ターザン

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ターザン

ターザン(英:Tarzan)は、アメリカ小説エドガー・ライス・バローズが創造した架空のキャラクター。小説ターザン・シリーズ、及び映画化作品の主人公を務めるが、脇役として登場する事もある

本項では、まず小説版について説明する。映画版については、#映画、TVのターザン以降を参照。なお、日本語表記はハヤカワ文庫特別版SFに準じる。

小説版(オリジン)[編集]

小説版は多くの映画と違い、知的な面を持っている(端的には、複数の言語を自在に操る)。また、文明批判の目も厳しい。

本名はグレイストーク卿ジョン・クレイトン。イギリス人であり、その称号の示す通り貴族である(ただし、命名されていないため、本名は父親の名をそのまま受け継いでいる)。

なお、脇役として登場するのは、外伝的作品『石器時代から来た男』と、第4巻『ターザンの逆襲』、少年ものの『ターザンの双生児』2作("Tarzan and the Tarzan Twins"と"Tarzan and the Tarzan Twins with Jad-Bal-Ja, the Golden Lion")である。

特徴[編集]

ターザンは野生児として育ったが、由緒正しい貴族の生まれである。彼の特徴は、外見(外面)と内面の両方に渡る。詳細は後述

外見、能力の特徴
筋骨たくましい半裸の男性であり、怒ると額の古傷が赤く浮かび上がる[1]。もっとも、傷の存在は初期に顕著なものの、次第に忘れられていく。
超人的な戦闘力を持ち、ナイフロープだけ、あるいはナイフだけでライオンを倒す。素手で類人猿を殺したこともある。
視覚、嗅覚、聴覚が鋭い。味覚に関しては独特で、調理済みの肉(つまり料理)よりも生肉を好み、味には無頓着である。
複数の言語(人間以外の言語を含む)に通じているほど、頭脳が明敏である。
内面
野性と文明社会のそれぞれに惹かれつつも、そのどちらにも馴染みきれない、という部分を持っている(「イギリス貴族の息子にして野生児」という部分が、既に魅力と矛盾を秘めている)。

当初は彼と家族に成長(経年)が訪れていたが、孫息子の登場(第10巻『ターザンと蟻人間』〈1924年〉)を境に、ターザンから経年(老化)の兆候が見られなくなり、不老長寿、あるいは不老不死の様相を示してくる(両親の船出が1888年5月[2]、結婚がその3ヶ月前[2]である事から、ターザンの生年は1889年、ないしは1888年である。後述フィリップ・ホセ・ファーマーは1888年説を採っている模様)。肉親の出番も見られなくなっていく。

なお、ターザンのモデルについては、ロムルスレムスローマ帝国の建国にかかわる兄弟で、「狼に育てられた」という伝説を持つ)が、参考作品としては『ジャングル・ブック』(ラドヤード・キップリングの小説)が挙げられている。詳細はターザン・シリーズ#参考作品を参照。

2大シリーズとの対比[編集]

他のバローズの長期シリーズである火星シリーズ(1912年~)、ペルシダー・シリーズ(1914年~)[3]の場合、主人公はその世界を紹介する側面がある。このため、ジョン・カーター(火星〈バルスーム〉大元帥)、デヴィッド・イネス(ペルシダー皇帝)は、性格や思考は保守的(中立的)であり、物語の中では読者の分身として驚き役を示している[4] 。これに対し、ターザンは彼自身が驚異として読者の前に登場する(つまり、タイトル通り、各シリーズの主役はバルスーム、ペルシダー、アムター〈金星〉、ターザン、といえる)。ただし、第8巻以降は、ほぼ「秘境もの」に転換し、読者の前には新たな世界が驚異として登場する。

また、ヒロインとの関係も象徴的である。3大シリーズの場合、物語は初期において一度完結する(火星は3部作、本シリーズとペルシダーは2部作)。火星、ペルシダーの第1巻では、ヒーローとヒロインは心を通わせるものの、何らかの物理的な要因で引き裂かれてしまう(火星の場合は事故、ペルシダーの場合は狡猾なライバルの邪悪な企み)。しかし、ターザンとジェーンは心を通わせあうものの、それぞれの思惑(心理的要因)によって別れることになる(ジェーンには迷いがあり、ターザンは相手を愛するが故に別れを選ぶ)。この辺りにも、ターザンというキャラクター(物語)の持つ複雑さが表れている。

