強制摂食

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1911年英国において女性解放運動者が、女性参政権のためのハンガー・ストライキを行い、ホローウェイ刑務所HM Prison Holloway)で強制摂食をさせられている[1]

強制摂食Force-feeding、食事強制、強制飼養)は、人物動物意思に関係なく食事摂食を行わせる行動。  睡眠中にも栄養を直接消化器に送る事が可能な「経管栄養食」については、当人意思の合意のもとに行われる場合と、そうでない場合がある。

人間への強制摂食[編集]

経管栄養食により、鼻・胃などから、直接食道に栄養を供給する。

医療[編集]

統合失調症幻覚拒食症等の摂食障害等、精神障害により、一定期間患者が食事を摂取できない場合に実行されることがある。精神状態に要因がある場合、本人の同意に基づく経管栄養食によって栄養・体重が回復したところで、根本的な解決とは考えられない。

本人が摂食の欲求を表せない場合、生命活動維持に影響するほど栄養・水分摂取が出来ない場合がある。その場合は法律に基づき、経管栄養を実施する。経管栄養は、鼻の穴からの経鼻栄養(Nasogastric intubation)または、胃壁に穴を開ける胃瘻造設術によって実施され、電解液グルコース等が含まれた液体が、点滴静脈注射によって供給される。

刑務所[編集]

1914年作家ジューナ・バーンズは、イギリスの婦人参政権運動者に対して行なわれている強制摂食を自ら体験してルポルタージュを書いた[2]
グアンタナモ湾収容キャンプ被収容者で食事摂取を行わない者に対しては、手足を拘束する椅子に座らせて強制摂取を行った。被収容者は嘔吐の誘発を防ぐために、栄養物が消化されるまで椅子に拘束された。

1975年世界医師会による「東京宣言」で禁止されるまでは、囚人ハンガー・ストライキを行った場合、経管栄養が行われた。

不幸な患者は、口を閉じさせられ口腔鼻腔からゴム製のチューブ食道へ挿入された。 チューブのもう片方に付けられた漏斗から、キャベツの混合物のようなものが流し入れられ、時には気管からに達し肺炎を起こした[3]

英国においては、1913年法律Cat and Mouse Act』が出来るまでは、女性解放運動のためのハンガー・ストライキ実行者に対して用いられた[4] 女性解放運動家シルビア・パンクハーストSylvia Pankhurst)は、鉄製の猿ぐつわによって口を開けられ、歯茎から出血し、嘔吐したことを記している[5]

アイルランド独立運動期には、英国は活動家に対して強制摂食を行った。1917年、英国はダブリンマウントジョイ刑務所Mountjoy Jail)において、活動家トーマス・アッシュ(Thomas Ashe)を強制摂食で死亡させた[6]

アメリカ合衆国司法によると、グアンタナモ湾収容キャンプにおいて強制摂食は頻繁に行われていた[7][8][9]。(参照:グアンタナモ湾におけるハンガー・ストライキ(Guantánamo Bay hunger strikes

コロラド州の最高管理刑務所(Supermax prison)「ADX Florence」では経管栄養による強制摂食が行われている[10][11]

結婚前の女性に対する強制摂食[編集]

過去、中東北アフリカにおいてふくよかさが女性の資産、豊かさの象徴と考えられていた時代に、女性は母親・祖母から過食するように強いられ、十分でないと時に懲罰を受けた。栄養摂取が困難であったモーリタニアなどサヘル地域では比較的長く継続された[12][13]

人間以外への強制摂食[編集]

畜産業[編集]

