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くちびるに歌を

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
くちびるに歌を
著者 中田永一
発行日 2011年11月24日
発行元 小学館
ジャンル 青春小説
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 四六判
ページ数 290
公式サイト くちびるに歌を 小学館
コード ISBN 9784093863179単行本
ISBN 9784094088816文庫本
ウィキポータル 文学
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くちびるに歌を』(くちびるにうたを)は、中田永一青春小説NHK全国学校音楽コンクールの課題曲となった「手紙 〜拝啓 十五の君へ〜」の作者であるアンジェラ・アキのテレビドキュメンタリー「拝啓 十五の君へ 若松島編」(2009年5月放送)をもとに小説化された[1][2]

2011年11月24日小学館より出版され、2013年12月6日には文庫版が刊行された。また、ジュニア向け小説として2015年2月18日に小学館ジュニア文庫版が発売された。

2015年に映画化され[2]2022年に舞台化された[3]2024年に再演予定[4]

あらすじ

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長崎県五島列島のとある島の中学校。合唱部顧問の松山ハルコは産休に入るため、代わって松山の中学時代の同級生、自称ニートの臨時教員・柏木ユリに、1年間の期限付きで合唱部の指導を依頼する。

それを知った校内では柏木の美貌目当てに合唱部に入部したいという男子生徒が続出し、桑原サトル・向井ケイスケ・三田村リクらが入部したが、もともと合唱部には女子しかおらず、以前から合唱部に所属していた仲村ナズナ・長谷川コトミ・辻エリなど、受け入れる側の女子生徒と軋轢が生じる。さらに、柏木は7月に諫早市で行われるNHK全国学校音楽コンクール長崎県大会出場にあたっても独断で男子との混声での出場を決め、合唱部の男女生徒間の対立は深まる。

その一方、柏木は課題曲「手紙 〜拝啓 十五の君へ〜」にちなみ、「誰にも見せる必要はないから、15年後の自分に向けて手紙を書け」と部員に宿題を出す。これを受けて一同がそれぞれに書く手紙、あるいは登場人物同士の会話を通じ、彼らがそれぞれに抱えている秘密と心の傷も明らかになっていく。その後、合唱部内でのある事件を経て、これまでやる気のなかった合唱部所属の男子生徒もコンクールに向けて真面目に練習に打ち込み始めるなど次第に部内のわだかまりが解消されていき、やがて長崎県大会の本番に挑むことになる。

主な登場人物

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教師

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柏木ユリ
高校卒業後に上京し、音楽学校のピアノ科を卒業した後も東京でプロのピアニストとして活動しながら暮らしていたが、柏木と同級生の松山ハルコに頼まれて故郷の中学校の臨時職員に採用され、帰郷し音楽の講師に着任することになった。美貌とは対照的に口調はぶっきらぼうで教え方もあまり熱心ではない。ボロボロの軽トラックで通勤している。
なお、実写映画版では彼女にも誰にも言えない悲しい過去があり、それが原因でピアノから遠ざかってしまった設定が追加されている。
松山ハルコ
本来の音楽教師。柏木とは中学校の同級生で、柏木が以前交際していた男性と結婚している。出産のため1年間休職中。
実写映画版では(登場人物の中では)唯一ユリの悲しい過去を知っている。

男子合唱部員

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桑原サトル
中学校の男子生徒の中でも背が低く、地味で目立たない存在。自閉症の兄がいる。自分が生まれてきたことを負い目に感じていることから学校では常に周囲と距離を置き、自他ともに認める「ぼっち上級者」となっている。
NHK全国学校音楽コンクール長崎県大会出場にあたって佐世保市に前泊した際、長谷川コトミと共に事件に巻き込まれ、長谷川を庇って負傷。この一件によってその後、女子部員から「普段は頼りないけど、いざとなったら身を挺して守ってくれる」と慕われることになる。
三田村リク
柔道部と合唱部を掛け持ちしている。真面目で優しいしっかり者。体育会系の風貌の反面かなりの読書家で、桑原にお勧めの本の紹介もしている。
向井ケイスケ
交友関係は広く、学年中の生徒に顔が利く。柏木の美貌目当てに合唱部に入部、その後も真面目に練習に取り組まなかったが、あることをきっかけにその後は男子部員のリーダー的存在となる。お調子者で勉強もできないが、仲村ナズナの家庭環境を持ち出して悪口を言った後輩の男子部員を殴りつけるなど正義感も強い。
出産に臨む松山のために合唱コンクール会場でとっさの判断である計画を実行する策士の面もある。