とはいえ、火星、ペルシダーは最後までデジャー・ソリス、ダイアンがヒロインであり続けたのに対し、ジェーンの登場はほぼ第10巻までで、以後は『ターザンと女戦士』(1936年〜1937年)に「妻」が短い出番を与えられているのみ、となっている(名前すら明記されていない)。

経歴・交友関係[編集]

ターザンの能力や家庭、友人、血縁など。

能力[編集]

身体能力
ジャングルに適応した、超人的な体力・技術を有する。視覚、聴覚、嗅覚は鋭く、野生動物並みである。また、木立を伝って移動する、という「猿人」に相応しい能力を持つ。
ライフルなどの近代武器よりも、原始的な武器を好む。具体的には、狩猟ナイフ、ロープ、弓矢が、標準的な装備である(先の2点は18歳未満から使用しており、後の2点は18歳から使用。結果、成人後に会得した銃火器よりも馴染んでいるため、信頼性が高い)。
10歳の時点で、既に腕力は並みの男性と互角であり、運動神経はスポーツの達人クラスに達していた(例えば、木立から木立へ7メートルも飛ぶ)。
言語
まず、類人猿の言語(口語)を習得。この言語は、他の類人猿の部族でも使われている他、オパルの住民(アトランティスの植民地の末裔)や、ペルシダーのサゴス族(ゴリラ人間、と呼ばれる類人猿的存在)も使用している。
次に英語(文語のみ)を独学で習得(父が年単位での滞在を見越して、子供の教育用に絵本を用意し、また書物や辞書も残っていたため)。活字体は覚えたが、筆記体は未習得。相手がいないため、口語も習得していない。なお、父親の日記はフランス語で書かれていたため、読めなかった。
成人後、フランス語の口語をポール・ダルノー中尉(フランス海軍所属)から教わる。その後、英語(口語)を習得したが、この時点では英語の口語は不得手だった(以上、第1巻)。
以後、ラテン語[5]アラビア語[6]、ドイツ語[7]の他、スワヒリ語などアフリカの原住民の複数の方言など、数カ国語を習得する。

出自[編集]

父は英国貴族、グレイストーク卿ジョン・クレイトン(Lord Greystoke, John Clayton)。母はアリス・ラザフォード(結婚時、まだ10代だった)[8]。夫妻は赴任先である英領西アフリカに向かう途中、船員の反乱に遭遇し、アフリカの西海岸に置き去りにされた。

ターザンは夫妻が海岸に作りあげた小屋で生まれ、彼が1才になった時に母親は亡くなった。父は類人猿カーチャク(Kerchak)に殺されたが、ターザンは類人猿カラ(Kala)に救われた。カラは子供を亡くしたばかりであり、群れのリーダーであるカーチャクに逆らい、ターザンの養母となった[9][10][11]。なお、「ターザン」とはカラがつけた名前で、類人猿の言葉で「白い肌(White-Skin)」を意味する。成人後、指紋鑑定でグレイストーク卿の息子と判明(第1巻終盤にて)、第2巻終盤以降は父の名を受け継いだ。

なお、第1巻冒頭では、「主要人物には架空の名前を用いる」と宣言されている[12]

ターザンの家庭[編集]

