ルース・ベイダー・ギンズバーグ

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ルース・ベイダー・ギンズバーグ
Ruth Bader Ginsburg
生年月日 (1933-03-15) 1933年3月15日(86歳)
出生地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 ニューヨーク市ブルックリン
出身校 コーネル大学ハーバード・ロー・スクールコロンビア大学
宗教 ユダヤ教

任期 1993年8月10日 -
任命者 ビル・クリントン
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ルース・ベイダー・ギンズバーグRuth Bader Ginsburg1933年3月15日 - )はアメリカ合衆国最高裁判所の判事[1]ビル・クリントン大統領から1993年に指名された。現在連邦最高裁に3人いる女性判事の一人である[2]

人物[編集]

ニューヨーク市ブルックリン生まれ。父親はオデッサ出身のユダヤ系移民で、母親はオーストリア系ユダヤ人だった[3]

コーネル大学をへてハーバード大学ロースクールへ進学。このとき500人超の全学生数に対して女子学生は9人だった[4]。在学中に同窓のマーティン・ギンズバーグと結婚、娘が生まれ、育児のため通学を一時中断する。この間にマーティンが卒業しニューヨークで職を得たためハーバード大学のあるボストンを離れ、ニューヨークにあるコロンビア大学ロースクールへ移籍して法学位を得ている[4]

ハーバード大学・コロンビア大学ともにギンズバーグは極めて優秀な成績を残したが、成績優秀者の一般的な就職先だった連邦高等裁判所やニューヨークの法律事務所には、女性であることを理由に受け入れられず、卒業後は地区裁判所判事のもとでロー・クラークとして働いた[4]

1963年にラトガース大学ロースクールで教員の職を得る。同時にアメリカ自由人権協会 (ACLU) ニュージャージー支部に参加し、ここで米国社会に残る性差別の実態に現場で接することになる。1972年、コロンビア大学ロースクールで女性として初の常勤教員となった。同時に自由人権協会で法廷闘争を数多く手がけ、性差別と戦う法律家として全国的な名声を博するようになる[5]

1980年、カーター大統領によってコロンビア特別区巡回区連邦控訴裁判所判事に指名される。ここでギンズバーグは、特に意見が鋭く対立する事件で法的な中立性を堅持する姿勢によって高い評価を得た[6]

1993年、クリントン大統領によって連邦最高裁判事に指名され就任。女性としてオコナー判事に次いで二人目であった。就任後に手がけた判決では、入学者を男子に限定していたバージニア州立軍事学校の規定を違憲とする判決 (1996年)などが知られる。

2009年に膵臓がんと診断されたが引退せず執務を継続[4]。2018年12月には85歳で転倒事故に遭い、肋骨を3本折る重傷を負ったが、その治療の際に肺の悪性腫瘍も発見され、緊急に摘出手術を受けて[7]、2019年2月に復帰した[8]。2010年にスティーブンス判事が引退して以降は、最高齢の連邦最高裁判事である。

ギンズバーグは本来、2016年のアメリカ大統領選挙で民主党候補者のヒラリー・クリントンが大統領に当選して、自分と同じリベラル派の判事が後任として任命されれば、安心して引退できるはずであった(アメリカでは伝統的に、共和党出身の大統領は連邦最高裁の判事として保守派の判事を任命し、民主党出身の大統領はギンズバーグのようにリベラル派の判事を任命する傾向がある)。ところが、実際に大統領に当選したのは共和党候補者のドナルド・トランプであった。トランプ大統領は他の連邦最高裁判事の後任として保守派の判事を次々に任命し、連邦最高裁の完全な保守化を図っているため、リベラル派のギンズバーグはこれ以上の連邦最高裁の保守化を食い止めるために、少なくともトランプが退陣して新たな民主党出身の大統領が現れるまでは引退を許されない立場になってしまったという[9]

次男ジェームズは音楽プロデューサー、長女ジェーンコロンビア大学ロースクール教授。夫のマーティンも2010年に死去するまでジョージタウン大学ロースクール教授だった。

大衆文化における人気[編集]

2018年8月、女性の権利を訴えるデモ行進で掲げられたギンズバーグ判事の似顔絵。

米国の連邦最高裁では、リベラル派・保守派判事の構成状況によって妊娠中絶や銃規制など重大な憲法判断が大きく揺れ動くため、もともと連邦最高裁判事の去就は一般社会の注目を集めやすい[6]。とりわけギンズバーグは、共和党のトランプ政権によって保守化された現在の連邦最高裁においてリベラルな判断を示す貴重な存在であること、また慣例を破って一般メディアの取材にしばしば応じることから、性差別とたたかうリベラル派法律家の代表格として広く動向が注目されるようになった[4]

