コードレス電話

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
コードレス電話機

コードレス電話(コードレスでんわ)とは、固定電話回線などに接続された親機と子機との間を無線通信で結ぶ電話機およびそのシステムである。原則として、電話回線に接続された親機を加入者が設置し、その親機が設置された宅内あるいは構内とその近傍でのみ通話可能である。基地局を通信会社が設置する携帯電話・公衆モードのPHSなどの移動体通信とは異なる。

以下は、日本のことについて述べる。

歴史[編集]

  • 1970年(昭和45年) 大阪万博で初めて登場[1]した。
  • 1979年(昭和54年) 4月から日本電信電話公社(略称 電電公社)がレンタルで機器の提供を開始した。
  • 1985年(昭和60年) 京セラが未認可のコードレス電話機(商品名 フリーコール)を電器店で販売し、国会で取り上げ[2]られた。
  • 1987年(昭和62年) (アナログ方式の)技術基準が「コードレス電話の無線局」として法制化され、販売も自由化された。
  • 1988年(昭和63年) 電波システム開発センター(略称 RCR)(現 電波産業会(略称 ARIB))が、技術基準を含めた標準規格[3][4]を策定した。
    • 自由化以後は、急速に普及した。当初の親機には単なる通話機能のみしかなかったが、次第に留守番電話FAX機能を付加したものが主流となった。
  • 1993年(平成5年)  1.9GHz帯を用いるデジタル方式の技術基準が「デジタル方式のコードレス電話の無線局」として法制化された。RCRもこれにあわせた標準規格[5]を策定した。
    • 以後、デジタル方式が主流になっている。
  • 2003年(平成15年) 2.4GHz帯を用いるデジタル方式コードレス電話が発売された。
    • PHSの衰退に伴いデジタル方式の主流はこちらになっている。
  • 2005年(平成17年) 電波の利用状況調査結果の中で、コードレス電話を含む免許不要局の出荷台数が公表された(出荷台数参照)。
    • 周波数の調査範囲は770MHz~3.4GHz、 翌年は770MHz以下で三年周期で実施する。
  • 2010年(平成22年) 10月にデジタル方式の技術基準が改正[6][7][8]され、sPHS方式およびDECT方式の技術的条件[9]が追加された。
  • 2011年(平成23年) 3月にARIBが、デジタルコードレス電話の標準規格[5]にsPHS方式を追加した。また、DECT方式の標準規格[10]を策定した。

アナログコードレス電話[編集]

仕組み[編集]

親機・子機それぞれに総務大臣から異なるID(呼出符号)が指定され、親機に子機を登録することで使用可能となり、不正使用を防いでいる。登録はかつては販売店に依頼する必要があったが、現在[いつ?]の機種では一部を除き加入者が設定できるようになっている。 マルチチャネルアクセス無線方式で、他の無線局が使用していないか確かめてから電波を発信するキャリアセンス機能で混信を避ける。

スペクトル反転式秘話装置を内蔵し傍受されにくくなっている機種やコンパンダ(圧縮伸張器)を内蔵し電波が弱いときのノイズが聴感上気にならないようにしている機種がある。

小電力コードレス電話[編集]

送信周波数は親機380.2125 - 381.3125MHz・子機253.8625 - 254.9625MHzである。 アナログ業務無線と同じ周波数変調であるため 受信機さえ用意すれば、半径50m程度なら簡単に傍受できてしまう。 高層住宅等で使用した場合、数km先まで電波が到達することもありうる。 スペクトル反転式秘話装置は動作原理が単純であるので、解読装置を受信機に接続すれば秘話解除されてしまう。

一般家庭用のほか、事業所コードレス電話と呼ばれる、企業などの内線電話として多数の親機を設置して構内の各場所での通話を可能にしたシステムもあったが、2000年代に入り構内PHSシステムや無線IP電話IPセントレックス)に置き換えられるようになった。

微弱電力コードレス電話[編集]

微弱無線局の一種で出力は電波法令に定める微弱電力の範囲内、周波数は機種ごとに異なり技術基準適合証明も要さない。

小電力コードレス電話に比べ、通話可能な親機と子機との距離が短く音質が悪い。自由化初期に低価格製品として販売されたが、微弱電波のために通信が不安定で、1990年代の小電力コードレス電話の価格低下に伴い製造されなくなった。

デジタルコードレス電話[編集]

第二世代コードレス電話[編集]