グレイストーク卿ジョン・クレイトン(故人)。
アリス・ラザフォード(故人)。
養母
カラ(類人猿。死別)。
ジェーン・クレイトン(旧姓ポーター)。アメリカ人。第1巻で登場し、第2巻で結ばれる。
息子
ジャック・クレイトン。シリーズでは第3巻『ターザンの凱歌』から登場し、第4巻『ターザンの逆襲』では主役を務める(正確には、シリーズの外伝的な作品『石器時代から来た男』の第1部が初出である)。
成長後は、コラク(類人猿の言葉で「殺し屋」)と呼ばれる勇ましい戦士となった。メリームを妻としている。
息子の妻
メリーム。初登場時は第4巻のヒロイン。本名はジャンヌ・ジャコー(ただし、結婚前の姓名)。
アラブ人の養女としてジャックと知り合い、恋に落ちる。実は7歳の時に誘拐されたフランス人(フランス王家の血筋にあたる)。
第10巻『ターザンと蟻人間』に登場。ジャックとメリームの子供。男の子、というだけで名前は不明[13]
ライオン
名前はジャド・バル・ジャ(パル・ウル・ドンの言語で「黄金のライオン」)。第9巻『ターザンと黄金の獅子』から登場。
幼い頃、ターザンに拾われて養育され、心強い友人として成長した。ターザンの命令には忠実に従う。パル・ウル・ドンからの帰路に拾ったため、ターザンはその言語で名前をつけた。
家政婦
筆頭はエスメラルダ。大柄な黒人女性で、第1巻で初登場。この時はポーター家の家政婦であり、ジェーンの母代わりといえる存在だった(ジェーンの実母は、幼少時に死亡)。
ジェーンの結婚後は、グレイストーク家の家政婦となり、ジャック誕生後は乳母となっている[14]。第3巻では、ターザンとジェーンが不在のため、機転を利かし、独断でジャック誘拐事件を解決へ導いている。
部下の部族
ワジリ族。勇敢で知的な黒人の一族で、第2巻から登場。ターザンと意気投合し、共闘した仲。
前族長(ワジリ)の死後、ターザンを族長として迎え入れ、忠実な部下となった。

ターザンの親類、縁者[編集]

ディックとドック
ディック、ドックとも、ターザンの遠縁にあたるが、ドック自身とターザンに直接の血縁関係はない。「ターザンの双生児 (The Tarzan Twins) 」と呼ばれる少年たちで、実際は従兄弟同士。双子ではないが、双子のようによく似ている(彼らの母親が、アメリカ生まれの双生児だった)。
ドックの母はアメリカで結婚し、ディックの母はイギリス人(ターザンの遠縁に当たる)と結婚してイギリスに移り住んだ。2人は、同年同日生まれの子供たちを同じ学校で教育を受けさせようとし、彼らが14歳になった時、イギリスの名門校に入学させた。
髪の色の明るいドックは「ターザン・タル(白)」、髪の色が黒いディックは「ターザン・ゴ(黒)」と呼ばれる[15]
少年向け短編2編("Tarzan and the Tarzan Twins"と"Tarzan and the Tarzan Twins with Jad-Bal-Ja, the Golden Lion")で主役を務める。アメリカではターザン・シリーズには含めないが、ハヤカワ文庫版では第11巻『ターザンの双生児』として刊行されている(2編とも収録されている)。
ウイリアム・セシル・クレイトン
ターザンの従兄弟。第1巻、第2巻に登場。彼の父はグレイストーク卿(ターザンの父)の弟で、グレイストーク卿失踪後、その後継者となっていた。父の死後、彼がグレイストーク卿を引き継いでいる。ターザンの恋敵でもあった。
13世紀のグレイストーク卿
未訳の『トーンの無法者』("The Outlaw of Torn")に登場。ターザンの先祖にあたる。
『トーン~』はバローズの第2作であり、第3作がターザン・シリーズの第1巻である。

友人[編集]

前述のダルノー中尉は、第1巻で親友となった。交際は以後も続き、第4巻『ターザンの逆襲』ではフランス海軍の提督となっており、メリームと親族の再会に一役買っている。しかし、『ターザンと禁じられた都』(1938年)で久しぶりに登場した際は、海軍大尉だった。

石器時代から来た男』には、アメリカ人バーナード(バーニー)・カスターと、その妹のヴィクトリア・カスター、彼らの友人でルータ王国(バローズの創り出した架空の国家)の軍人であるバッツォー中尉が登場した。ヴィクトリアは当該作のヒロインであり、バーニーは『ルータ王国の危機』の主人公である。

『石器時代から来た男』でのターザン[編集]

