阿毘達磨倶舎論

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阿毘達磨倶舎論』(あびだつまくしゃろん、サンスクリットअभिधर्मकोश Abhidharmakośa)は、インド仏教書で、説一切有部の『発智論』『大毘婆沙論』(婆沙論)の説を中心に他部派の説も加えて仏教哲学の基本的問題を整理したものである。世親著。略称を『倶舎論』という。

概要

世親が作成した『阿毘達磨倶舎論本頌』 (Abhidharmakośakārikā) の600余の本頌に、世親自ら註釈を書き加えたものが『阿毘達磨倶舎釈論』 (Abhidharmakośabhāṣya) で、一般に『倶舎論』という時は後者の『釈論』 (bhāṣya) のことを指す。

なお、「阿毘達磨」 (abhidharma) は、 "abhi+dharma" であり、それぞれ「対」と「法」と訳され、「法に関して」という意味で、「倶舎」とは容れ物(蔵)の意で、阿毘達磨の教理の全てがこの中に納められているという意味をもつ。

沿革

『本頌』 (kārikā) と『釋論』 (bhāṣya) のサンスクリット本は、サキャ派のゴル寺でラーフラ・サーントクリヤーヤナによって発見された。1946年にはゴーカレによって『本頌』サンスクリット本が校訂発表され、1967年にはプラダンによって『釋論』も校訂出版された。

『本頌』にはチベット訳が1つ、漢訳1種が現存している。『釈論』にもチベット訳が1つと、真諦訳22巻(564年)、玄奘訳30巻(651年)の2種類がある。

古来、仏教学の基礎として広く研究され、本書に基づいて日本では南都六宗のひとつである倶舎宗が成立した。

内容

600の偈文と、その注釈の散文で出来ている。説一切有部の行き過ぎた教理に対して、経量部の立場から批判が加えられている部分がある点に特色がある。このため後に衆賢の『順正理論』によって批判される。

  1. 界品(かいぼん) - 存在の種類
  2. 根品(こんぼん) - 存在現象の活動
  3. 世間品(せけんぼん) - 世界の構成
  4. 業品(ごうぼん) - 有情輪廻の原因となる
  5. 随眠品(ずいみんぼん) - 有情の煩悩
  6. 賢聖品(けんしょうぼん) - 悟りの段階
  7. 智品(ちぼん) - 智慧
  8. 定品(じょうぼん) - 禅定
  9. 破我品(はがぼん)

界品・根品で基礎的範疇を説明し、世間品・業品・随眠品で迷いの世界を解明し、賢聖品・智品・定品で悟りに至る道を説く。最後に付録の破我品で異説を論破する。

文献

  • 桜部建 『佛典講座18 倶舎論』 大蔵出版 新装版2002年
  • 桜部建、上山春平 『仏教の思想2 存在の分析<アビダルマ>』 角川文庫ソフィア  1996年 解説
  • 桜部建、小谷信千代、本庄良文 『倶舎論の原典研究 智品・定品』 大蔵出版、2004年
  • 小谷信千代、本庄良文 『倶舎論の原典研究 随眠品』 大蔵出版 2007年

関連項目

外部リンク