(昭和54年) 4月から日本電信電話公社(略称 電電公社)がレンタルで提供開始した。
- 1985年(昭和60年) 京セラが未認可のコードレス電話機(商品名 フリーコール)を電器店で販売し、国会で取り上げ[2]られた。
- 1987年(昭和62年) (アナログ方式の)技術基準が「コードレス電話の無線局」として法制化され、販売も自由化された。
- 1988年(昭和63年) 電波システム開発センター(現 電波産業会(略称 ARIB))が、技術基準を含めた標準規格を策定した。
- 1993年(平成5年) 1.9GHz帯を用いるデジタル方式の技術基準が「デジタル方式のコードレス電話の無線局」として法制化された。ARIBもこれにあわせた技術基準を第二世代コードレス電話と称した標準規格を策定した。
- 以後、デジタル方式が販売の主流になっている。
- 2003年(平成15年) 2.4GHz帯を用いるデジタル方式コードレス電話が発売された。
- PHSの衰退に伴いデジタル方式の主流はこちらになっている。
- 2010年(平成22年)10月26日にデジタル方式の技術基準が改正[3][4][5]され、二方式の技術的条件[6]が追加された。
- 2011年(平成23年)3月にARIBがDECT方式の標準規格を策定した。
[編集] アナログコードレス電話
[編集] 仕組み
コードレス電話の親機・子機それぞれに異なるID(識別符号)が割り当てられており、親機に子機を登録することで使用可能となる。これにより、不正使用を防いでいる。IDの登録はかつては販売店に依頼する必要があったが、現在の機種では一部を除き加入者が設定するだけで登録できるようになっている。
マルチチャネルアクセス無線方式で、他の無線局が使用していないか確かめてから電波を発信するキャリアセンス機能で混信を避ける。
スペクトル反転型秘話装置を内蔵し故意や偶然の傍受がされにくくなっている機種やコンパンダ(圧縮伸張器)を内蔵し電波が弱いときのノイズが聴感上気にならないようにしている機種がある。
[編集] 小電力コードレス電話
出力は10mW、送信周波数は親機380.2125 - 381.3125MHz・子機253.8625 - 254.9625MHzである。FM放送と同じ周波数変調であるため秘話機能が無い場合、第三者に傍受される恐れがある。半径50m程度なら受信機さえ用意すれば、簡単に傍受できてしまう。高層住宅等で使用した場合、数km先まで電波が到達することもありうる。
一般家庭用のほか、事業所コードレス電話と呼ばれる、企業などの内線電話として多数の親機を設置して構内の各場所での通話を可能にしたシステムもあったが、2000年代に入り構内PHSシステムや無線IP電話(IPセントレックス)に置き換えられるようになった。
[編集] 微弱電力コードレス電話
電波法施行規則に定められた微弱無線局に相当する。
小電力コードレス電話に比べ、通話可能な親機と子機との距離が短く音質が悪い。自由化初期に低価格製品として販売されたが、微弱電波のために通信が不安定で、1990年代の小電力コードレス電話の価格低下に伴い製造されなくなった。
[編集] デジタルコードレス電話
[編集] 第二世代コードレス電話
「PHS」を参照
PHSと同方式で1.9GHz帯を共用する。
PHS端末を親機に登録すれば子機として用いることができる。PHS自営モードを用いた医療機関等の構内PHSシステムとしての使用が主たる用途となっている。高度化PHSも1.9GHz帯を使用するが、コードレス電話としての製品は確認されていない。
[編集] 第二世代コードレス電話の新方式
情報通信審議会は、2009年度(平成21年度)にデジタル方式コードレス電話の新方式について審議を行い、欧州を中心に世界的に普及しているDECT方式とXGPの流れをくむ「sPHS方式」の両方式を採用すると報告[7]した。これをうけ、総務省は2010年に総務省規定を改正しこれらの技術基準をとりいれた。
これは、直ちに海外製のDECT方式のコードレス電話が日本国内で使用できることを意味するものではない。(不法コードレス電話参照)
[編集] 2.4GHz帯デジタルコードレス電話
FHSS-WDCT (Frequency Hopping Spread Spectrum - Worldwide Digital Cordless Telephone) に準拠する。
PHSと互換性はない。デジタル方式であることと周波数ホッピングであることにより、傍受されにくいとされている(市販の受信機では傍受できない。)。
電波法令上は「小電力データシステムの無線局」として無線LANと同様の扱いとされる。種々の機器と共用している周波数であり、電子レンジ、工場等で使用されている移動体識別用のRFID機器からの妨害は不可避であるので、その旨の表示がされている。
[編集] 表示
歴史に述べたとおり、コードレス電話には技術基準適合証明と技術基準適合認定の両者の認証を要する。2010年10月の総務省規定改正後の表示を要する事項とコードレス電話に関する内容は、次のとおりである。
| 種類 | 記号、種別 | 備考 | |
| 技適マーク | Cの内部に稲妻と〒 | 1995年(平成7年)4月より使用開始 原則として直径5mm以上 |
|
| 技術基準適合証明番号 | 小電力 | L | 2003年(平成15年)7月より番号の 4字目または4-5字目 |
| デジタル | IZ | ||
| デジタル (DECT) | AT | ||
| デジタル (sPHS) | BT | ||
| 2.4GHz帯 | WW | ||