全2部で構成されている『石器時代から来た男』は、ターザン・シリーズの第2巻と第3巻の間に位置している(実際に登場するのは第1部のみ。第2部は、第3巻の後で発表された)。

ターザンとジェーンが結ばれたのは、第2巻のラストだが、ここではそれから1年ほどが経過していると見え、愛息子ジャックが誕生し、エスメラルダが乳母を務めている。ターザンは「かつて猿人ターザンと呼ばれた」[16]と説明され、ターザンと書かれている場面[17]は少なく、ほぼ「グレーストーク(もしくはグレーストーク卿)」[18]や「クレートン」[19]と呼ばれ、それに相応しい衣服を身にまとっている。一方で、ジェーンは「グレーストーク夫人」[20]と表現され、家庭に収まっており、あまり目立たない。また、悪漢の討伐に際しても、ターザンは半裸になることも単独行動を取ることもなく、集団でライフルを抱えて行動している[21]。さらに、自分の感覚よりも「常識」を優先して判断している[22]、など、現役の猿人(第2巻までと、第3巻以降)とは違った描写がなされている。

しかし、第2部のラスト(15.洞窟の秘密)にてドンデン返しがあり、第1部のほとんどは「なかったこと」にされている。なお、リチャード・A・ルポフによると、『石器時代から来た男』の主人公である原始人ヌーは、猿人ターザンの同類(分身)である[23]

ターザンの「伝記」[編集]

本節は、『恐怖王ターザン』に寄せた森優の解説、「ターザンは実在する?」による[24]

アメリカのSF作家フィリップ・ホセ・ファーマーは、ターザンの伝記として『実在するターザン─グレイストーク卿の決定的伝記』を執筆、ダブルディ社から出版された。これは、「バローズの作品(ターザン・シリーズ)はフィクションとして綴られ、資料が少ない部分は想像で補ったため、矛盾などの不備がある」とし、「この伝記では、彼の切り捨てた資料等で補遺している」、というスタンスである。また、「実際にターザンに会い、インタビューした」とも書かれている。

インタビューの場所は、ガボンのリバーヴィルにあるホテルで、「写真も撮らず、録音もしない」と条件がつけられていた。インタビュー当時、ターザンは80歳であったが(当該作では、生年は1888年とされている模様)、35歳くらいにしか見えなかったという。この若さは、1912年1月にウガンダで助けたまじない師から渡された秘薬によるもの、と説明されている。

また、ファーマーがターザンの家系を8世分、遡って調査したところ、血縁にシャーロック・ホームズパーシー・ブレイクニー准男爵ドック・サヴェジネロ・ウルフピーター・ウィムジイ卿、ブルドッグ・ドラモンドらがいることが判明した。彼ら英傑の由来としては、1795年にイギリスに落ちた隕石による突然変異、と説明されている。

なお、本作は早川書房が版権を取得し、「ハヤカワ版(TARZAN BOOKS)完結の暁には、シリーズ別巻として刊行される」、と予告されていたが、未訳のままである(2011年9月現在)。

映画、TVのターザン[編集]

映画のターザンは、陽性のヒーローとして登場する(ただし、『グレイストーク -類人猿の王者- ターザンの伝説』(1983年Greystoke: The Legend of Tarzan, Lord of the Apes のような、原作重視の例外も存在する)。ジャングルの王者として君臨し、密猟者や秩序を乱す猛獣に鉄槌を下す。また、多くの場合、言語に不自由で、片言しか(英語、ないしは人間の言葉を)喋れない。マスコットとしてチータ(チーター)というチンパンジーを連れている場合もあるが、原作には登場していない(そもそもチンパンジーが登場しない)。ただし、それに類する小猿は登場しており、ンキマという小猿が複数回、登場している。

エルモ・リンカーンが主演したサイレント映画『ターザン英語版』(1918年)を皮切りに、数多くの映画が製作され、ターザンの名は一躍有名になった。1918年〜1958年の40年間で32本のターザン映画が製作され、その興行収入は累計5億ドル、観客動員数は累計20億人に達した[25]。中でも『類猿人ターザン』(1932年)をはじめとするジョニー・ワイズミュラーのターザンは有名である。ワイズミュラーは水泳金メダリストであり、元は俳優ではなかったが、そのぎこちなさ故に、野生児としてのターザンはハマリ役だった[26]

