ドゥカティ・デスモセディチ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
2008年型デスモセディチGP8

デスモセディチ(Desmosedici)とは、ロードレース世界選手権MotoGPクラス参戦を目的としたドゥカティのレース専用オートバイである。

また、デスモセディチの性能をほぼ受け継いだ公道仕様車も存在する(後述)。

概要[編集]

名前の由来[編集]

「デスモセディチ」という名称は、後述のエンジンバルブ開閉機構デスモドロミックの「デスモ」とバルブ数である16のイタリア語である「セディチ」を合わせたもの。日本語に訳すと「強制開閉16バルブ」という意味になる。

また年式を表す「GP-」が名称の後に付き、2006年型は「デスモセディチGP6」で、2010年型は「GP10」となる。

誕生の背景[編集]

2002年からロードレース世界選手権(MotoGP)の最高峰クラスがGP500からMotoGPクラスに変更されるに伴い、参戦できるマシンのレギュレーションも大きく変わった。特に大きな変更点はエンジン排気量に関するもので、それ以前は2ストロークエンジン(以下2st)・4ストロークエンジン(以下4st)ともに排気量の上限は500ccだった(同じ排気量では2stの方が高出力であり有利である)のが、変更後は4stのみ990ccまでに拡大された。このため4stエンジンのマシンが有利になるため、以前から参戦していたホンダヤマハスズキといったメーカーは2000年頃から4st990ccマシンを開発し、2002年からの参戦に備えていた。

それに対しドゥカティは4stエンジンを得意としていたため、2st有利だったGP500時代は参戦せず、市販車4stマシンのみで争われるスーパーバイク世界選手権(SBK)に参戦していた。しかしレギュレーション変更によって4st中心となるであろう新生MotoGPクラスへの参戦を決意、2001年に4st990ccL型4気筒エンジン搭載車による参戦を発表した。発表前にはドゥカティの代名詞とも言えるL型2気筒エンジンでの参戦も囁かれていただけに、ドゥカティとして初となるL型4気筒[1]での参戦発表は驚きをもって迎えられた。

990ccモデル[編集]

1年後の2002年MotoGPイタリアGPにおいてデスモセディチのプロトタイプが発表された。それ以降テストを重ね、2003年開幕戦・日本GPでデビュー。初戦からトップ争いを演じロリス・カピロッシが3位を獲得、第6戦カタルーニャGPでは早くも初勝利を上げた。2004年からは型落ちマシンのプライベートチームへの供給を開始。ワークスチームは2005年からタイヤをブリヂストンに変更して戦闘力を上げ、2006年シーズン終了時までに通算7勝を記録。

800ccモデル[編集]

2007年からMotoGPのレギュレーションが変更となった。主な変更点はエンジン排気量に関するもので、安全上の理由から2006年までの990ccから800ccに引き下げられた。そのため各メーカーとも新レギュレーションに対応する新たなマシン開発に迫られたが、ドゥカティはいち早く開発に着手。2006年シーズン半ばで早くも800ccマシン・デスモセディチGP7を完成させテストを開始していた。

そしてGP7のデビューレースとなった2007年開幕戦・カタールGPでは新加入のケーシー・ストーナーが優勝を飾って早期テストの成果を見せつけ、以降も勝利を積み重ねてドゥカティに初めてのコンストラクラーズタイトルをもたらしただけでなく、チーム・ライダータイトルを含む三冠を達成させた。

2008年も好調を維持し活躍を見せたが、ヤマハ勢の追い上げによりタイトル防衛はならず、2009年は主戦のストーナーが途中で一時休養したことが響き成績を伸ばせなかった。2010年は乗りやすさを重視した改良を行なうことにより全体の底上げを図ると同時にフロントサスペンションにオーリンズの新型サスペンションを採用したが、これが序盤においてストーナーの苦戦を招いてしまった[2]。2008年以降のマシンはストーナー以外は乗りこなせないと言われるほどクセのあるマシンと言われており(事実ストーナーのチームメイトであったマルコ・メランドリニッキー・ヘイデンはかなりの苦戦を強いられている)、ストーナー曰くスーパーバイク的な乗り方を要求されるマシンであると言う。

2011年はストーナーの移籍によりバレンティーノ・ロッシを迎えてシーズンに挑んだが、来期からのレギュレーション変更を見据えてマシンを製作したため車体のセッティングが全く噛み合わず、フレームの素材を変更するなど試行錯誤を続けたが苦戦から抜け出せず、2004年以来のシーズン未勝利に終わった。

1000ccモデル[編集]

エンジンのレギュレーションが1000ccに変更された2012年以降も、昨年からの苦戦が続いており、2013年は表彰台も獲得できず、シーズン終了時点で3年連続未勝利となってしまった。

メカニズム[編集]

エンジン[編集]

エンジンは4ストローク990cc→800cc→1000ccのL型4気筒16バルブ。バルブ開閉機構に一般的なスプリングを用いず、L型2気筒とともにドゥカティの代名詞であるデスモドロミック(強制弁開閉式)を採用。この機構を用いるMotoGPマシンはデスモセディチのみである。

フレーム[編集]

フレーム形式はMotoGPマシンで一般的なツインスパーではなく、ドゥカティの市販車でお馴染みのパイプを用いたトラスフレームであったが、2009年仕様からカーボンフレームを採用している。2010年からスイングアームもカーボン製のものが採用されている。