PHSと同方式で1.9GHz帯を共用する。この方式にも総務大臣からIDが指定される。

PHS端末を親機に登録すれば子機として用いることができる。PHS自営モードを用いた医療機関等の構内PHSシステムとしての使用が主たる用途となっている。高度化PHSも1.9GHz帯を使用するが、コードレス電話としての製品は確認されていない。

第二世代コードレス電話の新方式[編集]

PHSの周波数帯で高速データ通信を可能にする為、欧州を中心に世界的に普及しているDECT方式とXGPの流れをくむsPHS方式の両方式が採用 [11] されている。

DECT方式については、DECTも参照。

2.4GHz帯デジタルコードレス電話[編集]

FHSS-WDCT (Frequency Hopping Spread Spectrum - Worldwide Digital Cordless Telephone) に準拠する。 PHSと互換性はない。デジタル方式であることと周波数ホッピングであることにより、傍受されにくい(市販の受信機では傍受できない。)。

電波法令上は小電力データ通信システムの無線局として無線LANなどと同等の扱いとされる。 種々の機器と共用している周波数であり、混信等の妨害は不可避であるのでその旨の表示がされている。

  • ISMバンドを用いる高周波利用設備からは有害な混信を容認しなければならない[12]。また、免許・登録を受けて運用する無線局からの有害な混信等も容認しなければならず、逆に使用中止を要求されたら従わねばならない。更に、同等の機器に対しては先に使用しているものが優先するが、実際には混信等を完全に回避できるものではない。

2.4GHz帯における混信等の優先度は次のとおりである。

電子レンジ > 一般用RFID(電子タグシステム)> アマチュア無線 > 2.4GHz帯デジタルコードレス電話、無線LAN、小電力RFID、模型飛行機のラジコンBluetoothなど

子機間通話[編集]

第二世代コードレス電話は同じ親機に登録された子機同士であれば、親機を介さずトランシーバーとして交互通信できるよう設計されている。 また、親機を介せば同時通信できる機種もある。

表示[編集]

歴史に述べたとおり、コードレス電話には技術基準適合証明と技術基準適合認定の両者の認証を要する。2011年12月の総務省規定改正後の表示を要する事項とコードレス電話に関する内容は、次のとおりである。

種類 記号、種別 備考
技適マーク の内部に稲妻と 原則として直径5mm以上
技術基準適合証明 小電力 L 技術基準適合証明番号は

4字目または4-5字目

工事設計認証番号には種別表示は無い
(4字目はハイフン(-))

自己確認番号は
7字目または7-8字目

太字が改正事項

デジタル IZ
デジタル (DECT) AT
デジタル (sPHS) BT
2.4GHz帯 WW
技術基準適合認定 電話用設備 A 技術基準適合認定番号または設計認証番号は

1字目

自己確認番号は
7字目

従前のものは認証の時期によりマークや番号の表記が異なるものがある。

1998年(平成10年)まではIDに関する表示も要した。

出荷台数[編集]

種別 出荷台数
平成14年度 平成15年度 平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成21年度 平成22年度
小電力コードレス電話(子機) 4,500,907 4,325,010 4,021,102 4,117,238 2,334,922 609,245 33,671 36,822 36,613
小電力コードレス電話(親機) 4,259,155 4,262,496 3,957,069 3,433,840 1,942,712 492,086 40,386 40,109 37,429
種別 出荷台数
平成13年度 平成14年度 平成15年度 平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成21年度
デジタルコードレス電話 909,546 959,745 626,778 295,451 349,213 296,586 190,867 195,119 518,795
注 2.4GHz帯は小電力データ通信システムに集計され、上記には集計されない。

各年度の「電波の利用状況調査の調査結果」 [13] [14] による。

メーカー[編集]

現在[いつ?]も米国でNo.1のシェアを持つ。)

過去には京セラソニーケンウッド(現JVCケンウッド)なども製造・販売していた。

不法コードレス電話[編集]

電波を発射する機器は電波法に基づく総務大臣の無線局の免許を受けるのが原則である。コードレス電話はこの規定の例外のいわゆる小電力無線局の一種として技術基準適合証明を要する。 「日本国外製は日本製より電波の到達範囲が広い」などを売り文句にしている販売業者があるが、日本国外仕様のコードレス電話の販売や所有に法的規制は無いものの技術基準には適合していないものが多い。 技術基準適合証明を受けていない機器を使用することは不法無線局を開設したとして電波法第4条違反となり、第110条に規定する罰則の対象にもなる。 このようなコードレス電話が、不法コードレス電話である。 すなわち、技術基準に適合している証明である技適マークが無ければ日本国内で使用してはならない。この技術基準には「容易に開けることができないこと」とあり、特殊ねじなどが用いられているので、使用者は改造はもちろん保守・修理のためであっても分解してはならない。 日本国内向けであっても改造されたものは、技術基準適合証明が無効になるので不法コードレス電話となる。

