地雷

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地雷

地雷(じらい、ぢらい、: :landmine)は、地上または地中に設置され、人や車両の接近や接触によって爆発して危害を加える兵器[1]

解説

古典的な感圧起爆方式では、一定の重量信管にかかることによって作動し、爆発することで通過した人や物を殺傷破壊することを目的としている。この方式は構造の単純さから安価かつ信頼性があり、今でも配備・使用される地雷の多くを占める。 対人地雷には、前述の圧力式のほか、ワイヤでピンが抜かれることで爆発するもの(引張式)、赤外線センサー等を使用するものがある。中には地雷探知機の発する磁気を感知して爆発するものまである。

設置方法はさまざまで、人力で設置する、地雷敷設車両や専用ヘリコプターを使って敷設する、航空爆弾ロケット弾など大型の弾殻の中に入れて遠隔地から散布するなどの方法がよく利用される。

踏むと瞬時に起爆するものが一般的である。第二次世界大戦中にドイツ軍が開発したS-マイン(ドイツ語読みではSミイネ)と呼ばれる対人地雷は、触角状の信管を踏むと火薬の爆発により地中から高さ1mほど飛び上がり、空中で鉄球をばら撒くことで踏んだ人物以外にも被害を与える。

対応する重量によって、対人地雷・対戦車地雷などに分類される。第2次大戦中の対戦車地雷の感知重量は90kgから200kgに設定されており、人が踏んでも爆発しないとされている。

地雷の戦略上欠点として、一度通過すればそこは安全地帯になってしまうということが挙げられる。一度爆発すればそこにはもう地雷はないし、爆発しなければそこにはそもそも地雷がない。そのため過去においては、捕虜に前を歩かせその後ろを行軍するといったことも行われた。また巨大なローラーのようなものを車両の前に取り付ける対地雷装備も開発されている。この欠点を補う為に複数回刺激が加わって爆発する地雷が造られた。これには隊列を組んで行軍している部隊に対してより多くの被害を与えられるという効果もある(先頭を歩いている者が踏んで爆発するよりも隊列の中間で爆発する方がより被害が大きい)。一方でこのような地雷は残留地雷の問題をより厄介にしている。

広範囲に地雷が埋設された場合、その地域は地雷原と呼ばれる。地雷原に対しては小型爆弾を大量にばらまき地雷ごと爆破させる日本92式地雷原処理車のような対地雷兵器なども開発されている。(→地雷処理戦車

適切に敷設し、適切に管理された地雷原は比較的低コストで防衛ラインを設定できるため、国境線や海岸線の長い国にとっては、効果的な防衛に適している。また、進軍の阻止・遅滞だけでなく誘導を目的としたり、移動中の部隊が宿営地の周辺の要所に障害物と共に一時的に敷設して敵に備えることも行われる(この場合は宿営地の撤収時に全て回収、または処分される)。しかし目印も付けずに手当りしだい埋めるなど不適切に敷設されたり、地雷が大雨で流されるなどした適切に管理されていない地雷原は敵だけでなく味方にとっても脅威となる。前線がいくつも独立しているような場合、内戦が長期化している場合など、地雷は敵・味方あるいは軍人・民間人を区別せず爆発する。そのため、地雷を敷設した場合は、記録した上でそのことを直ちに友軍へ連絡する必要があり、戦闘終結後には速やかに地雷を撤去することになっている。そのため、正規軍が敷設する地雷は敵対勢力の脅威になりこそすれ、民間人や友軍の脅威にはなり得ない場合が多い。

散布型地雷とスマート地雷

ベトナム戦争ではゲリラ戦が主だったこともあり戦況が流動的で、地雷設置に時間を割くことが難しかった。そのため、航空機などから散布する散布型地雷が開発された。しかし、個々の散布型地雷の設置場所は散布部隊自身にもわからず、またゲリラ戦ゆえ戦場も流動的であるため、友軍が散布した地雷が行軍上の障害になるという事態が発生した。

