増田俊也

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増田 俊也
(ますだ としなり)
Toshinari masuda 2014.jpg
増田俊也(2014年
誕生 (1965-11-08) 1965年11月8日(51歳)
日本の旗 愛知県
職業 小説家
国籍 日本の旗 日本
最終学歴 北海道大学中退
活動期間 2006年 -
ジャンル 小説
ノンフィクション
随筆
評論
代表作 シャトゥーン ヒグマの森』(2007年)
木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』(2011年)
主な受賞歴 『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞(2006年)
大宅壮一賞(2012年)
新潮ドキュメント賞(2012年)
デビュー作 シャトゥーン ヒグマの森
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増田 俊也(ますだ としなり、1965年11月8日 - )は日本の小説家

2006年に『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞でデビュー。

小説だけではなく、ノンフィクションや随筆、評論の分野でも活動し、大宅賞も受賞している。大宅賞受賞作『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』(新潮社)はトルーマン・カポーティの『冷血』を意識して作家も作中に出る手法をとっており、「私は血の通った文章を書く小説家であり続けたい」と『群像』誌上で記している[1]。2013年には純文学的色彩の濃い自伝的小説『七帝柔道記』(角川書店)も発表するなど、作風は幅広い。

ガルシア=マルケスミラン・クンデラに傾倒し、塩野七生筒井康隆ロバート・B・パーカーカート・ヴォネガットトルーマン・カポーティヘミングウェイドストエフスキーらを好きな作家として挙げている[2][3][4]

実父の従兄弟に詩人安西均がいる[5]

経歴[編集]

愛知県出身。愛知県立旭丘高等学校卒業。

2浪して北海道大学へ入学し、大学時代は柔道部で高専柔道の流れを汲む寝技中心の七帝柔道を経験する。北大柔道部の先輩には旭山動物園園長だった小菅正夫がいる[6]ホッキョクグマの生態研究者を志していたため、柔道部の他に北大ヒグマ研究グループにも入りたかったが、柔道部と両立できずに断念した[7][8]

4年生の最後の七帝戦が終わって柔道部を引退後に大学を中退する。1989年に北海タイムスに入社して新聞記者になる。1992年中日新聞社へ転職し、中日新聞社中日スポーツ総局報道部記者になる[9][10]

2006年、『シャトゥーン ヒグマの森』で第5回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞して作家となる。同作の原点は、大学時代に自然保護運動、環境保護運動に取り組んでいたときの知床原生林強行伐採の時の怒りであるという[11]

2012年、『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』で第43回大宅壮一ノンフィクション賞、第11回新潮ドキュメント賞をダブル受賞した[12]

2013年、『七帝柔道記』で第4回山田風太郎賞最終候補にノミネートされた。

2013年、『土星人襲来』収録のNOVA 書き下ろし日本SFコレクション河出書房新社)が第44回星雲賞自由部門を受賞。2014年には同作が第31回日本SF大賞特別賞を受賞。

2016年4月末日で25年間勤めた中日新聞社を早期退職し、作家生活に入った。[13]

人物[編集]

  • 私立探偵スペンサーシリーズ(ロバート・B・パーカー)のファンで、大学を中退する際に将来を心配した教授から「自分の可能性がどれくらいあると思っているのか」と問われた時には、『ユダの山羊』からのセリフを引用し、「十まで測れる秤で、十」と答えたり[14]、マンションを引っ越す際にも、「窓からボストンに似た街並みが見える物件を」と注文するなど、日常的にスペンサーの世界に浸っては、周囲の人々を困惑させた。増田が着るブレザーはスペンサーと同じブルックスブラザーズで、サイズも同じ44インチである。このサイズを着るためにベンチプレスの重量を常に加減して胸囲を調整している[4]
  • 自身もかつて競技者であり、北大柔道部の3期後輩に格闘家の中井祐樹(元総合格闘家、現日本ブラジリアン柔術連盟会長)、6期後輩に山下志功プロ修斗ライトヘビー級前世界王者)がいるため、格闘技雑誌などで評論活動などもしている。ノンフィクション『VTJ前夜の中井祐樹』は、新入生として入部してきた中井祐樹との出会いから、バーリ・トゥード・ジャパン・オープン95で1回戦で失明しながらもトーナメントを勝ち上がって決勝でヒクソン・グレイシーと戦うまでの軌跡を書いている。
  • 井上靖は、その自伝小説三部作『しろばんば』『夏草冬濤』に続く『北の海』で、浪人生活を送っている時に旧制四高(現在の金沢大学)柔道部に誘われて夏合宿に参加する場面を描いているが、主人公の井上靖が四高に入学する前で終わってしまっている。『七帝柔道記』はその続編的作品として書かれた[15]
  • 原田久仁信の作画で『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』の漫画版『KIMURA』が『週刊大衆』で連載されている。その副タイトルには「『男の星座』たちに捧げる」と書いてあるが、これは梶原一騎原作・原田作画で連載されながら、梶原の急逝で未完の絶筆となった作品『男の星座』のことを指している[16]
  • 大宅賞受賞時の北海道新聞のインタビューで「小菅正夫先輩も動物園で奇跡を起こした。それに勇気づけられての受賞でした」と北大柔道部の先輩・小菅に対してのリスペクトを表した。[17]
  • 2006年のこのミス大賞応募時のペンネームは増田梗太郎[18]。2008年末に筆名を俊成から俊也へ改名した。
  • 愛猫の名前はトーマス。『トムとジェリー』から命名した。愛車はスズキジムニーで2台所有、1台は平成2年式の26年落ち、もう1台は平成19年式の9年落ちで購入した中古車(平成26年現在)[19]
  • 2012年の大宅賞授賞式には中日新聞社の白井文吾会長も名古屋から列席して祝福した。山本昌が引退した時に白井会長が「素晴らしい決断だ。引退後の次のステージでも活躍を」と新聞紙上で称えたのを読み、山本昌と同じ50歳の節目を迎えた増田は「私も白井会長に『立派な男だ』と認められるような行動をしたい」と、作家専業となる決断をした[20]
  • 29歳の時に警察官になるために兵庫県警を受験した。北大柔道部の後輩がうつ病で自殺したため「現役柔道選手に戻って、彼に戦っているところを見せたい」と年齢制限にギリギリかからない兵庫県警を選んだ。しかし最終面接で新聞記者を辞めての1からの再スタートを「18歳の子たちとやっていけるのか」と面接官たちに諭され、採用されなかった[21]

