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硬膜外麻酔は全身麻酔と併用することで全身麻酔に必要な鎮痛薬の使用量を減ずることも可能である。欠点としては、手技的にやや難しいこと、脊髄くも膜下麻酔に比べて多くの局所麻酔薬が必要となるので[[局所麻酔#合併症|局所麻酔薬中毒]]がやや起こり易い事が挙げられる。
硬膜外麻酔は全身麻酔と併用することで全身麻酔に必要な鎮痛薬の使用量を減ずることも可能である。欠点としては、手技的にやや難しいこと、脊髄くも膜下麻酔に比べて多くの局所麻酔薬が必要となるので[[局所麻酔#合併症|局所麻酔薬中毒]]がやや起こり易い事が挙げられる。


== 歴史 ==
== 局所麻酔薬の総論的事項 ==
{{Seealso|脊髄幹麻酔の歴史}}


{{仮リンク|ドミニク・ジャン・ラレー|de|Dominique Jean Larrey|redirect=1}}(1766-1842)はフランスの[[軍医]]で、[[ナポレオン・ボナパルト]]の「[[大陸軍 (フランス)|大陸軍]]」の外科医であり、彼の個人的な主治医でもあった。ラレーは、寒冷による局所麻酔効果({{仮リンク|寒冷麻酔|de|Kälteanästhesie|redirect=1}})を観察した最初の医師の一人である。1807年2月7日と8日に行われたプロイセンの[[アイラウの戦い]]では、厳しい寒さの中、彼は負傷者の何人かに痛みを訴えられることなく四肢の[[切断 (医学)|切断]]手術を行うことができた。氷点下の気温のため、ラレーの患者の末梢神経は麻痺していたのである<ref>M. A. Rauschmann: ''Der Schmerz und seine Therapie im Spiegel der Zeit.'' In: ''Der Orthopäde'' 37, Okt. 2008, S. 1007–1015</ref>。1866年/1867年には、[[ジョン・スノウ (医師)|ジョン・スノウ]]の弟子であるベンジャミン・ウォード・リチャードソン(Benjamin Ward Richardson, 1828-1912)と{{仮リンク|ヨハン・バプティスト・ロッテンシュタイン|de|Johann Baptist Rottenstein|redirect=1}}も局所麻酔に寒冷(それぞれ[[エーテル (化学)|エーテル]]スプレーと[[クロロエタン|クロロエチル]]スプレーによる)を使用している<ref>H. Orth, I. Kis: ''Schmerzbekämpfung und Narkose.'' In: Franz Xaver Sailer, Friedrich Wilhelm Gierhake (Hrsg.): ''Chirurgie historisch gesehen. Anfang – Entwicklung – Differenzierung.'' Dustri-Verlag, Deisenhofen bei München 1973, ISBN 3-87185-021-7, S. 1–32, hier: S. 25.</ref><ref>{{仮リンク|Paul Diepgen|de|Paul Diepgen|label=Paul Diepgen}}, {{仮リンク|Heinz Goerke|de|Heinz Goerke|label=Heinz Goerke}}: ''{{仮リンク|Ludwig Aschoff|de|Ludwig Aschoff|label=Aschoff}}/Diepgen/Goerke: Kurze Übersichtstabelle zur Geschichte der Medizin.'' 7., neubearbeitete Auflage. Springer, Berlin/Göttingen/Heidelberg 1960, S. 43.</ref>。
=== 局所麻酔薬の分類 ===
[[ファイル:Carl Coller.jpg|サムネイル|カール・コラー]]
ウィーンの{{仮リンク|カール・コラー (眼科医)|en|Karl Koller (ophthalmologist)}}(1857-1944)は、後の[[精神分析家|精神分析医]][[ジークムント・フロイト]]との共同研究において、[[コカイン]]を味わうと舌が麻酔されることを認識し、1884年にこれを報告した<ref>[[:de:Vorlage:Literatur]]<!-- {{Literatur |Autor=Guido Kluxen |Titel=Sigmund Freud: Über Coca Versäumte Entdeckung |Sammelwerk=[[Deutsches Ärzteblatt]] |Band=88 |Nummer=45 |Verlag=Deutscher Ärzte-Verlag |Datum=1991-11-07 |Seiten=A-3870 |Online=https://www.aerzteblatt.de/archiv/101251/Sigmund-Freud-Ueber-Coca-Versaeumte-Entdeckung}} --></ref>。動物実験が成功した後、1884年に初めてヒトの{{仮リンク|眼科手術|de|Augenoperation|redirect=1}}にコカインを使用した<ref>C. Koller: ''Vorläufige Mittheilung über locale Anästhesirung am Auge.'' Beilageheft zu den Klinischen Wochenblättern für Augenheilkunde, 1884, 22, S. 60–63</ref>。コカイン溶液を眼球に垂らし、眼球の[[角膜]]を麻酔した([[表面麻酔]])。こうしてコラーは局所麻酔の父とみなされるようになった。彼はこれを局所麻酔({{Lang|de|locale Anästhesirung}})と呼んだ。
1885年からは、アメリカの[[外科医]][[ウィリアム・スチュワート・ハルステッド]]が歯科処置の際にコカインを使用してより深部の浸潤麻酔を行い、1888年には{{仮リンク|マクシミリアン・オベルスト|de|Maximilian Oberst|redirect=1}}が指の[[伝達麻酔]](''{{仮リンク|指神経ブロック|de|Oberst-Block|label=指神経ブロック(Oberstブロック)|redirect=1}}'')を開発した<ref name="Adams" />。
ドイツの医師{{仮リンク|カール・ルートヴィヒ・シュライヒ|de|Carl Ludwig Schleich|redirect=1}}は、1892年6月11日にベルリンで開催されたドイツ外科学会で、希釈したコカイン溶液を用いた浸潤麻酔を実演した<ref>C.-L. Schleich: ''Die Infiltrationsanästhesie (lokale Anästhesie) und ihr Verhältnis zur allgemeinen Narkose (Inhalationsanästhesie).'' In: ''Verhandlungen der deutschen Gesellschaft für Chirurgie.'' 1, 1892, S. 121–127.</ref>。麻酔をかけたい皮膚(後に[[皮下注射|皮下]]も)領域に麻酔薬を注入することで、初めて皮膚に覆われた領域の治療が可能になった<ref>Vgl. auch H. Orth, I. Kis: ''Schmerzbekämpfung und Narkose.'' In: Franz Xaver Sailer, Friedrich Wilhelm Gierhake (Hrsg.): ''Chirurgie historisch gesehen. Anfang – Entwicklung – Differenzierung.'' Dustri-Verlag, Deisenhofen bei München 1973, ISBN 3-87185-021-7, S. 1–32, hier: S. 19.</ref>。{{仮リンク|テミストクレス・グルック|de|Themistocles Gluck|label=テミストクレス・グルック(Themistocles Gluck)|redirect=1}}は、コカイン溶液を注入することで、1887年までにすでに21件の大手術を局所麻酔で行っていた<ref>{{仮リンク|Paul Diepgen|de|Paul Diepgen|label=Paul Diepgen}}, {{仮リンク|Heinz Goerke|de|Heinz Goerke|label=Heinz Goerke}}: ''{{仮リンク|Ludwig Aschoff|de|Ludwig Aschoff|redirect=1|label=ルートヴィヒ・アショフ(Ludwig Aschoff)}}/Diepgen/Goerke: Kurze Übersichtstabelle zur Geschichte der Medizin.'' 7., neubearbeitete Auflage. Springer, Berlin/Göttingen/Heidelberg 1960, S. 51.</ref>。
最初に導入された[[区域麻酔]]法は、1898年に{{仮リンク|アウグスト・ビーア|de|August Bier|label=アウグスト・ビーア(August Bier)|redirect=1}}(1861-1949)が行った[[脊髄くも膜下麻酔]]<ref>A. Bier: ''Versuche über die Cocainisierung des Rückenmarks.'' In: ''{{仮リンク|Deutsche Zeitschrift für Chirurgie|de|Deutsche Zeitschrift für Chirurgie|label=Deutsche Zeitschrift für Chirurgie}}.'' Band 51, 1899, S. 361–368.</ref>と1908/1909年の[[静脈内区域麻酔]]であった<ref>August Bier: ''Ueber einen neuen Weg Localanästhesie an den Gliedmassen zu erzeugen.'' In: ''{{仮リンク|Archiv für klinische Chirurgie|de|Archiv für klinische Chirurgie|label=Archiv für klinische Chirurgie}}.'' Band 86, 1908, S. 1007–1016.</ref><ref>August Bier: ''Über eine neue Methode der lokalen Anästhesie.'' In: ''Münchner medizinische Wochenschrift.'' Band 1, 1909, S. 589 ff.</ref>。1903年には、ライプチヒの外科教授{{仮リンク|Heinrich Braun (Mediziner, 1862)|de|Heinrich Braun (Mediziner, 1862)|label=ハインリヒ・ブラウン(Heinrich Braun)|redirect=1}}が開発した[[アドレナリン]]が追加され、局所麻酔法は改良された<ref>{{仮リンク|Otto Mayrhofer|de|Otto Mayrhofer|label=Otto Mayrhofer}}: ''Gedanken zum 150. Geburtstag der Anästhesie.'' In: ''Der Anaesthesist.'' Band 45, Heft 10, Oktober 1996, S. 881–883, hier: S. 881.</ref>。
より近代的な局所麻酔薬としては、1997年に導入された[[ロピバカイン]]がある<ref>Michael Heck, Michael Fresenius: ''Repetitorium Anaesthesiologie. Vorbereitung auf die anästhesiologische Facharztprüfung und das Europäische Diplom für Anästhesiologie.'' 3., vollständig überarbeitete Auflage. Springer, Berlin/Heidelberg/ New York u.&nbsp;a. 2001, ISBN 3-540-67331-8, S. 804.</ref>。


