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'''ホスフィン''' ({{lang-en-short|phosphine}}) は、[[分子式]] '''PH<sub>3</sub>''' で表される、[[リン]]と[[水素]]による[[無機化合物]]。'''リン化水素'''(リンかすいそ、{{lang-en-short|hydrogen phosphide}})、'''水素化リン''' ({{lang-en-short|phosphorus hydride}})とも呼ばれる。[[IUPAC]]組織名は'''[[ホスファン]]''' ({{lang-en-short|phosphane}}) である。「ホスフィン」は、PH<sub>3</sub> を母化合物とする有機化合物 R<sub>3</sub>P の総称でもある。[[半導体]]製造の[[ドープ|ドーピング]]ガスの原料であり、[[ケイ素]]をn形にする場合や、InGaP(インジウムガリウムリン)などといった半導体を製造するときにも用いる。 |
'''ホスフィン''' ({{lang-en-short|phosphine}}) は、[[分子式]] '''PH<sub>3</sub>''' で表される、[[リン]]と[[水素]]による[[無機化合物]]。'''リン化水素'''(リンかすいそ、{{lang-en-short|hydrogen phosphide}})、'''水素化リン''' ({{lang-en-short|phosphorus hydride}})とも呼ばれる。[[IUPAC]]組織名は'''[[ホスファン]]''' ({{lang-en-short|phosphane}}) である。「ホスフィン」は、PH<sub>3</sub> を母化合物とする有機化合物 R<sub>3</sub>P の総称でもある。[[半導体]]製造の[[ドープ|ドーピング]]ガスの原料であり、[[ケイ素]]をn形にする場合や、InGaP(インジウムガリウムリン)などといった半導体を製造するときにも用いる。 |
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常温では無色腐魚臭の[[可燃性]][[気体]]で、[[常温]]の空気中で[[自然発火]]する。極めて毒性が強く(許容量 0.3 [[ppm]])、吸入すると[[肺水腫]]や[[昏睡]]状態に陥り、[[死]]に至る。[[融点]] -134 [[セルシウス度|℃]]、[[沸点]] -87.8 ℃、[[密度]] 1.379 g/L (気体, 25 ℃)。日本ではその強い毒性から、[[毒物及び劇物取締法]]において、医薬用外毒物の指定を受けている。 |
常温では無色腐魚臭の[[可燃性]][[気体]]で、[[常温]]の空気中で酸素と反応して[[自然発火]]する<ref>大谷英雄ほか、「[https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/27/2/27_96/_article/-char/ja ホスフィンの爆発限界]」、『安全工学』1988 年 27 巻 2 号 p. 96-98、{{doi|10.18943/safety.27.2_96}}</ref>。極めて毒性が強く(許容量 0.3 [[ppm]])、吸入すると[[肺水腫]]や[[昏睡]]状態に陥り、[[死]]に至る。[[融点]] -134 [[セルシウス度|℃]]、[[沸点]] -87.8 ℃、[[密度]] 1.379 g/L (気体, 25 ℃)。日本ではその強い毒性から、[[毒物及び劇物取締法]]において、医薬用外毒物の指定を受けている。 |
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[[アンモニア]]と同様に、強酸性媒体中で[[水素イオン]]を受け取り[[ホスホニウム]][[イオン]] <chem>PH4{}^+</chem> となる[[塩基]]としての作用を持つが、アンモニアと比べて弱塩基であり、[[水溶液]]中では水分子から水素イオンを受け取り[[水酸化物イオン]] OH<sup>-</sup> を放出する作用は極めて弱い。 |
[[アンモニア]]と同様に、強酸性媒体中で[[水素イオン]]を受け取り[[ホスホニウム]][[イオン]] <chem>PH4{}^+</chem> となる[[塩基]]としての作用を持つが、アンモニアと比べて弱塩基であり、[[水溶液]]中では水分子から水素イオンを受け取り[[水酸化物イオン]] OH<sup>-</sup> を放出する作用は極めて弱い。 |
2021年3月25日 (木) 18:03時点における版
ホスフィン | |
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ホスファン(組織名) | |
別称 リン化水素 水素化リン | |
識別情報 | |
CAS登録番号 | 7803-51-2 |
特性 | |
化学式 | PH3 |
モル質量 | 34.00 g/mol |
外観 | 無色気体 |
密度 | 1.379 g/l, 気体 (25 ℃) |
融点 |
-134 ℃ |
沸点 |
-87.8 ℃ (185.2 K) |
水への溶解度 | 31.2 mg/100 ml (17 ℃) |
構造 | |
分子の形 | 三角錐形 |
双極子モーメント | 0.58 D |
危険性 | |
GHSピクトグラム | |
GHSシグナルワード | Danger |
Hフレーズ | H220, H314, H330, H400 |
Pフレーズ | P210, P260, P264, P271, P273, P280, P284, P301+330+331, P303+361+353, P304+340, P305+351+338, P310, P320, P321[1] |
NFPA 704 | |
