イングナ・フレイ

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イングナ・フレイ[1]イングナル・フレイ[2]とも)(Ingunar-Freyr)は、北欧神話において言及される概念。

フォン・フリーセン英語版はイングナ・フレイを「イング神(=フレイ神)を崇拝する子孫の神」、すなわちフレイ神そのものをトートロジー的に指す表現であるとするが、諸説があり定まっていない。古英語による叙事詩『ベーオウルフ』では酷似した表現フレーァ・イングウィーナ(frea Ingwina)がデネの王フロースガールの呼称として用いられているが、これがイングナ・フレイと同一視できるかについてもやはり統一された見解はない。[3]

記述[編集]

ロキの口論[編集]

フレイは、神々が滅びるまで、河口に縛られたまま横になっている。もう口をつぐまんと今度はお前が縛られる番だぞ、この災いの鍛冶屋め」
ロキギュミルの娘を黄金で買い、あんなふうに剣をやって仕舞って。ムスペルの子供たちが、ミュルクヴィズをこえて、やってきたら、どうやって戦ったらいいか、分かるまい。みじめなやつだ」
ビュグヴィル「よいか、もし、わしがイングナ・フレイのように生れが良く、何不自由ない身の上だったら、この災い鴉め、貴様の骨の髄を粉々にして、手足はバラバラにして打ち砕いてやるところだ」
ロキ「そこで尻尾を振って、クンクン鼻を鳴らしているチビは誰だ。お前はいつもフレイの耳の中に隠れたり、石臼の下でペチャペチャ喋っているんだろ」[4]

ベーオウルフ[編集]

英明な人イングヴィネの君主に対しこの武人ことばを掛ける
御心満たす心地よき夜を過ごされたかと[5]

脚注[編集]

  1. ^ V.G.ネッケル他編『エッダ 古代北欧歌謡集』(谷口幸男訳、新潮社、1973年)85頁等でみられる表記。
  2. ^ 『中世文学集III エッダ/グレティルのサガ』(松谷健二訳、筑摩書房〈ちくま文庫〉、1986年)40頁にみられる表記。
  3. ^ 『北欧学 構想と主題――北欧神話研究の視点から―』 尾崎和彦 2018 北樹出版 pp.318,364-375
  4. ^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』谷口幸男訳 pp.84f
  5. ^ 『中世英雄叙事詩 ベーオウルフ 韻文訳』 枡矢好弘訳 pp.109f

関連項目[編集]