大智度論

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大智度論』(だいちどろん)は龍樹の著作とされる書で、『摩訶般若波羅蜜経』(大品般若経)の百巻に及ぶ注釈書である。初期の仏教からインド中期仏教までの術語を詳説する形式になっているので仏教百科事典的に扱われることが多い。

中国の時代の書写経が正倉院聖語蔵に伝来している。しかしサンスクリット本が現存しないことや、『中論』などとスタンスが異なっていたり、他のサンスクリット文書に参照記述が見出せないことから、同名異人の龍樹ではないかとか、龍樹に仮託して編纂されたという説もある。著作者が誰であるかということについては、フランスのラモット博士と日本の干潟博士の論争が一時仏教学会での話題となったが、収拾はついていない。

一般には、基本的な部分は龍樹の著作であり、その解説のために、訳者である鳩摩羅什が大幅な付加を加えたという説が普及している。漢訳は逐語的な注釈が続いていくが、大品般若経の序品第一の解釈が三十四巻まで続き、それ以降は唐突に抄訳になってしまうことなどから、鳩摩羅什が増広上書きしたとか、あるいは龍樹に仮託して撰述したという極端な説まで出されている。

大品般若経序品はそれまでの部派仏教の説を網羅し、般若波羅蜜によって見直すべきことを説いているので、いずれにしても大乗仏教の精髄を中国に伝えようと意図した羅什の手が入っている可能性は高いようである。しかし菩提薩埵という玄奘以降の用語の解説が収録されているなど、この説にも疑問点は多い。

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