この傾向は、ギンズバーグと対立するトランプ政権の発足前後からさらに強まり、ギンズバーグ判事の半生を題材にした子供向けの絵本が相次いで出版されたほか[10]、判事を描いたマグカップやTシャツなど関連グッズまで売り出された[11][12]。3大TVネットワークNBCの人気バラエティ番組「サタデー・ナイト・ライブ」では、著名コメディアンのケイト・マッキノン扮するギンズバーグ判事が時事問題を取り上げるパロディの放送を開始[13]。こうした現象をとらえて、判事は「ポップ・カルチャーの新しい象徴」とも評されるようになった[14]

ケネディ大統領が「JFK」と呼ばれるのと同様、判事も名前の頭文字をとって「RBG」と呼ばれることが多い。また判事の動向をフォローする個人ブログが人気を集め、そのブログが著名ラッパー「ノトーリアス・B.I.G.」をもじって「ノトーリアス・R.B.G」と題されていた[15]ことから、メディアでもその呼び名が使われることがある[16]

2018年には判事の活動を描くドキュメンタリー『RBG 最強の85才』や[17]、伝記映画『ビリーブ 未来への大逆転』が公開された[16]。後者は甥であるダニエル・スティールマンが脚本を担当し、ルース・ベイダー・ギンズバーグ役にはフェリシティ・ジョーンズを迎え、ミミ・レダーが監督している。

語録・エピソード[編集]

  • 「子供を産むかどうかは女性の生き方・幸福と尊厳にとって核心的な決断です。それはその女性本人が自らのために決断すべきことなのです。その決断を政府が女性にかわって行うならば、その女性は、自らの選択に責任を負うべき成熟した大人として扱われていないということにほかなりません」(1993年、指名公聴会での発言[18]
  • 「あなたが男子だったら、教師になってもよいし、看護師になってもよいし、それから人形を集める趣味だって…なんでもできますね。私たちはそれぞれがもつ自分の才能を、それがどんなものであれ、伸ばしてゆくことができなければならない。人工的な障壁によってそれが阻まれてはいけないのです」(2002年、ネットメディアのインタビュー[19]
  • (定員が9人の)連邦最高裁判事のうち何人が女性になったら満足するのか、と聞かれることがあります。私の答えはいつも同じ、『9人』です」(2015年、ジョージタウン大学での講演[20]
  • #MeToo運動について尋ねられて)「(運動が起こるのは)時間の問題だったと思います。あまりにも長いあいだ女性は沈黙しつづけ、自分にできることは何もないのだと考えてきました。しかしいまや法律は女性と男性を問わず、ハラスメントを受ける人々の側にあります。それは素晴らしいことです」(2018年、ラジオ番組のインタビュー[21]
  • 2016年7月に行われた3回の異なるインタビューで、ルース・ベイダー・ギンズバーグは当時2016年大統領選挙の共和党推定候補者であったドナルド・トランプを批判し、ニューヨーク・タイムスAP通信に対してトランプが大統領になる可能性を考えたくないと述べ、ニュージーランドへの移住を検討するかもしれないという冗談を述べた[22][23]。後日、彼女は彼女自身の発言が「無分別」なものであったとしてトランプに謝罪した[24]

出典[編集]

