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|英名 = nalta jute
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{{栄養価 | name=モロヘイヤ 茎葉 生<ref name=mext7>[[文部科学省]] 「[http://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365297.htm 日本食品標準成分表2015年版(七訂)]」</ref>| kJ =159| water=86.1 g| protein=4.8 g| fat=0.5 g| satfat=(0.07) g| monofat = (0.03) g| polyfat =(0.24) g| carbs=6.3 g| starch=0.1 g| opt1n=[[食物繊維|水溶性食物繊維]]| opt1v=1.3 g| opt2n=[[食物繊維|不溶性食物繊維]]| opt2v=4.6 g| fiber=5.9 g| sodium_mg=1| potassium_mg=530| calcium_mg=260| magnesium_mg=46| phosphorus_mg=110| iron_mg=1.0| zinc_mg=0.6| copper_mg=0.33| Manganese_mg=1.32| selenium_ug =1| betacarotene_ug=10000| vitA_ug =840| vitE_mg =6.5| vitK_ug=640| thiamin_mg=0.18| riboflavin_mg=0.42| niacin_mg=1.1| vitB6_mg=0.35| folate_ug=250| pantothenic_mg=1.83| opt3n=[[ビオチン|ビオチン(B<sub>7</sub>)]] | opt3v=13.6 µg| vitC_mg=65| opt4n=[[硝酸イオン]]| opt4v=0.2 g| note =ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した<ref>[[厚生労働省]] 「[http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000114399.pdf 日本人の食事摂取基準(2015年版)]」</ref>。廃棄率: 木質茎つきの場合25%| right=1 }}
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[[ファイル:Molokheya hi res.JPG|thumb|モロヘイヤの煮込み]]
[[ファイル:Molokheya hi res.JPG|thumb|モロヘイヤの煮込み]]
'''シマツナソ'''(縞綱麻、''Corchorus olitorius'')は[[アオイ科]](従来の分類では[[シナノキ科]]に分類されていた)の一年生草本。別名を'''タイワンツナソ'''、'''ナガミツナソ'''、'''ジュート'''。
'''シマツナソ'''(縞綱麻、''Corchorus olitorius'')は[[アオイ科]](従来の分類では[[シナノキ科]]に分類されていた)の一年生草本。別名を'''タイワンツナソ'''、'''ナガミツナソ'''、'''ジュート'''。
近年は食材(葉菜)としても流通するようになり、'''モロヘイヤ'''({{lang-ar|ملوخية}} ; {{lang|all|mulūkhīya}}<ref>エジプトでは[[民間語源]]的に {{lang|all|mulūkīya}} 「諸王のもの」という言葉( &lt; {{lang|all|mulūk}} 「諸王」 &lt; {{lang|all|malik}} 「王」)に結びつけられることが多いという。 [http://members3.jcom.home.ne.jp/mulukhiya/no1/1-14.html モロヘイヤ事始]</ref>、「モロヘイヤ」の発音は[[アラビア語エジプト方言|エジプト方言]]による)の名でよく知られるところとなっている。
近年は食材(葉菜)としても流通するようになり、'''モロヘイヤ'''({{lang-ar|ملوخية}} ; {{lang|all|mulūkhīya}}<ref>エジプトでは[[民間語源]]的に {{lang|all|mulūkīya}} 「諸王のもの」という言葉( &lt; {{lang|all|mulūk}} 「諸王」 &lt; {{lang|all|malik}} 「王」)に結びつけられることが多いという。 [http://members3.jcom.home.ne.jp/mulukhiya/no1/1-14.html モロヘイヤ事始]</ref>、「モロヘイヤ」の発音は[[アラビア語エジプト方言|エジプト方言]]による)の名でよく知られるところとなっている。