この問題を解決するために開発されたのが「スマート地雷」である。最初のスマート地雷は、アメリカが1978年に開発したFASCAM(Field Artillery Scatterable Mines、ファスカム)で、散布後一定時間が経過すると自爆する。タイマーによる自爆・無力化以外に、暗号化された無線送信に対して応答して所在を知らせ除去を容易にするものなど、さまざまな技術が開発されている。しかし、たとえば自爆型地雷が自爆失敗する確率が0.1%~5%あるなど、完全ではない。

スマート地雷はあくまで軍事上の必要性から生まれた兵器であるが、結果として、地雷の非人道性を減ずることとなった。つまり、今叫ばれている地雷の人道的な面での問題のほぼ全ては、(コストは掛かるが)技術で解決が可能なものである。しかし、昨今問題とされているのはこうした機能を持たない旧式の地雷であり、地雷を敷設する際のセオリーを守ることのない非正規交戦組織によるものであり、発展途上国では現在でも依然として安価且つ大量に製造販売が行われている。

戦略上の地雷

地雷は原則として(自分から飛んで行ったり)能動的に攻撃を行うものではない。その意味で、日本政府が標榜する「専守防衛」という戦術的観念には適合している。しかし、陸上自衛隊は対人地雷禁止条約(後述)に従い、2003年2月までに処理訓練用のものを除く対人地雷を廃棄した。もっとも、遠隔操作のみで爆破可能な指向性散弾は条約の禁止する対人地雷に含まれないため、代用武器として使用している。

地雷による被害

地雷による被害は人間が足を失ったり死亡したりする直接的な人的被害と、地雷が埋まっているかもしれない土地が不動産価値を失ってしまう経済被害に大別できる。 たった1個の地雷が埋まっているかもしれないというだけでその土地を活用することが出来なくなり、その土地を通行することはおろか、農地や宅地として使用することが出来なくなってしまう。 通行できない土地が多くなると流通にも支障をきたし、外国資本だけでなく国内投資もその場所を避けるので多大な経済損害を受ける。 今や、人間以外の動物、ゾウや犬なども被害にあっている。

対戦車地雷

TM-46対戦車地雷
アフガニスタンバグラム空軍基地にて地雷除去作業を行う、南アフリカ製キャスパー装甲兵員輸送車

対戦車地雷(たいせんしゃじらい)は、主に戦車などの装甲戦闘車両を破壊する事を目的として使用される地雷である。

地雷防護のない軍用車両は底部の装甲が薄いため、地雷による攻撃は有効な手段となる。一般的には5-10kg程、または2-9kgほどの火薬が内蔵され[2]されている。対戦車地雷を踏めば主力戦車といえどもほぼ確実に履帯を切り、足回りに損傷が生じて走行不能に陥る。戦車以外の車両への被害はより深刻で、装甲車装甲兵員輸送車程度の装甲があっても、車体を破壊し収容人員を死傷させうる。故に機械化歩兵が対戦車地雷を恐れて車上に跨上するタンクデサントを行う事すらある。耐地雷性の高い車両を設計するには、高い車高や舟形の底板など、特別な配慮が必要で、低姿勢や軽量性という一般的な軍用車両に求められる要求を相反するものになってしまう。

70kgから130kgほど、または100-300kgほど[2]の垂直加重で起爆するようにされており、これは武器等を携帯した兵士が踏んだだけでは起爆せずに、車両が通過する時に爆発させて攻撃する為である。磁気吸着式により、車両に吸着させるタイプや、有人管制により手動で起爆させるタイプもある。地雷除去を防ぎ、殺傷力を上げるために対人地雷とセットで埋設されることがある。人間が踏んでも起爆装置の中心点を踏めば起爆しないが少しでも中心点を外れた部分を踏めばテコの要領で起爆する重量に達してしまい起爆してしまう。そのため現在の陸上自衛隊での教育時にも対戦車地雷だからと言って踏んでも問題ないわけではないことを十分に教育している。

