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原因は[[パラミクソウイルス]]科のムンプスウイルスで、[[飛沫感染]]、ならびに[[接触感染]]により[[感染]]する。2歳から12歳の[[子供]]への感染が一般的であるが、他の年齢でも感染することもある。通常耳下腺が関わるが、上記年齢層よりも年上の人間が感染した場合、[[睾丸]]、[[卵巣]]、[[中枢神経系]]、[[膵臓]]、[[前立腺]]、[[胸]]等、他の器官も関わることがある。場合によっては、治った後も[[生殖]]機能に後遺症が残る。 |
原因は[[パラミクソウイルス]]科のムンプスウイルスで、[[飛沫感染]]、ならびに[[接触感染]]により[[感染]]する。2歳から12歳の[[子供]]への感染が一般的であるが、他の年齢でも感染することもある。通常耳下腺が関わるが、上記年齢層よりも年上の人間が感染した場合、[[耳下腺]]、[睾丸]]、[[卵巣]]、[[中枢神経系]]、[[膵臓]]、[[前立腺]]、[[胸]]等、他の器官も関わることがある。場合によっては、治った後も[[生殖]]機能に後遺症が残る。 |
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[[潜伏期間]]は通常12日 - 14日である。 |
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== 臨床像 == |
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発生に季節性は無く<ref name=clinicalneurol.cn-000718>[https://www.jstage.jst.go.jp/article/clinicalneurol/55/9/55_cn-000718/_article/-char/ja/ 竹島慎一、吉本武史、志賀裕二ほか、【原著】成人無菌性髄膜炎の臨床的検討(第2報)―ムンプス髄膜炎13例について―] 臨床神経学 Vol.55 (2015) No.9 p.630-636, {{DOI|10.5692/clinicalneurol.cn-000718}}</ref>、感染しても症状が出ない不顕感染の場合もある。しかし、一般的に成人が感染すると症状が重い場合が多い。日本では、ワクチン接種が任意となり接種率は約20%<ref>[https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibirin1925/97/4/97_4_285/_article/-char/ja/ 石川敏夫、市村恵一、ムンプス難聴の臨床統計] 耳鼻咽喉科臨床 Vol.97 (2004) No.4 P285-290, {{DOI|10.5631/jibirin.97.285}}</ref>から30%とされている。このため初感染が高年齢となり、合併症を伴う成人ムンプスの増加が懸念されている<ref name=clinicalneurol.cn-000718 />。また、突発性難聴を示した患者の中には、抗ムンプスIgM抗体陽性者があり不顕感染でありながら突発性難聴を生じた可能性が示されている<ref>[https://www.jstage.jst.go.jp/article/audiology1968/43/5/43_5_419/_article/-char/ja/ 内田真哉、松波達也、鈴木敏弘ほか、抗ムンプスIgM抗体陽性の突発難聴] AUDIOLOGY JAPAN Vol.43 (2000) No.5 P419-420, {{DOI|10.4295/audiology.43.419}}</ref><ref>[https://www.jstage.jst.go.jp/article/audiology1968/46/5/46_5_291/_article/-char/ja/ 内田真哉、鈴木敏弘、久育男、健常者および急性感音難聴患者の抗ムンプスIgM抗体陽性率] AUDIOLOGY JAPAN Vol.46 (2003) No.5 P291-292, {{DOI|10.4295/audiology.46.291}}</ref>。 |
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一般に、ワクチン接種や一度野生株に自然感染すると一生有効な[[免疫]]を獲得するとされている。しかし、再感染例も報告されている<ref name=jibirin.96.499>[https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibirin1925/96/6/96_6_499/_article/-char/ja/ 大屋耕子、再感染によるムンプス難聴例] 耳鼻咽喉科臨床 Vol.96 (2003) No.6 P499-502, {{DOI|10.5631/jibirin.96.499}}</ref>。抗体価の減少による再感染の理由として、かつては周期的な小流行に伴う刺激により抗体価が維持されてきたが、流行による刺激が無くなり徐々に抗体価が下がってきたのではないかと考える専門家もいる<ref name=jibirin.96.499 />。 |
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=== 症状 === |
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[[Image:Mumps PHIL 130 lores.jpg|250px|right|thumb|[[耳下腺]]が腫脹して顔が膨れた様になった流行性耳下腺炎の患者]] |
[[Image:Mumps PHIL 130 lores.jpg|250px|right|thumb|[[耳下腺]]が腫脹して顔が膨れた様になった流行性耳下腺炎の患者]] |
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*[[顔面]]の[[疼痛]] |
*[[顔面]]の[[疼痛]] |
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**発症から12 |
**発症から12 - 24時間以内に唾液腺([[耳下腺]])の腫脹(60 - 70%で発生)。2日目に最もひどく3 - 4日でゆっくり消失。 |
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*[[発熱]] |
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**38 - 39℃の発熱が3 - 5日間。 |
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*[[咽頭痛]] |
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*[[こめかみ]]や[[顎]]の腫脹 |
*[[こめかみ]]や[[顎]]の腫脹。但し、約30%の患者ではこの腫脹が認められないとする報告がある<ref name=clinicalneurol.cn-000718 />[。 |
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*[[膵炎]] |