引火点 | 可燃性気体 |
発火点 | 38 ℃ |
関連する物質 | |
その他の陽イオン | アンモニア アルシン スチビン ビスムチン |
関連物質 | トリメチルホスフィン トリフェニルホスフィン |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
ホスフィン (英: phosphine) は、分子式 PH3 で表される、リンと水素による無機化合物。リン化水素(リンかすいそ、英: hydrogen phosphide)、水素化リン (英: phosphorus hydride)とも呼ばれる。IUPAC組織名はホスファン (英: phosphane) である。「ホスフィン」は、PH3 を母化合物とする有機化合物 R3P の総称でもある。半導体製造のドーピングガスの原料であり、ケイ素をn形にする場合や、InGaP(インジウムガリウムリン)などといった半導体を製造するときにも用いる。
常温では無色腐魚臭の可燃性気体で、常温の空気中で酸素と反応して自然発火する[2]。極めて毒性が強く(許容量 0.3 ppm)、吸入すると肺水腫や昏睡状態に陥り、死に至る。融点 -134 ℃、沸点 -87.8 ℃、密度 1.379 g/L (気体, 25 ℃)。日本ではその強い毒性から、毒物及び劇物取締法において、医薬用外毒物の指定を受けている。
アンモニアと同様に、強酸性媒体中で水素イオンを受け取りホスホニウムイオン となる塩基としての作用を持つが、アンモニアと比べて弱塩基であり、水溶液中では水分子から水素イオンを受け取り水酸化物イオン OH- を放出する作用は極めて弱い。
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生成方法
有機リン化合物
有機化学では、一般式が RR'R''P (R, R', R'' は H または有機基)と表される一連の有機リン化合物群を指してホスフィンと呼ぶ。これらは、ホスフィン(リン化水素)の誘導体に当たる。詳細は項目: 有機リン化合物#ホスフィン を参照のこと。
惑星レベルにおける生成
ホスフィンは、地球の大気をわずかに構成する物質である[3]。直接リン酸塩をホスフィンへと還元する強力な還元剤はこれまで見つかっておらず、大気のホスフィンは、部分的な還元と不均化によると思われる有機物の分解によって生成されているものと考えられる[4]。
ホスフィンは、木星の乱気流中にも存在する[5]。木星のホスフィンは、高温な惑星内部で生成され、木星大気中で別の化合物と反応している[5]。ホスフィンを非生物学的に合成するには、木星のようなガスジャイアントの惑星級の対流嵐を必要とする[6]。
さらにホスフィンは、金星の大気中でも検出されているが、どうやって生成されているのかについてはわかっていない。金星におけるホスフィンの検出を発表した論文では、「(ホスフィンが)未知の光化学や地球化学的反応か、地球におけるホスフィンの生成と同じように、生物の存在によって生成されている可能性がある」と示唆している[7][8][9]。金星は、木星のようなホスフィンを生成するだけの高温高圧環境になく、ホスフィンが金星に存在する「高温高圧環境」以外の理由付けが必要である[9]。
脚注
- ^ Phosphine
- ^ 大谷英雄ほか、「ホスフィンの爆発限界」、『安全工学』1988 年 27 巻 2 号 p. 96-98、doi:10.18943/safety.27.2_96
- ^ Gassmann, G.; van Beusekom, J. E. E.; Glindemann, D. (1996). “Offshore atmospheric phosphine”. Naturwissenschaften 83 (3): 129–131. Bibcode: 1996NW.....83..129G. doi:10.1007/BF01142178.
- ^ Roels, J.; Verstraete, W. (2001). “Biological formation of volatile phosphorus compounds, a review paper”. Bioresource Technology 79 (3): 243–250. doi:10.1016/S0960-8524(01)00032-3. PMID 11499578.
- ^ a b Kaplan, Sarah (2016年7月11日). “The first water clouds are found outside our solar system — around a failed star”. The Washington Post 2020年9月14日閲覧。
- ^ Chu, Jennifer (2019年12月18日). “A sign that aliens could stink”. MIT News 2020年9月14日閲覧。
- ^ Drake, Nadia (2020年9月14日). “Possible sign of life on Venus stirs up heated debate”. National Geographic 2020年9月14日閲覧。
- ^ Greaves, J.S.; Richards, A.M.S.; Bains, W. (2020). “Phosphine gas in the cloud decks of Venus”. Nature Astronomy. doi:10.1038/s41550-020-1174-4 2020年9月14日閲覧。.
- ^ a b Stirone, Shannon; Chang, Kenneth; Overbye, Dennis (2020年9月14日). “Life on Venus? Astronomers See a Signal in Its Clouds”. The New York Times 2020年9月14日閲覧。