対戦車地雷に対抗する為には、車両の底部の装甲を厚くしたり、二重にする、車両床を高い位置にし爆風を逃がすV字型にする、装輪数を増やすなどの方法がある。

爆薬が不足している軍・武装勢力においては榴弾砲迫撃砲砲弾航空爆弾を地面に埋め込み、対戦車地雷として利用した例がある。

第二次世界大戦中、旧日本軍の場合、兵士が地雷を背負って敵戦車の前に身投げしたり、タコツボ(一人用の)内で爆弾を抱えてうずくまり、敵の接近に合わせて信管を叩いて起爆させる「人間地雷」戦術を実行している。また、ソ連軍はエンジンをかけた自動車の下で餌を与えることにより、条件反射で自動車の下にもぐりこむように訓練した犬に爆薬をくくり付けてドイツ軍車両を破壊する地雷犬を実戦に投入している。さらに各国でも地雷を埋めておくのではなく、兵士が自陣を蹂躙する敵戦車の履帯前に投げ出す、棒の先に付けて突き出す、時限式信管を取り付け機関部やハッチ上に載せる等して破壊するという戦術も取られた。

パレスチナでは重装甲で知られるイスラエル国防軍メルカバ Mk 3戦車を、遠隔操作により地中に埋めた手製の爆薬で、イラクでは対戦車地雷を積み重ねる事によりアメリカ軍M1A2SEPエイブラムス戦車を、完全に撃破した事例がある。

対人地雷

対人地雷の一種 クレイモア地雷
PFM-1空中散布地雷

近代の主な対人地雷(たいじんじらい)には、踏みつけた人間の足の踝(くるぶし)やすね程度を吹き飛ばす小型で低威力の爆風型地雷や、仕掛け線や踏圧などで信管が作動すると最初に少量の火薬で炸裂部を1-2mほどの高さに打ち上げ、続いてそれが炸裂することで内部の鋼球などを撒き散らして周囲数十mの敵を倒す方式の対人地雷としては比較的大型の破片式の跳躍地雷と呼ばれるものなど、一般には地下に埋設する形式が多いが、これらとは別に、物陰などに固定しておき仕掛け線などを用いて信管が作動すると主に水平方向に扇状に鋼球などを撒き散らして殺傷する破片式でも地上設置型のものがある[2]

炸裂した時、一定の方向に扇形に散弾を発射する性質(指向性)を持った地雷(クレイモア地雷など)を指向性対人地雷、または指向性散弾といい、危害範囲が非常に広いのが特徴である。これは地中に埋設するのではなく、付属した簡易な三脚や四脚に載った形で地上に設置され、水平方向に散弾や弾片を射出する。また、張られたワイヤーに兵がひっかかることで作動するだけでなく、遠隔操作で任意のタイミングで炸裂させることもできる。これにより兵が密集していた場合、一度に10名以上が殺傷されることもある。

安価で数多く使われる小型のものは、敵兵の即死による殺害ではなく負傷による無力化を目的としている。敵兵1人の即死はそのまま兵力の1減であるのに対し、1名が重傷を負えば看護や後送にも人員が割かれるため、前線兵力をは2以上減となり、また苦痛を訴え続ける味方兵の存在は戦意維持を困難にする要素となる。

小型の地雷は空中投下によって散布することが可能である。しかし、正確な散布場所が分からなくなるので被害を出しやすい危険な方法である。広く流布した話に「小型地雷に子供の興味を引くぬいぐるみやおもちゃのようなものを取り付けてばら撒き、触れた子供の手足や生命を奪う」とするものがあるが事実として確認されていない[3]

以上のように、対人地雷は敵味方・軍民を問わず被害を受ける危険があるため、厳格な運用が必要とされる。しかし紛争国では無計画に埋設された結果、除去困難に陥り戦後の紛争の後遺症として住民を苦しめ続ける例が見られる。そのため規制が議論されている。そのような観点からオタワ条約が発効した。ただし、主要な地雷輸出国が批准しておらず、紛争地帯での地雷被害は減っていない。 中には、残留日本人が被害に遭う事例があり、日本国内にも影響を与えている。