女子合唱部員

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辻エリ
合唱部部長。銀縁眼鏡をかけ、真面目な優等生。合唱部への男子の入部が判明した際には反対派の急先鋒となる。
仲村ナズナ
小学校5年次に父親が愛人と共に蒸発。その後、母がガンで死去したため、男性に対して恨みを持っている。
辻と同じく合唱部男子入部反対派だったが、幼なじみでもある向井から過去に向井宛に書いた手紙の存在を暴露されたため、中立の立場を余儀なくされる。
長谷川コトミ
合唱部ではソプラノのパートを担当。誰に対しても優しく、桑原から「天使がこの世にいるとしたら、きっと彼女のような姿をしている」と評されるほどの美少女。辻・仲村とは違い、「課題曲の『手紙』を混声で歌いたい」という理由で男子入部に肯定的なスタンスをとっている。
NHK全国学校音楽コンクール長崎県大会出場にあたって佐世保市に前泊した際、個人的な計画を実行に移すために桑原を同伴してある場所へ出向くが、そこで事件に巻き込まれる。

その他

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神木
長谷川と同じ集落で育った1つ上の先輩。以前は長谷川と交際していたが、中学校卒業後に五島を離れ、現在は親戚の家に下宿しながら佐世保市内の高校に通っている。

漫画

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モリタイシの作画で漫画化され、『ゲッサン』で2013年4月号から2014年8月号まで連載された。

単行本

映画

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くちびるに歌を
Have a song on your lips
合唱コンクールの撮影に使用された
長崎市公会堂2010年の写真)
監督 三木孝浩
脚本 持地佑季子
登米裕一
原作 中田永一
製作 長澤修一
水口昌彦
都築伸一郎
中村理一郎
製作総指揮 豊島雅郎
出演者 新垣結衣
木村文乃
桐谷健太
恒松祐里
下田翔大
音楽 松谷卓
主題歌 アンジェラ・アキ
手紙 〜拝啓 十五の君へ〜
撮影 中山光一
編集 伊藤潤一
制作会社 アスミック・エース
製作会社 「くちびるに歌を」製作委員会
配給 アスミック・エース
公開 日本の旗 2015年2月28日
中華民国の旗 2015年9月4日
上映時間 132分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
興行収入 3.86億円[5]
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2015年2月28日公開の日本映画。配給はアスミック・エース。主演は新垣結衣[2][6]。監督は『陽だまりの彼女』、『ホットロード』などの三木孝浩

監督の三木は映画化にあたり、生徒たちの15年後が柏木になるような物語、15歳の自分と大人が交わす往復書簡のような映画にしたいと構想していた。新垣を柏木役に起用した理由としては、新垣が先生ぽくない人だからとし、まだ大人になりきれない柏木が生徒と向き合ううちに大人になっていく柏木を求めているからとしている。また、新垣の明るいイメージとのギャップも大事なことだったとしている[7]ピアノ未経験者の新垣は撮影前に3か月の特訓を行い撮影に挑んだ[1]。合唱部の生徒役については全員をオーディションを行ったうえで起用。こちらも半年間に渡る合唱練習を経て撮影に挑んでいる[8]

撮影は2014年7月より約2か月をかけて、五島列島を中心に全編に渡り長崎県で行われた。三木は映画化決定より前に五島列島を訪れて調査を行っており、五島列島で撮影をしたいと思った理由として、映画を五島列島の穏やかさで包みたかったとしている[8]

映画のキャンペーン中には女子部員7人(恒松、葵、柴田、山口、朝倉、植田、高橋)がアイドルユニット・Lips!を自主的に結成[9][10]。お遊びでセルフプロデュースしたものだったが、2015年3月24日にはポニーキャニオンから『壁ドン 〜拝啓、勇気を出せない君へ〜 (アカペラver.)』とのタイトルで楽曲が配信されるまでに至った[11]

キャスト

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主要なキャストについては、映画公式サイトの「キャスト」を参照[12]

中五島中学校教師

中五島中学校合唱部

仲村家

桑原家

その他

声のみの出演

スタッフ

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公開

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ロケ地の福江島での先行上映や、さぬき映画祭ゆうばり国際ファンタスティック映画祭での招待上映がされたのち、2015年2月28日に新宿ピカデリー他全国260スクリーンで封切られ、週末興行成績は観客動員は7万2900人(4位)、興業収入は8303万3900円(5位)を記録した[14]。10代から70代までの幅広い年代が鑑賞している[15]

評価

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全国公開前に行われた試写会では鑑賞者の95パーセントが感動したと回答した[8]ぴあ映画の調査による2月27日、28日に公開された新作映画を対象とした満足度調査では13作品中1位を獲得した[15]

受賞

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関連商品

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  • くちびるに歌をオリジナルサウンドトラック(2015年2月25日、ERJ、ESCL-4381)
  • 映像ソフト(2015年9月2日、ポニーキャニオン[18]
    • Blu-ray 愛蔵版【初回限定生産 2枚組】
    • DVD 愛蔵版【初回限定生産 2枚組】
    • DVD 通常版