; [[エステル型]]
: [[コカイン]]、プロカイン、クロロプロカイン、テトラカインなどが含まれる。血中に含まれる[[エステラーゼ]]でも、麻酔薬の分子内のエステル結合が加水分解されて効力を失うため、作用時間は短い傾向にある。
: [[テトラカイン]](テトカイン、以下同じく括弧内が商品名とする)
: [[プロカイン]](ノボカイン)
; アミド型
: リドカイン、メピバカイン、ジブカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、レボブピバカインなどが含まれる。主に肝臓でゆっくりと分解されるため、作用時間が長い傾向にある。逆に言えば、長く麻酔薬が残存してしまうなどの問題もあり、ブピバカインなどでは心血管系毒性が問題になったりもする。
: [[ジブカイン]](ペルカミン)
: [[ブピバカイン]](マーカイン)
: [[メピバカイン]](カルボカイン)
: [[リドカイン]](キシロカイン)
: [[レボブピバカイン]](ポプスカイン)
: [[ロピバカイン]](アナペイン)
; 日本で近年主に使用される局所麻酔薬
: 表面麻酔・・・リドカイン
: 脊髄くも膜下麻酔・・・ブピバカイン
: 硬膜外麻酔・・・リドカイン、メピバカイン、ロピバカイン、レボブピバカイン
: 伝達麻酔・・・リドカイン、メピバカイン、ロピバカイン


=== 作用機序 ===
== 適応 ==
[[ファイル:LA_and_NaV.svg|サムネイル|250x250ピクセル|局所麻酔薬が電位依存性ナトリウムチャネル(NaV)に作用する概念図。]]
局所麻酔薬の共通の構造として、[[脂溶性]]の高い芳香基(ベンゼン環)と、水素イオンを得て電離すると水溶性となる3級アミンの双方を持っている点が特徴である。このため水溶液中では、塩基型(B)とイオン型(BH<sup>+</sup>)の平衡状態にある。局所麻酔薬の作用対象は、神経線維の[[電位依存性ナトリウムチャネル]]であり、電離していない塩基型(B)の状態で細胞膜を通過した後に、イオン型(BH<sup>+</sup>)に変わり細胞質側から電位依存性ナトリウムチャネルをブロックして、神経の信号伝達を阻害する事により作用を発揮する。そのため、局所麻酔薬のpKa([[酸解離定数]])が細胞内のpHである7.4に近いほど作用発現が早くなり、また脂溶性が高いほど局所麻酔の作用が強くなる。


=== 局所麻酔薬の効き方 ===
=== 急性痛 ===
[[疼痛|急性痛]]は、外傷、手術、感染症、血行障害など、組織が傷害を受けた際に発生することがある。医療現場では、その生理的警告機能が不要になった時点で痛みを緩和することが望まれる。患者の快適さを向上させるだけでなく、疼痛療法は未治療の疼痛がもたらす有害な生理的転帰を軽減することができる{{要出典|date=February 2022}}。
一般に細い神経から順に麻酔されてゆく。順序としては、血管運動神経、温痛覚、触覚、圧覚、運動の順番である。臨床現場では麻酔が効いたかの評価は主に温かさ、冷たさを感じるかで行う(コールドサインテスト)。


急性の痛みは、しばしば[[鎮痛剤]]を用いて管理することができる。しかし、優れた痛みの制御と少ない副作用のために、[[伝達麻酔]](conduction anesthesia){{Efn|英語版からの初訳者注: 本稿では英語版原文のconduction anesthesiaを伝達麻酔と訳出しているが、神経生理学的には伝導麻酔と訳されるべきである。少なくとも1つのシナプスを含めて麻酔作用が及ぶのが、伝達麻酔である。しかしながら日本の臨床においては伝導麻酔はあまり用いられず、伝達麻酔が頻用されている。英語版原文においては逆に伝達麻酔と記載されるべきものが伝導麻酔となっている。この状況を考慮して、以降、conduction anesthesiaは伝達麻酔と訳す。}}が望ましい場合がある。疼痛治療の目的で、局麻薬はしばしばカテーテルを介した反復注射または持続注入によって投与される。また、相乗的な鎮痛作用のためにオピオイドなどの他の薬剤と併用されることも多い<ref>{{Cite journal|date=July 2019|title=Tramadol as an adjunct to intra-articular local anaesthetic infiltration in knee arthroscopy: a systematic review and meta-analysis|journal=ANZ Journal of Surgery|volume=89|issue=7–8|pages=827–832|DOI=10.1111/ans.14920|PMID=30684306|postscript=6}}</ref>。低用量の局麻薬で十分なので、筋力低下が起こらず、患者の移動が可能である{{要出典|date=February 2022}}。
末梢神経の知覚については、[[疼痛]]を参照。


急性痛に対する伝達麻酔の典型的な使用例としては、以下のものがある。
=== 局所血管収縮薬の添加 ===
一部の局所麻酔薬は[[アドレナリン]]や[[ノルアドレナリン]]などを添加して用いる。これは麻酔薬を使用した部位の血管が収縮するため、麻酔薬が血流などの影響で濃度低下する時間が遅くなるため作用時間が長くなったり、局所に麻酔薬が留まり血中濃度が上昇し難いようにするなどの効果を狙った手法である。しかし、[[糖尿病]]、[[甲状腺機能亢進症]]、[[高血圧]]といった全身性疾患を持っている場合は、添付文書上は禁忌とされている<ref>{{Cite web |title=キシロカイン注射液「0.5%」エピレナミン(1:100,000)含有/ キシロカイン注射液「1%」エピレナミン(1:100,000)含有/ キシロカイン注射液「2%」エピレナミン(1:80,000)含有 |url=https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1214400A1022_4_03/ |website=www.info.pmda.go.jp |access-date=2023-06-29}}</ref>。また、指先や耳介など[[終動脈]]となっている部位では、血管収縮の結果、壊死を生じるため禁忌である。この部位を麻酔する時は、アドレナリンを添加していない麻酔薬を用いる。局所麻酔薬へのアドレナリンなどの添加は主に[[リドカイン]]で行われ、製剤時に添加済みの薬剤も使用されている。


* 陣痛(硬膜外麻酔、陰部神経ブロック)
=== 作用時間 ===
* 術後疼痛(末梢[[神経ブロック]]、硬膜外麻酔)
一般にブピバカインなどのアミド型の局所麻酔薬は作用時間が長く、プロカインなどのエステル型の局所麻酔薬は作用時間が短い。これは、血中でも容易に分解されるエステル型と、主に肝臓で分解されるアミド型の差異である。
* 外傷(末梢神経ブロック、[[静脈内局所麻酔]]、硬膜外麻酔)


=== 合併症 ===
=== 慢性疼痛 ===
[[慢性疼痛]]は、複雑かつ深刻な病態であるため、ペインクリニックの専門家による診断と治療が必要である。局麻は、慢性疼痛を緩和するために、通常、[[オピオイド]]、[[NSAIDs]]、[[抗けいれん薬|抗けいれん剤]]などの薬物と組み合わせて、繰り返し、または長期間継続して適用することができる。簡単に行えるが、長期的な効果を示す証拠がないため、慢性疼痛疾患における局所麻酔ブロックの繰り返しは推奨されない<ref>{{Cite journal|date=August 2003|title=Current world literature. Drugs in anaesthesia|journal=Current Opinion in Anaesthesiology|volume=16|issue=4|pages=429–436|DOI=10.1097/00001503-200308000-00010|PMID=17021493}}</ref>。


==== 局所麻酔中毒 ====
=== 手術 ===
[[伝達麻酔]]を用いれば、身体の大半の部位に麻酔をかけることができる。しかし、一般に臨床的に使用されているのは、限られた数の技術のみである。患者の快適さと手術の容易さのために、伝達麻酔を[[全身麻酔]]または[[鎮静]]と併用することもある。しかし、多くの麻酔科医、外科医、患者、看護師は、主要な手術は全身麻酔よりも局所麻酔で行う方が安全であると考えている<ref name="pmid19918020">{{Cite journal|date=December 2009|title=General anaesthesia vs local anaesthesia: an ongoing story|journal=British Journal of Anaesthesia|volume=103|issue=6|pages=785–789|DOI=10.1093/bja/aep310|PMID=19918020}}</ref>。伝達麻酔で行われる代表的な手術は以下の通りである。
近年は局所麻酔薬の全身毒性('''Local Anesthetic Systemic Toxicity: LAST)'''と表記されることが多い。局所麻酔薬そのものの毒性によって起こる全身症状で、アレルギーやアナフィラキシーとは異なる<ref>{{Cite journal|last=Bina|first=Babak|last2=Hersh|first2=Elliot V.|last3=Hilario|first3=Micael|last4=Alvarez|first4=Kenia|last5=McLaughlin|first5=Bradford|date=2018|title=True Allergy to Amide Local Anesthetics: A Review and Case Presentation|url=https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29952645|journal=Anesthesia Progress|volume=65|issue=2|pages=119–123|doi=10.2344/anpr-65-03-06|issn=1878-7177|pmc=6022794|pmid=29952645}}</ref>。


* [[歯学|歯科]](詰め物、クラウン、根管などの修復手術時の表面麻酔、浸潤麻酔、または靭帯内麻酔<ref name=":3">{{Cite journal|date=September 2011|title=JAMA patient page. Local anesthesia|journal=JAMA|volume=306|issue=12|pages=1395|DOI=10.1001/jama.306.12.1395|PMID=21954483}}</ref>、抜歯、および抜歯や手術時の局所神経ブロック)。
; {{Main|局所麻酔薬中毒}}
* {{仮リンク|足病学|en|Podiatry}}(皮膚、爪剥離、母斑切除、外反母趾切除、ハンマートゥ修復<ref name=":3" />その他様々な足病学的処置)
* {{仮リンク|眼科手術|en|Eye surgery}}(白内障手術や他の眼科処置中の[[表面麻酔薬]]による表面麻酔や{{仮リンク|球後麻酔|en|retrobulbar block}}<ref name=":3" />)耳鼻咽喉科手術、[[耳鼻咽喉科学|頭頚部外科]](浸潤麻酔、術野ブロック、又は末梢神経ブロック、神経叢麻酔)
* 肩及び腕の手術([[腕神経叢ブロック]]又は[[静脈内局所麻酔]])<ref>{{Cite journal|year=1993|title=Interscalene block for shoulder arthroscopy: comparison with general anesthesia|journal=Arthroscopy|volume=9|issue=3|pages=295–300|DOI=10.1016/S0749-8063(05)80425-6|PMID=8323615}}</ref>
* 肺の手術([[硬膜外麻酔]]併用全身麻酔)
* {{仮リンク|腹部手術|en|Abdominal surgery}}([[硬膜外麻酔]]/[[脊髄くも膜下麻酔]]、腹部手術の際に全身麻酔と併用することが多い<ref name=":3" />)
* 婦人科、産科、泌尿器科の手術(脊髄くも膜下麻酔/硬膜外麻酔)
* [[骨盤]]、[[股関節]]、[[下肢]]の骨・関節手術(脊椎・硬膜外麻酔、末梢神経ブロック、静脈内局所麻酔など)
* 皮膚および末梢血管の手術([[表面麻酔]]、[[周囲浸潤麻酔]](field block)、末梢神経ブロック、または脊髄くも膜下・硬膜外麻酔)


