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2010年4月5日 (月) 22:09時点における版

ファイル:GPN-2000-001976.jpg
ボイジャーのゴールデンレコード
ボイジャーのゴールデンレコードのジャケット
ジャケットに描かれた図の解説

ボイジャーのゴールデンレコード (Voyager Golden Record)、またはボイジャー探査機のレコード盤とは、1977年に打ち上げられた2機のボイジャー探査機に搭載されたレコードである。パイオニア探査機の金属板に続く、宇宙探査機によるMETI(Messaging to Extra-Terrestrial Intelligence)=Active SETI(能動的な地球外知的生命体探査)の例である。

地球生命文化の存在を伝える音や画像が納められており、地球外知的生命体や未来の人類が見つけて解読してくれることを想定している。ボイジャー探査機が太陽以外の恒星近傍(その恒星まで1.6光年離れた地点)へ到達するには4万年を要するため、もしボイジャーの方向に地球外知的生命体がいたとしてもそこに到達するまでには長い時間がかかる。


背景

2006年現在で、ボイジャーは太陽圏外に出た3番目と4番目の人工構造物である。1972年、73年に打ち上げられ、初めて太陽系外に出たパイオニア10号パイオニア11号は、遠い未来に宇宙旅行者に発見された時のために、発射の時刻と場所を記した金属板を積んでいた。

そして、アメリカ航空宇宙局 (NASA) は、ボイジャー1号ボイジャー2号に、さらに総合的で電子的なメッセージを積載した。それは、一種のタイムカプセルで、我々の世界を異星人に伝えてコミュニケーションを図ったものだった。

これは小さな、遠い世界からのプレゼントで、我々の音、科学、画像、音楽、考え、感じ方を表したものです。私たちの死後も、本記録だけは生き延び、皆さんの元に届くことで、皆さんの想像の中に再び私たちが甦ることができれば幸いです。--アメリカ合衆国大統領ジミー・カーター

収録内容

レコードに収められた内容は、コーネル大学カール・セーガンを委員長とする委員会によって決められた。セーガンらは115枚の画像と波、風、雷、鳥や鯨など動物の鳴き声などの多くの自然音を集めた。さらに様々な文化や時代の音楽、55種類の言語のあいさつ、ジミー・カーター大統領と国際連合事務総長クルト・ヴァルトハイムからのメッセージ文なども加えられた。

宇宙探査機パイオニア10号11号に積んだ金属板に、裸体の男女の線描を載せたことで以前NASAが批判を受けたため、裸の男女の写真や線描、妊娠した裸の女性の写真は許可されず、その代わりに男女のシルエットが収められた。

次の文は、ボイジャーが太陽系外に向けて旅立つにあたり、1977年6月16日にカーター大統領が発した公式コメントの抜粋である。

「我々は宇宙に向けてメッセージを送った。銀河には2,000億個もの星があり、いくつかの星には生命が住み、宇宙旅行の技術を持った文明も存在するだろう。もしもそれらの文明の一つがボイジャーを発見し、レコードの内容を理解することができれば、我々のメッセージを受け取ってくれるだろう。我々はいつの日にか、現在直面している課題を解消し、銀河文明の一員となることを期待する。このレコードでは我々の希望、我々の決意、我々の友好が、広大で畏怖すべき宇宙に向かって示されている」

115の画像はアナログ形式でコード化され、残りの音声情報は16と3分の2回転で再生できるように作られた。最初には、6000年前にシュメールで話されていたアッカド語が、そして最後には中国の呉方言が収録された。