戦場に於ける地雷原の突破

戦場に於いて地雷原を突破する際には以下のような方法が取られる。

地雷処理用の専用機材を用いる
もっとも望ましい方法であり、前述の地雷処理戦車や地雷処理用の機材(地雷原処理用のロケット弾発射機等)を使用する。以前は、戦車の前方方向に伸びた機材で対戦車地雷を捜索し爆破するスネークが使用されたこともある。また地雷の探知に第二次世界大戦から使用され始めた金属探知機を用いる方法もあるが、これは木製地雷等の金属の使用量が極めて少ないものに対しては効果を発揮できない。
地雷原に銃砲撃を加える
砲兵部隊の支援が受けられるならば、地雷原に砲弾を撃ち込み地雷を誘爆させるという方法もある。これは砲兵でなくとも、進撃する戦車自身が搭載砲で道路を射撃することもある。また露出している地雷に対しては遠距離から対物ライフル等で銃撃を加えることで安全に処理する。現在は大型の狙撃銃として知名度の高いバレットM82も元々は爆破物処理機材としてスウェーデン軍に採用されたのが始まりである。その他にも、エル・アラメインの戦いで、悪魔の園と言われた二重三重に埋めてあるドイツ軍の対戦車地雷をイギリス軍が砲撃を加えて爆破処理した例もある。
歩兵の一般装備を用いて地雷を処理する
上記のような方法が取れないとき、歩兵がスコップナイフを用いて地中を探り、地雷を除去(単にマーキングだけに留めることもある)する。地雷は一定以上の圧力が加わらないと爆発しないので、ナイフ等でコツコツ叩く程度では安全である。
ただし地雷の中には除去する人物をも対象にしたものがあるので注意が必要である。例えば信管が複数存在する地雷や、ある一定の角度以上に傾けると爆発する地雷がある。また、そんな機能を備えていなくとも地雷を二重に設置し、下の地雷の信管を上の地雷に結ぶ・箱型地雷の蓋の下やクレイモア地雷の足に手榴弾を仕掛けるなど、除去しようとした人間が地雷を持ち上げれば仕掛けが爆発する、無力化しようとする人間を標的とした一種のブービートラップも存在する。
非人道的な方法を用いる
上記のような「正攻法」ではなく、敵の捕虜や一般市民、懲罰部隊に送られた自軍将兵を背後から銃で脅し、部隊の先頭を歩かせるという方法がある。第二次世界大戦東部戦線では独ソ両軍で見られた光景である。また人を使うのではなく動物を使う方法もあるが、こちらは成功しないことが多い(あらぬ方向に走っていく)。但しこれらの方法では重量の関係で対戦車地雷に対する効果は薄い。
無視する
悠長に地雷を処理していられる時間のない緊急時に於いては「踏んだら不運と諦めろ」という様に地雷の存在を無視して行動することもある。また、人命が軽視される、あるいはできうる体制下にあっては、「十個の地雷があっても、十一人の兵士がいれば必ず突破できる」という考え方がなされる場合もある。これは、ノルマンディー上陸作戦のオマハF地区での戦闘に例が見られる。

地雷除去

ゴラン高原地雷原標識、シリア陸軍によって40年以上前に設置されたもの

戦乱のあった地域では一旦地雷が埋設されると残存し、戦争終結後も一般市民への事故(傷害事故だけではなく死亡事故も多い)が後をたたない。世界では正確な数は不明だが、いまだに「7000万個とも1億個とも言われる対人地雷が埋設」[4]されていると考えられている。

戦後の復興には安全な土地の保証がかかせない。その地域の国家が地雷除去の能力に不足する場合など、他国の部隊や非政府組織NGOが対人地雷除去を人道援助として行うことがある。対人地雷だけでなく対戦車地雷でも、放置されることでバスのような民間車両が被害を受けて多くの人命が失われている。

