アレン・M・サムナー級駆逐艦

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「DD-726 メレディス」
「DD-726 メレディス」
基本情報
種別 駆逐艦
命名基準 海軍功労者。
運用者
就役期間 アメリカ合衆国の旗 1943年~1975年
計画数 70隻
建造数 58隻
前級 フレッチャー級駆逐艦
準同型艦 ロバート・H・スミス級機雷敷設駆逐艦英語版
次級 ギアリング級駆逐艦
要目 (1944年時点の一例)
基準排水量 2,200~2,220t
満載排水量 3,515t
全長 119メートル (390 ft)
全幅 12.5メートル (41 ft)
吃水 4.6メートル (15 ft)
ボイラー 39.7kgf/cm², 454℃×4缶
主機関 蒸気タービン×2基
推進器 推進器(350rpm)×2軸
出力 60,000 shp
速力 34 ノット (63 km/h)
航続距離 4,220 海里 (7,820 km) (15kt巡航時)
乗員 336名
兵装
FCS
  • Mk.37 (5インチ砲用)×1基
  • Mk.51 (40mm機銃用)×4基
レーダー
  • SC 対空捜索用
  • SG 対水上捜索用
ソナー QGA 探信儀
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アレン・M・サムナー級駆逐艦 (英語: Allen M. Sumner-class destroyer) は、第二次世界大戦中に建造されたアメリカ海軍駆逐艦の艦級。

先行するフレッチャー級の拡大発展型であるが、艦のバランスと航続性能の限界が指摘され、さらに改良されたギアリング級へと移行した。第二次世界大戦後も艦隊駆逐艦の一翼を担い、近代化改修を受けつつ1970年代まで運用されていたほか、多くの退役艦が同盟国で再就役し、一部艦は1990年代まで現役であった。

設計[編集]

本級は当初、フレッチャー級の改良型として、38口径5インチ単装砲6基の搭載を計画した。しかし設計途中で、同じMk.12砲を連装に配したMk.38砲塔が実用化され、ネックになっていた損傷時の応急操作も発電機能力の増強で対応できる見通しが立った[1]ことからこちらが採用され、前部に2基を背負式に、後部に1基を搭載することとされた。このような経緯から、設計面ではおおむね同級のものが踏襲されているが、2・3番砲の射界を確保するため、上部構造物は減高された。なお初期建造艦では、イギリス式の後部が暴露された構造が採用されていたが、用兵側から不評であり、後に改修された。また、1基あたり約50トンもの大重量となる連装砲塔を前部に2基搭載したことによって艦首側の重量が増加し、予備浮力が減少したことから、特に荒天時の凌波性低下が顕著であったほか、船体にかかる負荷も大きいという問題があった[2]。またフレッチャー級では1枚舵であったのに対し、本級より2枚舵とされている[3]

主機関も同様にフレッチャー級のものがベースとされており、主ボイラーはバブコック・アンド・ウィルコックス(B&W)社製の重油専焼式水管ボイラーを4缶、主機はゼネラル・エレクトリック(GE)社製のオール・ギヤード蒸気タービンと、いずれも同形式である。船体が大型化していることから、速力はやや低下した。また蒸気圧力は565 psi (39.7 kgf/cm²)に低下している[4]。燃料搭載量は重油538 t、航続力は15ノットで6,500海里と、フレッチャー級と同性能で計画されたが、戦時では同速力で4,220海里と、既に航続距離の低落傾向が指摘されていたフレッチャー級の4,490海里よりもさらに短縮していたことから、用兵側の不満を買った。当時、艦隊主力が高速の航空母艦に切り替わり、巡航速力が向上していたことから、これは特に問題であった[1][2]

装備[編集]

FRAM-II改修後の「ウォルドロン」。

上記の通り、本級では、主砲として38口径5インチ両用砲を3基の連装砲塔に配して、計6門を搭載しており、同砲5門搭載のフレッチャー級と比して砲撃戦力は向上した。また連装砲塔の採用によって甲板上のスペースが活用できるようになったことから高角機銃も大幅に増強されており、当初より1番煙突両舷にボフォース 40mm機銃の連装砲架が各1基、2番煙突後方の右舷側と後部魚雷発射管の左舷側に4連装砲架が各1基の計12門が搭載されていた。その後、日本軍特別攻撃隊の脅威が深刻となったことから、後部魚雷発射管をバーターに、4連装砲架がさらに1基搭載されている[2]