作風[編集]

デビュー作の小説『シャトゥーン ヒグマの森』はスティーヴン・スピルバーグの影響を受けたエンターテイメント性の強い作品で[22]、その破壊力あるストーリーは空知英秋岩明均など他ジャンルのクリエイターたちからも注目された[23][24]。また、創元SF短編賞最終候補に残り、『NOVA 書き下ろし日本SFコレクション 7』に収録された『土星人襲来』ではスラップスティックな作風も見せた。

一方、自伝的小説『七帝柔道記』は実在の人をモデルにした人物と架空の人物を織り交ぜて書かれた私小説的な作品で、北大柔道部の後輩が夭折したときにメモ書きから書き始めたものである[25]。他にも夭折した人をモデルにした人物が多く登場し、増田は「これは彼らへの鎮魂歌です」とインタビューで答えている[26]

ノンフィクションの『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』では、緻密な取材力と膨大な資料収集能力を見せている。そして増田自身が強く物語の中に入っていく特殊な手法で、原稿用紙1600枚の長大な大河作品に仕上げている。この作品で見せた木村政彦への強い敬慕と思い入れを、夢枕獏平野啓一郎五木寛之恩田陸櫻井よしこら作家たちが高く評価している[27][28][29][30]

視覚に訴えてくる映像的な作品が多いのも特徴で、『シャトゥーン ヒグマの森』は『ビジネスジャンプ』誌上で漫画化され(単行本全3巻)、前述のように『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』は『週刊大衆』誌で『KIMURA』の題名で、また『七帝柔道記』も『ビッグコミックオリジナル』誌で漫画連載されている。

作品[編集]

小説単行本[編集]

ノンフィクション単行本[編集]

共著[編集]

  • 本当の強さとは何か(新潮社、中井祐樹との共著)

編纂[編集]

  • 肉体の鎮魂歌(新潮社)

アンソロジー[編集]

単行本未収録作品[編集]

  • MITの亡霊(小説。「このミステリーがすごい!」大賞作家書き下ろしmagazine)
  • 穴掘り小人(小説。小説新潮)

漫画化作品の単行本[編集]

連載中[編集]

連載終了[編集]

評論・随筆等[編集]

  • さよならスペンサーなんていわない(『本の雑誌』2010年5月号、エッセイ)
  • 大相撲が無くなってもいいのか(『ゴング格闘技』2010年9月号、評論)
  • 木村政彦のなかで生きた高専柔道(『ゴング格闘技』2011年11月号、評論)
  • 岩釣兼生という最後のサムライ(『ゴング格闘技』2012年1月号、エッセイ)
  • 女性を強く感じた瞬間(『群像』2011年12月号、エッセイ)
  • 今、描いてみたいのは女性(『小説現代』2012年2月号、エッセイ)
  • 出版界の常識を覆してベストセラー「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」余録(『週刊新潮』2012年2月23日号、エッセイ)
  • 私の人生を根本から変えた1冊、井上靖の「北の海」(『オール讀物』2012年5月号、エッセイ)
  • 大宅賞を受賞して(月刊『文芸春秋』2012年6月号、エッセイ)
  • 『木村政彦』が連続ツイートされた夜(『新潮45』2012年6月号、エッセイ)
  • 本の時代は終わっていない(『大宅文庫ニュース』第79号)
  • 強面(『文藝春秋』2012年8月号、エッセイ)
  • 高専柔道と七帝柔道、その歴史的意義と展望(『月刊秘伝』2012年8月号、評論)

インタビュー[編集]