== 概要 ==
== 概要 ==
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=== 毒性 ===
=== 毒性 ===
種子に[[強心作用]]のある[[ステロイド]]類のストロファンチジンという[[強心配糖体]]を含むことが知られており、種子を摂食した[[ウシ]]や[[ブタ]]の死亡例が日本及びオーストラリアで報告されているが、これまでヒトにおける中毒例の報告はない<ref>[https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvma1951/51/8/51_8_407/_article/-char/ja/ 牛のモロヘイヤ (''Corchorus olitorius'' L.) 種子中毒] 日本獣医師会雑誌 Vol.51 (1998) No.8 P407-410, {{JOI|JST.Journalarchive/jvma1951/51.407}}</ref><ref name="fukus">[http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/dokusou/16.html 身近な食品中の植物性自然毒(モロヘイヤ)] 東京都福祉保健局</ref>。この強心配糖体は収穫期の葉、茎、根の各部位には含まれず、また野菜として流通するモロヘイヤ、モロヘイヤ健康食品、モロヘイヤ茶などからも検出されなかったことから、通常の流通品については安全であることが確認されている<ref>[https://doi.org/10.3358/shokueishi.38.6_412 HPLCによるモロヘイヤ及びその加工品中の強心作用成分の分析] 食品衛生学雑誌 Vol.38 (1997) No.6 P412-417_1</ref>。しかし家庭菜園などで栽培する場合は、子供が種子を誤飲することもありうるため管理に気をつけるよう厚生省が注意喚起している<ref>[http://www.naro.affrc.go.jp/org/niah/disease_poisoning/jute.html モロヘイヤの毒性について] 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所 安全性研究チーム</ref>。
種子に[[強心作用]]のある[[ステロイド]]類のストロファンチジンという[[強心配糖体]]を含むことが知られており、種子を摂食した[[ウシ]]や[[ブタ]]の死亡例が日本及びオーストラリアで報告されているが、これまでヒトにおける中毒例の報告はない<ref>濱口芳浩, 平井良夫, 谷山敦 ほか、[https://doi.org/10.12935/jvma1951.51.407 牛のモロヘイヤ (''Corchorus olitorius'' L.) 種子中毒] 日本獣医師会雑誌 1998年 51巻 8 p.407-410, {{doi|10.12935/jvma1951.51.407}}</ref><ref name="fukus">[http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/dokusou/16.html 身近な食品中の植物性自然毒(モロヘイヤ)] 東京都福祉保健局</ref>。この強心配糖体は収穫期の葉、茎、根の各部位には含まれず、また野菜として流通するモロヘイヤ、モロヘイヤ健康食品、モロヘイヤ茶などからも検出されなかったことから、通常の流通品については安全であることが確認されている<ref>近藤 一成, 穐山 浩, 合田 幸広 ほか、[https://doi.org/10.3358/shokueishi.38.6_412 HPLCによるモロヘイヤ及びその加工品中の強心作用成分の分析] 食品衛生学雑誌 1997年 38巻 6 p.412-417_1, {{DOI|10.3358/shokueishi.38.6_412}}</ref>。しかし家庭菜園などで栽培する場合は、子供が種子を誤飲することもありうるため管理に気をつけるよう厚生省が注意喚起している<ref>[http://www.naro.affrc.go.jp/org/niah/disease_poisoning/jute.html モロヘイヤの毒性について] 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所 安全性研究チーム</ref>。


=== 薬理作用 ===
=== 薬理作用 ===
[[ACE阻害薬|ACE阻害]]活性のある物質を含有しているため、[[高血圧]]の抑制に効果があるとする研究がある<ref>[https://doi.org/10.2740/jisdh.10.3_20 食品中の高血圧抑制物質について] 日本食生活学会誌 Vol.10 (1999-2000) No.3 P20-25</ref>。
[[ACE阻害薬|ACE阻害]]活性のある物質を含有しているため、[[高血圧]]の抑制に効果があるとする研究がある<ref>木元幸一、[https://doi.org/10.2740/jisdh.10.3_20 食品中の高血圧抑制物質について] 日本食生活学会誌 1999年 10巻 3 p.20-25, {{doi|10.2740/jisdh.10.3_20}}</ref>。


== 利用 ==
== 利用 ==
=== 繊維原料(ジュート)として ===
=== 繊維原料(ジュート)として ===
{{see also|コウマ}}
{{see also|コウマ}}
近縁の[[コウマ]](黄麻)とともに「ジュート」({{lang-en|jute}})と通称され、繊維原料として利用される。
近縁の[[コウマ]](黄麻)とともに「ジュート」({{lang-en|jute}})と通称され、繊維原料として利用される。[[バングラデシュ]]に於けるジュート生産の4分の1はシマツナソの作付けである。春に播種し、2-3mに生長したところを刈り、茎を水で醗酵させて繊維を採取する。
[[バングラデシュ]]に於けるジュート生産の4分の1はシマツナソの作付けである。
春に播種し、2-3mに生長したところを刈り、茎を水で醗酵させて繊維を採取する。


