パンパイプ

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サンポーニャ (南米アンデス地方に伝わるパンパイプ)

パンパイプ(panpipes)あるいはパンフルート木管楽器の一種で、一端が閉じられた長さ・太さの異なる数本の管を、開端をそろえて長さの順に筏状に束ねて作られた縦である[1]

概要[編集]

古代から知られており、多くの場合5つかそれ以上の管を束ねて作られる。長い間民族楽器として親しまれており、パイプオルガンハーモニカの原型とも考えられている。管は主としてダンチクで作られるが、プラスチック金属なども用いられる。

パンパイプの管は一端が塞がれた閉管であり、同じ長さで両端が開いた開管より1オクターヴ低い音が出る。フルート篠笛のような笛は、1本の管で低音から高音まで出さねばならないので、実はかなり無理のある構造なのだが、パンパイプは低音を出しやすい太い管と高音を出しやすい細い管を使い分けて作ることができるので、その意味では合理的な楽器であり、発音自体は比較的容易である。

ルーマニアに伝わるパンパイプは「ナイ」、南米アンデス地方に伝わるものは「サンポーニャ」として知られている。ラオスタイには管を円筒状に並べたタイプがあり、「Wot」と呼ばれてイーサーン地方の民族音楽に使われている。

名称の由来[編集]

ギリシア神話牧神パーンが吹いたということからパンパイプ、パンフルートと呼ばれる。パーンの奏する音楽は不気味であり、人々はその音に怯えたという。パンパイプはまた、パーンにまつわる物語からシュリンクス(シランクス)という名称でも知られる。

歴史[編集]

パンパイプは古代ギリシャの時代から存在が知られているが、ヨーロッパの多くの国々では忘れ去られていた時期がある。モーツァルト歌劇魔笛」に登場するパパゲーノの持つ笛はパンパイプのことであるが、実際に演奏する楽器はパンパイプではなく、「フルート」と指定されている。

しかし、そのヨーロッパでも小国ルーマニアの羊飼いたちの間に、民族音楽を演奏する楽器「ナイ[2]」として細々と伝わっていた。20世紀になってから、ルーマニアでこの楽器を見直す動きが起こり、管の本数が増やされたり、材料を中国産の女竹に変更するなどの改良が加えられていった。ルーマニアの国立音楽大学で正課として取り上げられるようになったことで、多くの名人が生まれた。第二次世界大戦後、ルーマニア出身のナイ奏者ゲオルゲ・ザンフィルが演奏活動を始めたことにより、再び広く知られるようになった。ザンフィルの演奏に衝撃を受けた一人にスイスのヨリ・ムルクがいる。ザンフィルは彼に演奏法だけでなく、改良されたナイの製法も伝授した。ムルクは多くの弟子を育て、演奏法に関する入門書も著している[3]

パンパイプはシルクロードを通って中国にも伝わり、へと発展していったが、変化を受けずにそのまま日本に入ってきた長短18本の素竹で構成されたものが排簫(はいしょう)と呼ばれていた。正倉院宝物墨絵弾弓に描かれた散楽図には排簫を演奏する楽人が描かれている。しかし、近年になって正倉院に残されていた残骸を参考に復元されるまで、雅楽の世界からはいつしか姿を消していた。

演奏[編集]

Pan pipes

管が上下方向になるように構え、管の開端に水平方向に息を吹きかけると音が出る。息の圧力と唇の張りを高めると奇数倍音を出すことができる。閉管構造なので、偶数倍音は出せない。管を傾けたり、顎を動かすことによって半音(#や♭の付いた音)を出すことが出来る。楽器を持つ手を揺り動かしたり、息の圧力を変えることによってビブラートをかけることもできる。

脚注[編集]

  1. ^ 下中直也(編)『音楽大事典』全6巻、平凡社、1981年
  2. ^ ナイ(nai)という呼び名は、トルコ語の「ナーイ(nay, ney)」から来ている。
  3. ^ ヨリ・ムルク 著 『パンフルート演奏入門』 ISBN 978-4903703114

外部リンク[編集]