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ひまわり (気象衛星)

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ひまわり1号~5号で使用された形式(GMSシリーズ)

ひまわりは、気象観測を行う日本静止衛星気象衛星の愛称である。1号から5号までの正式名称は静止気象衛星GMS(Geostationary Meteorological Satellite)、6号と7号は運輸多目的衛星MTSAT(Multi-functional Transport Satellite)である。「ひまわり」は世界気象機関(WMO)と国際学術連合会議(ICSU)が共同で行なった地球大気観測計画(GARP)の一環として計画されたもので、得られた気象情報を日本国内だけでなく、東アジア・太平洋地域の多国に提供している。2010年7月1日から雲画像は、ひまわり7号のものが採用されている[1]

ひまわりが登場するまでは、日本はアメリカのTIROS-N/NOAAの写真画像を買っていた。

衛星リスト

衛星名称 打ち上げ日 運用終了 打ち上げ場所 打ち上げロケット 衛星バス
ひまわり(GMS) 1977年7月14日 1989年6月 ケネディ宇宙センター デルタ2914型ロケット132号機 HS-335
ひまわり2号(GMS-2) 1981年8月11日 1987年11月 種子島宇宙センター N-IIロケット2号機(N8F) HS-378
ひまわり3号(GMS-3) 1984年8月3日 1995年6月 種子島宇宙センター N-IIロケット6号機(N13F) HS-378
ひまわり4号(GMS-4) 1989年9月6日 2000年2月 種子島宇宙センター H-Iロケット5号機(H20F) HS-378
ひまわり5号(GMS-5) 1995年3月18日 2005年7月 種子島宇宙センター H-IIロケット3号機 HS-378
みらい1号(MTSAT-1) 1999年11月15日 打ち上げ失敗 種子島宇宙センター H-IIロケット8号機 LS-1300
ひまわり6号(MTSAT-1R) 2005年2月26日 運用中 種子島宇宙センター H-IIAロケット7号機 LS-1300
ひまわり7号(MTSAT-2) 2006年2月18日 運用中 種子島宇宙センター H-IIAロケット9号機 DS2000
ひまわり8号 2014年(予定) T.B.D. T.B.D. DS2000
ひまわり9号 2016年(予定) T.B.D. T.B.D. DS2000

GMSシリーズ

ひまわり1号から5号までのGMSシリーズの衛星本体はヒューズ社のスピン衛星バス HS-335(GMS-1)および HS-378(GMS-2 - GMS-5)に観測機器や通信機器を搭載したものである。観測機器はレイセオン社の可視赤外走査放射計(VISSR)といい、地球を可視光線および赤外線により撮影する光学センサである。検出器が衛星の自転により地球を東西方向に走査しつつ、反射鏡により南北方向にも走査することで、地球の半球全体を2,500本の走査線で画像化する。観測データはSバンド(マイクロ波の2.5GHz帯)で地上に送信され、データ処理を行い各種の画像データを作成する。これを地上回線で利用者に配布するとともに、「ひまわり」の通信衛星機能を用いてサービス区域の各国の利用者に配信している。

基本的には米国の静止気象衛星GOES-4 - GOES-7の類似機で、NECが主契約者として担当し、主に米ヒューズ社(現在はボーイングスペースシステムズ社)が製造したものであるが、徐々に観測機器を国産化してきた。

MTSATシリーズ

1990年(平成2年)に米国貿易政策である「スーパー301条」の適用を受け、協定によって日本は国内で使用する商用衛星も国際競争入札にしなければならなくなり、大量生産していないために高コストの国産衛星は、大量生産によって低価格を実現した欧米の商用衛星に太刀打ちできず、「ひまわり5号」の後継衛星は米スペースシステムズ/ロラール社からの完成品購入となった。これが運輸多目的衛星MTSATで、気象衛星の機能だけでなく航空管制機能も持つ。

MTSAT-1を搭載したH-IIロケット8号機は打ち上げに失敗したため、ひまわり5号は設計寿命の5年を超えて観測を続けた。しかし静止軌道を保つための姿勢制御用の燃料の残りが少なくなったため、2003年5月22日をもって気象衛星としての運用を終了し米国の気象衛星GOES-9(ゴーズ9号)による代替運用が開始された。気象庁は、このGOES-9の愛称を「パシフィックゴーズ」と呼ぶことにしたが、「ひまわり」ほど一般に広がるには至らなかった。

ひまわり5号は、GOES-9により気象観測業務を終えたものの、地上で処理された気象データを利用者に中継配信する通信機能も併せ持つため、後継機の「ひまわり6号」稼動まで、中継配信業務のため通信衛星としてそのままの位置(東経140度)にとどまる必要があった。一方のGOES-9 は、アラスカフェアバンクスにある衛星通信所を使用する関係から、日本から見て東寄りの東経155度に置かれた。これは衛星追尾視野限界に近いが、気象庁では「観測には大きな支障はない」とした。

MTSAT-1の代替機MTSAT-1R2005年2月26日H-IIAロケット7号機により打ち上げられ、3月8日には無事に静止軌道に乗った。運用する国土交通省は、親しまれている「ひまわり5号」の後継と位置づけ、愛称を「ひまわり6号」と命名した。同機は映像送信テストなどを行ったのち2005年6月28日の正午から気象衛星として運用を、また2006年7月6日から航空管制の通信業務の運用を開始した。気象衛星としては2010年7月1日まで運用され、以降はひまわり7号の待機運用に変更された。なお、ひまわり6号による、ひまわり7号の画像データの配信は継続される[2]