=== 食材(モロヘイヤ)として ===
=== 食材(モロヘイヤ)として ===
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[[カルシウム]]、[[カロテン]]、[[ビタミンB]]、[[ビタミンC]]、[[食物繊維]]などに富む[[緑黄色野菜]]の代表格で、抗酸化作用のある[[クエルセチン]]も多く含む。全体的に栄養価が極めて高く「'''野菜の王様'''」の異名を持つ。
[[カルシウム]]、[[カロテン]]、[[ビタミンB]]、[[ビタミンC]]、[[食物繊維]]などに富む[[緑黄色野菜]]の代表格で、抗酸化作用のある[[クエルセチン]]も多く含む。全体的に栄養価が極めて高く「'''野菜の王様'''」の異名を持つ。


[[インド]]や地中海沿岸では古くから食べられていたことが知られている。現在も[[エジプト]]などで栽培が盛んである。
[[インド]]や地中海沿岸では古くから食べられていたことが知られている。現在も[[エジプト]]などで栽培が盛んである。[[中東]]や[[北アフリカ]]では、刻んで肉([[羊肉]]、[[鶏肉]]、[[牛肉]]など)と煮込むことが多い
[[中東]]や[[北アフリカ]]では、刻んで肉([[羊肉]]、[[鶏肉]]、[[牛肉]]など)と煮込むことが多い。


日本に入ってきたのは[[1980年代]]で、[[飯森嘉助]]らが「全国モロヘイヤ普及協会」を設立し、普及に努めたところが大きい。現在は日本各地で栽培されるが、[[宮城県]][[大郷町]]<ref>[http://www.oosato-rs.co.jp/specialty.php 特産品] 大郷町</ref>などが産地として有名。[[お浸し]]、[[スープ]]類、[[天ぷら]]などにするほか、乾燥粉末を[[パン]]や[[クッキー]]の生地に練り込んだりして用いることもある。
日本に入ってきたのは[[1980年代]]で、[[飯森嘉助]]らが「全国モロヘイヤ普及協会」を設立し、普及に努めたところが大きい。現在は日本各地で栽培されるが、[[宮城県]][[大郷町]]<ref>[http://www.oosato-rs.co.jp/specialty.php 特産品] 大郷町</ref>などが産地として有名。[[お浸し]]、[[スープ]]類、[[天ぷら]]などにするほか、乾燥粉末を[[パン]]や[[クッキー]]の生地に練り込んだりして用いることもある。


==== 栽培 ====
==== 栽培 ====
pH6.0 - 6.5の水はけの良い土地を好み、収穫期は7月から10月、家庭菜園でも容易に栽培が可能である。農家が圃場で大量に栽培する場合、[[うどんこ病]]<ref>[https://doi.org/10.3186/jjphytopath.65.204 モロヘイヤに発生したうどんこ病菌] 日本植物病理学会報 Vol.65 (1999) No.2 P204-206</ref>を発生することがある。
pH6.0 - 6.5の水はけの良い土地を好み、収穫期は7月から10月、家庭菜園でも容易に栽培が可能である。農家が圃場で大量に栽培する場合、[[うどんこ病]]<ref>我孫子和雄, 萩原廣、[https://doi.org/10.3186/jjphytopath.65.204 モロヘイヤに発生したうどんこ病菌] 日本植物病理学会報 1999年 65巻 2 p.204-206, {{doi|10.3186/jjphytopath.65.204}}</ref>を発生することがある。


== 参考画像 ==
== 参考画像 ==
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== 出典 ==
== 出典 ==
* [http://ci.nii.ac.jp/naid/110000409977/ 食品成分含有量の分布と動向に関する研究(第10報) : モロヘイヤについて] 高知学園短期大学紀要 21, 551-564, 1990-09-30
* [http://ci.nii.ac.jp/naid/110000409977/ 食品成分含有量の分布と動向に関する研究(第10報) : モロヘイヤについて] 高知学園短期大学紀要 21, 551-564, 1990-09-30, {{naid|110000409977}}


