区分行列

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

区分行列(くぶんぎょうれつ)もしくはブロック行列 (block matrix) とは、いくつかの長方形のブロックに「区分け」された行列である。

区分け[編集]

例えば、4つの行列


A=\begin{pmatrix}
2  & -1 &  5 \\
-1 &  4 &  1 \\
 8 &  1 & -2
\end{pmatrix}
,\quad
B=\begin{pmatrix}
-3 & 6 \\
 1 & 3 \\
 4 & 1
\end{pmatrix}
, \quad
C=\begin{pmatrix}
-4 & 2 & 6
\end{pmatrix}
,\quad
D=\begin{pmatrix}
9 & 1
\end{pmatrix}

を並べてできる 4 × 5 行列


\begin{pmatrix}
 A & B\\
 C & D 
\end{pmatrix}
=\begin{pmatrix}
2  & -1 &  5 & & -3 & 6\\
-1 &  4 &  1 & &  1 & 3\\
 8 &  1 & -2 & &  4 & 1\\
   &    &    & &    &  \\
-4  & 2 &  6 & &  9 & 1
\end{pmatrix}

を、A, B, C, Dブロックとする区分行列と呼ぶ。ブロックは小行列とも呼ばれる。行列をブロックに分けることを区分けという。

一般の区分けでは、行や列をそれぞれいくつに分割してもよい。Aij たちをブロックとする区分行列


\begin{pmatrix}
A_{11} & A_{12} & \cdots & A_{1q} \\
A_{21} & A_{22} & \cdots & A_{2q} \\
\vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\
A_{p1} & A_{p2} & \cdots & A_{pq}
\end{pmatrix}

が区分けの一般的な形である。ただし、同じ行にあるブロックの行数は等しくなければならず、同じ列にあるブロックの列数は等しくなければならない。Aijmi × nj 行列である場合、この形の区分けを (m1, …, mq; n1, …, nr) 型と呼ぶ。

区分行列の積[編集]

ふたつの区分行列


A=\begin{pmatrix}
A_{11} & A_{12} & \cdots & A_{1q} \\
A_{21} & A_{22} & \cdots & A_{2q} \\
\vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\
A_{p1} & A_{p2} & \cdots & A_{pq}
\end{pmatrix}
,\quad
B=\begin{pmatrix}
B_{11} & B_{12} & \cdots & B_{1r} \\
B_{21} & B_{22} & \cdots & B_{2r} \\
\vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\
B_{q1} & B_{q2} & \cdots & B_{qr}
\end{pmatrix}

の区分けがそれぞれ (l1, …, lp; m1, …, mq) 型、(m1, …, mq; n1, …, nr) 型であるとき、その積 AB の (l1, …, lp; n1, …, nr) 型の区分け


AB=\begin{pmatrix}
C_{11} & C_{12} & \cdots & C_{1r} \\
C_{21} & C_{22} & \cdots & C_{2r} \\
\vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\
C_{p1} & C_{p2} & \cdots & C_{pr}
\end{pmatrix}

の各ブロックは

C_{ij}=\sum_{k=1}^q A_{ik}B_{kj}

で与えられる。すなわち、区分行列の積は(適切に区分けされていれば)各ブロックをあたかも行列の成分のように見なして計算できる。

対称区分け[編集]

正方行列 P の区分け


P=\begin{pmatrix}
 A_{11}  & A_{12} & \dots & A_{1r} \\
 A_{21}  & A_{22} & \dots & A_{2r} \\
 \vdots  & \vdots & \ddots & \vdots \\
 A_{r1}  & A_{r2} & \dots & A_{rr}
\end{pmatrix}

において、主対角線上のブロック A11, A22, … Arr がすべて正方行列であるとき、これを対称区分けという。特に、主対角線より下のブロックが全て零行列である場合、その行列式について


|P|=\prod_{k=1}^r |A_{kk}|

が成り立つ。よって、そのような P正則であるための必要十分条件は、主対角線上のブロックが全て正則であることである。

2 × 2 の区分行列の逆行列[編集]

本節では、A は正則行列、D は正方行列とし、区分行列


P=\begin{pmatrix}
 A & B \\
 C & D
\end{pmatrix}

逆行列を与える。

まず、行列式について、

|P|=|A||D-CA^{-1}B|\,

が成り立つ。よって、P が正則であるための必要十分条件は、D - CA-1B も正則であることであり、このとき逆行列は


\begin{pmatrix}
 A & B \\
 C & D
\end{pmatrix}^{-1}
=\begin{pmatrix}
 A^{-1} + A^{-1}B(D-CA^{-1}B)^{-1} CA^{-1} & -A^{-1}B(D-CA^{-1}B)^{-1} \\
 -(D-CA^{-1}B)^{-1}CA^{-1} & (D-CA^{-1}B)^{-1}
\end{pmatrix}

で与えられる。D も正則な場合は


\begin{pmatrix}
 A & B \\
 C & D
\end{pmatrix}^{-1}
=\begin{pmatrix}
 (A-BD^{-1}C)^{-1} & -A^{-1}B(D-CA^{-1}B)^{-1} \\
 -(D-CA^{-1}B)^{-1}CA^{-1} & (D-CA^{-1}B)^{-1}
\end{pmatrix}

と表される。さらに C が零行列 O に等しい場合は

\begin{pmatrix}
 A & B \\
 O & D
\end{pmatrix}^{-1}
=\begin{pmatrix}
 A^{-1}   & -A^{-1}BD^{-1} \\
 O        & D^{-1}
\end{pmatrix}

となる。

参考文献[編集]