悪い奴ほどよく眠る

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悪い奴ほどよく眠る
監督 黒澤明
脚本 小国英雄
久板栄二郎
黒澤明
菊島隆三
橋本忍
製作 田中友幸
黒澤明
出演者 三船敏郎
森雅之
香川京子
音楽 佐藤勝
撮影 逢沢譲
編集 黒澤明
配給 日本の旗 東宝
公開 日本の旗 1960年9月15日
上映時間 150分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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悪い奴ほどよく眠る』(わるいやつほどよくねむる)は、1960年昭和35年)に公開された日本映画である。監督は黒澤明

父を殺した現代社会の機構の悪にいどむ男の物語。

概要[編集]

黒澤が東宝より独立して創始した黒澤プロの初作品。東宝との共同制作だが、次回作『用心棒』以降は菊島隆三が黒澤プロ側のプロデューサー(東宝側は一貫して田中友幸が担当)として固定されるので、本作は黒澤の数少ない製作・監督兼任作品(他には『どですかでん』『影武者』、途中から製作を兼ねた『隠し砦の三悪人』がある)となった。それだけに興業上の成功だけを狙った安易な作品ではなく、あえて難題を扱うという意志から、公団とゼネコンの汚職という題材を選んだと黒澤は語っている。また、次回作以降、黒澤は二人(以上)カメラマン分担体制を確立するので、単独カメラマンがクレジットされる映画はこれが最後である。岡本喜八作品などで知られ、これが唯一の黒澤作品となる逢沢譲が担当している。

冒頭、状況説明を登場人物の語りで行うのは(本作では結婚式の場に取材に来たベテラン新聞記者が他の記者たちに語る)、ギリシア悲劇のコーラス隊のコーラスを踏襲したもので、黒澤映画の常套手法であるが、それを結婚披露宴で行うのは、後に映画『ゴッドファーザー』でも採用されている。

タイトルは、本当に悪い奴は表に自分が浮かび上がるようなことはしない。人の目の届かぬ所で、のうのうと枕を高くして寝ているとの意味であり、冒頭のみならず、ラストシーンでもタイトルが大きく出る。

あらすじ[編集]

土地開発公団の副総裁、岩淵の娘・佳子と、岩淵の秘書・西の結婚式が盛大に始まる。公団の課長補佐が汚職関与の疑惑で逮捕されたばかりで雰囲気はものものしい。のみならず運ばれてきた入刀用ケーキに場がざわめく。公団のビルをかたどったケーキの7階に赤いバラの花が刺さっている。それは5年前、公団の課長補佐・古谷が飛び降り自殺した窓だったからだ。

警察に拘引されていた公団の課長補佐・和田は、刑事の尋問に黙秘を通したのち、自殺しようと火山の火口に向かうが、それを阻止したのは西であった。西は和田を車に乗せ、和田自身の葬儀の様子を見せながら、テープレコーダーで隠し取った、和田の上司の守山と白井の会話を聞かせる。守山と白井は和田の自殺に安堵し嘲笑っている。西は彼らに復讐を企んでいることを語り、和田を仲間に引き入れる。

ある日、白井が金庫をあけると、現金の代わりに公団のビルの写真がはいっており、ケーキと同様に7階の窓に×印が付けられていた。白井は公団に戻り、これが古谷の死に恨みを持つ者の報復行為であることを岩淵と守山に説明するが、逆に着服したのだろうと疑われてしまう。そして深夜に憔悴しての帰宅途中、白井は暗がりに和田の姿を見る。驚愕した白井は守山の自宅に駆け込み、和田が生きていると訴えるが、既に白井を信用していない守山は一蹴する。追い詰められた白井が客先にまで和田の件を喋り始めたため、遅まきながら岩淵と守山は白井を懐柔しようとしたが、白井は疑心暗鬼に陥っており、古谷の件も含めて何もかもぶちまけてやると言い出したため、殺し屋に狙われる羽目になる。

その殺し屋から白井を救ったのは西であったが、西は白井を深夜の公団ビルの7階に連れて行き、5年前にここから飛び降りて自殺した古谷が自分の父親だと明かし、白井を殺そうとする。恐怖のため白井は発狂する。

さらに西は仲間の板倉と戦禍の廃墟に守山を拉致する。しかしその頃、西の正体が岩淵に露呈していた。西は、父を自殺に追い込んだ岩淵の懐に飛び込むため、板倉と戸籍の交換をし、その娘、佳子と結婚したのだ。しかし、西は心を完全に鬼にすることはできず、佳子を愛してしまっていた。同情する和田により、廃墟に連れて来られた佳子は、西から父親の犯罪を知らされる。佳子の体には触れていなかった西だが、その日初めて佳子を抱擁する。

しかし佳子が兄の辰夫と廃墟へ再び来て見ると、板倉がひとり嗚咽している。西が車の事故に見せかけて殺されたのだった。岩淵に西の所在を尋ねられた佳子はこの場所を岩淵に教えてしまったのだ。辰夫は、ショックで廃人のようになった佳子を抱きかかえて岩淵の下へ行き、「親子の縁を切る」と告げて家を去る。しかし謎の人物から電話で、「一時外遊でもして、ほとぼりが冷めるのを待て」と指示された岩淵は、安堵し「お休みなさいませ」と返事をする。

キャスト[編集]

スタッフ[編集]

エピソード[編集]

  • 本作で佳子を演じた香川は、終盤で三橋演じる辰夫の車から降りるシーンで、シートベルトをしていなかったので誤って車がブレーキをかけて止まった反動で、フロントガラスに頭から突っ込んでしまい、顔を何針も縫うほどの大怪我を負ってしまった。傷も大きかったので、香川は「もう女優の仕事はダメかもしれない」と引退を本気で覚悟したという。また、このとき香川が運ばれた病院にマスコミが集まってくるが、三船敏郎が香川の病室のドアの前に立ち、すべての取材を断っていたという。また三船は、ロケバスに衣装係が積み込むのを手伝うなど、そのように、三船は一生懸命に人のためにしてくれる人だと、香川は語っている。[1]
  • 本作で副総裁岩渕を演じた森雅之は当時49歳と、息子役の三橋達也と一回りしか変わらないが、実年齢を上回る初老の役を演じて新境地を開いた。
  • 直接制作費に8254万円、配給収入は5228万円であった。[2]

テレビドラマ版[編集]

2010年平成22年)3月5日フジテレビジョン系列「金曜プレステージ」に、黒澤明生誕100年企画として同作が村上弘明主演、黒沢直輔監督でリメイクされた。

脚注[編集]

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  1. ^ 松田美智子「三船敏郎の栄光とその破滅」(月刊文藝春秋 2013年11月号)より、改訂され『サムライ 評伝三船敏郎』(文藝春秋、2014年)に収録。
  2. ^ 映画史上ベスト200シリーズ・日本映画200キネマ旬報社

外部リンク[編集]