  1. ^ ギンズバーグ米最高裁判事が悪性腫瘍摘出、最高齢のリベラル派” (日本語). www.afpbb.com. 2019年1月3日閲覧。
  2. ^ Current Members”. www.supremecourt.gov. 2019年1月3日閲覧。
  3. ^ Ruth Bader Ginsburg – Academy of Achievement”. 2018年5月31日閲覧。
  4. ^ a b c d e Binion, Gayle. "Ruth Bader Ginsburg." American Governance, ed. by Stephen Schechter, Macmillan US, 1st ed., 2016.; Morris, Melanie "Ruth Bader Ginsburg (b. 1933)." Women's Rights in the United States : A Comprehensive Encyclopedia of Issues, Events, and People, 2014.
  5. ^ Heather K. DeMatos "Ruth Bader Ginsburg", Encyclopedia of the Fourth Amendment, ed. By John R. Vile & David L. Hudson Jr. Book, CQ Press, 2013.
  6. ^ a b "Judges, Women." From Suffrage to the Senate: America's Political Women, Suzanne O'Dea, Grey House Publishing, 3rd ed., 2013.; Chang, Michael, and Michael J. O'Neal. "Ruth Bader Ginsburg: ORIGINAL ANALYSIS 1933." Milestone Documents of American Leaders, ed. by Grey House Publishing, Salem Press, 2nd ed., 2017.
  7. ^ “85歳の米最高裁判事の健康に注目集まる 骨折と肺がん” (英語). BBCニュース. (2018年12月24日). https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-46670620 2019年1月3日閲覧。 
  8. ^ Reporter, Ariane de Vogue, CNN Supreme Court. “Ruth Bader Ginsburg returns to Supreme Court”. CNN. 2019年2月23日閲覧。
  9. ^ FNNPRIME アメリカ最高裁の名物おばあちゃん判事は大のトランプ嫌い
  10. ^ Kathleen Krull and illustrated by Nancy Zhang, No Truth Without Ruth: The Life of Ruth Bader Ginsburg (Harper Collins, 2018); Debbie Levy and Elizabeth Baddeley, I Dissent: Ruth Bader Ginsburg Makes Her Mark (Simon & Schuster, 2016); Jonah Winter and Stacy Innerst, Ruth Bader Ginsburg: The Case of R.B.G. vs. Inequality (Harry N. Abrams, 2017)
  11. ^ Strand Bookstore”. 2019年1月5日閲覧。
  12. ^ Notorious R.B.G. Collection - LookHUMAN | Funny Pop Culture T-Shirts, Tanks, Mugs & More” (英語). www.lookhuman.com. 2019年1月6日閲覧。
  13. ^ Watch Ruth Bader Ginsburg Sketches From SNL Played By Kate McKinnon - NBC.com”. NBC. 2019年1月6日閲覧。
  14. ^ 'RBG': How Ruth Bader Ginsburg became a legit pop-culture icon (USA Today, 5.1, 2018); Pop culture needs to give Ruth Bader Ginsburg some space (Los Angeles Times, 11.20, 2018); Ruth Bader Ginsburg: the soft-spoken justice turned pop culture icon (The Guardian, 12.15, 2018)
  15. ^ Notorious R.B.G.”. 2019年1月5日閲覧。
  16. ^ a b 男女平等求めた米女性弁護士描く「ビリーブ」、主人公のおいが脚本」『』、2018年12月21日。2019年1月3日閲覧。
  17. ^ RBG”. 2019年1月5日閲覧。
  18. ^ “THE SUPREME COURT; Excerpts From Senate Hearing on the Ginsburg Nomination” (英語). The New York Times. (1993年7月22日). ISSN 0362-4331. https://www.nytimes.com/1993/07/22/us/the-supreme-court-excerpts-from-senate-hearing-on-the-ginsburg-nomination.html 2019年1月8日閲覧。 
  19. ^ MAKERS. “Ruth Bader Ginsburg” (英語). MAKERS. 2019年1月8日閲覧。
  20. ^ When will there be enough women on the Supreme Court? Justice Ginsburg answers that question” (英語). PBS NewsHour (2015年2月5日). 2019年1月8日閲覧。
  21. ^ Justice Ruth Bader Ginsburg Reflects On The #MeToo Movement: 'It's About Time'” (英語). NPR.org. 2019年1月8日閲覧。
  22. ^ “Ruth Bader Ginsburg, No Fan of Donald Trump, Critiques Latest Term”. New York TImes. (2016年7月10日). http://www.nytimes.com/2016/07/11/us/politics/ruth-bader-ginsburg-no-fan-of-donald-trump-critiques-latest-term.html?_r=1 
  23. ^ Williams, Pete; Merod, Anna; Frumin, Aliyah (2016年7月13日). “Did Ginsburg Go Too Far in Criticism of Trump?”. NBC News. http://www.nbcnews.com/politics/2016-election/ruth-bader-ginsburg-doubles-down-trump-criticism-n608006 2016年10月17日閲覧。 
  24. ^ “Ruth Ginsburg Apologizes for Criticizing Trump”. The New York Times. (2016年7月14日). http://www.nytimes.com/2016/07/15/us/politics/ruth-bader-ginsburg-donald-trump.html 2016年7月14日閲覧。 

文献[編集]

  • Carmon, Irin and Shana Knizhnik (2015) Notorious RBG: The Life and Times of Ruth Bader Ginsburg (Dey Street Books)
  • De Hart, Jane Sherron (2018) Ruth Bader Ginsburg: A Life (Knopf)
  • Dodson, Scott (2015) The Legacy of Ruth Bader Ginsburg (Cambridge UP)
  • Hartnett, Mary and Wendy W. Williams (2016) Ruth Bader Ginsburg- In Her Own Words (Simon & Schuster)
  • ジョナ・ウィンター、ステイシー・イナースト(渋谷弘子訳)『大統領を動かした女性ルース・ギンズバーグ : 男女差別とたたかう最高裁判事』汐文社、2018. ISBN 978-4811324753

外部リンク[編集]