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
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* {{PDFlink|[http://rms1.agsearch.agropedia.affrc.go.jp/contents/JASI/pdf/PREF/65-2132.pdf 保蔵および調理によるモロヘイヤの成分含量の変化]}} 三重県農業技術センター
* {{PDFlink|[http://rms1.agsearch.agropedia.affrc.go.jp/contents/JASI/pdf/PREF/65-2132.pdf 保蔵および調理によるモロヘイヤの成分含量の変化]}} 三重県農業技術センター
* {{PDFlink|[http://www.pref.tochigi.lg.jp/g51/documents/documents/moroheiya201302.pdf モロヘイヤの栽培管理]}}
* {{PDFlink|[http://www.pref.tochigi.lg.jp/g51/documents/documents/moroheiya201302.pdf モロヘイヤの栽培管理]}}
* [https://doi.org/10.3358/shokueishi.39.4_256 モロヘイヤ種子中の主強心配糖体の同定、分析及び、マウスに対する経口毒性について] 食品衛生学雑誌 39巻 4号p.256-265(1998-08)
* 合田幸広, 酒井信夫, 中村高敏 ほか、[https://doi.org/10.3358/shokueishi.39.4_256 モロヘイヤ種子中の主強心配糖体の同定、分析及び、マウスに対する経口毒性について] 食品衛生学雑誌』 1998年 39巻 4号 p.256-265_1, {{doi|10.3358/shokueishi.39.4_256}}


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2019年4月18日 (木) 09:06時点における版

シマツナソ
シマツナソの果実
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : バラ類 rosids
階級なし : アオイ類 malvids
: アオイ目 Malvales
: アオイ科 Malvaceae
亜科 : Grewioideae
: ツナソ属 Corchorus L.
: シマツナソ C. olitorius
学名
Corchorus olitorius L.
和名
シマツナソ
英名
nalta jute
モロヘイヤ 茎葉 生[1]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 159 kJ (38 kcal)
6.3 g
デンプン 正確性注意 0.1 g
食物繊維 5.9 g
0.5 g
飽和脂肪酸 (0.07) g
一価不飽和 (0.03) g
多価不飽和 (0.24) g
4.8 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(105%)
840 µg
(93%)
10000 µg
チアミン (B1)
(16%)
0.18 mg
リボフラビン (B2)
(35%)
0.42 mg
ナイアシン (B3)
(7%)
1.1 mg
パントテン酸 (B5)
(37%)
1.83 mg
ビタミンB6
(27%)
0.35 mg
葉酸 (B9)
(63%)
250 µg
ビタミンC
(78%)
65 mg
ビタミンE
(43%)
6.5 mg
ビタミンK
(610%)
640 µg
ミネラル
ナトリウム
(0%)
1 mg
カリウム
(11%)
530 mg
カルシウム
(26%)
260 mg
マグネシウム
(13%)
46 mg
リン
(16%)
110 mg
鉄分
(8%)
1.0 mg
亜鉛
(6%)
0.6 mg
(17%)
0.33 mg
セレン
(1%)
1 µg
他の成分
水分 86.1 g
水溶性食物繊維 1.3 g
不溶性食物繊維 4.6 g
ビオチン(B7 13.6 µg
硝酸イオン 0.2 g

ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[2]。廃棄率: 木質茎つきの場合25%
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
モロヘイヤの煮込み

シマツナソ(縞綱麻、Corchorus olitorius)はアオイ科(従来の分類ではシナノキ科に分類されていた)の一年生草本。別名をタイワンツナソナガミツナソジュート。 近年は食材(葉菜)としても流通するようになり、モロヘイヤアラビア語: ملوخية‎ ; mulūkhīya[3]、「モロヘイヤ」の発音はエジプト方言による)の名でよく知られるところとなっている。

概要

北アフリカ原産の植物で、葉は青しそに似た形をしている。種小名 olitorius はラテン語で「野菜畑の」の意味。果実は円筒形でナガミツナソ(長実綱麻)の名はここからくる。日照時間が12時間以下になると開花結実する。