=== 診断検査 ===
=== 局所麻酔薬と光学異性体 ===
[[骨髄検査|骨髄穿刺]]、[[腰椎穿刺]](脊髄穿刺)、嚢胞などの吸引などの診断検査は、太い針を刺す前に局所麻酔薬を投与することで痛みを少なくすることができる<ref name=":3" />。
[[光学異性体]]とは、分子を構成する原子の組成および結合状態は同一であるが、[[立体配座|立体構造]]が異なる分子を言う。[[メピバカイン]]、[[ブピバカイン]]、[[ロピバカイン]]には光学異性体が存在する。従来の局所麻酔薬はR体(右旋性)とS体 (左旋性) を等量含んだ[[ラセミ体]]として使用されてきたものの、光学異性体の間で麻酔の効果や心毒性に差が見られることが分かってきた。市販されているロピバカイン製剤であるアナペインは、局所麻酔作用が強く、心血管系への作用が少ないS体のみを製剤化し安全性を高めている。同様に、S体のブピバカインのみを製剤化したものが[[レボブピバカイン]]である。レボブピバカインは、ラセミ体のブピバカインと比べ効力は同等であるのに対して、心毒性は弱い。


[[心臓ペースメーカー|ペースメーカー]]や[[植込み型除細動器]]などの埋込医療機器、化学療法の薬剤注入用ポート、血液透析用アクセスカテーテルなどの挿入時にも局所麻酔を使用する<ref name=":3" />。
=== その他 ===
胃痛などの消化管の痛みを、一時的に強制的に抑えるために、経口投与で使用される場合のある[[アミノ安息香酸エチル]]や[[オキセサゼイン]]も、その実は局所麻酔薬である。このため、これらは素早く飲み下さねば口腔内に痺れなどが出てくる。


[[リドカイン]]/[[プリロカイン]](EMLA)の形態の表面麻酔は、[[採血法|採血]]と[[留置針]]のの痛みを減らすために最も一般的に使用されている。また、[[腹水]]ドレナージや[[羊水検査]]など、他の種類の穿刺にも適している場合がある。
== 歴史 ==

{{Seealso|脊髄幹麻酔の歴史}}
また、[[気管支鏡]]検査(下気道の可視化)や[[膀胱鏡]]検査(膀胱内壁の可視化)などの[[内視鏡]]検査にも表面麻酔が有効である。

== 副作用 ==

=== 局所的な副作用 ===
局所麻酔の副作用として、舌、咽頭、喉頭の[[浮腫]]が生じることがある。これは、注射時の外傷、感染症、アレルギー反応、血腫、または低温殺菌液などの刺激性の溶液の注入など、さまざまな理由によって引き起こされる可能性がある。通常、注射した場所に組織の腫れが生じる。これは、静脈が穿刺され、血液が周囲の緩い組織に流れ込むためである。また、局所麻酔薬を注入した部分の組織が白くなることもよくある。これは、その部分の動脈の血管収縮により血流が妨げられるため、その部分が白く見えるようになるのである。血管収縮の刺激は徐々に消え、その後、2時間以内に組織は正常に戻る<ref name="P. 2016">{{Cite book |title=Manual of local anaesthesia in dentistry. |date=2016 |publisher=Jaypee Brothers Medical P |isbn=978-9352501984 |location=[Place of publication not identified] |oclc=930829770}}</ref>。

下歯槽神経ブロックの副作用には、緊張感、こぶしの握りしめ、うめき声などがある<ref name="worldcat.org">{{Cite book |title=Successful local anesthesia for restorative dentistry and endodontics |date=12 September 2014 |isbn=9780867156157 |location=Chicago |oclc=892911544}}</ref>。

軟組織麻酔の持続時間は、歯髄麻酔よりも長く、しばしば飲食や会話の困難を伴う<ref name="worldcat.org" />。

==== 危険性 ====
一時的または永久的な神経損傷のリスクは、[[神経ブロック]]の場所や種類によって異なる<ref name=":0">{{Cite journal|date=January 2006|title=Nerve damage associated with peripheral nerve block|url=https://www.rcoa.ac.uk/sites/default/files/documents/2022-06/13-NerveDamagePeripheralNB2019web.pdf|journal=Risks Associated with Your Anaesthetic|volume=Section 13|accessdate=2022-12-04}}</ref>。

局所麻酔液の注入時に、局所血管を誤って損傷するリスクがある。これは血腫と呼ばれ、患部の痛み、[[三叉神経痛]]、腫脹および/または変色を引き起こす可能性がある。傷ついた血管の周囲の組織の密度は、血腫の重要な要因である。後上歯槽神経ブロックまたは翼突下顎ブロックで発生する可能性が最も高い{{要出典|date=February 2022}}。

肝疾患のある患者に局所麻酔を行うと、重大な結果を招くことがある。重大な肝機能障害では、アミド系局所麻酔薬の半減期が大幅に増加し、過剰投与の危険性が高まるため、患者への潜在的なリスクを評価するために、疾患の徹底した評価を行う必要がある。

局所麻酔剤と血管収縮剤は妊娠中の患者に投与することができるが、妊娠中の患者にあらゆる種類の薬剤を投与する場合は、特に注意せねばならない。[[リドカイン]]は安全に使用できるが、毒性の強い[[ブピバカイン]]や[[メピバカイン]]は避けるべきであろう。妊娠中の患者にいかなる種類の局所麻酔薬を投与する前にも、産科医との相談が不可欠である<ref name="P. 2016" />。

==== 回復 ====
末梢神経ブロック後の永久的な神経損傷はまれである。症状は、数週間以内に消失する可能性が高い。影響を受けた人の大部分(92%~97%)は、4~6週間以内に回復し、これらの人の99%は、1年以内に回復している。神経ブロックの2,000~5,000回に1回の割合で、ある程度の永続的な神経損傷が生じると推定される<ref name=":0" />。

損傷後、最長で18ヵ月間、症状が改善し続けることがある。

一般的な全身性の副作用は、使用する麻酔薬の薬理作用によるものである。電気インパルスの伝導は、[[末梢神経]]、[[中枢神経系]]、および[[心臓]]において同様のメカニズムに従っている。したがって、局所麻酔薬の作用は、末梢神経における信号伝導に特化したものではありえない中枢神経系および心臓への副作用は、重篤で致死的となる可能性がある。しかし、毒性は通常、適切な麻酔技術を遵守していれば、ほとんど到達しない血漿濃度でのみ発生する。例えば、[[硬膜外麻酔|硬膜外]]投与または支持組織内投与を意図した用量が誤って[[血管]]内注射として投与された場合、血漿中濃度が高まる可能性がある{{要出典|date=October 2018}}。

==== 感情的な反応 ====
患者が緊張や恐怖という形で感情的な影響を受けると、血管迷走神経衰弱につながることがある。これは、投与中の痛みを予期して[[副交感神経系]]を活性化し、交感神経系を抑制するものである<ref name=":1">{{Cite book |url=https://books.google.com/books?id=xRgnDwAAQBAJ&q=side+effects |title=Local Anaesthesia in Dentistry |date=2017-06-07 |publisher=Springer |isbn=9783319437057}}</ref>。その結果、筋肉の動脈が拡張し、循環血液量の減少につながり、脳への血流が一時的に不足することになる。注目すべき症状には、落ち着きのなさ、目に見えて青白く見えること、発汗、および意識喪失の可能性が含まれる。重症の場合は、[[てんかん発作]]に似た間代性けいれんを起こすこともある<ref name=":1" />。

一方、投与への恐怖から、呼吸が加速し、浅くなったり、[[過呼吸]]になったりすることもある。患者は、手足のしびれ感や軽い頭痛、胸部圧迫感の増大を感じることがある{{要出典|date=February 2022}}。

したがって、局所麻酔を投与する医療従事者にとって、特に注射の形態では、これらの起こりうる合併症を避けるために、患者が快適な環境にいること、潜在的な恐怖を緩和していることを確認することが極めて重要である。


== 手技 ==
局所麻酔薬は、末梢神経終末と中枢神経系との間のほぼすべての神経を遮断することができる。最も末梢的な手法は、皮膚または他の体表への局所麻酔である。大小の末梢神経を個別に麻酔する方法(末梢神経ブロック)と、解剖学的な神経束を麻酔する方法(神経叢麻酔)がある。脊髄くも膜下麻酔と硬膜外麻酔は、中枢神経系に合流する。

局麻の注入はしばしば痛みを伴う。この痛みを軽減するために、重炭酸塩による溶液の緩衝化や加温<ref>{{Cite web |url=https://bestbets.org/bets/bet.php?id=1480 |title=BestBets: The Effect of Warming Local Anaesthetics on Pain of Infiltration |website=bestbets.org |accessdate=2022-12-04}}</ref>など、多くの方法を用いることができる。

=== 注入手技による分類 ===

* 表面麻酔は、局麻のスプレー、溶液、クリームを皮膚または粘膜に塗布するもので、効果は短時間で、接触した部位に限られる。
* 浸潤麻酔は、麻酔をかけたい組織に局麻を[[浸潤]]させるもので、[[表面麻酔]]と浸潤麻酔をあわせて(狭義の)局所麻酔という。
* フィールドブロック(周囲浸潤麻酔)は、麻酔をかけたい部位に接するように局麻を皮下注射するものである。
* 末梢[[神経ブロック]]は、末梢神経の近傍に局麻を注射し、その神経の支配領域を麻酔するものである。
* 神経叢麻酔は、神経叢の近傍に局麻を注射するもので、多くの場合、意図した作用部位からの薬剤の拡散を制限する組織区画内に注射する。麻酔効果は、神経叢に由来する数本または全神経の神経支配領域に及ぶ。
* 硬膜外麻酔は、[[硬膜外腔]]に注入される局麻で、主に[[脊髄神経]]根に作用する。注入部位と注入量により、麻酔領域は腹部または胸部の限られた領域から全身の広い領域まで様々である。
* 脊髄くも膜下麻酔は、局麻を[[脳脊髄液]]中に注入し、通常は腰椎(腰の部分)で、[[脊髄神経]]根と[[脊髄]]の一部に作用させるもので、麻酔は通常、足から腹部または胸部に及ぶ。
* [[静脈内局所麻酔]](Bierブロック)は、駆血帯(血圧計に似た器具)を用いて四肢の血液循環を遮断した後、末梢静脈に大量の局麻薬を注入する方法である。薬物は四肢の静脈系に充満し、組織内に拡散して末梢神経や神経終末を麻酔する。麻酔効果は血液循環から除外された部分に限られ、循環が回復すると速やかに消失する。
* 体腔内の局所麻酔には、胸膜内麻酔と関節内麻酔がある。