また、コードレス電話を含め技術基準適合認定の無い端末機器をNTTなど電気通信事業者の回線に接続を請求することは電気通信事業法第52条により拒否されることがある。

技適マーク#規制事項も参照。

なお、技術基準の改正により、2005年(平成17年)11月30日までに技術基準適合証明を受けた小電力コードレス電話とデジタルコードレス電話は、技適マークがあっても2022年12月1日以降は使用できないので注意を要する。

沿革[編集]

1980年(昭和55年)頃から主に違法CB無線機と同様にユニデンなどの日本国内メーカーが輸出していたものが逆輸入されて秋葉原などの電気街などで販売されていた。 電波法はもとより、電気通信事業法施行以前(1984年度(昭和59年度)まで)は電電公社の回線に接続することは公衆電気通信法にも違反していた。

それでも黒電話しか選択肢の無かった時代に、コードを気にせず自由に話せるスタイルや日本国外向け製品であるため洗練されたデザイン、ダイヤル回線でプッシュボタンが使える、短縮ダイヤルなど多彩な機能で密かな人気を集めていた。中には伝達距離が数十kmクラスの飛距離を誇るハイパワータイプも現れ、携帯電話の出現前で自動車電話が高嶺の花の時代に違法を承知で使用する者も現れた。

そんな中、京セラが勇み足で独自の規格を用いて日本国内向けのコードレス電話を発売した。無認可機器であること、使用している周波数が自衛隊に割り当てられた周波数だったことなどから国会で取り上げられてしまう。しかしこれが世論を掻き立て、折から電電公社からNTTに移行した直後の電気通信自由化の波に乗って一気にコードレス電話が自由化した。自由化後には不法コードレス電話は減少したものの根絶したとはいえない。

その他[編集]

2006年(平成18年)、千葉県銚子市で使われていたコードレス電話から243MHzの遭難信号が発射され海上保安庁が出動[15]した。その後、特定の条件でこのような現象が発生することが判明[16]し、NTT東日本NTT西日本は回収・交換措置[17][18]を取っている。

脚注[編集]

  1. ^ 大阪万博コードレス 国立科学博物館-産業技術の歴史-移動通信技術
  2. ^ 衆議院会議録情報 第102回国会 決算委員会第7号 昭和60年5月17日
  3. ^ RCR STD-13 250MHz/380MHz帯コードレス電話の無線局の無線設備
  4. ^ RCR STD-14 著しく微弱な電波を使用するコードレス電話の無線設備
  5. ^ a b STD-28 第二世代コードレス電話システムの無線設備
  6. ^ 平成22年総務省令第93号による電波法施行規則改正
  7. ^ 平成22年総務省令第94号による無線設備規則改正
  8. ^ 平成22年総務省令第95号による 特定無線設備の技術基準適合証明等に関する規則改正
  9. ^ 総務省告示 時分割多元接続方式狭帯域デジタルコードレス電話の無線局等に使用する無線設備の技術的条件等
  10. ^ ARIB STD-T101 時分割多元接続方式広帯域デジタルコードレス電話
  11. ^ 情報通信審議会 情報通信技術分科会 小電力無線システム委員会 第29回資料 (PDF) 総務省 - 情報通信審議会 - 会議資料
  12. ^ 総務省告示周波数割当計画の脚注
  13. ^ 過去の電波の利用状況調査の調査結果及び概要(総務省電波利用ホームページ)
  14. ^ 平成23年度電波の利用状況調査の調査結果の公表(総務省 - 報道資料 平成24年5月18日)
  15. ^ NTT東西が15年前に販売したコードレス電話機を回収へ, まれに遭難信号を勝手に発信(Tech-On! 2006年9月26日)
  16. ^ 「ハウディ・コードレスホンパッセ S-200/S-220」における遭難信号と同一の周波数の電波を誤発信する事象について(NTT東日本・NTT西日本連名)
  17. ^ 「ハウディ・コードレスホンパッセS-200/S-220」の回収・交換について(NTT東日本)
  18. ^ 同上(NTT西日本)

参考文献[編集]

  • 電波法及び関係省令・告示
  • 電波産業会標準規格

関連項目[編集]