2011年のシーズン中にはアルミフレームが採用され、2012年にはこれまでのフレーム構造を改めてスタンダードなアルミツインスパーフレームが採用されている(厳密には一般的なツインスパーとは違い、エンジンをフレームの一部とするこれまでの構造も残されているようである)。

タイヤ[編集]

タイヤは2003年・2004年がミシュラン、2005年以降はブリヂストンを採用している(ワークスチーム)。

戦績[編集]

※ワークスチームの戦績

  • 2003年 - コンストラクターズランキング:2位
ロリス・カピロッシ:4位(1勝)/トロイ・ベイリス:6位
  • 2004年 - コンストラクターズランキング:3位
ロリス・カピロッシ:9位/トロイ・ベイリス:14位
  • 2005年 - コンストラクターズランキング:3位
ロリス・カピロッシ:6位(2勝)/カルロス・チェカ:9位
  • 2006年 - コンストラクターズランキング:3位
ロリス・カピロッシ:3位(3勝)/セテ・ジベルナウ:13位/トロイ・ベイリス(1勝・最終戦スポット参戦)
  • 2007年 - コンストラクターズ:1位
ロリス・カピロッシ:7位(1勝)/ケーシー・ストーナー:1位(10勝)
  • 2008年 - コンストラクターズ:2位
ケーシー・ストーナー:2位(6勝)/マルコ・メランドリ:17位
  • 2009年 - コンストラクターズ:3位
ケーシー・ストーナー:4位(4勝)/ニッキー・ヘイデン:13位/ミカ・カリオ(第11-13戦)
  • 2010年 - コンストラクターズ:3位
ケーシー・ストーナー:4位(3勝)/ニッキー・ヘイデン:7位
  • 2011年 - コンストラクターズ:3位
バレンティーノ・ロッシ:7位/ニッキー・ヘイデン:8位
  • 2012年 - コンストラクターズ:3位
バレンティーノ・ロッシ:6位/ニッキー・ヘイデン:9位
  • 2013年 - コンストラクターズ:3位
アンドレア・ドヴィツィオーゾ:6位/ニッキー・ヘイデン:9位

公道仕様車・2人乗り仕様車[編集]

デスモセディチRR
2007年1500台限定生産[3]
Road going racer - Ducati - Flickr - Supermac1961.jpg
基本情報
排気量クラス 大型自動二輪車
メーカー ドゥカティ
エンジン 989cc 
4ストロークL型4気筒水冷デスモドロミック4バルブ
内径x行程 / 圧縮比 86mm x 42.56mm / 13.5:1:1
最高出力 197PS/13,800rpm
最大トルク 11.8kgf・m/10,500rpm
      詳細情報
製造国 イタリアの旗 イタリア
製造期間 2007年
タイプ スーパースポーツ
設計統括
デザイン
フレーム
全長x全幅x全高 2,100mm x __ x 1,100mm
ホイールベース 1,430mm
最低地上高
シート高
燃料供給装置 燃料噴射装置
始動方式
潤滑方式
駆動方式 チェーン
変速機
サスペンション テレスコピック式
スイングアーム式
キャスター / トレール
ブレーキ 330φ油圧式ダブルディスク
240φ油圧式シングルディスク
タイヤサイズ 120/70R17
200/55R16
最高速度
乗車定員
燃料タンク容量 15L
燃費
カラーバリエーション
本体価格 8,662,500円(税込)
備考
先代
後継
姉妹車 / OEM
同クラスの車
テンプレートを表示

デスモセディチの公道仕様車はデスモセディチRR(略称はD16RR)といい、2007年に限定生産で発売が開始されている。最低限の保安装備は搭載しつつも、機構的にはレーサー仕様(原型はGP5つまり2005年型とされる)をほぼ流用している。エンジンは水冷4ストローク・デスモドロミック16バルブ・90度V型4気筒で360度クランクに70度の位相角を採用する不等間隔爆発エンジンで、カムシャフトの駆動はギアによるカムギアトレインであり、これもレース用車両に準拠する(日本向け公道仕様車は騒音規制により61馬力)。なお価格は5万ユーロ、日本円で866万2500円(税込)。この価格は市販二輪車としては高額であるが、一台数億円とも言われるGPマシンとの多くの相関性を考慮すると、むしろ破格であると言える。

また、公道仕様とは別に、レース用をベースとした2人乗り仕様も存在する。これは観客にMotoGPマシンのパフォーマンスを体験してもらう目的で作られた体験試乗用のデスモセディチである。各レースで元GPライダーのランディ・マモラ氏が運転し、少数の幸運な観客やゲストが体験試乗している。過去に体験した有名人にはF1ドライバーのミハエル・シューマッハNBAのスーパースター、マイケル・ジョーダンらがいる(ちなみにこの2名は自らの手で1人乗りレース仕様車の運転も経験している)。

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ 1960年代にL型4気筒のアポロが製作されたことがあるが試作に留まる。
  2. ^ ライディングスポーツ2011年4月号より
  3. ^ http://www.virginducati.com/guide/getnavi/desmosedici/desmosedici.htm

関連項目[編集]

外部リンク[編集]