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感染しても症状が出ない場合もある。しかし、成人が感染すると症状が重い場合が多い。 |
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;無菌性[[髄膜炎]] |
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:10人に1人と合併症としては最多<ref name="kitas">[http://www. |
:10人に1人と合併症としては最多<ref name="kitas">[http://www.daiichisankyo-kv.co.jp/knowledge/sick/v_mumps.html 病気とワクチン おたふくかぜ] 北里第一三共ワクチン</ref>(40%が耳下腺の腫脹無しで発生)。 |
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:重篤な難治性難聴が後遺症として残ることがある。頻度は教科書的には |
:重篤な難治性難聴が後遺症として残ることがある。頻度は教科書的には希もしくは1万5000人に1人程度とされていることが多いが、近年はもっと高頻度とする報告が多く、184 - 533人に1人とする調査結果もある<ref>{{PDFlink|[http://hns.reasoning.org/~clinic/mumps/report2004-11.pdf ムンプス難聴の発生頻度調査]}} 近畿外来小児科学研究グループ、2004年{{リンク切れ|date=2016-2}}</ref>。国立感染症研究所は、2001年の1年間の全国のムンプス難聴受療患者数は 650人と推計している<ref>[http://www.nih.go.jp/niid/ja/iasr-sp/2254-related-articles/related-articles-402/3790-dj4026.html ムンプス難聴と聴覚補償] 国立感染症研究所 IASR Vol. 34 p. 228-230: 2013年8月号</ref>。 |
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;[[睾丸]]の痛み、拡大 |
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:思春期以降に感染した男性の約20%で精巣炎・副精巣炎。両方の精巣が侵されることは少ないため、不妊症になることもあるが頻度は高くない<ref>[http:// |
:思春期以降に感染した男性の約20%で精巣炎・副精巣炎。両方の精巣が侵されることは少ないため、不妊症になることもあるが頻度は高くない<ref>[http://merckmanuals.jp/home/小児の健康上の問題/乳児と小児のウイルス感染症/ムンプス(おたふくかぜ、流行性耳下腺炎).html 流行性耳下腺炎] メルクマニュアル</ref> |
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;[[陰嚢]]腫脹 |
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身体検査で唾液腺の腫脹を確認する。通常この病気は臨床の根拠で診断され、試験室での確定検査は必要ないが、一般的には血清学的診断を行う。[[逆転写ポリメラーゼ連鎖反応|RT‐PCR]] 法でウイルス遺伝子を検出すれば、ワクチン株と野生株の鑑別ができる<ref name="hfnet">[http://idsc.nih.go.jp/disease/mumps/index.html 流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)国立感染症研究所]</ref>。 |
身体検査で唾液腺の腫脹を確認する。通常この病気は臨床の根拠で診断され、試験室での確定検査は必要ないが、一般的には血清学的診断を行う。[[逆転写ポリメラーゼ連鎖反応|RT‐PCR]] 法でウイルス遺伝子を検出すれば、ワクチン株と野生株の鑑別ができる<ref name="hfnet">[http://idsc.nih.go.jp/disease/mumps/index.html 流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)国立感染症研究所]</ref>。 |
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類似の耳下腺炎症状を呈する他感染症は、{{仮リンク|ヒト・パラインフルエンザウイルス|en|Human parainfluenza viruses|label=パラインフルエンザウイルス}}、{{仮リンク|コクサッキーウイルス|en|Coxsackievirus}}などによるもので、軽度の痛みの耳下腺腫脹を繰り返し、1 |
類似の耳下腺炎症状を呈する他感染症は、{{仮リンク|ヒト・パラインフルエンザウイルス|en|Human parainfluenza viruses|label=パラインフルエンザウイルス}}、{{仮リンク|コクサッキーウイルス|en|Coxsackievirus}}などによるもので、軽度の痛みの耳下腺腫脹を繰り返し、1 - 2週間で自然に軽快する。『流行性耳下腺炎に何度もかかる』という場合、疑う必要がある。 |
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=== 治療 === |
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幼児期の予防接種が欠かせないとされている全世界105カ国(2004年時点)では[[新三種混合ワクチン|MMRワクチン]]として定期接種を行っているが、日本ではMMR接種の行われた[[1988年]]から[[1993年]]迄の期間を除き、任意接種としておたふくかぜワクチンの単独接種が行われており、一部の自治体では公費助成が行われている。 |
幼児期の予防接種が欠かせないとされている全世界105カ国(2004年時点)では[[新三種混合ワクチン|MMRワクチン]]として定期接種を行っているが、日本ではMMR接種の行われた[[1988年]]から[[1993年]]迄の期間を除き、任意接種としておたふくかぜワクチンの単独接種が行われており、一部の自治体では公費助成が行われている。 |
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おたふくかぜワクチンの抗体陽転率は90 |
おたふくかぜワクチンの抗体陽転率は90 - 98%と他のワクチンと比べて低いが、流行時の有効率は星野株で約90%とされている。ワクチン接種後のおたふくかぜ罹患の多くは二次性ワクチン不全と考えられており、MMRを接種する多くの国では2回接種により二次性ワクチン不全を防いでいる。 |
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==== 予防効果 ==== |
==== 予防効果 ==== |
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ワクチンの2回接種率が高い米国で、[[2006年]]1月から年末までに、18 |