除去方法

陸上自衛隊施設科装備の89式地雷原探知機セット
検知部・本体部・操作部・ハンドル・受話部などからなり、地中の金属を探知する機器。地雷や不発弾を探知する目的で使用する。
掃除機の吸い込み口を思わせる検知部を、地上十数センチの高さに浮かせて動かし、地中に金属反応が無いか探る。

地雷の除去方法は未だに効率が悪く、地雷1個の除去に、その地雷の製造費の100倍は費用がかかるといわれている[5]。また危険を伴う人力作業が一般的である。しかし紛争の傷跡が残る国では失業率が高い事が多く地雷除去作業は雇用対策としての側面もある。

世界的に地雷の問題が注目を集める中で、危険な人力による除去方法の代替となり得る機械を用いた除去方法が世界各国で研究されているが、貧しい国は機械を購入したり運用する負担に見合わないと考える事が多く援助以外での普及は進んでいない。また、機械により物理的な外力で起爆を誘う対人地雷の除去方法は、人手より確実性に劣り、特に金属要素をほとんど含まなくなった性能向上型では、極めてローテクに属する人手に頼った除去方法以外に有効な手段がない。旧式の地雷は、長年土中に埋まっていることで金属筐体の腐食や信管/爆薬の劣化といった経年変化による機能喪失が期待できたが、近代的な地雷ではプラスチックの採用を含む兵器としての性能向上によって、意図的に有効期間を短くしない限り何十年経っても機能を保ち続けるという特徴がある[2][6]

世界発の除去活動

戦後復興における地雷処理に関してのノウハウ蓄積は、周辺国との紛争をくり返してきた南アフリカに一日の長がある。『Mine Detection Vehicle (MDV)』と呼ばれるロードサイドの地雷を探査する耐爆構造の探査車両が開発されており、南ア製の『Meerkat[7]』、『Husky[8][9]』はイラクとアフガンで米軍のIED探査に活用されている。 日本などの国では、地雷を除去するためのロボット開発が進んでいる。また、ブルドーザーショベルカーを改造した地雷除去用重機[10][11]もあり一部高い効率で地雷を処理しているが、余り普及していない。

アフリカのタンザニアでは、ベルギー人バート・ウィートジェンスが創設したNGOであるAPOPOが、ネズミの嗅覚をトレーニングして地雷を発見するという活動を始めている。犬と同等の探知能力を誇りながら、より安価に地雷の有無を調査できるという利点がある。トレーニングされたネズミはヒーローラッツと呼ばれ、チェンジ・メーカー世界一受けたい授業など、日本のメディアでも度々取り上げられている。

ノルウェーのNGOであるノルウェージャン・ピープルズ・エイド(NPA:The Norwegian People’s Aid)は1992年に地雷除去の活動を開始し、カンボジア、モザンビーク、アンゴラ、ボスニア等で不発弾処理、地雷回避教育、地雷犬訓練を実施するなど重要な役割を果たしている。

日本発の除去活動

日本の政府開発援助(ODA)は、地雷除去を進めるNGOにも「日本NGO支援無償」として資金協力している。

人道目的の地雷除去支援の会(JAHDS)
1998年設立。カンボジアやタイで地雷除去プロジェクトを実施 (2006年活動終了)
日本地雷処理を支援する会(JMAS)
2002年に自衛隊OBが中心となって設立されたNGOで、「日本NGO支援無償」による援助を得てカンボジアで地雷・不発弾処理活動を行った。
日本紛争予防センター (JCCP)「人道的地雷除去プロジェクト」
実際の人道的対人地雷除去作業を日本の組織として初めて単独で行ったのは、外務省のNGO支援無償資金協力により活動資金を得て、元陸上自衛官の辰巳竜悟が中心となって2004年1月にスリランカで開始した日本紛争予防センターの対人地雷除去プロジェクトである。