第二次世界大戦後、水中高速潜の普及・原子力潜水艦の登場に伴い、護衛駆逐艦より高速な艦隊駆逐艦に対潜戦能力が求められるようになったことから、1950年代初頭には爆雷投下軌条を撤去してヘッジホッグ対潜迫撃砲を搭載し、またソナーを旧式のサーチライト・ソナーから新型のスキャニング・ソナーであるAN/SQS-4に換装する改修が行われた。また40mm・20mm機銃も、戦後に実用化された新型両用砲であるMk.33 3インチ連装速射砲に換装されている。その後、1959年から1960年代初頭には、その時点で現役にあった本級の相当数(32隻)を対象として、FRAM-II改修が行われた。これは艦齢を5年分延長し、レーダーを更新する(対空捜索用はAN/SPS-29 / 37 / 40のいずれか一つ、対水上捜索用はAN/SPS-10)とともに、5連装長魚雷発射管と爆雷装備をバーターとして対潜長魚雷発射管、3連装短魚雷発射管QH-50 DASHなど新世代の対潜兵器を搭載するものであった。また一部艦にはAN/SQA-10可変深度ソナーも搭載された[1][5][6]

配備[編集]

上記のような問題点が指摘されたことから、当初100隻とされた建造計画は58隻に縮小され、改良型である次級ギアリング級に移行することになる。 竣工した艦の多くは太平洋戦線に投入された。沖縄戦にも多数が参加し、特攻機の攻撃によって「マナート・L・エベール」と「ドレクスラー」の2隻が戦没、8隻が損傷を受けている。