| 技術基準適合認定番号 | 電話用設備 | A | 1999年(平成11年)3月より番号の 1字目 但し製造業者等が自己確認したものは |
| 従前のものは上記のマークや番号の表記が異なる。 | |||
[編集] 不法コードレス電話
電波を発射する機器は電波法に基づく総務大臣の無線局の免許を受けるのが原則である。コードレス電話はこの規定の例外の免許を要しない無線局として上述の技術基準適合証明を要する。 海外向けコードレス電話の販売や所有に法的規制は無いが、技術基準には適合していないものが多くそのまま日本国内で使うことは電波法違反となり刑事罰の対象となる。このようなコードレス電話は、不法コードレス電話と呼ばれる不法無線局である。
海外メーカーのものは、日本メーカーのものとデザインの趣が異なるため人気があるが、日本製より電波の到達範囲が広いことを売り文句にしているものがある。 電波法の規定以上の出力があれば、広範囲に他の無線通信に妨害を与える可能性がある。
技適マークが無ければ日本国内で使用してはならない。また、技術基準には「容易に開けることができないこと」とあり、特殊ねじなどが用いられているので、使用者は改造はもちろん保守・修理の為であっても分解してはならない。 国内向けであっても改造されたものは、技術基準適合証明が無効になるので不法コードレス電話となる。
なお、コードレス電話を含め技術基準適合認定の無い端末機器をNTT等電気通信事業者の回線に接続を請求することは電気通信事業法第52条により拒否されることがある。
[編集] 沿革
1980年(昭和55年)頃から主に違法CB無線機と同様に国内メーカーが海外へ輸出していたものが逆輸入されて秋葉原等の電気街等で販売されていた。電波法はもとより、電気通信事業法施行以前(1984年度(昭和59年度)まで)でも電電公社の回線に接続することは公衆電気通信法にも違反していた。
それでも黒電話しか選択肢の無かった時代に、コードを気にせず自由に話せるスタイルや海外向け製品であるため洗練されたデザイン、ダイヤル回線でプッシュボタンが使える、短縮ダイヤルなど多彩な機能で密かな人気を集めていた。中には伝達距離が数十kmクラスの飛距離を誇るハイパワータイプも現れ、携帯電話の出現はおろか自動車電話が高嶺の花の時代に違法を承知で使用する者も現れた。
そんな中、京セラが勇み足で独自の規格を用いて国内向けのコードレス電話を発売した。無認可機器であること、使用している周波数が自衛隊に割り当てられた周波数だったことなどから国会に取り上げられてしまう。しかしこれが世論を掻き立て、折から電電公社からNTTに移行した直後の電気通信自由化の波に乗って一気にコードレス電話が自由化した。自由化後には不法コードレス電話は減少したものの根絶したとはいえない。
[編集] 子機間通話について
自由化初期には無かったが、1990年代からは子機同士で通話可能な機種が登場し始めた。当初はトランシーバーと同様に片方向のみ通話可能なシステムであったが、親機と子機との間と同じ双方向システムに変わった。
[編集] コードレス電話開発メーカー
- NTT(現在は、NTT東日本)
- 三洋電機コンシューマエレクトロニクス
- シャープ:1987年、業界初のコードレス電話機 (CJ-A300) が開発された。
- 日本電気
- パイオニアコミュニケーションズ
- パナソニック システムネットワークス
- ユニデン
[編集] その他
2006年(平成18年)、千葉県銚子市で使われていたコードレス電話から243MHzの遭難信号が発射され海上保安庁が出動[8]した。その後、特定の条件でこのような現象が発生することが判明[9]し、NTT東日本とNTT西日本は回収・交換措置[10][11]を取っている。
[編集] 脚注
- ^ 大阪万博コードレス 国立科学博物館-産業技術の歴史-移動通信技術
- ^ 衆議院会議録情報 第102回国会 決算委員会 第7号
- ^ 電波法施行規則の一部を改正する省令 (PDF) 総務省 - 新規制定改正法令・告示 - 省令
- ^ 無線設備規則の一部を改正する省令 (PDF) 総務省 - 新規制定改正法令・告示 - 省令
- ^ 特定無線設備の技術基準適合証明等に関する規則の一部を改正する省令 (PDF) 総務省 - 新規制定改正法令・告示 - 省令
- ^ 時分割多元接続方式狭帯域デジタルコードレス電話の無線局、時分割多元接続方式広帯域デジタルコードレス電話の無線局、時分割・直交周波数分割多元接続方式デジタルコードレス電話の無線局又はPHSの無線局に使用する無線設備の技術的条件等を定める件 (PDF) 総務省 - 新規制定改正法令・告示 - 告示
- ^ 情報通信審議会 情報通信技術分科会 小電力無線システム委員会 第29回資料 (PDF) 総務省 - 情報通信審議会 - 会議資料
- ^ NTT東西が15年前に販売したコードレス電話機を回収へ, まれに遭難信号を勝手に発信(Tech-On! 2006年9月26日)
- ^ 「ハウディ・コードレスホンパッセ S-200/S-220」における遭難信号と同一の周波数の電波を誤発信する事象について(NTT東日本・NTT西日本連名)
- ^ 「ハウディ・コードレスホンパッセS-200/S-220」の回収・交換について(NTT東日本)
- ^ 同上(NTT西日本)
[編集] 参考文献
- 電波法及び関係省令・告示
- 電波産業会標準規格
[編集] 関連項目
- PHS
- 無線LAN
- DECT (Digital Enhanced Cordless Telecommunications)
- PCS (Personal Communications Service)