* 経切開(または経創)カテーテル麻酔では、切開または創傷から挿入した多孔カテーテルを、切開または創傷を閉じる際に内側から横に並べて、切開または創傷に沿って局所麻酔薬を持続的に投与する<ref>{{Cite journal|date=July 2003|title=Concept for postoperative analgesia after pedicled TRAM flaps: continuous wound instillation with 0.2% ropivacaine via multilumen catheters. A report of two cases|journal=British Journal of Plastic Surgery|volume=56|issue=5|pages=478–483|DOI=10.1016/S0007-1226(03)00180-2|PMID=12890461}}</ref>。

=== 歯科に特化した技術<nowiki>:</nowiki> ===

==== Vazirani-Alkinosi法 ====
バジラニ・アルキノシ法は、閉口下顎神経ブロックとしても知られている。下顎骨の開口制限がある患者や、咀嚼筋の痙攣である[[牙関緊急]]がある患者に主に使用される。このテクニックで麻酔される神経は、下歯槽神経、切歯神経、下顎神経、舌神経、顎舌骨神経である。

歯科用針は長さが2種類あり、短針と長針がある。バジラニ・アキノシ法は局所麻酔法であり、かなりの厚さの軟部組織に刺入する必要があるため、長針を使用する。針は下顎枝の内側境界を覆う軟組織に挿入され、下歯槽神経、舌神経、顎舌骨神経の領域に挿入される。針のベベルの位置は、下顎枝から離れ、正中線に向かっていなければならないため、非常に重要である<ref name="Malamed_2013">{{Cite book |title=Handbook of local anesthesia |date=2013 |publisher=Elsevier |isbn=9780323074131 |edition=6th |location=St. Louis, Missouri |oclc=769141511}}</ref>。

==== 靭帯内浸潤 ====
靭帯内浸潤は、歯根膜注入または靭帯内注入(ILI)としても知られ、「補助的な注入の中で最も普遍的なもの」として知られている。ILIは通常、下歯槽神経ブロックの技術が不十分であるか、効果がない場合に実施される<ref>{{Cite journal|date=December 1992|title=Intraligamentary anaesthesia|journal=Journal of Dentistry|volume=20|issue=6|pages=325–332|DOI=10.1016/0300-5712(92)90018-8|PMID=1452871}}</ref>。ILIは以下の目的で行われる。

# 単歯の麻酔
# 麻酔薬量低減
# 全身麻酔禁忌
# 全身的な健康問題の存在<ref>{{Cite journal|date=June 2003|title=The key to profound local anesthesia: neuroanatomy|journal=Journal of the American Dental Association|volume=134|issue=6|pages=753–760|DOI=10.14219/jada.archive.2003.0262|PMID=12839412}}</ref>

歯科患者はより少ない軟組織麻酔を好み、歯科医師はルーチンの修復処置のための従来の下歯槽神経ブロック(INAB)の投与を減らすことを目的としているため、ILIの利用は増加すると予想される<ref>{{Cite web |title=Intraligamentary Injections in Dentistry |url=https://www.dentalacademyofce.com/courses/3580%2FPDF%2F1807cei_Boynes_web.pdf |publisher=Dental Academy of Continuing Education |date=1 June 2018 |deadlinkdate=2022-12-04}}</ref>。

注入方法。歯根膜腔は海綿状歯槽骨へのアクセスルートを提供し、麻酔薬は口腔内骨組織の自然な穿孔を介して歯髄神経に到達する<ref>{{Cite journal|date=November 2002|title=Supplementary routes to local anaesthesia|journal=International Endodontic Journal|volume=35|issue=11|pages=885–896|DOI=10.1046/j.1365-2591.2002.00592.x|PMID=12453016}}</ref><ref>{{Cite journal|date=March 1987|title=Periodontal ligament injection: an evaluation of the extent of anesthesia and postinjection discomfort|journal=Journal of the American Dental Association|volume=114|issue=3|pages=341–344|DOI=10.14219/jada.archive.1987.0080|PMID=3470356}}</ref>。

INABに対するILIの利点:迅速な効果発現(30秒以内)、投与必要が少量(0.2~1.0mL)、しびれの範囲が限定的<ref>{{Cite journal|date=December 2014|title=Hemophilia A: Dental considerations and management|journal=Journal of International Society of Preventive & Community Dentistry|volume=4|issue=Suppl 3|pages=S147–S152|DOI=10.4103/2231-0762.149022|PMC=4304051|PMID=25625071}}</ref><ref>{{Cite journal|date=January 1970|title=Local anesthesia for patients with hemophilia|journal=ASDC Journal of Dentistry for Children|volume=37|issue=1|pages=79–84|PMID=4904493}}</ref>、神経障害、血腫、牙関緊急/顎捻挫などの内在的リスクが低い[<ref>{{Cite journal|date=October 2010|title=Paresthesias in dentistry|journal=Dental Clinics of North America|volume=54|issue=4|pages=715–730|DOI=10.1016/j.cden.2010.06.016|PMID=20831934}}</ref><ref name="shabazfar">{{Cite journal|date=2014|title=Periodontal intraligament injection as alternative to inferior alveolar nerve block--meta-analysis of the literature from 1979 to 2012|journal=Clinical Oral Investigations|volume=18|issue=2|pages=351–358|DOI=10.1007/s00784-013-1113-1|PMID=24077785}}</ref>、自傷的歯周組織損傷、および心血管系の障害が減少する<ref>{{Cite journal|date=November 1981|title=Injection system|journal=The Journal of the American Dental Association|volume=103|issue=5|pages=692|DOI=10.14219/jada.archive.1981.0380}}</ref><ref name="pmid6439659">{{Cite journal|date=December 1984|title=Intraligamentary anesthesia--a histological study|journal=International Journal of Oral Surgery|volume=13|issue=6|pages=511–6|DOI=10.1016/s0300-9785(84)80022-8|PMID=6439659}}</ref><ref>{{Cite journal|date=October 1986|title=Systemic effects of intraligamental injections|journal=Journal of Endodontics|volume=12|issue=10|pages=501–504|DOI=10.1016/s0099-2399(86)80206-0|PMID=3465856}}</ref>。 下顎への二次または補助麻酔としての使用は、90%以上の高い成功率が報告されている<ref>{{Cite journal|date=October 1981|title=Periodontal ligament injection: a clinical evaluation|journal=Journal of the American Dental Association|volume=103|issue=4|pages=571–575|DOI=10.14219/jada.archive.1981.0307|PMID=6945341}}</ref><ref>{{Cite journal|date=December 1983|title=Clinical evaluation of periodontal ligament anesthesia using a pressure syringe|journal=Journal of the American Dental Association|volume=107|issue=6|pages=953–956|DOI=10.14219/jada.archive.1983.0357|PMID=6581222}}</ref>。

欠点: 一時的な歯周組織損傷のリスク、リスクの高い集団に対する細菌症や心内膜炎の可能性<ref name=":4">{{Cite journal|date=January 1997|title=Dental bacteremia in children|journal=Pediatric Cardiology|volume=18|issue=1|pages=24–27|DOI=10.1007/s002469900103|PMID=8960488}}</ref>、麻酔の成功には適切な圧力と正しい針の配置が不可欠、歯髄麻酔の持続時間が短いため、長い持続時間を必要とするいくつかの修復処置に対してはILIの使用が制限される<ref name=":4" />、術後の違和感、エナメル質の低形成や欠損などの未発達歯への傷害など。

===== 手技の詳細<nowiki>:</nowiki> =====

* 歯肉組織の治癒を助けるために、手術前にすべてのプラークと歯石を除去することが望ましい。
* 注入前に、0.2%クロルヘキシジン溶液で歯肉溝を消毒する<ref>{{Cite journal|date=March 1983|title=Intraligamentary anesthesia: a clinical study|journal=The Journal of Prosthetic Dentistry|volume=49|issue=3|pages=337–339|DOI=10.1016/0022-3913(83)90273-1|PMID=6573480}}</ref>。
* ILI投与の前に軟組織麻酔の投与が推奨される。これは、患者の快適性を高めるのに役立つ。
* 針のゲージは、通常、27ゲージの短針または30ゲージの超短針が使用される[<ref name="Malamed_1982">{{Cite journal|date=February 1982|title=The periodontal ligament (PDL) injection: an alternative to inferior alveolar nerve block|journal=Oral Surgery, Oral Medicine, and Oral Pathology|volume=53|issue=2|pages=117–121|DOI=10.1016/0030-4220(82)90273-0|PMID=6949113}}</ref>。
* 針は、単根歯の場合は中根または遠位根の長軸に沿って30度の角度で、多根歯の場合は中根および遠位根に挿入される。歯根にベベルの向けると、針の先端への前進を容易にする<ref name=":5">{{Cite journal|date=January 1999|title=How to overcome failed local anaesthesia|journal=British Dental Journal|volume=186|issue=1|pages=15–20|DOI=10.1038/sj.bdj.4800006|PMID=10028738}}</ref>。
* 針が根と顎骨の間に到達すると、大きな抵抗が生じる。
* 麻酔薬の注入は、1根または1部位あたり0.2mLで、20秒以上かけて行うことが推奨される。
* 麻酔を成功させるためには、麻酔薬を加圧して投与する必要がある。また、溝から口腔内に麻酔薬が漏れないようにする必要がある。
* 溶液を完全に沈着させるために、最低でも10~15秒間針を抜く。これは、麻酔薬の投与による圧力がかかるため、他の注射よりも時間がかかることがある。
* 組織の白化が観察され、血管収縮剤が使用されている場合は、より顕著になることがある。これは、組織への血流が一時的に阻害されることによって起こる<ref name=":5" />。

