緯度0大作戦

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緯度0大作戦
LATITUDE ZERO
監督 本多猪四郎(本編)
円谷英二(特撮)
脚本 関沢新一
テッド・シャードマン
製作 田中友幸
ドン・シャープ
出演者 ジョゼフ・コットン
宝田明
岡田真澄
リチャード・ジェッケル
アン・バートン
リンダ・ヘインズ
中山麻理
大前均
黒部進
黒木ひかる
平田昭彦
中村哲
パトリシア・メディナ
シーザー・ロメロ
音楽 伊福部昭
撮影 完倉泰一(本編)
富岡素敬(特撮)
真野田陽一(特撮)
編集 武田うめ
製作会社 東宝
配給 東宝
公開 日本の旗1969年昭和44年)7月26日
上映時間 89分
製作国 日本の旗 日本
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 日本語
英語
製作費 3億6千万円
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緯度0大作戦』(いどゼロだいさくせん)は1969年昭和44年)7月26日に公開された日本アメリカ合衆国特撮映画カラーシネマスコープ。上映時間は89分。1974年(昭和49年)12月14日には『海底大戦争 緯度0大作戦』(かいていだいせんそう いどゼロだいさくせん)と短縮・改題してリバイバル公開された。

ストーリー

海底火山噴火によって浮上できなくなった潜水調査員は、謎の潜水艦アルファ号に救助され、海底2万メートルの地底世界に存在する緯度0基地に迎えられた。地底世界には地上から消えたと思われていた高名な科学者がおり、人工太陽を初めとする高度な技術文明を誇っていた。だが、その別天地にも争いはあり、マッドサイエンティストのマリク博士は、アルファ号および艦長のマッケンジーを排除しようと、虎視眈々と狙っていた。別の地上の調査隊である岡田博士親子がマリク博士に捕らえられたことを知ったマッケンジーは、マリク博士の本拠地に急行する。そこには、敵艦黒鮫号に加え、マリク博士の手で改造された半獣半人の怪物たちが待ち構えていた。

作品の成立

本作の起源は、1940年代NBCラジオで放送された、テッド・シャーマン原作の"Tales of Latitude Zero"(緯度0の物語)である。シャーマンは1960年代から、"Tales of Latitude Zero"の映画化を試み、企画をドン=シャーププロに持ち込んで、1967年に東宝の重役であった藤本真澄が渡米した際、日米合作企画として持ちかけ実現した。当時アメリカ映画界は制作費の安い日本との合作を、予算調達に行き詰った邦画界は日米合作による低迷打開を模索していた時期であった。なお、当初ドン=シャーププロはアンバサダープロと名乗っており、初期脚本にはそちらの記名がある。

東宝では1966年(昭和41年)にSFメカニック映画『空飛ぶ戦艦』が企画検討されたが、本作がそれに替わった。『空飛ぶ戦艦』は円谷プロの『マイティジャック』として蘇ることとなる。

当初、アメリカ側のキャストの諸費用はアンバサダー(ドン=シャープ)、日本側のキャスト及びスタッフは東宝、製作費(公称3億6千万円、実質2億9千万円)は折半として契約がまとまり、『海底大戦争 -緯度ゼロ-』の仮題で製作発表された。70ミリパナビジョン大作での案もあったが、当時日本に機材がなかったため実現しなかった。撮影中、ドン=シャープ側の資金調達が困難となり、撮影が一時中断。契約不履行でアメリカ側のキャストが帰国すると言い出したため、ドン=シャープ側が支払うべきギャランティーと製作費は全て東宝が負担することで、撮影を再開、完成させることになった。製作費の大部分はアメリカ側キャストのギャラであり、1969年(昭和44年)製作の東宝映画では、この作品の直後に公開された戦争大作『日本海大海戦』の予算を大幅に超える結果となった。

当初、本格日米合作SF超大作として宣伝されたが、実際の公開に当たってはテレビアニメ『巨人の星』の劇場版が併映となり、子供向け映画の印象を与えてしまい、そのためか興行成績は芳しくなかった。テレビに押されて日本映画界の斜陽が加速していた当時、ドン=シャーププロ側が受け持った莫大な製作資金を全て肩代わりしたのに、大した興行成績を挙げられなかったという結果は重く、以降、東宝は日米合作映画の製作は行わないという結論をもたらした。

日本人キャストでは、「英語の話せる俳優」を中心に人選がなされ、宝田明岡田眞澄平田昭彦ら英語力の優れた映画俳優が起用されたほか、元宝塚でミュージカルなどの舞台で活躍していた黒木ひかるが「黒い蛾」を演じた。また、当初岡田博士役には佐々木孝丸が予定されていたが、体調不良で降板、日系カナダ人の中村哲 に交代した。なお円谷英二特技監督と本多猪四郎監督のコンビは今作が最後となった。公開の数ヵ月後、「コント55号 宇宙大冒険」の特撮シーンとして一部のみ使用された。

