屋根裏の散歩者

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屋根裏の散歩者』(やねうらのさんぽしゃ)は、江戸川乱歩短編小説

あらすじ[編集]

郷田三郎は学校を出ても定職に就かず、親の仕送りを受けて暮らしている。酒、女をはじめあらゆる遊戯に興味を持てず、この世が面白くなく退屈な日々を送り、下宿を転々としていた。

ここで郷田は友人の紹介で素人探偵の明智小五郎と知り合い、「犯罪」に興味を持つようになる。浅草公園で、戯れに壁に白墨で矢印を描き込んだり、意味もなく尾行してみたり、暗号文をベンチに置いてみたり、また労働者や乞食、学生に変装してみたりしたが、ことさら女装が気に入って、女の姿できわどい悪戯をするなど、「犯罪の真似事」を楽しみ始めた。

3カ月ほどして「犯罪の真似事」にも飽きた頃、郷田は新築の下宿屋、「東栄館」に引っ越した。明智と知り合ってから1年以上が過ぎ、郷田は再び空虚な時間を持て余していた。ある日郷田は偶然に、押し入れの天井板が外れ、屋根裏に通じていることに気付く。その日から、郷田の「屋根裏の散歩」が始まった。屋根裏は各部屋の仕切りがなく、節穴から同宿人たちの私生活が筒抜けだった。郷田は他人の秘密の盗み見にすっかり夢中になってしまう。

ある日、郷田は虫の好かない歯科医助手の遠藤が口を開けて眠っているのを真上から見ているうちに、節穴から毒薬を垂らして遠藤を殺害することを思いつく。

解説[編集]

博文館の探偵小説雑誌『新青年』で、1925年大正14年)の8月増刊号に掲載された。同年大正14年の6月[1]大阪府北河内郡守口町(現在の守口市)の自宅で執筆された作品である[2]

乱歩が鳥羽造船所に勤めていた頃、会社をサボって社員寮押し入れに隠れて寝ていた経験と、守口町の自宅の屋根裏に侵入し徘徊した経験から着想を得た[2]

乱歩は本作について、「種切れで随分苦しんだ余りの作で、書き上げて了った時はペチャンコになってしまって、もう俺は駄目だと悲しんでいたのが、案外好評で、またいい気になって次の小説を書き出したという思出があります」と語っている。本作執筆当時、乱歩の父親が末期の喉頭癌に罹っており、三重県山中の行者祠を治癒嘆願にすがり、祠のそばの空家を買って夫妻で住み込んでいて、乱歩は時折この家に通って親の世話をしていた。執筆に詰まっていた乱歩は締め切り日にちょうどこの家に来ていて、古畳に腹ばいになって結末を書いた。「間に合わせなメチャメチャなものだった」と述懐している。

当初本作は、乱歩が温めていた「天井裏に潜んだ犯罪者が節穴から発砲して殺人を成功させる」という推理小説のトリックが原案となっている。が、論理的に無理があり、実用にならないと放置していたが、「種のない苦しまぎれに、あきらめ悪くネチネチと考えていたら、徐々に変形して結局『屋根裏』が出来上がった」という。この案と、自身が鳥羽造船所勤めだったころに会社をサボって押し入れに隠れ、天井裏の散歩を妄想していたことを結び合わせることで、乱歩は本作を書く気になった。大阪に住まいを移した乱歩は、自宅の屋根裏を実際に覗いてみて、その光景を半時間も楽しんだという。平林初之輔からは「自分の家の天井裏を歩き回って、その体験談を小説にした作家なんて、古今東西に例がないだろう」と、不思議な作家であることを強調されたといい、乱歩自身も「古い読者の記憶に残っている作品の一つだから、私の代表作の短編集には、いつも入れている」と語っている。「西洋の住居には屋根裏がないだろう」との判断で、乱歩は本作を英訳短編集には加えなかった。

本作で殺人手段として節穴から毒薬を垂らす手法が描かれるが、節穴と被害者の口とが垂直線上につながる状況の説明が難しく、これは乱歩も「困ったところ」と述懐しており、各方面から批難と助言を受けたという。また甲賀三郎からは作中の塩酸モルヒネの量では致死量に足りないと指摘を受けている[3]

収録[編集]

映画化[編集]

1970年版[編集]

キャスト[編集]

スタッフ[編集]

1976年版[編集]

江戸川乱歩猟奇館
屋根裏の散歩者
The Watcher in the Attic
監督 田中登
脚本 いどあきお
製作 結城良煕
伊地智啓
出演者 宮下順子
石橋蓮司
音楽 蓼科二郎
撮影 森勝
編集 井上治
製作会社 日活映画
配給 日本の旗 日活
公開 日本の旗 1976年6月12日
上映時間 76分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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タイトルは『江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者』配給は日活日活ロマンポルノの一作である

キャスト[編集]

スタッフ[編集]

1994年版[編集]

キャスト[編集]

スタッフ[編集]

2007年版[編集]

タイトルは『エロチック乱歩 屋根裏の散歩者』。製作は円谷エンターテインメント

キャスト[編集]

スタッフ[編集]

テレビドラマ[編集]

アニメ[編集]

漫画[編集]

古賀新一作。舞台は現代。明智は登場せず、郷田が屋根裏で自身のドッペルゲンガーに遭うなど、オリジナルな展開となっている。
長田ノオト作。
山口譲司作。

関連作品[編集]

江戸川乱歩が昭和3年に発表した作品。謎の猟奇小説家大江春泥の小説「屋根裏の遊戯」として、本作がセルフパロディとして登場。作中でも主人公による「屋根裏の散歩」が描かれる。

脚注[編集]

  1. ^ 乱歩『自作自註』「あの作この作楽屋噺」(昭和4年7月)
  2. ^ a b 荒正人による解説 江戸川乱歩傑作選. 新潮文庫. p. 298. ISBN 978-4101149011. 
  3. ^ 『探偵小説講話』(昭和10年)
  4. ^ エロチック乱歩 屋根裏の散歩者”. 2011年12月8日閲覧。
  5. ^ 屋根裏の散歩者”. 日本映画データベース. 2011年12月8日閲覧。

参考文献[編集]

  • 『江戸川乱歩全集 屋根裏の散歩者』(光文社文庫)

外部リンク[編集]