参照:Foie gras controversy

動物福祉団体は鳥類への強制飼養に反対している

強制飼養gavage、ガヴァージュ)は、フォアグラ生産のためにアヒルガチョウに対して行われる事で知られる。

フォアグラ生産以外の目的では、現代エジプトにおいてノバリケンに栄養を多く強制摂取させる行為が存在する(呼称:"Tazgheet" تزغيط )。

一般的には、ガンガチョウMulard ducksノバリケンとペキンダック(Pekin duck)の雑種)に行われる。屠殺の4-5ヶ月前に開始、個体の大きさによって1日に2-4回の強制飼養が2-5週間継続される。強制飼養には、薄い金属プラスチック漏斗を鳥のに挿入し、素嚢に食物を送る。すり潰したトウモロコシなどの穀物に、脂肪ビタミンなどが混合されて使用される。水鳥嘔吐反応がなく、食道が柔軟なため、通常チューブ使用が選ばれるが、冬期に入る前の短期間で多くの食糧摂取を行う事ができるため、強制飼養に向いていると考えられている。 強制飼養を終えると鳥は元の体重に戻るために、屠殺準備段階で行われる。 鳥の肝臓は最大で通常の12倍(3ポンド程度)まで肥大し脂肪肝になる。 また脂肪の付いたコンフィに使用)、羽毛も市場に流通される。

科学的研究[編集]

代謝の研究のために、ネズミなどの実験動物に対して強制飼養が行われることがある。液体はチューブまたは注射によって強制的に飼養される[14]

関連項目[編集]

参照[編集]

  • BBC 1 TV programme "Force fed" November 2, 2005
  1. ^ Pankhurst, Emmeline (1911). The Suffragette. New York: Sturgis & Walton Company. p. 433. 
  2. ^ http://www.pseudopodium.org/kokonino/tq/rydernar.html
  3. ^ WMA - Policy[リンク切れ]
  4. ^ Purvis, June; Emmeline Pankhurst, London: Routledge, p 134, ISBN 0-415-23978-8
  5. ^ Pugh, Martin; The Pankhursts, UK: Penguin Books, 2001, p 259, ISBN 0-14-029038-9
  6. ^ Barbara Olshansky, Gitanjali Gutierrez (2005年9月8日). “The Guantánamo Prisoner Hunger Strikes & Protests: February 2002 – August 2005”. Center for Constitutional Rights. オリジナル2010年1月21日時点によるアーカイブ。. http://www.webcitation.org/query?url=http%3A%2F%2Fccrjustice.org%2Ffiles%2FFinal%2520Hunger%2520Strike%2520Report%2520Sept%25202005.pdf&date=2010-01-21 
  7. ^ Savage, Charlie (2005年12月30日). “46 Guantanamo detainees join hunger strike”. Boston Globe. オリジナル2010年1月21日時点によるアーカイブ。. http://www.webcitation.org/query?url=http%3A%2F%2Fwww.boston.com%2Fnews%2Fnation%2Fwashington%2Farticles%2F2005%2F12%2F30%2F46_guantanamo_detainees_join_hunger_strike%2F&date=2010-01-21 2007年9月17日閲覧。 
  8. ^ “Gitmo Hunger Strikers' Numbers Grow”. The New Standard. (2005年12月30日). オリジナル2010年1月21日時点によるアーカイブ。. http://www.webcitation.org/query?url=http%3A%2F%2Fnewstandardnews.net%2Fcontent%2Findex.cfm%2Fitems%2F2719&date=2010-01-21 2007年9月17日閲覧。 
  9. ^ “Doctors attack U.S. over Guantanamo”. BBC News. (2006年3月10日). オリジナル2010年1月21日時点によるアーカイブ。. http://www.webcitation.org/query?url=http%3A%2F%2Fnews.bbc.co.uk%2F2%2Fhi%2Famericas%2F4790742.stm&date=2010-01-21 2006年3月15日閲覧. "The letter, in the medical journal The Lancet, said doctors who used restraints and force feeding should be punished by their professional bodies." 
  10. ^ “Supermax: A Clean Version Of Hell”. CBS News. (2007年10月14日). http://www.cbsnews.com/stories/2007/10/11/60minutes/main3357727.shtml 2009年5月31日閲覧。 
  11. ^ “'Shoe bomber' is on hunger strike”. BBC News. (2009年6月11日). http://news.bbc.co.uk/2/hi/americas/8094727.stm 2009年3月10日閲覧。 
  12. ^ "Women rethink a big size that is beautiful but brutal" Clare Soares 11 July 2006. Christian Science Monitor
  13. ^ "Gavage in Mauritania" [Subalternate Reality]
  14. ^ An obesity-associated gut microbiome with increased capacity for energy harvest : Abstract : Nature

外部リンク[編集]