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ハンス・レヴィー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ハンス・レヴィー
1975年のハンス・レヴィ
(George Bergmanによる写真)
生誕 (1904-10-20) 1904年10月20日
ブレスラウドイツ
死没 1988年8月23日(1988-08-23)(83歳没)
バークレー (カリフォルニア州)アメリカ合衆国
国籍 アメリカ合衆国
研究分野 解析学偏微分方程式多変数複素関数
出身校 ゲッティンゲン大学
博士課程
指導教員
リヒャルト・クーラント[1]
博士課程
指導学生
デイビット・キンダレレール英語版
主な業績 CFL条件レヴィーの例英語版
影響を
与えた人物
数値解析偏微分方程式多変数複素関数
主な受賞歴 ウルフ賞数学部門 (1986)[2]
プロジェクト:人物伝
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ハンス・レヴィーHans Lewy1904年10月20日 - 1988年8月23日)は、ユダヤ人ドイツ生まれのアメリカ合衆国数学者で、偏微分方程式多変数複素関数に関する業績で著名である[3]

生涯

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レヴィーは1904年10月20日に、ドイツブレスラウ(現在はポーランドヴロツワフ)に生まれた。時代遅れ[4][5]のため地元のヴロツワフ大学を避けるようアドバイスを受け、ワイマール共和国のハイパーインフレ英語版の間、線路の整備の副業[5]で稼ぎながら、ゲッティンゲン大学で勉学を開始した。ゲッティンゲンでは、レヴィーは数学と物理学を学んだ。教師には、マックス・ボルンリチャード・クーラントジェームズ・フランクダフィット・ヒルベルトエドムント・ランダウエミー・ネーターアレクサンダー・オストロウスキー英語版がいた。1926年レヴィーは学位を得た。その時、レヴィーと友人であるクルト・オットー・フリードリヒス英語版は、クーラントの助手となり、ゲッティンゲンの私講師(privatdozent)となった。有名なCFL条件は、1928年のこの時に由来する[4][5]

クーラントの推薦で、レヴィーはロックフェラー奨学金を獲得し、その資金で1929年ローマに旅行し、トゥーリオ・レヴィ=チヴィタフェデリゴ・エンリケス英語版と共に代数幾何学を研究し、そして1930年パリに旅行し、ジャック・アダマールのセミナーに参加した。1933年ヒトラーが首相に選ばれた後、ハーバート・ビュースマン英語版の勧めによりドイツをまた離れることになった。レヴィーはマドリードにおいて職を紹介されたが、フランシスコ・フランコの下での未来を恐れ、それを断った。レヴィーはイタリアとフランスを再訪問したが、避難外国人学者支援緊急委員会英語版の招待とアダマールの援助により、アメリカのブラウン大学の2年間の職を得た。その期間の終わり、レヴィーはカリフォルニア大学バークレー校に移った[4][5]

第二次世界大戦の間、レヴィーはパイロットの資格を取得したが、アバディーン性能試験場で働いた。レヴィーは1947年、ヘレン・クロスバイ(Helen Crosby)と結婚した[5]

1950年、レヴィーは忠誠の宣誓に署名するのを拒んで、バークレーを解雇された[5][6][7]。1952年と1953年、レヴィーはハーバード大学スタンフォード大学で教え[5]カリフォルニア州最高裁判所の事案であるトルーマン v. アンダーヒル英語版により復職した[6][7]

レヴィーは1972年バークレーを退職し、1973年ミネソタ大学の数学のOrdway Profeffornの一人になった。1988年8月23日バークレーで、レヴィーは死去した[5][6][8]

レヴィーは偏微分方程式への顕著な貢献で知られている。1957年の2階線型偏微分方程式の有名な例は、驚くべきもので想定外のものであったため、現代解析を重要な方法に形成しただけでなく、全分野が新しい方向へ向かった。この例に基づいて、ルイス・ニーレンバーグラース・ヘルマンダー等は、その分野の理論と構造に対する重要な変化を概略した。これは多くの解析学者と数学者により主要な発展として受け入れられた。