また、難民を助ける会が行う地雷回避教育や被害者の義足作成支援など、日本の非政府組織NGOによる対人地雷除去を後方から支援する活動も盛んに行われている。また、地雷により皮肉にも義足の需要が急激に増えており、義足などを無料で配布するボランティアなども多く存在している。

2001年に、坂本龍一が中心となりN.M.L.(NO MORE LANDMINE)というユニットを結成、地雷撲滅のチャリティーソング「ZERO LANDMINE」を発売した。このCDの収益は地雷除去活動を支援するために使われた。

対人地雷全面禁止条約

  条約批准国

人道的な見地から「対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約」(対人地雷全面禁止条約、オタワ条約などともいう)が作られ、1999年3月1日に発効した。この条約が作られる機運を盛り上げるにあたっては、1992年に結成された地雷禁止国際キャンペーンというNGOを支持したイギリスダイアナ元皇太子妃も大きな役割を果たした。

日本1998年9月30日に、この条約を受諾して締約国となり、2003年2月8日に保有していた対人地雷のうち、訓練用など一部を除いたすべての廃棄を完了した。この式典には小泉純一郎首相(当時)も出席した。

ただ、外国などからの侵略行為に対し日本の長い海岸線を対人地雷なしに(対戦車地雷を高感度で使用する方法もあるが)どのようにして守るかについては自衛隊をはじめ新たな防衛方法が模索されており、かねてより航空自衛隊等が保有しているクラスター爆弾、ないしは新たに開発した対人障害システムを対人地雷の代替とするようであるが、これも極めて限定的な補完にしかならないため、防衛力の空白が懸念されている。 またクラスター爆弾を廃棄する動きも進んでいる。

さらには米中露といった大量配備/輸出国が批准していない現状では条約は象徴的で限定的な意味しかもっていない。むしろ先進国の撤去対策が施された対人地雷が廃棄され、紛争国が求める安価な地雷が野放しになるという皮肉な事態を招いている。

単語としての「地雷」の他の用法

地雷という語は、「うっかり踏むと爆発する・踏んではいけない」という連想から、色々な場面で「触れてはいけないもの」「禁忌」を表す喩えとして用いられる。巧妙に偽装され爆発するまで気付かない・仕掛けられてから長期間放置されていたものが突如爆発し、相手に被害をもたらすといった地雷の特性による喩えもある。以下一例である。

  • 就職転職活動では、短期離職率が高いなど体質的な問題のある企業(ブラック企業DQN企業も参照)のことを指して地雷と呼んだり、そのような企業が多い業種のことを地雷原と呼ぶ場合もある。
  • サブマリン特許など見つかりにくい特許を「特許地雷」と呼んだり、またそのような特許が多く存在する、あるいは特許取得合戦となっている技術分野を特許地雷源と呼ぶことがある。特にアメリカでは個人の権利を尊重して先申請しておく必要があり、なおかつ日本の特許庁とは違い非公開である事に由来しており、揶揄も存在する。[12]
  • いわゆる性風俗遊びにて、相手になった女性の対応が劣悪だったり容姿が醜悪であった場合、「地雷」を踏んだと言う事もある。
  • テレビゲーム書籍ビデオソフトなどの購入した後でないと内容を十分に確認できない商品で、宣伝・評判・印象などである程度の期待を持って買ったのに内容が面白くなかった場合、その商品を指して「地雷」と呼ぶ。特にゲームで言えばクソゲーを指す事がほとんどで地雷ゲーと呼ぶ事があり、あまりに酷い内容(バグが多い、シナリオに一貫性が無く面白くない、アニメ漫画を原作としたゲームにおける原作と比べ明らかに違う等)の場合は地雷(因みに核地雷は実在する兵器であり、遠隔操作で爆破させる)と呼ばれる[13]
  • インターネット上で、主に掲示板において、クリックしたリンク先にブラウザクラッシャーコンピューターウィルスが埋め込まれていたり、グロテスクな画像・性的な内容の画像(特に男性同性愛的な画像)だった場合に「思わぬ落とし穴」という点で「地雷」と呼ばれることがある。
  • コンピュータの部品。
  • 陸上自衛隊においては、演習中に野外で大便をすることを「地雷を埋める」と表現することがある。
    (大便は行動の痕跡となるため、現地で処理する場合には勢力に発見されないよう巧妙に埋めて隠蔽する必要がある。航空自衛隊では「爆撃する」と表現することがあるが、いずれも大便を爆発物に見立てている)