舞台

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2022年12月にかめありリリオホール(葛飾区亀有文化ホール)にて上演[3]。 主演の森保まどか(元HKT48)は、演じる柏木ユリと同じく長崎県出身で、さらにピアノのソロアルバムを発売するなどピアニストとしても活動している[3]。また、今作が森保にとってHKT48卒業後初の舞台作品となった[19]

柏木が顧問となる中学校の合唱部とは別の中学校の合唱部キャストはオーディションによって選考された[3]

2024年6月にあうるすぽっとにて、永島聖羅主演で再演予定[4]

キャスト (舞台)

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2022年版

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2024年版

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  • 柏木ユリ - 永島聖羅

スタッフ (舞台)

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日程・会場 (舞台)

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  • 2022年12月 かめありリリオホール
  • 2024年6月 あうるすぽっと

脚注

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  1. ^ a b “新垣結衣、プロ級のピアノ演奏初公開! 撮影終え「プレッシャーから解放」”. マイナビニュース (マイナビ). (2014年12月16日). https://news.mynavi.jp/article/20141216-a234/ 2017年3月6日閲覧。 
  2. ^ a b c アンジェラ・アキの名曲がモチーフ!新垣結衣主演で「くちびるに歌を」映画化(シネマトゥデイ、2014年7月8日)
  3. ^ a b c d 森保まどか主演!舞台「くちびるに歌を」2022年12月上演決定!出演者オーディション開催!』(プレスリリース)株式会社キョードーメディアス、2022年9月15日https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002020.000012949.html2022年9月15日閲覧 
  4. ^ a b 五島列島の中学合唱部を描く舞台「くちびるに歌を」に永島聖羅・後藤夕貴・山岸理子ら”. ステージナタリー. ナターシャ (2024年3月22日). 2024年3月24日閲覧。
  5. ^ 『キネマ旬報』2016年3月下旬 映画業界決算特別号、83頁。
  6. ^ 新垣結衣が美人音楽教師に!主演&初の教師役で映画『くちびるに歌を』製作決定(MovieWalker、2014年7月8日)
  7. ^ パンフレット
  8. ^ a b c 特集『くちびるに歌を』 観客が見た/聴いた“感動の合唱””. ぴあ映画生活 (2015年2月20日). 2015年3月3日閲覧。
  9. ^ “新垣結衣主演作から若手7女優によるユニット結成! サビはトイレの中で誕生”. マイナビニュース (マイナビ). (2015年3月24日). https://news.mynavi.jp/article/20150324-a498/ 2015年6月16日閲覧。 
  10. ^ 映画『くちびるに歌を』番外編 可愛すぎる合唱部!その名もLips♪ - YouTubeアスミック・エース
  11. ^ “映画「くちびるに歌を」から誕生! 恒松祐里・葵わかな・柴田杏花らが参加する可愛すぎる合唱部「Lips!」がついに配信デビュー!”. GirlsNews (レゾリューション). (2015年6月16日). https://girlsnews.tv/unit/211851 2015年6月16日閲覧。 
  12. ^ キャスト 映画『くちびるに歌を』公式サイト[リンク切れ]
  13. ^ a b 鈴木亮平&前川清、ガッキー主演「くちびるに歌を」に“まさかの”声だけ出演”. 映画.com (2015年1月5日). 2015年1月5日閲覧。
  14. ^ 【国内映画ランキング】「アメリカン・スナイパー」V2、「くちびるに歌を」4位、「幕が上がる」は5位”. 映画.com (2015年3月2日). 2015年3月3日閲覧。
  15. ^ a b 新垣結衣主演の『くちびるに歌を』に高い満足度!”. ぴあ映画生活. ぴあ (2015年3月2日). 2015年3月3日閲覧。
  16. ^ 新垣結衣主演×アンジェラ・アキ主題歌×三木孝浩監督『くちびるに歌を』ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で受賞”. billboardjapan (2015年2月25日). 2015年3月3日閲覧。
  17. ^ 「くちびるに歌を」が第八回東京新聞映画賞受賞!三木孝浩監督が喜び語る”. 映画.com (2016年3月2日). 2016年3月3日閲覧。
  18. ^ 主演・新垣結衣 監督・三木孝浩で贈る感動作、映画「くちびるに歌を」がBD&DVD化”. Pony Canyon News MOVIE. ポニーキャニオン (2015年6月12日). 2015年6月16日閲覧。
  19. ^ a b c d “舞台「くちびるに歌を」開幕に元HKT48森保まどか「目と耳とハート、心に届くと良いな」”. ステージナタリー (ナターシャ). (2022年12月11日). https://natalie.mu/stage/news/504621 2024年4月11日閲覧。 
  20. ^ a b c d e f g h i j k CAST”. 舞台「くちびるに歌を」. 2024年5月9日閲覧。

外部リンク

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