LU分解

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

数学における行列のLU分解(エルユーぶんかい)とは、正方行列 A下三角行列 L上三角行列 U の積に分解すること。すなわち A = LU が成立するような LU を求めることをいう。

LU分解の手法[編集]

以下、n正方行列の場合で説明する。基本的にはA = LU の各成分について書き下した n2 個の式を解くことにより、行列 L , U を求めるのだが、このままでは未知の係数の個数(n (n +1)個)が式の個数(n2個)より多いので解けない。これを解くための解法には ドゥーリトル法クラウト法 の2つがある。

  • ドゥーリトル法では、行列 L の対角成分の全てを 1 とおき、(1, 1) 成分 , (2, 1) 成分 , (3, 1) 成分 , ... , (1, 2) 成分, (2, 2) 成分, ... の順に n2 個の式を解く。
  • クラウト法では、行列 U の対角成分の全てを 1 とおき、(1, 1) 成分 , (1, 2) 成分 , (1, 3) 成分 , ... , (2, 1) 成分, (2, 2) 成分, ... の順に n2 個の式を解く。

行列 A正定値対称行列のときには、コレスキー分解

を行うことができる。ただし、* は行列のエルミート共役を表す。

[編集]

ドゥーリトル法による2次行列のLU分解を行う。与えられた正方行列A の成分をaij とする。

  1. 下三角行列L の対角成分を全て 1 とおき、残りの成分、(1, 2)を0、(2, 1)を変数l12 とおく。
  2. 上三角行列U の対角成分と対角成分より上の成分を変数におく。
  3. A=LU の両辺を係数比較する。
  4. 上式を上から順に解くことでL , U が求められる。

応用[編集]

連立1次方程式[編集]

連立1次方程式

の解き方に、行列 A を LU分解する方法がある。L , U は下三角行列、上三角行列であるため、逆行列を求めることなく計算することが可能である。このため、同じA に対しb だけを変えていくつも連立方程式を解く場合、LU分解は有用である[1]

与えられた方程式

に対し、変数y

とおき、これを上式に代入する。

から変数y を求める[2]。求めた解yUx = y の右辺に代入し、解 x を求めることができる[3]

Ly = bガウスの消去法の前進消去、Ux = yは後退代入に対応する。

逆行列[編集]

行列 A を LU 分解すると、

により逆行列A-1 を求められる。

また、

ei単位行列I の第i 列)

の解xi を並べた行列AX = I を満たすので、このようにしても逆行列A-1 を求めることができる。

行列式[編集]

行列 A を LU 分解できれば、その行列式は簡単に求めることができる。なぜならば、行列 L および U は三角行列であることから、それらの行列式 |L | , |U | は対角成分の積で表され、|A | は、

と計算できるからである。

変種[編集]

LDU 分解
下三角行列 L対角行列 D と上三角行列 U の積に分解する。
LUP 分解
下三角行列 L と上三角行列 U置換行列 P の積に分解する。

脚注[編集]

  1. ^ Joel H. Ferziger; Milovan Perić; 小林敏雄、谷口伸行、坪倉誠訳 『コンピュータによる流体力学』 シュプリンガー・フェアラーク東京、2003年、90頁。ISBN 4-431-70842-1 
  2. ^ 左辺Ly を計算し、左辺と右辺を係数比較すれば、y が求まる。
  3. ^ 左辺Uxを計算し、左辺と右辺を係数比較すれば、x が求まる。

関連項目[編集]