第二次大戦後はギアリング級と同様にFRAM改装を受けて就役を続け、ベトナム戦争後に至るまで長く米海軍の駆逐艦勢力を支えた。

同型艦一覧
 アメリカ海軍 退役/再就役後
# 艦名 造船所 就役 FRAM
Mk.II
退役 再就役先 # 艦名
DD-692 アレン・M・サムナー
USS Allen M. Sumner
フェデラル・
シップビルディング・
アンド・ドライドック
1944年 1973年 国防再利用販売サービス (DRMS) により
スクラップとして売却
DD-693 モール
USS Moale
DD-694 イングラハム
USS Ingraham
1971年  ギリシャ海軍 D211 ミアオウリス
ΒΠ Μιαούλης
DD-695 クーパー
USS Cooper
1944年12月3日日本海軍「竹」」の雷撃により戦没
DD-696 イングリッシュ
USS English
× 1970年  中華民国海軍 DD-6 恵陽
ROCS Huei Yang
DD-697 チャールズ・S・スペリー
USS Charles S. Sperry
1973年  チリ海軍 D-16 ミニストロ・ゼンテノ
Ministro Zenteno
DD-698 オールト
USS Ault
1970年 国防再利用販売サービス (DRMS) により
スクラップとして売却
DD-699 ウォルドロン
USS Waldron
1973年  コロンビア海軍 DD-03 サンタンデール
ARC Santander
DD-700 ヘインズワース
USS Haynesworth
× 1970年  中華民国海軍 DD-5 岳陽
ROCS Yuen Yang
DD-701 ジョン・W・ウィークス
USS John W. Weeks
国防再利用販売サービス (DRMS) により
スクラップとして売却
DD-702 ハンク
USS Hank
1972年  アルゼンチン海軍 D-25 セグイ
ARA Segui
DD-703 ウォレス・L・リンド
USS Wallace L. Lind
1973年  韓国海軍 DD-917 大邱
ROKS Dae Gu
DD-704 ボリー
USS Borie
1972年  アルゼンチン海軍 D-26 イポリト・ブシャール
ARA Hipólito Bouchard
DD-705 コンプトン
USS Compton
×  ブラジル海軍 D-34 マト・グロッソ
Mato Grosso
DD-706 ゲイナード
USS Gainard
1971年 国防再利用販売サービス (DRMS) により
スクラップとして売却
DD-707 ソーレイ
USS Soley
1970年 実艦標的として海没
DD-708 ハーラン・R・ディクソン
USS Harlan R. Dickson
1972年 国防再利用販売サービス (DRMS) により
スクラップとして売却
DD-709 ヒュー・パーヴィス
USS Hugh Purvis
1945年  トルコ海軍 F253 ザフェル
TCG Zafer
DD-722 バートン
USS Barton
バス鉄工所 1943年 × 1968年 実艦標的として海没
DD-723 ウォーク
USS Walke
1944年 1970年 国防再利用販売サービス (DRMS) により
スクラップとして売却
DD-724 ラフィー
USS Laffey
1975年 パトリオッツ・ポイント海軍博物館で記念艦として展示
DD-725 オブライエン
USS O'Brien
1972年 実艦標的として海没
DD-726 メレディス
USS Meredith
1944年6月9日ノルマンディー上陸作戦の援護中に触雷して戦没
DD-727 デ・ヘヴン
USS De Haven
1973年  韓国海軍 DD-918 仁川
ROKS Incheon
DD-728 マンスフィールド
USS Mansfield
 アルゼンチン海軍 予備部品として売却
DD-729 ライマン・K・スウェンソン
USS Lyman K. Swenson
1971年  中華民国海軍
DD-730 コレット
USS Collett
1970年  アルゼンチン海軍 D-29 ピエドラブエナ
ARA Piedrabuena
DD-731 マドックス
USS Maddox
× 1969年  中華民国海軍 DD-10/
DDG-910
鄱陽
ROCS Po Yang
DD-732 ハイマン
USS Hyman
国防再利用販売サービス (DRMS) により
スクラップとして売却
DD-733 マナート・L・エベール
USS Mannert L. Abele
1945年4月12日日本海軍桜花による攻撃で戦没
DD-734 パーディ
USS Purdy
× 1973年 国防再利用販売サービス (DRMS) により
スクラップとして売却
DD-735
DM-23
ロバート・H・スミス
USS Robert H. Smith
ロバート・H・スミス級機雷敷設駆逐艦英語版として建造
DD-736
DM-24
トーマス・E・フレーザー
USS Thomas E. Fraser
DD-737
DM-25
シャノン
USS Shannon
DD-738
DM-26
ハリー・F・バウアー
USS Harry F. Bauer
DD-739
DM-27
アダムス
USS Adams
DD-740
DM-28
トルマン
USS Tolman
DD-741 ドレクスラー
USS Drexler
1945年5月28日菊水八号作戦による特別攻撃を受け戦没
DD-744 ブルー
USS Blue
ベスレヘム造船,
スタテンアイランド造船所
1971年 実艦標的として海没
DD-745 ブラッシュ
USS Brush
× 1969年  中華民国海軍 DD-1
DDG-901
襄陽
ROCS Hsiang Yang
DD-746 タウシッグ
USS Taussig
1970年 DD-14
DDG-914
洛陽
ROCS Lo Yang
DD-747 サミュエル・N・ムーア
USS Samuel N. Moore
× 1969年 DD-2
DDG-902
衡陽
ROCS Heng Yang
DD-748 ハリー・E・ハバード
USS Harry E. Hubbard
1969年 国防再利用販売サービス (DRMS) により
スクラップとして売却
DD-749
DM-29
ヘンリー・A・ワイリー
USS Henry A. Wiley
ロバート・H・スミス級機雷敷設駆逐艦として建造
DD-750
DM-30
シェア
USS Shea
DD-751
DM-31
J・ウィリアム・ディッター
USS J. William Ditter
DD-752 アルフレッド・A・カニンガム
USS Alfred A. Cunningham
1971年 実艦標的として海没
DD-753 ジョン・R・ピアース
USS John R. Pierce
× 1971年 国防再利用販売サービス (DRMS) により
スクラップとして売却
DD-754 フランク・E・エヴァンス
USS Frank E. Evans
1945年 1969年6月3日、南シナ海にてオーストラリア海軍空母「メルボルン」との衝突事故により艦体は前後に二分され、艦前部が沈没。
残存の艦後部も同年10月10日にスービック湾にて実艦標的として撃沈処分。
DD-755 ジョン・A・ボール
USS John A. Bole
1970年  中華民国海軍 予備部品として売却
DD-756 ビーティ
USS Beatty
× 1972年  ベネズエラ海軍 D-21 カラボボ
ARBV Carabobo
DD-757 パットナム
USS Putnam
ベスレヘム造船,
サンフランシスコ造船所
1944年 1973年 国防再利用販売サービス (DRMS) により
スクラップとして売却
DD-758 ストロング
USS Strong
 ブラジル海軍 D-37 リオ・グランデ・ド・ノルチ
Rio Grande do Norte
DD-759 ロフバーグ
USS Lofberg
1945年 1971年  中華民国海軍 予備部品として売却
DD-760 ジョン・W・トマソン
USS John W. Thomason
1970年  中華民国海軍 DD-15/
DDG-915
南陽
ROCS Nan Yang
DD-761 バック
USS Buck
1973年  ブラジル海軍 D-36 アラゴアス
Alagoas
DD-762 ヘンリー
USS Henley
× 国防再利用販売サービス (DRMS) により
スクラップとして売却
DD-770 ロウリー
USS Lowry
ベスレヘム造船,
サン・ペドロ造船所
1944年  ブラジル海軍 D-36 エスピリトサント
Espirito Santo
DD-771
DM-32
リンゼイ
USS Lindsey
ロバート・H・スミス級機雷敷設駆逐艦として建造
DD-772
DM-33
グウィン
USS Gwin
DD-773
DM-34
アーロン・ワード
USS Aaron Ward
DD-774 ヒュー・W・ハドレイ
USS Hugh W. Hadley
× 1945年 スクラップとして売却
DD-775 ウィラード・キース
USS Willard Keith
1972年  コロンビア海軍 DD-02 カルダス
ARC Caldas
DD-776 ジェームス・C・オーウェンズ
USS James C. Owens
1945年 1973年  ブラジル海軍 D35 セルジーペ
Sergipe
DD-777 ゼラース
USS Zellars
ベスレヘム造船,
シアトル造船所
1944年 1971年  イラン海軍 D61 /
DDG-7
バブル
Babr
DD-778 マッセイ
USS Massey
1969年 国防再利用販売サービス (DRMS) により
スクラップとして売却
DD-779 ダグラス・H・フォックス
USS Douglas H. Fox
1973年  チリ海軍 DD-17 ミニストロ・ポータルス
Ministro Portales
DD-780 ストームズ
USS Stormes
1945年 1970年  イラン海軍 DDG-9 パラング
Palang
DD-781 ロバート・K・ハンチントン
USS Robert K. Huntington
 ベネズエラ海軍 D-22 ファルコン
ARV Falcon
DD-857 ブリストル
USS Bristol
ベスレヘム造船,
サン・ペドロ造船所
× 1969年  中華民国海軍 DD-3 華陽
ROCS Hua Yang

