弦楽四重奏曲

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弦楽四重奏曲(げんがくしじゅうそうきょく)とは、弦楽四重奏による楽曲を指し、室内楽に分類される。構成は基本的に、急−緩−舞−急の4楽章からなり、第1楽章はソナタ形式である(これは交響曲ソナタと同様)。

歴史[編集]

バロック晩期[編集]

アレッサンドロ・スカルラッティが「四重奏、ただし、通奏低音抜き[1]で」というジャンルを開拓したのが弦楽四重奏曲の始まりである。以後多くの作曲家がこれに倣って作曲した。

その中でもハイドンはこれの確立に多大な貢献を行い弦楽四重奏曲の父とみなされている。ハイドンの初期の作品(作品1および2)では、現在の弦楽四重奏曲の形とは幾分異なった形式で書かれており、管楽器が含まれている曲がある、最低音がBassoと記され必ずしもチェロでなくてもよい、5楽章ある等がみられる。その後4楽章構成となり(作品9)、太陽四重奏曲(作品20)では最低音がチェロと明記され、ロシア四重奏曲(作品33)で現在につながる古典的ソナタ形式の形が定まった。

古典派[編集]

ハイドン後期の作品は、現在でも作曲の規範とされ、この様式で作曲を学ぶことになる学習者は今でも多い。

その後、ベートーヴェンが壮年期に「ラズモフスキー弦楽四重奏曲」でプロの演奏家が演奏会のために演奏する曲として確立し、さらに晩年にはプロの演奏家が何年もかけて研鑽するべき崇高な作品を残したこともあって、交響曲ピアノソナタと同程度に重要なジャンルとみなされるようになった。

しかし、ベートーヴェン以降のロマン派の時代には、シューベルトドヴォルザークを除いてあまり数多くは作曲されていない。ベートーヴェンの後継者と評されるブラームスでも3曲作曲しただけにとどまっている。チェロ奏者のプロは、当時特に少なく、これが多くの作曲家が離れる原因になった可能性は高い。

近代[編集]

このようなベートーヴェンの重圧による寡作の時代があったが、その間に決して弦楽四重奏曲が重要なジャンルと見なされていなかったわけではない。たとえば、交響曲ピアノソナタのような「古典的な」音楽には否定的な意見を持っていたドビュッシーですら、弦楽四重奏という「古典的な」ジャンルで、1曲だけだがト短調の四重奏曲を発表している。もっとも、のちにラヴェルが恩師フォーレに捧げた四重奏曲同様、ドイツ・クラシックの権化のような調性音楽上のこのジャンルは、形式上はその体裁を保っていたとはいえ、印象主義の時代には既に古典的な形式の好例と見なされていたことがうかがわれる。

近代では、弦楽四重奏曲で2人目の巨匠と言われる作曲家バルトークが現れ、ベートーヴェンの後期作品以来の快挙とも評される6曲の弦楽四重奏曲を作曲した。ややマイナーだが、マックス・レーガーも6曲残した。これらの作品群は現代音楽の古典ともいわれる。

現代[編集]

その後も、ミヨーショスタコーヴィチ安部幸明らはこのジャンルのために生涯をかけて多くの作品を残している。新ウィーン楽派もこのジャンルに全精力を費やした痕跡が残り、第二次世界大戦後の前衛の時代に於いてもベリオブーレーズノーノなどによって無視できないジャンルと見なされた。

シュトックハウゼンは「このような古典的なジャンルとは一切かかわりたくない」という創作態度であったものの、結局はアルディッティ弦楽四重奏団の委嘱に「ヘリコプター付き」との条件付で作曲した(ヘリコプター弦楽四重奏曲)。21世紀を迎えた現在も、このジャンルへ挑戦する作曲家は後を絶たない。

前述のシュトックハウゼンのように弦楽四重奏プラスアルファといった形態の作品も目だって増えるようになった。シルヴァーノ・ブッソッティの「グラムシの種子」、ヴォルフガング・リームの「ディトゥランブ」は弦楽四重奏とオーケストラのための作品である。

主な作曲家と作品[編集]

(生年順)

類似の形式を持つ楽曲[編集]

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • ソナタ諸形式・チャールズ・ローゼン著 - アカデミアミュージック
  • Haydn and the Classical Variation (Studies in the History of Music) by Elaine R. Sisman (1993-01-01) - Harvard University Press.
  • Classical Form: A Theory of Formal Functions for the Instrumental Music of Haydn, Mozart, and Beethoven - Oxford University Press.
  • Analyzing Classical Form: An Approach for the Classroom - Oxford University Press.

脚注[編集]

  1. ^ 英語版ウィキペディアを参照

外部リンク[編集]