ワイズミュラー映画で有名な「アーア・アー」というターザンの雄叫びは、の鳴き声など十数種の音源をミックスしてMGMの特殊効果部が作り上げた。今日ではロープに掴まって対岸に渡る時の掛け声となっている。

なお、ワイズミュラーは1971年世界SF大会(に参加した、バロウズ・インコーポレイテッド[27]の)主催の昼食会に主賓として招かれたが、70歳を過ぎている[28]にもかかわらず若々しく(ただし、髪は白髪になり、顔はシワが増えていた)、矢野徹から「ターザン・シリーズ日本での翻訳が開始された」と知らされると、非常に喜んでいた[29]

映画化への道のり[編集]

ロバート・フェントンによると、1914年春、バローズが妻とカルフォルニア州サンディエゴで休暇がてら第3作『ターザンの凱歌』を執筆していた時、ニューヨークのジョゼフ・W・スターン商会から連絡があり、映画化の話が持ち上がったのがきっかけである[30]

この企画は流れたが、バローズは自作の映画化への可能性を知る。シカゴへ帰った彼は、ニューヨークのオーサーズ・フォトプレイ・エージェンシーに『類猿人ターザン』の映画化への売込みを依頼した。また、出版社A・C・マックラーグとは、劇化・映画化の際の著作権が著作者に帰属する契約書を交わしている(ただし、第2作『ターザンの復讐』以降分)[31]

しかし、映画化の話は思うように進まず、バローズは直接行動に出る。ウィリアム・N・セリグ大佐(シカゴにある、セリグ・ポリスコープ・カンパニーの社長)に、『類猿人ターザン』と、未発表の原稿1本(『砂漠のプリンス』 (The Lad and the Lion))を送りつけたところ、セリグは『砂漠のプリンス』に興味を示し、500ドルで映画化権を購入する(1915年1月)[32]

バローズはさらに2本ほどセリグに送り、ユニヴァーサル・フィルムズやアメリカン・フィルム・カンパニー等にも打診するが、全て断られてしまう。「小説としては面白いが、映画には向かない」と酷評も受ける[33]

1916年6月、シカゴのウィリアム・パーソンズと『類猿人ターザン』の映画化権に関する契約を取り付ける。しかし、パーソンズは映画業界の素人であり、計画は頓挫しかける。10月末、なんとかパーソンズの会社が設立され、映画完成への目途がつく[34]

1917年4月、セリグ・プロの映画『砂漠のプリンス』(主演、ヴィヴィアン・リード)が公開され、好評を得る。ただし、原作者の意向が無視されたため、バローズは複雑な思いだった[35]

映画(第1作)のエピソード[編集]

本節はエドガー・ライス・バロウズ 「ターザン、フィルムランドへゆく」『ターザンとアトランティスの秘宝』 高橋豊訳、早川書房〈ハヤカワ文庫SF〉、1972年、森優、300-301頁による。

撮影
主としてルイジアナ州で行われた。
実際の動物のシーンやジャングルのシーンは、ブラジルで撮影されたものが使用された。
類人猿のシーンは着ぐるみを使用し、ニューオルリーンズの体育クラブのメンバーを雇った。枝から枝へ飛び移るシーンの他、カラ(養母)が幼いターザンを養育するシーンも、彼らが行っている。
主演
当初はウィンスリー・ウィルスンが演じる予定だった。しかし、パーソンズが資金繰りに困っている間に徴兵され、第一次世界大戦に出兵した。エルモ・リンカーンは、代役である。
エルモ・リンカーン
エルモは役に相応しい、強い男性だった。また、彼は非常に毛深い男性であり、日に2回は体毛を剃らないと、類人猿に見間違われそうだった(子役としてターザンの少年期を演じた、ゴードン・グリフィスによる回想)。
映画は大ヒットし、本作で大スターとなった。
ストーリー
ほぼ原作通り。ただし、以下の2点で大きく異なる。
  • 会話を教わるのはフランス軍人のダルノー中尉ではなく、ビンスという船員(両親の友人で、イギリス人)。教わる言葉も、フランス語ではなく英語である。
  • ジェーンと結ばれる。
宣伝、成績
チンパンジーをシルクハットタキシードで正装させ、一流ホテルのロビーに登場させた。これが新聞で大きく報道され、映画も大ヒットとなった。
新聞・雑誌(ニューヨーク・タイムズ、シカゴ・ジャーナル、モーション・ピクチャー・マガジンなど)の反応も良く、興行収入は100万ドルを突破した。「最初に100万ドルを突破した6作品」のひとつとして数えられる。