アメリカ国外での運用[編集]

イラン海軍所属DDG-7 バブル(旧米海軍DD-777 ゼラース)1970年代後半に撮影。
イラン海軍のアレン・M・サムナー級駆逐艦は後の改修によって、艦橋の前部(2番砲塔があった場所)と前後の煙突の間にRIM-66 スタンダードSM-1MR SAMの単装発射筒をそれぞれ2基ずつ搭載している。[7]

退役後、20隻以上がブラジル大韓民国トルコパフラヴィー朝イラン等の西側諸国に供与された。

参考文献[編集]

  1. ^ a b c 中川務「アメリカ駆逐艦建造の歩み」、『世界の艦船』第496号、海人社、1995年5月、 141-147頁。
  2. ^ a b c 「アメリカ駆逐艦史」、『世界の艦船』第496号、海人社、1995年5月、 13-135頁。
  3. ^ 「船体 (技術面から見たアメリカ駆逐艦の発達)」、『世界の艦船』第496号、海人社、1995年5月、 150-155頁。
  4. ^ 阿部安雄「機関 (技術面から見たアメリカ駆逐艦の発達)」、『世界の艦船』第496号、海人社、1995年5月、 156-163頁。
  5. ^ Paul R. Yarnall (2013年). “Destroyer Special Features - FRAM Fleet Rehabilitation And Modernization” (英語). 2013年9月28日閲覧。
  6. ^ 香田洋二「国産護衛艦建造の歩み(第11回)2次防(その3)「たかつき」型/国産新装備」、『世界の艦船』第787号、海人社、2013年11月、 152-159頁、 NAID 40019810632
  7. ^ Babr class Globalsecurity.org

外部リンク[編集]