===== 注射器 =====

* 標準的な注射器を使用することができる。
* 靭帯内注射器は、トリガー把持装置またはクリック装置を使用してギアまたはレバーを採用することにより、機械的な利点を提供し、制御を向上させ、より容易に薬剤を沈着させるために麻酔薬カートリッジのゴム栓を押し進める力を増大させることにつながる。
* C-CLAD(コンピューター制御の局所麻酔薬供給装置)を使用することもできる。コンピューターマイクロプロセッサを使用することで、流体力学的に麻酔薬注入を制御することができる。これにより、主観的な流量や圧力のばらつきを最小限に抑えることができる。これにより、骨または沈着の標的領域への溶液の流体力学的拡散が強化され<ref>{{Cite journal|date=January 1982|title=The periodontal ligament injection: histologic effects on the periodontium in monkeys|journal=Journal of Endodontics|volume=8|issue=1|pages=22–26|DOI=10.1016/S0099-2399(82)80312-9|PMID=6948904}}</ref><ref>{{Cite journal|date=June 2006|title=Interstitial tissue pressure associated with dental injections: a clinical study|journal=Quintessence International|volume=37|issue=6|pages=469–476|PMID=16752703}}</ref>、組織損傷の増加なしにILI中に大量の麻酔溶液を送達することが可能になる<ref>{{Cite journal|date=January 2018|title=Does the volume of supplemental intraligamentary injections affect the anaesthetic success rate after a failed primary inferior alveolar nerve block? A randomized-double blind clinical trial|journal=International Endodontic Journal|volume=51|issue=1|pages=5–11|DOI=10.1111/iej.12773|PMID=28370327}}</ref><ref>{{Cite journal|date=March 2005|title=Efficacy of articaine and lidocaine in a primary intraligamentary injection administered with a computer-controlled local anesthetic delivery system|journal=Oral Surgery, Oral Medicine, Oral Pathology, Oral Radiology, and Endodontics|volume=99|issue=3|pages=361–366|DOI=10.1016/j.tripleo.2004.11.009|PMID=15716846}}</ref><ref>{{Cite journal|date=September 2000|title=Histologic response to intraligament injections using a computerized local anesthetic delivery system. A pilot study in mini-swine|journal=Journal of Periodontology|volume=71|issue=9|pages=1453–1459|DOI=10.1902/jop.2000.71.9.1453|PMID=11022775}}</ref>。

===== 注意点 =====

* ILIは、活動性の歯周病の炎症がある患者には推奨されない。
* 5mm以上の歯根膜の喪失がある歯牙部位には、ILIを実施すべきではない。

==== Gow-Gates法 ====
Gow-Gates法は、患者の口腔内の下顎に麻酔薬を投与するために使用される。口腔外および口腔内のランドマークの助けを借りて、針は外側翼突筋の挿入部の下を明確に舵取りしながら、顆状突起の口腔内側前面に注入される<ref name="Gow-Gates_1998">{{Cite journal|date=April 1998|title=The Gow-Gates mandibular block: regional anatomy and analgesia|journal=Australian Endodontic Journal|volume=24|issue=1|pages=18–19|DOI=10.1111/j.1747-4477.1998.tb00251.x|PMID=11431805}}</ref>。このテクニックに用いられる口腔外のランドマークは、耳朶の下縁、口角および顔面の側面における耳朶の角張りの部分である<ref name="Gow-Gates_1998" />。

生物物理学的な力(上顎動脈の脈動、顎運動の筋肉機能)および重力は、翼顎腔全体を満たすための麻酔薬の拡散を助けることになる。三叉神経下顎枝の3つの口腔内感覚部およびこの領域の他の感覚神経がすべて麻酔薬に接触するため、補助的な神経を麻酔する必要性を減らすことができる<ref name="Gow-Gates_1998" />。

下顎を麻酔する他の局所ブロック法と比較して、Gow-Gates法は下顎を完全に麻酔する上で高い成功率を持つ。ある研究では、Gow-Gates法で注射を受けた1,200人の患者のうち、完全な麻酔が得られなかったのは2人だけであった<ref name="Gow-Gates_1998" />。


{{仮リンク|ドミニク・ジャン・ラレー|de|Dominique Jean Larrey|redirect=1}}(1766-1842)はフランスの[[軍医]]で、[[ナポレオン・ボナパルト]]の「[[大陸軍 (フランス)|大陸軍]]」の外科医であり、彼の個人的な主治医でもあった。ラレーは、寒冷による局所麻酔効果({{仮リンク|寒冷麻酔|de|Kälteanästhesie|redirect=1}})を観察した最初の医師の一人である。1807年2月7日と8日に行われたプロイセンの[[アイラウの戦い]]では、厳しい寒さの中、彼は負傷者の何人かに痛みを訴えられることなく四肢の[[切断 (医学)|切断]]手術を行うことができた。氷点下の気温のため、ラレーの患者の末梢神経は麻痺していたのである<ref>M. A. Rauschmann: ''Der Schmerz und seine Therapie im Spiegel der Zeit.'' In: ''Der Orthopäde'' 37, Okt. 2008, S. 1007–1015</ref>。1866年/1867年には、[[ジョン・スノウ (医師)|ジョン・スノウ]]の弟子であるベンジャミン・ウォード・リチャードソン(Benjamin Ward Richardson, 1828-1912)と{{仮リンク|ヨハン・バプティスト・ロッテンシュタイン|de|Johann Baptist Rottenstein|redirect=1}}も局所麻酔に寒冷(それぞれ[[エーテル (化学)|エーテル]]スプレーと[[クロロエタン|クロロエチル]]スプレーによる)を使用している<ref>H. Orth, I. Kis: ''Schmerzbekämpfung und Narkose.'' In: Franz Xaver Sailer, Friedrich Wilhelm Gierhake (Hrsg.): ''Chirurgie historisch gesehen. Anfang – Entwicklung – Differenzierung.'' Dustri-Verlag, Deisenhofen bei München 1973, ISBN 3-87185-021-7, S. 1–32, hier: S. 25.</ref><ref>{{仮リンク|Paul Diepgen|de|Paul Diepgen|label=Paul Diepgen}}, {{仮リンク|Heinz Goerke|de|Heinz Goerke|label=Heinz Goerke}}: ''{{仮リンク|Ludwig Aschoff|de|Ludwig Aschoff|label=Aschoff}}/Diepgen/Goerke: Kurze Übersichtstabelle zur Geschichte der Medizin.'' 7., neubearbeitete Auflage. Springer, Berlin/Göttingen/Heidelberg 1960, S. 43.</ref>。
[[ファイル:Carl Coller.jpg|サムネイル|カール・コラー]]
ウィーンの{{仮リンク|カール・コラー (眼科医)|en|Karl Koller (ophthalmologist)}}(1857-1944)は、後の[[精神分析家|精神分析医]][[ジークムント・フロイト]]との共同研究において、[[コカイン]]を味わうと舌が麻酔されることを認識し、1884年にこれを報告した<ref>[[:de:Vorlage:Literatur]]<!-- {{Literatur |Autor=Guido Kluxen |Titel=Sigmund Freud: Über Coca Versäumte Entdeckung |Sammelwerk=[[Deutsches Ärzteblatt]] |Band=88 |Nummer=45 |Verlag=Deutscher Ärzte-Verlag |Datum=1991-11-07 |Seiten=A-3870 |Online=https://www.aerzteblatt.de/archiv/101251/Sigmund-Freud-Ueber-Coca-Versaeumte-Entdeckung}} --></ref>。動物実験が成功した後、1884年に初めてヒトの{{仮リンク|眼科手術|de|Augenoperation|redirect=1}}にコカインを使用した<ref>C. Koller: ''Vorläufige Mittheilung über locale Anästhesirung am Auge.'' Beilageheft zu den Klinischen Wochenblättern für Augenheilkunde, 1884, 22, S. 60–63</ref>。コカイン溶液を眼球に垂らし、眼球の[[角膜]]を麻酔した([[表面麻酔]])。こうしてコラーは局所麻酔の父とみなされるようになった。彼はこれを局所麻酔({{Lang|de|locale Anästhesirung}})と呼んだ。
1885年からは、アメリカの[[外科医]][[ウィリアム・スチュワート・ハルステッド]]が歯科処置の際にコカインを使用してより深部の浸潤麻酔を行い、1888年には{{仮リンク|マクシミリアン・オベルスト|de|Maximilian Oberst|redirect=1}}が指の[[伝達麻酔]](''{{仮リンク|指神経ブロック|de|Oberst-Block|label=指神経ブロック(Oberstブロック)|redirect=1}}'')を開発した<ref name="Adams" />。
ドイツの医師{{仮リンク|カール・ルートヴィヒ・シュライヒ|de|Carl Ludwig Schleich|redirect=1}}は、1892年6月11日にベルリンで開催されたドイツ外科学会で、希釈したコカイン溶液を用いた浸潤麻酔を実演した<ref>C.-L. Schleich: ''Die Infiltrationsanästhesie (lokale Anästhesie) und ihr Verhältnis zur allgemeinen Narkose (Inhalationsanästhesie).'' In: ''Verhandlungen der deutschen Gesellschaft für Chirurgie.'' 1, 1892, S. 121–127.</ref>。麻酔をかけたい皮膚(後に[[皮下注射|皮下]]も)領域に麻酔薬を注入することで、初めて皮膚に覆われた領域の治療が可能になった<ref>Vgl. auch H. Orth, I. Kis: ''Schmerzbekämpfung und Narkose.'' In: Franz Xaver Sailer, Friedrich Wilhelm Gierhake (Hrsg.): ''Chirurgie historisch gesehen. Anfang – Entwicklung – Differenzierung.'' Dustri-Verlag, Deisenhofen bei München 1973, ISBN 3-87185-021-7, S. 1–32, hier: S. 19.</ref>。{{仮リンク|テミストクレス・グルック|de|Themistocles Gluck|label=テミストクレス・グルック(Themistocles Gluck)|redirect=1}}は、コカイン溶液を注入することで、1887年までにすでに21件の大手術を局所麻酔で行っていた<ref>{{仮リンク|Paul Diepgen|de|Paul Diepgen|label=Paul Diepgen}}, {{仮リンク|Heinz Goerke|de|Heinz Goerke|label=Heinz Goerke}}: ''{{仮リンク|Ludwig Aschoff|de|Ludwig Aschoff|redirect=1|label=ルートヴィヒ・アショフ(Ludwig Aschoff)}}/Diepgen/Goerke: Kurze Übersichtstabelle zur Geschichte der Medizin.'' 7., neubearbeitete Auflage. Springer, Berlin/Göttingen/Heidelberg 1960, S. 51.</ref>。
最初に導入された[[区域麻酔]]法は、1898年に{{仮リンク|アウグスト・ビーア|de|August Bier|label=アウグスト・ビーア(August Bier)|redirect=1}}(1861-1949)が行った[[脊髄くも膜下麻酔]]<ref>A. Bier: ''Versuche über die Cocainisierung des Rückenmarks.'' In: ''{{仮リンク|Deutsche Zeitschrift für Chirurgie|de|Deutsche Zeitschrift für Chirurgie|label=Deutsche Zeitschrift für Chirurgie}}.'' Band 51, 1899, S. 361–368.</ref>と1908/1909年の[[静脈内区域麻酔]]であった<ref>August Bier: ''Ueber einen neuen Weg Localanästhesie an den Gliedmassen zu erzeugen.'' In: ''{{仮リンク|Archiv für klinische Chirurgie|de|Archiv für klinische Chirurgie|label=Archiv für klinische Chirurgie}}.'' Band 86, 1908, S. 1007–1016.</ref><ref>August Bier: ''Über eine neue Methode der lokalen Anästhesie.'' In: ''Münchner medizinische Wochenschrift.'' Band 1, 1909, S. 589 ff.</ref>。1903年には、ライプチヒの外科教授{{仮リンク|Heinrich Braun (Mediziner, 1862)|de|Heinrich Braun (Mediziner, 1862)|label=ハインリヒ・ブラウン(Heinrich Braun)|redirect=1}}が開発した[[アドレナリン]]が追加され、局所麻酔法は改良された<ref>{{仮リンク|Otto Mayrhofer|de|Otto Mayrhofer|label=Otto Mayrhofer}}: ''Gedanken zum 150. Geburtstag der Anästhesie.'' In: ''Der Anaesthesist.'' Band 45, Heft 10, Oktober 1996, S. 881–883, hier: S. 881.</ref>。
より近代的な局所麻酔薬としては、1997年に導入された[[ロピバカイン]]がある<ref>Michael Heck, Michael Fresenius: ''Repetitorium Anaesthesiologie. Vorbereitung auf die anästhesiologische Facharztprüfung und das Europäische Diplom für Anästhesiologie.'' 3., vollständig überarbeitete Auflage. Springer, Berlin/Heidelberg/ New York u.&nbsp;a. 2001, ISBN 3-540-67331-8, S. 804.</ref>。
==出典==
==出典==
<references />
<references />