以下の分野でもレヴィーは業績を残した。非線形双曲型・楕円型方程式に関連する多変数複素関数。1930年代初期の(現在ではソボレフ空間と呼ばれている)波面の初期値問題の良設定。解析データに対するヘルマン・ワイルヘルマン・ミンコフスキーの古典的な問題の解(元の問題は1949年、ルイス・ニーレンバーグにより博士論文の一部として解かれた)。極小曲面の拡張可能性と完全に、あるいは部分的に自由な境界の解析的性質。水力学における水の波面の自由境界問題。そして、「水力学的」観点からの数論の平方剰余の相互法則の証明。

賞と名誉

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1964年、レヴィーは米国科学アカデミーの会員に選出され、アメリカ芸術科学アカデミーの会員にもなった[6]。1972年、アッカデーミア・デイ・リンチェイの外国人会員になった[5]。1979年、スティール賞[5]、1986年偏微分方程式に対する業績に対してウルフ賞数学部門を受賞した[2]。1986年、ボン大学はレヴィーに名誉学位を授けた[8]

Publications

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デイビット・キンダレレール英語版により編集され、レヴィーの最も重要な業績を含んだ選集は2冊の書籍(Kinderlehrer 2002a)と(Kinderlehrer 2002b)として出版された。

次の業績は「Selecta」に原語、あるいは翻訳された形で含まれている。

関連項目

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脚注

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  1. ^ Hans Lewy - Mathematics Genealogy Project
  2. ^ a b Wolf Foundation (2003) (Hebrew), THE 1984/5 WOLF FOUNDATION PRIZE IN MATHEMATICS, http://www.wolffund.org.il/index.php?dir=site&page=winners&name=&prize=&year=1984&field=3004 September 14, 2013閲覧。 .
  3. ^ Chern, Shiing-Shen; Hirzebruch, Friedrich, eds (2001). “"Hans Lewy" prepared by S. Hildebrandt”. Wolf Prize. vol. 2. World Scientific. pp. 264–310. https://books.google.com/books?id=GHFtMc9NTkYC&pg=PA264 
  4. ^ a b c Albers, Donald J.; Alexanderson, Gerald L.; Reid, Constance, eds. (1990), “Hans Lewy”, More Mathematical People, Harcourt Brace Jovanovich, pp. 180–194 .
  5. ^ a b c d e f g h i j Kinderlehrer, David (2002), “Hans Lewy. A brief biographical sketch”, in Kinderlehrer, David, Hans Lewy Selecta. Volume 2, Contemporary Mathematicians, Boston-Basel-Stuttgart: Birkhäuser Verlag, ISBN 0-8176-3524-6, https://books.google.com/books?id=mX8hTcETCc4C&pg=PR15 .
  6. ^ a b c d “Dr. Hans Lewy, 83, Mathematics Professor”, The New York Times, (September 2, 1988), https://www.nytimes.com/1988/09/02/obituaries/dr-hans-lewy-83-mathematics-profesor.html 
  7. ^ a b Sherri Chasin Calvo (2000), “Politics Impinges upon Mathematics”, in Neil Schlager, Science and Its Times: Understanding the Social Significance of Scientific Discovery. Vol. VII: 1950 to present, Gale Group, pp. 242–244, ISBN 978-0-7876-3939-6, https://archive.org/details/scienceitstimesu0000unse/page/242 .
  8. ^ a b Protter, M.; J. L., Kelley; Kato, T.; Lehmer, D. H. (1988), “Hans Lewy, Mathematics: Berkeley. 1904-1988 Professor Emeritus”, in Krogh, David, 1988, University of California: In Memoriam, Berkeley, CA: University of California, Berkeley, pp. 85–87, http://texts.cdlib.org/view?docId=hb967nb5k3&doc.view=frames&chunk.id=div00032&toc.depth=1&toc.id= 
  9. ^ Reid, W. T. (1940). “Review: Aspects of the Calculus of Variations, notes by J. W. Green from lectures by Hans Lewy”. Bull. Amer. Math. Soc. 46 (7): 595–596. doi:10.1090/s0002-9904-1940-07238-6. http://projecteuclid.org/euclid.bams/1183502779. 

外部リンク

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