原作者の不満[編集]

映画『ターザン英語版』は、自身の意向が反映されず(バローズはパーソンズの会社の重役であるにもかかわらず)、さらには支払いのトラブルにより、パーソンズとの仲が冷えてしまった[36]。映画のターザンは自分のイメージと違っていたため、落胆した、とも言われている[37]

MGMのターザン映画に不満だったバローズは自ら映画会社を興し、ハーマン・ブリックス主演の連続活劇を製作した。

ターザン映画・TVの一覧[編集]

()内はターザン役。

影響[編集]

「ターザン」をタイトルにしているものに、以下の事例がある。

芸名の一部として使用しているものに、以下の人物がいる。

いわゆるターザンもの・派生型とでもいうべき分野の漫画、小説、アニメがある。

  • ジャングル大帝 - 手塚治虫の原作漫画。
  • 少年ケニヤ - 山川惣治作の新聞連載の絵物語、テレビドラマ、劇場用アニメ。
  • 狼少年ケン - 東映動画のテレビアニメーションシリーズ、月岡貞夫。
  • 新寶島 - 手塚治虫、酒井七馬による赤本漫画。

そのほかにもターザン的な作品はある。

脚注[編集]

作者の日本語表記については表記ゆれがあり、早川書房ハヤカワ文庫)は「エドガー・ライス・バロズ」、東京創元社創元推理文庫創元SF文庫)は「エドガー・ライス・バロズ」となっている。

