女囚さそりシリーズ

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女囚さそりシリーズ』(じょしゅうさそりシリーズ)とは、篠原とおるの漫画『さそり』を原作とした東映制作による映画シリーズ。主演の梶芽衣子の人気とあわせてヒット作となり、梶の歌う主題歌『怨み節』もヒットした。

ここでは劇場版と、オリジナルビデオ版について記述する。

概要[編集]

恋人に裏切られた挙句、冤罪によって収監された女囚701号こと「松島ナミ(さそり)」を主人公とした映画シリーズ。収監された刑務所内での看守や女囚による陰惨な私刑(リンチ)や陵辱刑事による暴力に超人的な精神力と忍耐力で耐え、「怨み」を蓄積していき、最終的には自分を陥れた男達へと復讐を遂げる、といったストーリー。さそりを陥れる男達は刑事代議士看守など権力に属する者がほとんどであり、その内容から暴力、陵辱、嫌がらせなど、凄惨かつショッキングなシーンが多い。

伊藤俊也が監督となって製作された第1作から第3作までの3作品は、ガラス張りの床下からのショット、回転する室内セットによる場面転換、暗転などの画面構成が特徴となっている。

主演の梶芽衣子は極端に少ないセリフと冷たい目の表情で主人公・ナミを演じ、この作品が代表作の1つとなった。共演者では田村正和舘ひろし浅香光代などが異色の配役で出演している。中でも細川俊之はナミを「この世のためにならない奴」として憎しみを抱き、暴力的虐待を加えて殺そうとする冷酷非情な警部を演じている。

梶のシリーズ降板後も、映画、テレビ、オリジナルビデオと後続作品が作られている。ただし、作品ごとに、キャラクターや舞台設定は多少異なる。

2009年に香港映画『さそり』として水野美紀主演でリメイクされ、同年8月8日公開された。共演は台湾のディラン・クォ、香港のブルース・リャン、日本からは夏目ナナ石橋凌らが共演している。

エピソード[編集]

  • 吉峰甲子夫プロデューサーから、「この役をやって欲しい」と篠原とおるの原作漫画を渡された梶は、「全てが原作通りだと、当時の荒唐無稽なお色気満載の東映ポルノ・ピンキー路線になってしまう。きちんとした映画にするには大幅にアレンジしないといけない」と考え、吉峰と伊藤俊也監督に「もっとリアルに非情にやりたい。リアルにやるためには、セリフも必要ないと思うんです。この役なら、ひと言もしゃべらないでいいんじゃないでしょうか」と、「しゃべらないか、やらないか、二つに一つです」と、セリフなしなら出演するという条件を出し二人を説得した[1][2]
  • 本作は梶の好演と伊藤監督の手腕などで、東映東京撮影所久しぶりのヒット作になった[3]。しかし脚本を担当した神波史男に漏れ伝わってきた岡田茂東映社長の評価は「ありゃライト線ギリギリの二塁打だな」であった[3]。神波は「みなさんそうやってプロ根性を叩き込まれていったのでしょう」と述べている[3]

劇場版作品[編集]

オリジナル版

※ いずれも主演は梶芽衣子

  1. 女囚701号/さそり(1972年8月25日公開)
    監督:伊藤俊也
  2. 女囚さそり 第41雑居房(1972年12月30日公開)
    監督:伊藤俊也 
  3. 女囚さそり けもの部屋(1973年7月29日公開)
    監督:伊藤俊也 
  4. 女囚さそり 701号怨み節(1973年12月29日公開)
    監督:長谷部安春
リメイク版
  1. 新・女囚さそり 701号(1976年11月17日公開)
    監督:小平裕 主演:多岐川裕美
  2. 新・女囚さそり 特殊房X(エックス)(1977年6月18日公開)
    監督:小平裕 主演:夏樹陽子
  3. SASORI IN U.S.A.(1997年4月5日公開)
    監督:後藤大輔 主演:斎藤陽子
  4. サソリ 女囚701号(1998年10月31日公開)
    監督:新村良二 主演:小松千春
  5. サソリ 殺す天使(1998年10月31日公開)
    監督:新村良二 主演:小松千春
    上記作品と同時上映。
  6. さそり(2009年8月8日公開)
    監督・馬偉豪(ジョー・マー)主演:水野美紀
  7. 女囚701号 さそり外伝(2011年10月7日公開)
    監督:藤原健一 主演:明日花キララ
  8. 女囚701号 さそり外伝 第41雑居房(2012年8月8日公開)
    監督:藤原健一 主演:葵つかさ

Vシネマ版[編集]

女囚さそり 殺人予告

1991年に東映Vシネマの1本として製作された。梶芽衣子主演の女囚701号/さそりをリメイクした作品。恋人に裏切られた女囚ナミを演じるのは岡本夏生。さそりシリーズとしては14年ぶりの復活となった。当初は映画化の予定で、渡辺亮徳東映ビデオ社長(当時)が、石井輝男にシナリオを頼み、松田仁プロデューサーが、岡田茂東映社長(当時)に岡本を会わせたが、その後紆余曲折あって映画化はならず、Vシネマで製作された[4]。本作は東映Vシネマに、エロスとバイオレンスの女性アクションという新しいジャンルを作った『XX(ダブルエックス)』シリーズ第1作である[5]

スタッフ
キャスト


オマージュ[編集]

この作品へのオマージュは多く存在する。

  • キル・ビル - 梶芽衣子の熱狂的なファンであるクエンティン・タランティーノが、『キル・ビル』シリーズで、梶の歌う『怨み節』を使用している。
  • 逃亡者おりん
  • グルームパーティー-ほとんど喋らない、黒い長髪で目つきの鋭い女性「さそり」が登場する。
  • 無限の住人の作者、沙村広明の短編集『おひっこし』の劇中でたびたび、本作品が登場する。
  • 2005年日本テレビ系で放送された土9テレビドラマ女王の教室では、その演出家である大塚恭司がタイトルバック、主人公の設定などに対し「演出において影響を受けた映画は(梶芽衣子主演の初期3部作)」であると述べている。
  • 2009年公開の園子温監督の映画『愛のむきだし(あいのむきだし、英題Love Exposure)』では、主人公ユウ(配役:西島隆弘)がサソリと称する女性に女装することから物語が展開する。
  • さそり監督という女囚さそりの格好をした映画監督も存在する。津田寛治が女装してさそりになりカンフーで戦う映画『スコーピオン&スネーク』が2008年に公開されている。

脚注[編集]

  1. ^ 梶芽衣子「あいつの好きそなブルース」(12)~(14)『東京スポーツ』連載、2011年5月27~6月1日。
  2. ^ 『朝日新聞』夕刊、2013年4月24日号「(人生の贈りもの)女優・梶芽衣子:3」
  3. ^ a b c 「鎮魂、映画の昭和 岡田茂 他」、『映画芸術』、編集プロダクション映芸、2011年8月号、 128頁。
  4. ^ オフィスJ.B.編集・構成 『東映Vシネマ大全』 双葉社2014年、123頁。ISBN 978-4-575-30772-6
  5. ^ 「インタビュー黒沢満×加藤和夫(東映ビデオプロデューサー)」『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』 洋泉社2014年、48-51頁。ISBN 978-4-8003-0504-6

関連項目[編集]