2023年7月1日 (土) 14:29時点における版

局所麻酔
治療法
MeSH D000772
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局所麻酔(: Local anesthesia: Lokalanästhesieとは、身体の特定部位の感覚を消失させる技術であり[1]、一般に局所鎮痛、すなわち痛みに対する局所的な感受性消失を誘発することを目的とする。しかし、その他の感覚も影響を受ける可能性がある。これにより、患者は痛みや苦痛を軽減した状態で手術や歯科治療を受けることができる。帝王切開など多くの状況において、全身麻酔よりも安全であり、したがって優れている[2]意識消失を伴わずに、麻酔薬が作用している部位のみを除痛する麻酔の方法である。なお狭義の局所麻酔は、表面麻酔と浸潤麻酔の事を指す。これに対して、意識消失を伴う麻酔は全身麻酔という。局所麻酔は、主に、侵襲性の低い手術や簡単な縫合などの救急処置などの際に行われる。局所麻酔を行うための麻酔薬を総称して局所麻酔薬というものの、局所麻酔薬は、局所麻酔の目的だけではなく、手術時の全身麻酔薬と併用する事により、手術後の鎮痛目的にも用いられる。局所麻酔は「局麻酔」や「部分麻酔」と表記されることも多いが、「麻酔科学用語集」には記載が無く、医学用語の表記としては正しいとはいえない[3]

以下の用語はしばしば互いに混同して使用される。

超音波ガイド下神経ブロック
脊髄くも膜下麻酔
  • 局所麻酔Local anesthesia)は、厳密な意味では、歯や皮膚の一部など、身体の小範囲の麻酔である。
  • 区域麻酔Regional anesthesia)は、足や腕など、より大きな部分の麻酔を目的とする。
  • 伝達麻酔Conduction anesthesia)には、多種多様な局所麻酔と区域麻酔の技術が含まれる。

局所麻酔という用語は、歴史的および薬理学的な理由から区域麻酔よりも望ましいという説がある[4][5]。しかし、分類の命名法は統一されておらず、表面麻酔と浸潤麻酔のみが局所麻酔という用語でまとめられ、区域麻酔は別に記載されることもある。

局所麻酔と全身麻酔との大きな違いは、麻酔薬が作用した部位の痛みは、その刺激が感覚神経によって脳へと伝達されなくなっているために、痛みを感じなくなっているものの、意識の消失は起こらない点である。これは、処置の最中に発生した何かしらの身体の変化に患者自身が気付くこと、全身麻酔薬が作用した場合には時に失われる自発呼吸も保たれること、意識消失に使用する全身麻酔薬が使用しづらい状況でも手術を行うことが可能(妊娠中の患者・帝王切開など)などの利点がある。

しかし、局所麻酔によって除痛ができていても、身体に侵襲が加わっている点に変わりはない。また、術中に患者にとって不利益な精神症状が出てくる可能性は否定できない。そのため状況に応じて鎮静が必要とされる場合もある。これを、Monitored Anesthesia Careと呼ぶ。

目的

局所麻酔薬は、可逆的な局所麻酔と侵害受容英語版の消失を引き起こす薬剤である。特定の神経経路に使用すると(神経ブロック)、鎮痛痛覚の消失)や麻痺(筋力の消失)などの効果が得られる。臨床用局所麻酔薬は、アミド型局所麻酔薬とエステル型局所麻酔薬の2種類に分類される。合成局所麻酔薬はコカインと化学構造的に類似している。コカインとの主な違いは、乱用の可能性がないこと、交感神経アドレナリン系に作用しないこと、すなわち高血圧や局所血管収縮を起こしにくいことである。他の麻酔と異なり、局所麻酔は意識を失わないため、短時間の外科処置に使用することができる。ただし、医師は処置を行う前に、無菌環境を整えておく必要がある。

局所麻酔の第一の目的は、神経(求心性神経繊維英語版)の痛みを伝える機能を遮断(ブロック)して痛みをなくすことである。ある種のA線維の機能を遮断することで、感覚(触覚振動覚、これも求心性線維)を消失させる。運動(遠心性)神経線維もブロックされることがあり、支配領域の筋肉は能動的に動かすことは不可能となる。

外傷や疾患により、神経構造(三叉神経など)が損傷すると、神経障害性疼痛が生じる。局所麻酔が、このような状況での治療手段として行われることがある。このために使用される製剤は、血管収縮剤アドレナリンなど)を含まないものでなければならない。患者によっては、麻酔の持続時間をはるかに超える鎮痛効果が得られ、上手くいけば症状が完全に消失する。

副作用・合併症

副作用は局所麻酔の方法や投与部位によって異なるが、分類の節で詳説する。

  1. 感染、血腫、狭い腔内の過度の液圧、注入中の神経および支持組織の切断による局所的な麻酔効果の遷延またはパレステジア英語版[6]
  2. 局所麻酔薬の毒性による中枢神経抑制や心血管虚脱、アレルギー反応英語版反射性失神チアノーゼなどの全身反応。
  3. 膿瘍などの感染による麻酔効果の減弱。

分類

局所麻酔は局所麻酔薬の適用部位により、次のように分類される。

表面麻酔

局所麻酔薬を体の表面に塗布し、拡散によって敏感な自由神経終末英語版に到達させる。典型的な適応は角膜粘膜の麻酔で、局所麻酔薬はこれらの組織に浸透しやすいからである。皮膚の表面麻酔は、高濃度の局所麻酔薬や特殊なクリーム(EMLAクリーム(リドカイン/プリロカイン混合物)英語版)やイオントフォレーシスを用いて、ごく限られた範囲でのみ可能である。眼科耳鼻科泌尿器科歯科の手術や気管支鏡、食道鏡による検査時に行う麻酔で、粘膜リドカインを噴射、塗布する。

浸潤麻酔

表面麻酔と併せて狭義の局所麻酔である。浸潤麻酔では、局所麻酔薬を手術部位の組織に直接注入する[7]。その効果は、敏感な自由神経終末と末端神経路の遮断に基づく。しかし、浸潤麻酔は手術する組織の性質も変化させるため、比較的大量の局所麻酔薬が必要となる。他に、意識下に太めの末梢ラインや中心静脈ラインを確保する際や、硬膜外麻酔や脊椎麻酔で硬膜外針や脊椎針の刺入前に細めの注射針で痛覚を取る際や、小さな部位の切開・縫合手術などに用いる。麻酔薬としてはリドカインメピバカインプロカインを用いる。

特殊な形態として、膨潤麻酔(Tumescent anesthesia)英語版がある。これは、局所麻酔薬を大量の溶媒で希釈して皮下脂肪組織に導入し、広い範囲に行き渡らせる特殊な方法である。主に美容外科脂肪吸引で用いられるが、批判的な評価もある[8]

区域麻酔

末梢神経幹の伝達麻酔(末梢神経ブロック)または脊髄に近い神経根の伝達麻酔(脊髄くも膜下麻酔硬膜外麻酔などの脊髄に近い局所麻酔)を区域麻酔と呼ぶ。また、静脈内区域麻酔[9]もあり、これは局所麻酔薬を腕(または脚)の駆血後の静脈に注射し、そこから神経管や神経終末に拡散させることで、当該四肢の麻酔を可能にするものである

神経ブロック

末梢神経束の周辺に局所麻酔薬を注入して、疼痛刺激の神経伝達をブロックする方法である。ペインクリニックや周術期の鎮痛目的で行われる。麻酔薬としては、リドカインメピバカインロピバカインを用いる事が多い。手術を行う目的部位の知覚を支配する神経を同定してブロックを行う事で、部位を限局した痛覚鈍麻が得られる。

特に上肢の知覚を支配する腕神経叢に対してブロックを行う腕神経叢ブロックは広く行われており、侵襲の程度が大きくなければ、全身麻酔を行わず、腕神経叢ブロック単独で上肢の手術を行うことも可能である。