本作は近年まで映像の二次利用に関する契約書の所在が不明であったため、ビデオ・LD化されなかった。東宝特撮封印作品のドラマCD販売会社グリフォンから『ノストラダムスの大予言』と『獣人雪男』のドラマCDの広告の下に本作のドラマCDと『火の鳥』のドラマCDの発売が予告されていたが、実現にはならなかった。その後、契約書の発見に伴い2006年平成18年)にDVD化された。

海外では、原作に基づいた "Latitude Zero" の他、『海底軍艦』の英題に基づいて "Atragon II" の題名でも公開されている。同様に、ドイツでは "U4000" という題になっている。

作品の変遷

本作は戦前のラジオドラマをベースにしており、また内容検討の際ドン=シャープ側が用意したスケッチを元にしており、従来の東宝特撮作品にないアメコミ的カラーを含んでいる。また決定台本まで4稿におよび、相当の改変を経て完成作品となった。

主な変更点は

  • 潜水艦アルファ号は原作ではオメガ号、時計会社の商標を考慮して変更
  • 敵基地ブラッドロック島はザークーム島
  • ルクレチア夫人が吸血コウモリ(原案ではゾンビコウモリ)に変身し主人公を襲う
  • 黒鮫号(原案ではシャーク号)艦長黒い蛾(女性)は原案ではハルトゲ(男性でルクレチア夫人と通じる)、黒木ひかるのキャスティングが決まり変更
  • 緯度ゼロの描写で、ホットタブパーティ(男女とも全裸)で科学講義を行なう場面があったが削除。本多監督曰く「あの時代では早すぎた」との事
  • グリフォンと主人公達の肉弾戦が、実物大ぬいぐるみを必要とするため削除

などであるが、最大の変更点は、難解と評されるエンディングであった。


注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。


当初、ロートン記者が救出されたのは50年後で、最期にマッケンジー艦長本人がロートンに「緯度ゼロの1日は地上の50年に相当する」と説明する。緯度ゼロ住民の長寿もそこにあることがわかる。

その後、完成作品と同様な日本版エンディングと、別のアメリカ版エンディングの製作が検討された。ロートン救出後彼は新聞記者の前で緯度ゼロの写真をスライドで紹介しようとするが何も写っていない。呆れた記者たちが去った後マッケンジー艦長本人が残り、スライドを再び映すと緯度ゼロの風景が写っていた、というもの。

これらは緯度ゼロの物語が夢であったか、現実であったかを漠然とさせ観客を混乱させる意図によるものであったが、より観客にインパクトを与えるため、田代博士やマリクの瓜二つまで登場する完成作品に落ち着いたと思われる。監督意図では「緯度ゼロはパラレルワールド」だそうである。

登場怪獣

グリホン

  • 体長:30メートル

マリクがライオンのボディにハゲタカの翼と黒い蛾の脳を移植して作り上げた合成怪獣のグリフォン。巨大化血清によりあっという間に30mに成長した。しかし、黒い蛾の脳を移植した為にマリクの命令を無視し、一貫として休憩し続けていた。その後、マリクらが乗る黒鮫号が島の磁力で逃げられないままα号を撃ち落とそうとしている最中に突如、黒鮫号を襲撃。マリクが誤って崖にレーザー砲を撃った事で起きた崖崩れに黒鮫号ごと巻き込まれ、黒鮫号の爆発に巻き込まれた。

頭部造形は利光貞三、胴体は八木寛寿八木康栄による。演技者は中島春雄。演技者の出入り口は、腹側につけられている。2尺(60cm)ほどのミニチュアが作られ、飛行シーンのほとんどに使われた。

コウモリ人間

マリクがコウモリと人間を合体させて造り上げたもの。後に着ぐるみ(ぬいぐるみ)の一体は『行け!ゴッドマン』のバットマンに流用された。

顔の違う二匹が作られた。頭部造形は利光貞三、胴体は八木寛寿八木康栄による。演技者は中島春雄関田裕

大ネズミ

マリクが造り上げたもので、その名のとおり巨大なネズミ。劇中では5頭登場。1頭は火炎放射で丸焼きになり、残る4頭はマッケンジーらを追跡しようとして溶解沼に飛び込んでしまい溶解してしまう。造形はエキス・プロダクション前沢範高橋章。演技者は中島春雄関田裕ほか。

スタッフ

本編

特殊技術

キャスト

同時上映

1969年版
1974年版
  • モスラ(再映)
  • 燃える男長嶋茂雄 栄光の背番号3(新作)

DVDソフト

  • 緯度0大作戦 TDV-16115D
  • 緯度0大作戦 コレクターズBOX TDV-16116D

参考文献

  • 「MONSTRUM第二号 緯度0大作戦 −その成立と作品像−」

関連項目