U級駆逐艦

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U級駆逐艦
基本情報
種別 駆逐艦
命名基準 "U"で始まる英単語
(嚮導艦のみ海軍軍人名)
運用者  イギリス海軍
就役期間 1943年 - 1974年
建造数 8隻
前級 T級
次級 V級
要目
基準排水量 1,710トン
全長 110.56 m
最大幅 10.91 m
吃水 3.05 m
ボイラー 水管ボイラー×2缶
主機 蒸気タービン
推進器 スクリュープロペラ×2軸
出力 40,000馬力
電源 タービン主発電機 (155 kW)×2基
停泊発電機 (50 kW)×2基
待機発電機 (10 kW)×1基
速力 36.75ノット
航続距離 4,070海里 (20kt巡航時)
燃料 重油615トン
乗員 180~225名
兵装45口径12cm単装砲×4基
56口径40mm連装機銃×1基
70口径20mm連装機銃×4基
・53.3cm4連装魚雷発射管×2基
爆雷投射機×4基
爆雷×70発→130発
FCS ・Mk.II(W)方位盤 (対空用)
・DCT方位盤 (対水上用)
FKC射撃盤 (対空用)
AFCC射撃盤 (対水上用)
レーダー ・291型 早期警戒用
272型 目標捕捉用
・285型 射撃指揮用
ソナー ・144型 捜索用
・147型 攻撃用 (後日装備)
電子戦
対抗手段
短波方向探知機 (HF/DF)
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U級駆逐艦英語: U-class destroyer)はイギリス海軍駆逐艦の艦級。1941年度戦時予算に基づく第7次戦時急造艦隊として8隻が建造され、1943年から1944年にかけて順次に就役した[1]第二次世界大戦での戦没艦はなく、1950年代には全艦が15型フリゲートに改装され、水中高速潜時代の対潜戦を担った[2][3]

来歴[編集]

第二次世界大戦の勃発を受けてイギリス海軍戦時緊急計画を発動し、駆逐艦の急造に着手した。まず、1940-1年度計画で建造を予定していた中間的駆逐艦(J級に準じた設計)の建造を前倒ししてO級P級が建造されたのち、新しい戦時要求の反映や急造に適応した設計への変更が図られ、Q級R級S級T級と、1940年度戦時予算のもとで、6次にわたる戦時急造艦隊の建造が進められた[1]

1941年2月、1941年度戦時予算において、更に5次にわたる戦時急造艦隊の建造が盛り込まれることとなった。その第一陣として、1941年6月12日に発注されたのが本級である[1]

設計[編集]

S級・T級の準同型艦であり、J級以来の単煙突・船首楼型という船型のほか、Q級で導入された燃料搭載量の増大や復原性の改善、艦尾のトランサム・スターン、またS級で導入されたトライバル級と同様の艦首形状も踏襲された[1]。また北極圏行動用の防寒設備が省かれたのもT級と同様である。なお「グレンヴィル」など2隻は三脚檣で就役したが、後に改造を受け、他艦より高いラティス・マストに変更されている[3]

機関もS級と同様にQ級・R級の構成が踏襲され、アドミラルティ式3胴型水管ボイラー(蒸気圧力300 lbf/in2 (21 kgf/cm2)、温度332.2℃)、パーソンズ式オール・ギヤード・タービンによる2軸推進、出力40,000馬力である[4]

装備[編集]

艦砲としては、S級・T級と同様、45口径12cm砲(QF 4.7インチ砲Mk.IX)を最大仰角55度のMk.XXII砲架と組み合わせて4基搭載した[3][5]。射撃指揮装置も両級と同様で、対空用には285型レーダーを備えたMk.II(W)方位盤とFKC射撃盤、対水上用には基線長3.66メートルの測距儀を備えたDCT方位盤とAFCC射撃盤が用いられた[1]

近距離用の対空兵器としては、計画当初は39口径40mm4連装機銃(QF 2ポンド・ポンポン砲)を予定したが、1941年6月の決定に基づき、S級で装備化されたヘイズメイヤー社製のFCS連動式56口径40mm連装機銃が搭載されることになり、これと70口径20mm連装機銃4~6基が基本構成となったが、「アーチン」「アンディン」では56口径40mm連装機銃のかわりに70口径20mm連装機銃を更に2基搭載して竣工したほか、一部の艦では更に艦橋張り出し部にも70口径20mm連装機銃を設置しており[1]、単装・連装取り混ぜて最大で20門を搭載した艦もあった[2]。また1944年には、「ユリシーズ」と「アーチン」では70口径20mm機銃の一部を陸軍式の56口径40mm単装機銃に換装し、後に海軍式のMk.IIIに換装した[3]。「アンディン」「アーサ」「ウラニア」でもMk.IIIが搭載され、この改修の際に「ウラニア」では70口径20mm連装機銃をすべて撤去した[1]

同型艦[編集]

大戦終結後は、全艦が全面的な近代化改修であるタイプ15改修を受け、高速対潜フリゲートに改修された。

U級駆逐艦 15型フリゲート
# 艦名 造船所 就役 改修開始 # 再就役 退役 その後
R97 グレンヴィル
HMS Grenville
嚮導艦
スワン・ハンター英語版 1943年
5月27日
1953年 F197 1954年
3月19日
1974年 1983年に解体
R83 アルスター
HMS Ulster
1943年
6月30日
F83 1955年 1977年 1980年に解体。
R69 ユリシーズ
HMS Ulysses
キャメル・レアード 1943年
12月23日
1954年 F17 1955年 1963年 1970年に解体
R53 アンドーンテッド
HMS Undaunted
1944年
3月3日
1953年 F53 1954年
7月23日
1974年
7月
1978年に実艦標的として撃沈処分。
R42 アンディン
HMS Undine
ソーニクロフト 1943年
12月23日
1952年 F141 1954年 1965年 1965年11月に解体
R22 アーサ
HMS Ursa
1953年 F200 1955年
6月29日
1966年
10月28日
1967年に解体。
R99 アーチン
HMS Urchin
ヴィッカース・
アームストロング
1943年
9月24日
1952年 F196 1954年
6月3日
1964年 1967年8月に解体
R05 ウラニア
HMS Urania
1944年
1月18日
1953年
4月23日
F08 1955年
1月2日
1967年
1月
1977年2月2日より解体。

参考文献[編集]

  1. ^ a b c d e f g Norman Friedman (2012). “The War Emergency Destroyers”. British Destroyers & Frigates: The Second World War & After. Naval Institute Press. pp. 86-107. ISBN 978-1473812796 
  2. ^ a b Roger Chesneau, Robert Gardiner (1980). Conway's All the World's Fighting Ships 1922-1946. Naval Institute Press. p. 42. ISBN 978-0870219139 
  3. ^ a b c d 中川務「イギリス駆逐艦史」『世界の艦船』第477号、海人社、1994年2月、102-103頁、ISBN 978-4905551478 
  4. ^ 阿部安雄「機関 (技術面から見たイギリス駆逐艦の発達)」『世界の艦船』第477号、海人社、1994年2月、164-171頁、ISBN 978-4905551478 
  5. ^ 高須廣一「兵装 (技術面から見たイギリス駆逐艦の発達)」『世界の艦船』第477号、海人社、1994年2月、172-179頁、ISBN 978-4905551478 

関連項目[編集]

  • ウィキメディア・コモンズには、U級駆逐艦に関するカテゴリがあります。