ひまわり6号のバックアップ衛星であるMTSAT-22006年2月21日にH-IIAロケット9号機により打ち上げられ、2月24日に静止軌道に乗ったことが確認された。MTSAT-2は「ひまわり7号」と命名された。ひまわり6号は米国産となったが、ひまわり7号では再び国産衛星となった。日本の宇宙産業はスーパー301条発動と共に実質的に国産の商用衛星を打ち上げられなくなり、技術試験衛星などの製作でかろうじて技術を保持し続けてきた。しかし、技術試験衛星きく8号に合わせて開発された衛星バス(電源・姿勢制御などの人工衛星の基本的機器)「DS2000」を使用することで低価格を実現できたため、欧米との競争入札に対抗できるようになった。2006年9月4日には静止軌道上で気象衛星としての待機運用が開始され、ひまわり6号のバックアップ態勢が整った。2010年7月1日の正午より、気象衛星としての運用をひまわり6号から引き継ぎ、気象観測を開始した[2]

2007年9月には航空機の航法情報の提供を開始したが、同年11月5日午後2時40分頃、ひまわり7号の姿勢に異常が発生してひまわり7号による気象観測と航空管制のための交信が行なえなくなった。このひまわり7号の異常の間はひまわり6号によって気象観測と航空管制の交信は行われ、2日後の7日、ひまわり7号は姿勢制御用の噴射装置を予備に切り替えて復旧した。衛星の姿勢を制御する噴射装置の異常が原因であった[3][4]

2009年11月11日の午後9時26分に搭載されているカメラが地球へ向かなくなり、一時的に11月12日午前1時にバックアップの7号機に切り替えるというトラブルが発生したが、同日午後1時には6号の姿勢が正常に戻り、観測が再開された。なおバックアップへの切り替えの間、7回分の観測が抜け落ちた[5][6]。同年11月16日には6号機に再び異常が生じ、午前8時半から10時までの1時間半、画像の配信ができなくなり業務を7号機に切り替えた。このため4回分の観測画像が配信されなかった[7]

後継機

後継機は2014年及び2016年に打ち上げが計画されている。これまでの防災機能に加え、地球観測機能を大幅に強化した「静止地球観測衛星」として整備される予定である。寿命は運用、待機ともに7年の合計14年となり、現在の10年(運用、待機ともに5年)より長寿命化がなされ、また解像度や観測頻度、チャンネル数が増加しデータ量は現在の50倍以上となる見込みである。

現行の6、7号の経費を70%負担していた国土交通省航空局が計画から外れたため、一時は予算の観点から実現が危ぶまれた。そのため、他の機関や民間の衛星との相乗りや衛星画像の有料化なども検討された。しかし条件を満たす衛星の計画が存在せず、また気象衛星画像はそれ自体では商品価値は薄いことや、防災に直結する基本的なインフラであるため有料化はそぐわないとして共に見送られることとなった。最終的に気象庁は単独で後継機を打ち上げることを決め、平成21年度予算で77億円の要求を行っている。なお、気象庁の単独予算により気象衛星が製作されるのは初めてとなる。

また、経費節減のため衛星の管制(制御)を民間事業者に委託するPFI方式が導入される見込みである。

WMO等に出している観測
  • 全球観測  現行の約30分要する観測を10分に短縮
  • 半球観測  現行の約15分要する観測を5分程度に短縮
  • センサーの仕様詳細  可視3ch 赤外16ch(水蒸気を含む)波長帯のみ明示なし。

当初予定された、サウンディング観測(温度および湿度の垂直分布を観測するセンサー)を搭載する計画はとび、イメージャー単体で観測する衛星となる。


衛星での画像配信

チャンネル数が増大することにより、衛星経由でのHRITでは対応できないことから、衛星経由での画像配信を行わないとしている。

ただし、利用者があることや万一、トラブルで急遽MTSATに切り替える場合の措置などが考慮されないほか、地上回線での配信方法が全く決まっていないために、今の段階では衛星経由の配信の要否が決まっていない。衛星懇談会の委員には、衛星経由での配信は行わないことが明示されている。

愛称の由来

NASDA初代理事長島秀雄のポリシーで、JAXA初期衛星は花の名前をつけているが、 「ひまわり」の愛称は植物のヒマワリから来ている。植物のひまわりの花は常に太陽に向かって花を咲かせ、時間と共に太陽を追尾し向きが変化するといわれている。実際に動くのは芽生えから開花前のつぼみまでである。このためいつも地球を同じ方向から見ているという意味と、1日に1回地球を回るという意味で「ひまわり」と名付けられた。 これに因んで、東京都清瀬市にある気象庁気象衛星センターの前の市道は、「ひまわり通り」と名付けられている。

また、MTSAT-1は公募により「みらい」と言う愛称が選ばれていたが[8]打ち上げに失敗したため使用されずに終わり、また「ひまわり」と言う愛称が広く定着していることから代替機であるMTSAT-1R以降も「ひまわり」の愛称が用いられることとなった[9]

出典

関連項目

外部リンク