  1. ^ エドガー・ライス・バロウズ 『類猿人ターザン』 高橋豊訳、早川書房ハヤカワ文庫特別版SF〉、1971年、370頁。同書148頁で受けた傷。
  2. ^ a b 『類猿人ターザン』 13頁。
  3. ^ 金星シリーズは開始時期が遅く(1932年~)、またバローズも作家として成熟しているため、ここでは比較から除外した。
  4. ^ デヴィッド・イネスは「ボクシング投球の得意な、若き鉱山主(富豪の息子)」であり、ジョン・カーターの超人的な跳躍力・腕力は、火星の弱い重力の賜物である(ただし、ジョン・カーターの星間移動能力は、超能力のレベルを超えたものであり、十分に驚嘆すべきである。しかし、彼がそれを行使するのは、物語の本筋には関係ない部分、すなわち、「地球にいるバローズに、物語を教える」場面に留まっている。また、彼は不老長寿、あるいは不老不死である)。なお、ペルシダーには時間経過の概念がないため、デヴィッドらに老化の兆候は見られない
  5. ^ エドガー・ライス・バロウズ 『ターザンと失われた帝国』 高橋豊訳、早川書房〈ハヤカワ文庫特別版SF〉、1974年、73頁。
  6. ^ エドガー・ライス・バロウズ 『ターザンの復讐』 高橋豊訳、早川書房〈ハヤカワ文庫特別版SF〉、1971年、162頁。
  7. ^ エドガー・ライス・バロウズ 『野獣王ターザン』 高橋豊訳、早川書房〈ハヤカワ文庫特別版SF〉、1972年、156頁。
  8. ^ 『類猿人ターザン』 208頁。
  9. ^ 『類猿人ターザン』 62頁では、カーチャクとカラ。
  10. ^ エドガー・ライス・バロウズ 『地底世界のターザン』 佐藤高子訳、早川書房〈ハヤカワ文庫SF〉、1971年、77頁では、ケルチャックとカーラ。
  11. ^ エドガー・ライス・バローズ 『ターザン』 厚木淳訳、東京創元社〈創元SF文庫〉、1999年、59頁では、カーチャクとカーラ。
  12. ^ 『類猿人ターザン』 11頁。
  13. ^ エドガー・ライス・バロウズ 『ターザンと蟻人間』 高橋豊訳、早川書房〈ハヤカワ文庫特別版SF〉、1973年、10頁。
  14. ^ エドガー・ライス・バローズ 『石器時代から来た男』 厚木淳訳、東京創元社創元推理文庫〉、1977年、28頁。
  15. ^ エドガー・ライス・バロウズ 『ターザンの双生児』 高橋豊訳、早川書房〈ハヤカワ文庫特別版SF〉、1976年、13頁
  16. ^ 『石器時代から来た男』 21頁。
  17. ^ 『石器時代から来た男』 43頁。
  18. ^ 『石器時代から来た男』 21頁、42頁、44頁、48頁、53頁-56頁、58頁、65頁、74頁、75頁、83頁、86頁、87頁、89頁、95頁、103頁、272頁、274頁、原文ママ。
  19. ^ 『石器時代から来た男』 24頁、56頁、原文ママ。
  20. ^ 『石器時代から来た男』 26頁、28頁、39頁、41頁。
  21. ^ 『石器時代から来た男』 86頁、103頁。
  22. ^ 『石器時代から来た男』 43頁、83頁。
  23. ^ リチャード・A・ルポフ 『バルスーム』 厚木淳訳、東京創元社、1982年、234頁。ただし、主人公名は明記されていない。
  24. ^ エドガー・ライス・バロウズ 「ターザンは実在する?」『恐怖王ターザン』 高橋豊訳、早川書房〈ハヤカワ文庫SF〉、1972年、森優、325-328頁。
  25. ^ 「ターザン生れて40年 20億人が楽しむ おなじみの軽業・叫び声」『読売新聞』1958年7月22日付夕刊、4頁。
  26. ^ エドガー・ライス・バロウズ 「ターザン、フィルムランドへゆく」『ターザンとアトランティスの秘宝』 高橋豊訳、早川書房〈ハヤカワ文庫SF〉、1972年、森優、294-295頁。
  27. ^ バロウズの著作権を管理する法人。
  28. ^ 「ターザン、フィルムランドへゆく」『ターザンとアトランティスの秘宝』 296頁より、原文ママ。しかし、1904年6月2日生まれなので、実際は、まだ60代であった。
  29. ^ 「ターザン、フィルムランドへゆく」『ターザンとアトランティスの秘宝』 294-296頁。
  30. ^ 「ターザン、フィルムランドへゆく」『ターザンとアトランティスの秘宝』 296-297頁。
  31. ^ 「ターザン、フィルムランドへゆく」『ターザンとアトランティスの秘宝』 297頁。
  32. ^ 「ターザン、フィルムランドへゆく」『ターザンとアトランティスの秘宝』 297-298頁。
  33. ^ 「ターザン、フィルムランドへゆく」『ターザンとアトランティスの秘宝』 298頁。
  34. ^ 「ターザン、フィルムランドへゆく」『ターザンとアトランティスの秘宝』 298-299頁。
  35. ^ 「ターザン、フィルムランドへゆく」『ターザンとアトランティスの秘宝』 299-300頁。
  36. ^ 「ターザン、フィルムランドへゆく」『ターザンとアトランティスの秘宝』 300頁。
  37. ^ エドガー・ライス・バロウズ 「史上最大最高の冒険ヒーロー」『類猿人ターザン』 高橋豊訳、早川書房〈ハヤカワ文庫特別版SF〉、森優、1971年、383-384頁。
  38. ^ 世相風俗観察会『増補新版 現代世相風俗史年表 昭和20年(1945)-平成20年(2008)』河出書房新社、2003年11月7日、14頁。ISBN 9784309225043 

外部リンク[編集]