以下が、ゴールデンレコードに収録された55の言語である。


また、以下が地球の音として選ばれたものである。東洋西洋クラシックを含む様々な文化の音楽が選ばれ、90分間の電子データに収められた。

作者 演奏者 記録者 ジャンル 収録時間
ドイツ ブランデンブルク協奏曲 ヨハン・ゼバスティアン・バッハ ミュンヘン・バッハ・オーケストラ 指揮者 カール・リヒター オーケストラ 4:40
インドネシア "Puspawarna" ("Kinds of Flowers") Court gamelan of Pura Paku Alaman directed by K.R.T. Wasitodipuro Robert E. Brown ガムラン 4:43
セネガル セネガルの打楽器 Charles Duvelle 打楽器 2:08
ザイール ピグミーの少女による儀式の歌 Colin Turnbull 0:56
オーストラリア "Morning Star" and "Devil Bird" Sandra LeBrun Holmes アボリジニーの歌 1:26
メキシコ "El Cascabel" Lorenzo Barcelata Lorenzo Barcelata and the Mariachi México 3:14
アメリカ合衆国 "ジョニー・B.グッド" チャック・ベリー チャック・ベリー ロックンロール 2:03
ニューギニア Men's house song Robert MacLennan 1:20
日本 鶴の巣籠り 山口五郎 尺八 4:51
ドイツ/ベルギー 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ ヨハン・ゼバスティアン・バッハ アルテュール・グリュミオー ヴァイオリン 2:55
オーストリア/ドイツ 魔笛 ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト Edda Moser (soprano) from the Bavarian State Opera, 指揮者 ヴォルフガング・サヴァリッシュ オペラ 2:55
ソビエト連邦 "Tchakrulo" ロシアの声 コーラス 2:18
ペルー Casa de la Cultura, Lima パンパイプ 0:52
USA "Melancholy Blues" ルイ・アームストロング ジャズ 3:05
アゼルバイジャン "Ugam" Radio Moscow バグパイプ 2:30
ロシア/フランス/アメリカ合衆国 春の祭典 イーゴリ・ストラヴィンスキー コロンビア交響楽団 指揮者 イーゴリ・ストラヴィンスキー 4:35
ドイツ/カナダ 平均律クラヴィーア曲集 ヨハン・ゼバスティアン・バッハ グレン・グールド ピアノ 4:48
ドイツ/イギリス 交響曲第5番 (ベートーヴェン) ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン フィルハーモニア管弦楽団 指揮者 オットー・クレンペラー 7:20
ブルガリア "Излел е Делю хайдутин" ("Izlel je Delyo Hajdutin") 伝統音楽 Valya Balkanska Ethel Rain and Martin Koenig 4:59
アメリカ合衆国 Night Chant ディネ Willard Rhodes 0:57
イギリス ヴァイオルもしくはヴァイオリン属と管楽器のためのパヴァン集、ガリアード集、アルメーン集ならびにエア集 アントニー・ホルボーン デイヴィッド・マンロウロンドン古楽コンソート 1:17
ソロモン諸島 Solomon Islands Broadcasting Service パンパイプ 1:12
ペルー 婚礼歌 John Cohen 0:38
中国 流水 伯牙 Kuan P'ing-hu 古琴 7:37
インド "Jaat Kahan Ho" Surshri Kesar Bai Kerkar ラーガ Bhairavi 3:30
アメリカ合衆国 "Dark Was the Night, Cold Was the Ground" ブラインド・ウィリー・ジョンソン ブラインド・ウィリー・ジョンソン ブルース 3:15
ドイツ/ハンガリー 弦楽四重奏曲第13番 (ベートーヴェン) ベートーベン ブダペスト弦楽四重奏団 カヴァティーナ 6:37

レコードに収められた画像は、白黒画像ではあるが、カール・セーガンらが1978年に出版した著書 Murmurs of Earth: The Voyager Interstellar Record で見ることができる。CD-ROM版も1992年にワーナー・ニュー・メディアより出版された。両方とも絶版であるが、1978年版は多くの大学や公共図書館で読むことができる。

1983年7月、BBCラジオMusic from a Small Planet という45分番組が放送され、その中でセーガンらは選考の経緯を説明し、曲の抜粋を紹介した。この番組がBBCのオリジナルなのかアメリカのラジオ局から輸入したものかは明らかではない。

またこのレコードにはラテン語の ad astra per aspera というモールス信号が収められている。「困難を乗り越えて星の世界へ」という意味である。

セーガンは当初、ビートルズのアルバムアビイ・ロードの中のヒア・カムズ・ザ・サンという曲を収録しようと打診した。ビートルズ自身は喜んだが、EMIに断られたため断念することになった。2008年には同アクロス・ザ・ユニバースがNASAの50周年を記念する通信に用いられた。

ウラン238の蒸着

レコードの表面は、超純粋なウラン238で覆われている。ウラン238の半減期は45.1億年で、このレコードを受け取った文明は、同位体組成を解析することにより、いつごろ収録されたかが分かるようになっている。