  • 我、石井慧の覚悟を問う(『ゴング格闘技』2008年12月号)
  • 木村政彦の名誉回復は石井慧のプロ転向問題と同じ線上にある(『ゴング格闘技』2009年3月号)
  • 小田常胤と高専柔道そして七帝柔道(『月刊秘伝』2009年7月号、インタビュー)
  • 「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」これは、昭和を生きた全ての男たちに贈るブルースです(『CIRCUS』2012年1月号)
  • 異例のベストセラー「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」取材執筆18年の執念と信念(『別冊宝島1853』)
  • 増田俊也“天覧試合”を語る(『ゴング格闘技』2012年6月号)

対談[編集]

  • 参ったできない男たち(『月刊秘伝』2007年12月号、中井祐樹との対談)
  • 柔道とは何か(『ゴング格闘技』2009年3月号、松原隆一郎・磯部晃人との鼎談)
  • 三倍努力の心(『ゴング格闘技』2009年8月号、石井慧との対談)
  • 七帝柔道を見た(『ゴング格闘技』2009年8月号、夢枕獏・松原隆一郎・板垣恵介との鼎談)
  • 僕が道衣を着ていればそれはバットを持っているのと同じことです(『ゴング格闘技』2009年12月号、小室宏二との対談)
  • 石井慧と青木真也の中のキムラ(『ゴング格闘技』2010年3月号、板垣恵介との対談)
  • 21世紀のバイタル柔道(『月刊秘伝』2010年3月号、岡野功、山口香との鼎談)
  • キムラロックとは何か(『ゴング格闘技』2010年5月号、青木真也との対談)
  • 柔道事故問題の本質と寝技のすすめ(『ゴング格闘技』2010年8月号、対談)
  • 七帝な漢たち(『ゴング格闘技』2010年11月号、竜澤宏昌との対談)
  • 木村政彦は切腹すべきだったのか(『ゴング格闘技』2011年2月号、ヒクソン・グレイシーとの対談)
  • プロレス側から見た木村政彦vs力道山(『ゴング格闘技』2011年2月号、ミスター高橋との対談)
  • 牛島先生と木村先生の下で稽古ができた事は本当に幸せでした(『ゴング格闘技』2011年7月号、拓大OBとの対談)
  • 木村政彦とは何か(『ゴング格闘技』2011年8月号、吉田豪との対談)
  • 日本格闘技界の“夜明け前”を語る(『ゴング格闘技』2011年10月号、中井祐樹との対談)
  • 木村政彦の復活(『ゴング格闘技』2011年12月号、平野啓一郎との対談)
  • 世界最強の格闘家伝説・木村政彦(『週刊読書人』2011年11月14日号、高取英との対談)
  • 七帝柔道精神で大宅賞受賞(『月刊秘伝』2012年6月号、竜澤宏昌との対談)
  • 柔道、そして正気塾を語ろう(『ゴング格闘技』2012年8月号、岡野功との対談)

関連人物[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 『群像』2011年12月号
  2. ^ 『オール讀物』2012年5月号
  3. ^ このミステリーがすごい! 2011年版』宝島社、2010年
  4. ^ a b 本の雑誌』2010年3月号
  5. ^ 公式ブログ 増田俊也の憂鬱なジャンクテクスト プロフィール
  6. ^ 漫画版『シャトゥーン〜ヒグマの森〜』第3巻の帯は小菅が書いている
  7. ^ 奥谷通教、増田俊也『シャトゥーン〜ヒグマの森〜』第1巻、集英社、2008年。あとがき
  8. ^ 『七帝柔道記』(角川書店)
  9. ^ 文藝春秋社公式サイト
  10. ^ 中日新聞 2012年4月11日
  11. ^ 奥谷通教、増田俊也『シャトゥーン〜ヒグマの森〜』第3巻、集英社、2009年。あとがき
  12. ^ 新潮社公式サイト
  13. ^ 『週刊文春』2016年6月2日号、産経新聞2016年7月10日付
  14. ^ 増田俊也「さよならスペンサーなんて言わない」 『本の雑誌』2010年5月号 p.30
  15. ^ 『オール讀物』2012年5月号
  16. ^ 『週刊大衆』2013年4月13日号
  17. ^ 北海道新聞
  18. ^ 『読売新聞』配信記事 2006年10月3日
  19. ^ AERA』2016年11月28日号
  20. ^ 『月刊武道』2016年6月号
  21. ^ 『ゴング格闘技』2016年7月号
  22. ^ 『キネマ旬報』 2015年8月上旬号
  23. ^ 週刊少年ジャンプ」銀魂百六十三訓「シャトゥーンという小説を読みました。もう怖くて山に行けそうもないです」、2007年
  24. ^ ジャンプスクエア」直撃インタビューで「今もっとも気になる作品」として『シャトゥーン』を挙げている、2009年5月号
  25. ^ 『週刊ポスト』2013年4月5日号
  26. ^ 『週刊文春』2013年4月4日号
  27. ^ 『週刊文春』2011年11月17日
  28. ^ 「波」2011年10月号
  29. ^ 『日刊ゲンダイ』2011年11月9日
  30. ^ 「新潮45」2012年10月号

外部リンク[編集]