解剖学上の神経走行を捉えるランドマーク法に端を発し、登場した当時は確実性にやや乏しい点もあった。その後、神経を微弱な電流で刺激して筋収縮を確認する方法で、神経局在を把握して行う神経電気刺激法が発達したために普及した。さらに近年は超音波検査装置を利用し神経を同定する、超音波ガイド下神経ブロックが行われるようになった[10]硬膜外麻酔脊椎麻酔が利用できない症例(適応外症例:血液の凝固機能の異常がある、もしくは抗凝固薬抗血小板薬を使用中もしくは使用予定)に対しても活用することが出来、周術期における疼痛管理として麻酔科学領域におけるトピックになっている。

脊椎麻酔(脊髄くも膜下麻酔)

局所麻酔薬をくも膜下腔に投与する方法で行う麻酔である。麻酔薬としては、プロカインテトラカインリドカイン、ジブカイン、ブピバカインが用いられてきた。日本では他の製剤が次々と販売終了となったことから、ほぼ、ブピバカインしか選択肢がない。主に下腹部や下肢の手術に用いられる。

硬膜外麻酔との比較として少量の麻酔薬で効果が現れ、手技的にも容易であるという点が挙げられる。しかし硬膜外麻酔と比べて麻酔可能部位が制限されること(臍上部周辺の手術が限界であり、上腹部~胸部の手術は困難)、持続的投与ができないなどの欠点がある。

硬膜外麻酔

局所麻酔薬を硬膜外腔に投与する方法で行う麻酔である。エピ(epi)あるいはエピドラ(epidural)と略される場合もある。麻酔薬としてはリドカインメピバカインブピバカインロピバカインレボブピバカインなどが用いられる。

硬膜外腔への穿刺部位を変えることで目的とする区域のみに限定して除痛を行う事が可能なため、脊髄くも膜下麻酔では困難な胸部や上腹部の手術にも用いることができる。さらに注入カテーテルを硬膜外腔に留置して局所麻酔薬を追加することによって、より長時間除痛を行う事も可能で、胸部・腹部・下肢手術が可能である。

硬膜外麻酔は全身麻酔と併用することで全身麻酔に必要な鎮痛薬の使用量を減ずることも可能である。欠点としては、手技的にやや難しいこと、脊髄くも膜下麻酔に比べて多くの局所麻酔薬が必要となるので局所麻酔薬中毒がやや起こり易い事が挙げられる。

歴史

ドミニク・ジャン・ラレードイツ語版(1766-1842)はフランスの軍医で、ナポレオン・ボナパルトの「大陸軍」の外科医であり、彼の個人的な主治医でもあった。ラレーは、寒冷による局所麻酔効果(寒冷麻酔)を観察した最初の医師の一人である。1807年2月7日と8日に行われたプロイセンのアイラウの戦いでは、厳しい寒さの中、彼は負傷者の何人かに痛みを訴えられることなく四肢の切断手術を行うことができた。氷点下の気温のため、ラレーの患者の末梢神経は麻痺していたのである[11]。1866年/1867年には、ジョン・スノウの弟子であるベンジャミン・ウォード・リチャードソン(Benjamin Ward Richardson, 1828-1912)とヨハン・バプティスト・ロッテンシュタインドイツ語版も局所麻酔に寒冷(それぞれエーテルスプレーとクロロエチルスプレーによる)を使用している[12][13]

カール・コラー

ウィーンのカール・コラー (眼科医)英語版(1857-1944)は、後の精神分析医ジークムント・フロイトとの共同研究において、コカインを味わうと舌が麻酔されることを認識し、1884年にこれを報告した[14]。動物実験が成功した後、1884年に初めてヒトの眼科手術ドイツ語版にコカインを使用した[15]。コカイン溶液を眼球に垂らし、眼球の角膜を麻酔した(表面麻酔)。こうしてコラーは局所麻酔の父とみなされるようになった。彼はこれを局所麻酔(locale Anästhesirung)と呼んだ。 1885年からは、アメリカの外科医ウィリアム・スチュワート・ハルステッドが歯科処置の際にコカインを使用してより深部の浸潤麻酔を行い、1888年にはマクシミリアン・オベルストドイツ語版が指の伝達麻酔指神経ブロック(Oberstブロック)ドイツ語版)を開発した[4]。 ドイツの医師カール・ルートヴィヒ・シュライヒドイツ語版は、1892年6月11日にベルリンで開催されたドイツ外科学会で、希釈したコカイン溶液を用いた浸潤麻酔を実演した[16]。麻酔をかけたい皮膚(後に皮下も)領域に麻酔薬を注入することで、初めて皮膚に覆われた領域の治療が可能になった[17]テミストクレス・グルック(Themistocles Gluck)ドイツ語版は、コカイン溶液を注入することで、1887年までにすでに21件の大手術を局所麻酔で行っていた[18]。 最初に導入された区域麻酔法は、1898年にアウグスト・ビーア(August Bier)ドイツ語版(1861-1949)が行った脊髄くも膜下麻酔[19]と1908/1909年の静脈内区域麻酔であった[20][21]。1903年には、ライプチヒの外科教授ハインリヒ・ブラウン(Heinrich Braun)ドイツ語版が開発したアドレナリンが追加され、局所麻酔法は改良された[22]。 より近代的な局所麻酔薬としては、1997年に導入されたロピバカインがある[23]


適応

急性痛

急性痛は、外傷、手術、感染症、血行障害など、組織が傷害を受けた際に発生することがある。医療現場では、その生理的警告機能が不要になった時点で痛みを緩和することが望まれる。患者の快適さを向上させるだけでなく、疼痛療法は未治療の疼痛がもたらす有害な生理的転帰を軽減することができる[要出典]

急性の痛みは、しばしば鎮痛剤を用いて管理することができる。しかし、優れた痛みの制御と少ない副作用のために、伝達麻酔(conduction anesthesia)[注釈 1]が望ましい場合がある。疼痛治療の目的で、局麻薬はしばしばカテーテルを介した反復注射または持続注入によって投与される。また、相乗的な鎮痛作用のためにオピオイドなどの他の薬剤と併用されることも多い[24]。低用量の局麻薬で十分なので、筋力低下が起こらず、患者の移動が可能である[要出典]

急性痛に対する伝達麻酔の典型的な使用例としては、以下のものがある。

慢性疼痛

慢性疼痛は、複雑かつ深刻な病態であるため、ペインクリニックの専門家による診断と治療が必要である。局麻は、慢性疼痛を緩和するために、通常、オピオイドNSAIDs抗けいれん剤などの薬物と組み合わせて、繰り返し、または長期間継続して適用することができる。簡単に行えるが、長期的な効果を示す証拠がないため、慢性疼痛疾患における局所麻酔ブロックの繰り返しは推奨されない[25]

手術

伝達麻酔を用いれば、身体の大半の部位に麻酔をかけることができる。しかし、一般に臨床的に使用されているのは、限られた数の技術のみである。患者の快適さと手術の容易さのために、伝達麻酔を全身麻酔または鎮静と併用することもある。しかし、多くの麻酔科医、外科医、患者、看護師は、主要な手術は全身麻酔よりも局所麻酔で行う方が安全であると考えている[26]。伝達麻酔で行われる代表的な手術は以下の通りである。

診断検査

骨髄穿刺腰椎穿刺(脊髄穿刺)、嚢胞などの吸引などの診断検査は、太い針を刺す前に局所麻酔薬を投与することで痛みを少なくすることができる[27]

ペースメーカー植込み型除細動器などの埋込医療機器、化学療法の薬剤注入用ポート、血液透析用アクセスカテーテルなどの挿入時にも局所麻酔を使用する[27]

リドカイン/プリロカイン(EMLA)の形態の表面麻酔は、採血留置針のの痛みを減らすために最も一般的に使用されている。また、腹水ドレナージや羊水検査など、他の種類の穿刺にも適している場合がある。

また、気管支鏡検査(下気道の可視化)や膀胱鏡検査(膀胱内壁の可視化)などの内視鏡検査にも表面麻酔が有効である。

副作用

局所的な副作用

局所麻酔の副作用として、舌、咽頭、喉頭の浮腫が生じることがある。これは、注射時の外傷、感染症、アレルギー反応、血腫、または低温殺菌液などの刺激性の溶液の注入など、さまざまな理由によって引き起こされる可能性がある。通常、注射した場所に組織の腫れが生じる。これは、静脈が穿刺され、血液が周囲の緩い組織に流れ込むためである。また、局所麻酔薬を注入した部分の組織が白くなることもよくある。これは、その部分の動脈の血管収縮により血流が妨げられるため、その部分が白く見えるようになるのである。血管収縮の刺激は徐々に消え、その後、2時間以内に組織は正常に戻る[29]

下歯槽神経ブロックの副作用には、緊張感、こぶしの握りしめ、うめき声などがある[30]

軟組織麻酔の持続時間は、歯髄麻酔よりも長く、しばしば飲食や会話の困難を伴う[30]

危険性

一時的または永久的な神経損傷のリスクは、神経ブロックの場所や種類によって異なる[31]

局所麻酔液の注入時に、局所血管を誤って損傷するリスクがある。これは血腫と呼ばれ、患部の痛み、三叉神経痛、腫脹および/または変色を引き起こす可能性がある。傷ついた血管の周囲の組織の密度は、血腫の重要な要因である。後上歯槽神経ブロックまたは翼突下顎ブロックで発生する可能性が最も高い[要出典]

肝疾患のある患者に局所麻酔を行うと、重大な結果を招くことがある。重大な肝機能障害では、アミド系局所麻酔薬の半減期が大幅に増加し、過剰投与の危険性が高まるため、患者への潜在的なリスクを評価するために、疾患の徹底した評価を行う必要がある。

局所麻酔剤と血管収縮剤は妊娠中の患者に投与することができるが、妊娠中の患者にあらゆる種類の薬剤を投与する場合は、特に注意せねばならない。リドカインは安全に使用できるが、毒性の強いブピバカインメピバカインは避けるべきであろう。妊娠中の患者にいかなる種類の局所麻酔薬を投与する前にも、産科医との相談が不可欠である[29]

回復

末梢神経ブロック後の永久的な神経損傷はまれである。症状は、数週間以内に消失する可能性が高い。影響を受けた人の大部分(92%~97%)は、4~6週間以内に回復し、これらの人の99%は、1年以内に回復している。神経ブロックの2,000~5,000回に1回の割合で、ある程度の永続的な神経損傷が生じると推定される[31]