宇宙飛行

ボイジャー1号は1977年に打ち上げられて冥王星軌道を1990年に通過し、2004年11月にヘリオポーズを抜けて太陽系を脱出した。現在は星間にいるが、およそ4万年後にへびつかい座AC+79 3888まで1.6光年の地点を通過する。一方、ボイジャー2号はおよそ29万6000年後にシリウスまで4.3光年の地点を通過する。

2005年5月、ボイジャー1号は太陽から87億マイルの距離を年間3.5AU(時速61,000km)のスピードで飛行している。また2号は太陽から65億マイルの距離を年間3.13AUのスピードで飛行している。

ボイジャー1号はヘリオポーズへ突入したが、これは星間ガスの圧力によって太陽風の速度が弱まる地点である。ここでは太陽風の速度が秒速300kmから700kmになり、次第に濃く、熱くなってくる。

カール・セーガンは「宇宙のどこかに宇宙旅行をする技術を持った文明があった時のみ、この宇宙船に積まれたレコードを再生できるだろう。しかし、このボトルメールはこの惑星の住人に希望をもたらすものだ」と記している。

フィクション作品への登場

  • SF映画『スターマン/愛・宇宙はるかに』では、ボイジャーのゴールデンレコードが知的生命体によって解読され、地球の生物を調査するために異星人の一人が地球に送られてくる様子を描いている。(ただし、この作品中では収録されたジョニー・B.グッドが、ローリング・ストーンズサティスファクションに変更されている)
  • ボイジャーとレコードは、アメリカのテレビアニメシリーズ、『フューチュラマ』の「失楽園」という話に登場した。
  • アニメ『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー』の中では、盗まれたゴールデンディスクが実はボイジャーのゴールデンレコードだったという設定になっている。このディスクはエネルゴンの豊富な地球の場所を記した唯一のものであり、メガトロンの起源についても記されていたため、トランスフォーマー達に大切にされていた。(ビースト)メガトロンが未来に変身するのを防ぐため、ゴールデンディスクはダイノボットによって破壊された。
  • コメディ番組の『サタデー・ナイト・ライブ』では、出演者のスティーヴ・マーティンが異星からの最初のメッセージを受け取ったと発表された。メッセージを解読すると、「チャック・ベリーをもっと送れ」と書いてあった。
  • レコードの表紙の一部が劇場版『スタートレック』に登場するヴィジャー (V'ger) の一部として使われた。ヴィジャーの原型である架空のボイジャー6号にはレコードそのものは積まれなかったようだ。
  • SFテレビドラマ『Xファイル』の第2シーズン「リトル・グリーン・マン」という話で、宇宙から発信されたと思われる電波の記録がボイジャーのゴールデンレコードのメッセージだった。
  • 日本のアニメ『交響詩篇エウレカセブン』の第31話で、グレッグ・イーガン博士の研究室でレコードの複製を見せられる場面が登場する。
  • ドラマ『ザ・ホワイトハウス』シーズン5の13話で、ジョシュ・ライマンがブラインド・ウィリー・ジョンソンについて言及した際、ゴールデンレコードについても触れた。
  • アニメ『ピンキーとブレイン』の中で、ブレインがゴールデンレコードのデザインを変更したため、地球の元首がピンキーとブレインになってしまった。レコードを解読した異星人は、地球の責任者と勘違いをしてピンキーとブレインを捕獲してしまった。
  • カナダの実験的な詩人であるダレン・ヘンリーはゴールデンディスクを題材とした the tapeworm foundry andor the dangerous prevalence of imagination という前衛的な詩を書いた。
  • L・ロン・ハバードのSF小説『バトルフィールド・アース』の中で、レコードを受け取ったサイクロ星人が地球を訪れ、地球が滅ぼされる様子が描かれた。
  • ザ・ストロークスYou Only Live Once という作品のミュージックビデオの中で、このバンドの曲と、様々な言語の挨拶、人類の進化、人類生物学、DNAの構造などの内容を含むゴールデンレコードを収めた、シリウスに向かう宇宙船が描かれている。フィルムの最後に1977 A.D.という文字が映し出される場面では、1977年のボイジャーの発射と『スターウォーズ』の場面が暗にほのめかされている。

関連項目

外部リンク

(全て英語)