作画崩壊

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作画崩壊(さくがほうかい)は、アニメ作品の制作側の諸般の事情から、作画のレベルが「常軌を逸して」低下すること。作画崩れ作画落ちかんたん作画とも呼ばれている。

目次

[編集] 概要

作画崩壊は、2000年代に入ってインターネットなど視聴者主体のコミュニティなどで使われるようになった俗語(ジャーゴン)の一種である。旧来はいわゆる「放送事故」あるいは制作の遅延などを原因とするアニメーション作品の品質低下として認識されていたが、同語のような明確な呼称は存在せず、個々の作品に於ける現象として認識されていた。しかしインターネットコミュニティなどで視聴者が情報交換し合うようになると、「ファンの視点」として元々の絵柄から逸脱した(いわゆる「崩れた」ないし「壊れた」)状態として、こういった呼称が使われるようになっていった。近年では視覚的な効果を狙ったデフォルメとの混同や、作画監督による絵柄の違いを指して作画崩壊と呼ぶ向きもあり、一種の流行語のように安易に使用される傾向も見られる。

作画の崩壊は、主に納期に間に合わなくなった作画スタジオが非常に低品質な作画で仮納品し、要求される品質に達するための修正がテレビ局の最終納期に間に合わず、止むをえず低品質のままテレビ放送されてしまうといった流れで発生するものである。また制作を間に合わせようとして作画のみをカットごとに他の複数の下請け制作プロダクションに発注、関係資料の受け渡しや連絡・品質チェックが不十分といった場合もある[1]

この種の事例はテレビアニメにありがちであるが、『ガンドレス』(劇場公開1999年)のように劇場公開作品発生した事例もある。

[編集] 業界内の混乱と作画崩壊の発生

制作スケジュール管理や予算から、コストが安く低技術の日本国外の下請け会社に作画作業を発注し、それを修正する時間が無いことが原因と見られている。また、マルチメディア展開の中枢を担う企業が、作品人気のを逃がさないために無茶なスケジュールでアニメの企画を強行したことが一因となったとされるケースもある。実際それらを裏付ける制作側の発言も、しばしばネットやメディアを通して聞かれる。当然ながら、この品質面の破綻によって以下のような弊害も発生してくる。

  • 余計に製作時間が取られる
  • 修正のための人員の確保の手間と費用が発生する
  • 人気と売り上げが落ちる

結果、国内の会社に発注したのと費用面で大して変わらないか、かえって悪くなってしまうこともある。スタッフ・製作会社もこの不利益・リスクを重々承知しているものの、日本国内のアニメ業界の深刻な人手不足から海外に発注せざるを得ない、というのが現状のようである。

制作側の都合をスケジュールに反映させやすいOVAではこの種の問題は比較的少数である。またテレビアニメでも、放映後のビデオ・DVDなどのメディアソフト化の際に、まずい部分はマスタリングで修正される場合がほとんどである。

[編集] 匿名の製作スタッフ

なお、こういった作画崩壊と関係するのかどうかは一概にいえず不明確ではあるが、一部のアニメ作品では、米国で映画制作に際して内部でのトラブルにより映画監督が責任を放棄する場合に用いられた架空の監督名「アラン・スミシー」ないしこれを捩ったと解される名前が使用されていることもある。

例えばアダルトゲームをアニメ化した『夜明け前より瑠璃色な』は俗に「キャベツ」と視聴者筋が揶揄した品質面で難のある描写が存在したが、このスタッフロール中に「亜乱炭椎」という演出スタッフ名が存在していた[2]



[編集] 事例

[編集] テレビアニメ黎明期

まだTVアニメがモノクロ放映であった時代の作品である『鉄人28号』(1963年-1966年)や『ビッグX』(1964年-1965年)などの絵は、最近(2007年現在)のアニメしか知らない人間から見れば、非常に劣悪といえる。この時代ではアニメがまだ産業として定着しておらず、日本のアニメ業界は専ら実験的な作品も商品にしていた。

多少異なる話だが、『鉄腕アトム』シリーズでは、「スタジオ・ゼロ」が担当した回が、あまりにも原画担当者の個性が現れすぎてキャラクターが設定書に似ていないという珍事件も起こっている。

この時代のアニメ制作者らは、主にディズニーなど日本国外の潤沢な資金力に裏付けられたアニメーション作品に刺激を受けた、これに将来性や夢を抱いた学生や漫画家たちが中心となっていた。このため職制自体の体系的な整備どころか、専門化・分業化すらされておらず、その多くが1作品につき1プロダクション内部にて制作されていた。

[編集] 第二次アニメブーム

機動戦士ガンダム』に始まる1980年代の第二次アニメブームの当時、『超時空要塞マクロス』の第11話では、動画が間に合わず「テレビ紙芝居」と揶揄されるような状態のまま放映されてしまった。また同シリーズ中、韓国のスタープロに外注した回では、全般的に著しい作画の乱れが目立っていた。

また「超時空世紀オーガス」のある回のように、全く同じカットが1回の戦闘シーンに3-4回も使い回されるという例もあった。

この頃までは、以前放送した内容を編集して「総集編」と称する、または以前の放映回をそのまま「傑作選」として放映する、というようなことは、予定された納期に間に合わないなどの事情による一種の放送事故とも言うべき出来事であった[3]。後々当時の制作スタッフの談話がアニメ雑誌に掲載されることはあっても、偶発的な現象として扱われた。またこの時代には主に制作者サイドからの視点のみによってしか記録が残っていない場合がある。

[編集] 過酷な業界事情

こういった問題の原因には、制作スタジオ間の連絡ミスや、品質チェックがなおざりになりがちな業界人体質といったものも囁かれるが、根本的に制作現場のフリーランスのアニメーターが中心となった「職人芸体質」に依存している部分もあり、異動により人材の層に穴が開きやすい傾向も見られる。

日本芸能実演家団体協議会は2005年から、従来の演劇・芸能に加えてアニメーション業界の動向を調べている。ここからはアニメーターは非常に過酷な状況下にあることがうかがわれ、労働時間は推定月250時間程度ながら平均年収100万円未満26.8%・100-200万円19.6%・200-300万円18.6%と長時間低賃金傾向が根強いとしている。この中で「セル画一枚約186.9円」とも言われ、作画担当の73.7%が年収100万円未満で出来高給という事情が報告されている[4]

[編集] その他

トゥーンレンダリングなど人物の作画を自動化する試みも行われているが、見た目が手描きに未だに追いついていないのが現状である。

[編集] 脚注

  1. ^ その原因として、日本のテレビアニメの黎明期に低予算で大量生産が可能な「リミテッドアニメ」と呼ばれるこう言った手法を導入した手塚治虫の責を求める向きもある。手塚自身も後年インタビューで「低予算で受けたのは失敗だった」と述懐している。
  2. ^ ただし「キャベツ」は同作品の3話で「亜乱炭椎」は8話
  3. ^ 『総集編』はその後、制作スケジュール調整のため意図的に入れることもあるようになった
  4. ^芸能実演家・スタッフの活動と生活実態」 日本芸能実演家団体協議会、2005年。

[編集] 関連項目

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