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2017年10月15日 (日) 16:16時点における版
対角化(たいかくか、diagonalization[1])とは、正方行列を適当な線形変換によりもとの行列と相似な対角行列に変形することを言う。あるいは、ベクトル空間の線形写像に対し、空間の基底を取り替え、その作用が常にある方向(固有空間)へのスカラー倍(固有値)として現れるようにすること。対角化により変換において本質的には無駄な計算を省くことで計算量を大幅に減らすことが出来る。
概要
n 次正方行列 A に対して、 n 次対角行列 D と n 次正則行列 P が存在して、
とできるとき、行列 A は対角化可能であるという。このとき、 であるから、 D の対角成分には A の固有値がならび、その他の非対角成分はすべて 0 となる。
A の固有値を重複を許さず、 とするとき、A が対角化可能であるための必要十分条件は、
かつ、各項が各固有値の重複度と等しいことである。ここで、 は n 次単位行列を表す。 は固有値 の固有空間であるから、この条件はベクトル空間の基底として A の固有ベクトルが取れることを意味している。 また行列 A が対角化可能であるための他の必要十分条件には、その最小多項式が重根をもたないことがある[2]。
A が実対称行列のとき、A は常に対角化可能であり、P として直交行列を取ることができる。また A がユニタリー行列 U を用いて対角化できるためには、 A が正規行列であることが必要十分である。正規行列の中で応用上重要なクラスとして、対称行列とエルミート行列がある。
例
次の 2 次実正方行列 A は固有値 a − bi と a + bi をもち、たとえば以下の正則行列 P で対角化される。
一方、次の行列 B は対角化可能ではない。
脚注
参考文献
- 斎藤, 正彦『線型代数入門』(初版)東京大学出版会、1966年。ISBN 978-4-13-062001-7 。
- 佐武 一郎『線型代数学』裳華房、1974年。
- 新井 朝雄『ヒルベルト空間と量子力学』共立出版〈共立講座21世紀の数学〉、1997年。