埋火(うずめび)

地雷と同じコンセプトの火器(土中に埋め、踏むと起爆する兵器)は前近代の頃よりあり、日本でいえば忍者が用いた埋火(うずめび)がある。時代的に見て、対人・対戦車の分類はないが、騎兵にも有効と考えられる。ヒストリーチャンネル『古代からの発見S3』の番組内にて、『万川集海』(17世紀成立)の記述に基づいて実験が行われている。その記述によれば、道の下にトンネルを掘り、その道上に埋火を埋め、爆発と共に道を陥没させ、大名の暗殺に用いられたとしている。

埋火の仕組みは、木製の箱に、導火線となる縄を、箱の内部、ふたの裏側に付け、人が踏んだ重みで直接火薬に発火させるというものであり、例え目標が踏まなくとも時限式で起爆し、確実に対象を暗殺した。縄の長さで起爆時間の調節も可能であり、従って厳密には、「地雷」と「時限爆弾」の両方の性質をおびた兵器だった。デメリットとして、雨天時は(木板や導火線が塗りだったとしても)ふたが重みで下がる構造上、水が染み込んで用いられなかったとみられる(従って、沼地や水辺の使用は好まれない)。

備考

  • 「地雷」という語自体は、明代の中国兵書『武備志』(1621年)に記載された火器の項の一つに「地雷火」の説明がある。この時代の日本の忍者が用いた地雷は「埋火」という名称であり、火器の語としての地雷だけでいえば日本より先となる。

脚注

  1. ^ 前近代の同概念の火器としては、例えば忍者が用いた埋火(うずめび)がある。
  2. ^ a b c d 赤十字国際委員会原著、難民を助ける会ボランティア訳、『対人地雷 味方か?敵か?』、自由国民社、1997年12月25日第1刷発行、ISBN 4426892015
  3. ^ ソ連軍のアフガニスタン進駐等で使用されたとする記事も多いが、実態は空中散布式のバタフライ型地雷PFM-1であったようだ。不発弾を発見しやすくするための明るい色や、散布時に適度な空気抵抗を得るための独特な形状を見ておもちゃと誤解した子供が触れたのを、手の込んだ罠であると解釈した事例が多い。
  4. ^ 古田勝久「対人地雷探知除去の研究開発の総括をして」 (PDF) 『JISTEC REPORT Vol.74』(2010年冬季号)、社団法人 科学技術国際交流センター、p.2 、2010年8月22日閲覧。
  5. ^ 3USドルで作られた対人地雷を探し出すには、200-1000USドルほど掛かると言われている。
  6. ^ 他の地雷除去方法として、2007年5月に発見された地雷などに使われるTNT火薬にわずかに含まれる化学物質に反応し、緑色に光る酵母を用いる地雷検出方法が現在研究中で、酵母の散布によって地雷を速やかに探知できるのではないかと期待されている。
  7. ^ Meerkat Mine Detection Vehicle (MDV)”. 2010年2月24日閲覧。
  8. ^ Husky Metal Detecting and Marking Vehicle”. 2010年2月24日閲覧。
  9. ^ Husky(動画)”. 2010年2月24日閲覧。
  10. ^ 「地雷廃絶への挑戦」-アンゴラの地雷原に挑む-”. Film.hitachi.jp. 2010年2月24日閲覧。
  11. ^ 「地雷廃絶への挑戦」(前編)-大地に実りを、子供たちに笑顔を-”. Film.hitachi.jp. 2010年2月24日閲覧。
  12. ^ [1]
  13. ^ [2]

関連項目

外部リンク

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