雇用・利子および貨幣の一般理論
『雇用、利子および貨幣の一般理論』(こよう、りしおよびかへいのいっぱんりろん、The General Theory of Employment, Interest and Money 単に『一般理論』と呼ばれることもある)は、イギリスの経済学者ジョン・メイナード・ケインズが1936年に著した経済学の理論書。
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[編集] 概要
当時の古典派経済学では市場は自律的に調整されるために失業は存在しないとされたが、1912年の世界恐慌で大量の失業が発生し、現実との齟齬が指摘されてきた。ケインズは本書で「需要によって生産水準が決定され、それが失業を発生させる」ことを明らかにし、失業の解消するための政府による財政金融などの政策の理論的根拠を与えた。その構成は
- 第1篇 緒論
- 第2編 定義および基礎概念
- 第3編 消費性向
- 第4編 投資誘因
- 第5編 貨幣賃金および価格
- 第6篇 一般理論の示唆に関する若干の覚書
から成り立っている。
古典派経済学の理論において貨幣を物々交換の媒体として位置づけられており、また市場には現在の資産を将来にわたって合理的に配分する機能があると考えられているが、このような想定は批判できる。そもそも市場が機能するためには、将来に発生する事件の内容と確率分布を知らなければならない。ケインズは不確実性が市場経済を本質的に支配していることを指摘している。貨幣は必ずしも交換の媒体になるのではなく、誰にでも受容されるという信頼性が伴って初めて貨幣として機能するのであり、もし全ての人が貨幣を保有しようとすると流動性の罠が生じる。
将来的な不確実性に対する人々の不安は、市場においては需要の低下として示される。経済システムを動かしている社会的要因はさまざまな心理状況からもたらされている。将来に対する不安が増大すれば、市場では資産の売却による利益の確定と貨幣の保有を増大させる事態を招く。ケインズは資産としての価値が低下する際にそれを売却して貨幣を保有しようとする選好を流動性選好と概念化した。流動性選好に基づいて判断すれば、投資とは社会の心理的状況が上向きであり、行き過ぎればインフレーションが起こる。逆に不安が増大すれば貨幣を保有し、設備投資や消費を抑制する。不確実性に対する楽観しや不安感が常に社会において変動するために、景気が循環している。
こうした概念は当時の経済学界に衝撃を与えた。ケインズより若い世代はこの本を熱狂的に支持し、一方古い経済学者たちは本書を批判した。ポール・サミュエルソンは「南海島民の孤立した種族を最初に襲ってこれをほとんど全滅させた疫病のごとき思いがけない猛威をもって、年齢35歳以下のたいていの経済学者をとらえた。50歳以上の経済学者は、結局、その病気にまったく免疫であった。」[要出典]と語っている。
[編集] 書誌情報
- 『雇用・利子および貨幣の一般理論』、塩野谷九十九訳、東洋経済新報社、第1刷発行1941年。
- 『雇用・利子および貨幣の一般理論』普及版、塩野谷祐一訳、東洋経済新報社、1995年。
- 『雇用、利子および貨幣の一般理論(上下)』 間宮陽介訳、岩波書店〈岩波文庫〉、2008年。
[編集] 参考文献
- 中山伊知郎編、『ケインズ一般理論解説』、日本評論社、1939年。
- 鬼頭仁三郎著、『ケインズ経済学解説』、東洋経済新報社、1946年。
- D・ディラード著、岡本好弘訳、『J.M.ケインズの経済学――貨幣経済の理論』、東洋経済新報社、1950年。
- L・クライン著、篠原三代平・宮沢健一共訳、『ケインズ革命』、有斐閣、1952年
- アルヴィン・ハンセン著、大石泰彦訳、『ケインズ経済学入門』、東京創元社、1953年。
- S・E・ハリス著、塩野谷九十九訳、『ケインズ入門』、東洋経済新報社、1957年。
- 新野幸次郎・置塩信雄共著、『ケインズ経済学』、三一書房、1957年。
- 宮崎義一・伊東光晴共著、『コンメンタール ケインズ/一般理論』、日本評論社、1964年。
- 小泉明・宮沢健一編、『ケインズ一般理論研究』全3巻(1.雇用と所得(第1編~第4編)、2.貨幣と利子(第4編~第5編)、3.成長と安定(第6編))、筑摩書房、1970年。
- リチャード・カーン著、浅野栄一・地主重美訳、『ケインズ『一般理論』の形成』、岩波書店、1987年。
- 宇沢弘文著、『ケインズ『一般理論』を読む』、岩波書店、1984年(岩波現代文庫、2008年)。
- 早坂忠編、『ケインズとの出遭い――ケインズ経済学導入史』、日本経済評論社、1993年
- 金森久雄・日本経済研究センター編、『ケインズは本当に死んだのか』、日本経済新聞社、1996年
[編集] 関連項目
[編集] 参考
[編集] 外部リンク
- ケインズ『雇用、利子、お金の一般理論』全訳 山形浩生による全訳
- ケインズ『雇用と利子とお金の一般理論』要約 同じく山形浩生による要約・翻訳