損傷後、最長で18ヵ月間、症状が改善し続けることがある。

一般的な全身性の副作用は、使用する麻酔薬の薬理作用によるものである。電気インパルスの伝導は、末梢神経中枢神経系、および心臓において同様のメカニズムに従っている。したがって、局所麻酔薬の作用は、末梢神経における信号伝導に特化したものではありえない中枢神経系および心臓への副作用は、重篤で致死的となる可能性がある。しかし、毒性は通常、適切な麻酔技術を遵守していれば、ほとんど到達しない血漿濃度でのみ発生する。例えば、硬膜外投与または支持組織内投与を意図した用量が誤って血管内注射として投与された場合、血漿中濃度が高まる可能性がある[要出典]

感情的な反応

患者が緊張や恐怖という形で感情的な影響を受けると、血管迷走神経衰弱につながることがある。これは、投与中の痛みを予期して副交感神経系を活性化し、交感神経系を抑制するものである[32]。その結果、筋肉の動脈が拡張し、循環血液量の減少につながり、脳への血流が一時的に不足することになる。注目すべき症状には、落ち着きのなさ、目に見えて青白く見えること、発汗、および意識喪失の可能性が含まれる。重症の場合は、てんかん発作に似た間代性けいれんを起こすこともある[32]

一方、投与への恐怖から、呼吸が加速し、浅くなったり、過呼吸になったりすることもある。患者は、手足のしびれ感や軽い頭痛、胸部圧迫感の増大を感じることがある[要出典]

したがって、局所麻酔を投与する医療従事者にとって、特に注射の形態では、これらの起こりうる合併症を避けるために、患者が快適な環境にいること、潜在的な恐怖を緩和していることを確認することが極めて重要である。


手技

局所麻酔薬は、末梢神経終末と中枢神経系との間のほぼすべての神経を遮断することができる。最も末梢的な手法は、皮膚または他の体表への局所麻酔である。大小の末梢神経を個別に麻酔する方法(末梢神経ブロック)と、解剖学的な神経束を麻酔する方法(神経叢麻酔)がある。脊髄くも膜下麻酔と硬膜外麻酔は、中枢神経系に合流する。

局麻の注入はしばしば痛みを伴う。この痛みを軽減するために、重炭酸塩による溶液の緩衝化や加温[33]など、多くの方法を用いることができる。

注入手技による分類

  • 表面麻酔は、局麻のスプレー、溶液、クリームを皮膚または粘膜に塗布するもので、効果は短時間で、接触した部位に限られる。
  • 浸潤麻酔は、麻酔をかけたい組織に局麻を浸潤させるもので、表面麻酔と浸潤麻酔をあわせて(狭義の)局所麻酔という。
  • フィールドブロック(周囲浸潤麻酔)は、麻酔をかけたい部位に接するように局麻を皮下注射するものである。
  • 末梢神経ブロックは、末梢神経の近傍に局麻を注射し、その神経の支配領域を麻酔するものである。
  • 神経叢麻酔は、神経叢の近傍に局麻を注射するもので、多くの場合、意図した作用部位からの薬剤の拡散を制限する組織区画内に注射する。麻酔効果は、神経叢に由来する数本または全神経の神経支配領域に及ぶ。
  • 硬膜外麻酔は、硬膜外腔に注入される局麻で、主に脊髄神経根に作用する。注入部位と注入量により、麻酔領域は腹部または胸部の限られた領域から全身の広い領域まで様々である。
  • 脊髄くも膜下麻酔は、局麻を脳脊髄液中に注入し、通常は腰椎(腰の部分)で、脊髄神経根と脊髄の一部に作用させるもので、麻酔は通常、足から腹部または胸部に及ぶ。
  • 静脈内局所麻酔(Bierブロック)は、駆血帯(血圧計に似た器具)を用いて四肢の血液循環を遮断した後、末梢静脈に大量の局麻薬を注入する方法である。薬物は四肢の静脈系に充満し、組織内に拡散して末梢神経や神経終末を麻酔する。麻酔効果は血液循環から除外された部分に限られ、循環が回復すると速やかに消失する。
  • 体腔内の局所麻酔には、胸膜内麻酔と関節内麻酔がある。
  • 経切開(または経創)カテーテル麻酔では、切開または創傷から挿入した多孔カテーテルを、切開または創傷を閉じる際に内側から横に並べて、切開または創傷に沿って局所麻酔薬を持続的に投与する[34]

歯科に特化した技術:

Vazirani-Alkinosi法

バジラニ・アルキノシ法は、閉口下顎神経ブロックとしても知られている。下顎骨の開口制限がある患者や、咀嚼筋の痙攣である牙関緊急がある患者に主に使用される。このテクニックで麻酔される神経は、下歯槽神経、切歯神経、下顎神経、舌神経、顎舌骨神経である。

歯科用針は長さが2種類あり、短針と長針がある。バジラニ・アキノシ法は局所麻酔法であり、かなりの厚さの軟部組織に刺入する必要があるため、長針を使用する。針は下顎枝の内側境界を覆う軟組織に挿入され、下歯槽神経、舌神経、顎舌骨神経の領域に挿入される。針のベベルの位置は、下顎枝から離れ、正中線に向かっていなければならないため、非常に重要である[35]

靭帯内浸潤

靭帯内浸潤は、歯根膜注入または靭帯内注入(ILI)としても知られ、「補助的な注入の中で最も普遍的なもの」として知られている。ILIは通常、下歯槽神経ブロックの技術が不十分であるか、効果がない場合に実施される[36]。ILIは以下の目的で行われる。

  1. 単歯の麻酔
  2. 麻酔薬量低減
  3. 全身麻酔禁忌
  4. 全身的な健康問題の存在[37]

歯科患者はより少ない軟組織麻酔を好み、歯科医師はルーチンの修復処置のための従来の下歯槽神経ブロック(INAB)の投与を減らすことを目的としているため、ILIの利用は増加すると予想される[38]

注入方法。歯根膜腔は海綿状歯槽骨へのアクセスルートを提供し、麻酔薬は口腔内骨組織の自然な穿孔を介して歯髄神経に到達する[39][40]

INABに対するILIの利点:迅速な効果発現(30秒以内)、投与必要が少量(0.2~1.0mL)、しびれの範囲が限定的[41][42]、神経障害、血腫、牙関緊急/顎捻挫などの内在的リスクが低い[[43][44]、自傷的歯周組織損傷、および心血管系の障害が減少する[45][46][47]。 下顎への二次または補助麻酔としての使用は、90%以上の高い成功率が報告されている[48][49]

欠点: 一時的な歯周組織損傷のリスク、リスクの高い集団に対する細菌症や心内膜炎の可能性[50]、麻酔の成功には適切な圧力と正しい針の配置が不可欠、歯髄麻酔の持続時間が短いため、長い持続時間を必要とするいくつかの修復処置に対してはILIの使用が制限される[50]、術後の違和感、エナメル質の低形成や欠損などの未発達歯への傷害など。

手技の詳細:
  • 歯肉組織の治癒を助けるために、手術前にすべてのプラークと歯石を除去することが望ましい。
  • 注入前に、0.2%クロルヘキシジン溶液で歯肉溝を消毒する[51]
  • ILI投与の前に軟組織麻酔の投与が推奨される。これは、患者の快適性を高めるのに役立つ。
  • 針のゲージは、通常、27ゲージの短針または30ゲージの超短針が使用される[[52]
  • 針は、単根歯の場合は中根または遠位根の長軸に沿って30度の角度で、多根歯の場合は中根および遠位根に挿入される。歯根にベベルの向けると、針の先端への前進を容易にする[53]
  • 針が根と顎骨の間に到達すると、大きな抵抗が生じる。
  • 麻酔薬の注入は、1根または1部位あたり0.2mLで、20秒以上かけて行うことが推奨される。
  • 麻酔を成功させるためには、麻酔薬を加圧して投与する必要がある。また、溝から口腔内に麻酔薬が漏れないようにする必要がある。
  • 溶液を完全に沈着させるために、最低でも10~15秒間針を抜く。これは、麻酔薬の投与による圧力がかかるため、他の注射よりも時間がかかることがある。
  • 組織の白化が観察され、血管収縮剤が使用されている場合は、より顕著になることがある。これは、組織への血流が一時的に阻害されることによって起こる[53]
注射器
  • 標準的な注射器を使用することができる。
  • 靭帯内注射器は、トリガー把持装置またはクリック装置を使用してギアまたはレバーを採用することにより、機械的な利点を提供し、制御を向上させ、より容易に薬剤を沈着させるために麻酔薬カートリッジのゴム栓を押し進める力を増大させることにつながる。
  • C-CLAD(コンピューター制御の局所麻酔薬供給装置)を使用することもできる。コンピューターマイクロプロセッサを使用することで、流体力学的に麻酔薬注入を制御することができる。これにより、主観的な流量や圧力のばらつきを最小限に抑えることができる。これにより、骨または沈着の標的領域への溶液の流体力学的拡散が強化され[54][55]、組織損傷の増加なしにILI中に大量の麻酔溶液を送達することが可能になる[56][57][58]
注意点
  • ILIは、活動性の歯周病の炎症がある患者には推奨されない。
  • 5mm以上の歯根膜の喪失がある歯牙部位には、ILIを実施すべきではない。

Gow-Gates法

Gow-Gates法は、患者の口腔内の下顎に麻酔薬を投与するために使用される。口腔外および口腔内のランドマークの助けを借りて、針は外側翼突筋の挿入部の下を明確に舵取りしながら、顆状突起の口腔内側前面に注入される[59]。このテクニックに用いられる口腔外のランドマークは、耳朶の下縁、口角および顔面の側面における耳朶の角張りの部分である[59]

生物物理学的な力(上顎動脈の脈動、顎運動の筋肉機能)および重力は、翼顎腔全体を満たすための麻酔薬の拡散を助けることになる。三叉神経下顎枝の3つの口腔内感覚部およびこの領域の他の感覚神経がすべて麻酔薬に接触するため、補助的な神経を麻酔する必要性を減らすことができる[59]

下顎を麻酔する他の局所ブロック法と比較して、Gow-Gates法は下顎を完全に麻酔する上で高い成功率を持つ。ある研究では、Gow-Gates法で注射を受けた1,200人の患者のうち、完全な麻酔が得られなかったのは2人だけであった[59]

出典

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外部リンク



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