毒性

種子に強心作用のあるステロイド類のストロファンチジンという強心配糖体を含むことが知られており、種子を摂食したウシブタの死亡例が日本及びオーストラリアで報告されているが、これまでヒトにおける中毒例の報告はない[4][5]。この強心配糖体は収穫期の葉、茎、根の各部位には含まれず、また野菜として流通するモロヘイヤ、モロヘイヤ健康食品、モロヘイヤ茶などからも検出されなかったことから、通常の流通品については安全であることが確認されている[6]。しかし家庭菜園などで栽培する場合は、子供が種子を誤飲することもありうるため管理に気をつけるよう厚生省が注意喚起している[7]

薬理作用

ACE阻害活性のある物質を含有しているため、高血圧の抑制に効果があるとする研究がある[8]

利用

繊維原料(ジュート)として

近縁のコウマ(黄麻)とともに「ジュート」(英語: jute)と通称され、繊維原料として利用される。バングラデシュに於けるジュート生産の4分の1はシマツナソの作付けである。春に播種し、2-3mに生長したところを刈り、茎を水で醗酵させて繊維を採取する。

食材(モロヘイヤ)として

若葉を食用とし、刻んだりゆでたりするとツルムラサキ同様、ムチンによる特有の粘りを呈する。 カルシウムカロテンビタミンBビタミンC食物繊維などに富む緑黄色野菜の代表格で、抗酸化作用のあるクエルセチンも多く含む。全体的に栄養価が極めて高く「野菜の王様」の異名を持つ。

インドや地中海沿岸では古くから食べられていたことが知られている。現在もエジプトなどで栽培が盛んである。中東北アフリカでは、刻んで肉(羊肉鶏肉牛肉など)と煮込むことが多い。

日本に入ってきたのは1980年代で、飯森嘉助らが「全国モロヘイヤ普及協会」を設立し、普及に努めたところが大きい。現在は日本各地で栽培されるが、宮城県大郷町[9]などが産地として有名。お浸しスープ類、天ぷらなどにするほか、乾燥粉末をパンクッキーの生地に練り込んだりして用いることもある。

栽培

pH6.0 - 6.5の水はけの良い土地を好み、収穫期は7月から10月、家庭菜園でも容易に栽培が可能である。農家が圃場で大量に栽培する場合、うどんこ病[10]を発生することがある。

参考画像

脚注

  1. ^ 文部科学省日本食品標準成分表2015年版(七訂)
  2. ^ 厚生労働省日本人の食事摂取基準(2015年版)
  3. ^ エジプトでは民間語源的に mulūkīya 「諸王のもの」という言葉( < mulūk 「諸王」 < malik 「王」)に結びつけられることが多いという。 モロヘイヤ事始
  4. ^ 濱口芳浩, 平井良夫, 谷山敦 ほか、牛のモロヘイヤ (Corchorus olitorius L.) 種子中毒 『日本獣医師会雑誌』 1998年 51巻 8号 p.407-410, doi:10.12935/jvma1951.51.407
  5. ^ 身近な食品中の植物性自然毒(モロヘイヤ) 東京都福祉保健局
  6. ^ 近藤 一成, 穐山 浩, 合田 幸広 ほか、HPLCによるモロヘイヤ及びその加工品中の強心作用成分の分析 『食品衛生学雑誌』 1997年 38巻 6号 p.412-417_1, doi:10.3358/shokueishi.38.6_412
  7. ^ モロヘイヤの毒性について 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所 安全性研究チーム
  8. ^ 木元幸一、食品中の高血圧抑制物質について 日本食生活学会誌 1999年 10巻 3号 p.20-25, doi:10.2740/jisdh.10.3_20
  9. ^ 特産品 大郷町
  10. ^ 我孫子和雄, 萩原廣、モロヘイヤに発生したうどんこ病菌 『日本植物病理学会報』 1999年 65巻 2号 p.204-206, doi:10.3186/jjphytopath.65.204

出典

  • 食品成分含有量の分布と動向に関する研究(第10報) : モロヘイヤについて 高知学園短期大学紀要 21, 551-564, 1990-09-30, NAID 110000409977

外部リンク