ワクチンの2回接種率が高い米国で、[[2006年]]1月から年末までに、18 - 24歳の大学生を中心に計6,584人が発症、85人が入院、死亡0人と言う20年ぶりの流行が発生した。疫学的な調査の結果、ワクチン2回接種でも予防効果は不十分である事が示唆された<ref>{{Cite journal|和書 |author=大西淳子 |date=2008-4-22 |title=おたふくかぜ、ワクチン2回接種でも青年期の発症防げず: 2006年に米国で起こったアウトブレイクの調査結果|url=http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/nejm/200804/506222.html |journal=日経メディカルオンライン |volume= |issue= |pages= |publisher=日経BP |naid= |oclc= |issn= |isbn= }}</ref>。レポートによれば、18 - 24歳で1,020人中858人(84%)が2回接種を受けていたが発症している。詳細は[[ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン|NEJM]]誌2008年4月10日号に掲載されている<ref>{{Cite journal|language=en |author=Gustavo H Dayan|coauthors= M Patricia Quinlisk; Amy A Parker; et.cl. |date=April 10, 2008 |title=Recent Resurgence of Mumps in the United States |journal=[[ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン|NEJM]]|url=http://content.nejm.org/cgi/content/short/358/15/1580 |volume=358 |issue=15 |pages=1580-1589 |publisher= |pmid=18403766 |oclc=4639215595 |issn=0028-4793 }}</ref>。 |
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=== 予後 === |
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予後は一般的によい。耳下腺の腫脹がなくなれば感染力はなくなる。高度感音性難聴になることがあるが、頻度は1万分の1から数百分の1と、文献により異なる。男性が[[男性不妊症|不妊症]]になることもあ |
予後は一般的によい。耳下腺の腫脹がなくなれば感染力はなくなる。高度感音性難聴になることがあるが、頻度は1万分の1から数百分の1と、文献により異なる。男性が[[男性不妊症|不妊症]]になることもある。 |
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== 各国において == |
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日本において、流行性耳下腺炎の[[予防接種]]は一歳以上の子供への任意接種となっている。 |
日本において、流行性耳下腺炎の[[予防接種]]は一歳以上の子供への任意接種となっている。 |
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また、[[学校保健安全法]]上の[[学校感染症]]に指定されており、感染時は[[出席停止]]などの処置が執られる。5類感染症定点把握疾患指定。 |
また、[[学校保健安全法]]上の[[学校感染症]]に指定されており、感染時は[[出席停止]]などの処置が執られる。5類感染症定点把握疾患指定。 |
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== 外部リンク == |
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* [http://idsc.nih.go.jp/disease/mumps/index.html 流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)] - [[国立感染症研究所]]感染症情報センター |
* [http://idsc.nih.go.jp/disease/mumps/index.html 流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)] - [[国立感染症研究所]]感染症情報センター |
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* [http://mmh.banyu.co.jp/mmhe2j/sec23/ch273/ch273g.html おたふくかぜ]{{リンク切れ|date=2016年2月}} メルクマニュアル家庭版 |
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* [http://www.kitasato.ac.jp/rcb/vaccine/v_mumps.html 病気とワクチン おたふくかぜ]{{リンク切れ|date=2016年2月}} 社団法人北里研究所 生物製剤研究所 |
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* [http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000fgan-att/2r9852000000fgj1.pdf おたふくかぜワクチンの公費助成について] - [[厚生労働省]]健康局結核感染症課 |
* [http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000fgan-att/2r9852000000fgj1.pdf おたふくかぜワクチンの公費助成について] - [[厚生労働省]]健康局結核感染症課 |
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** [http://www.kitasato.ac.jp/rcb/qanda/qa_mumps.html おたふくかぜワクチンに関するQ&A]{{リンク切れ|date=2016年2月}} |
** [http://www.kitasato.ac.jp/rcb/qanda/qa_mumps.html おたふくかぜワクチンに関するQ&A]{{リンク切れ|date=2016年2月}} |
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* [https://www.jstage.jst.go.jp/article/audiology/53/5/53_647/_article/-char/ja/ 橋本裕美、ムンプス難聴の発生頻度調査-小児科外来40施設によるprospective study-] AUDIOLOGY JAPAN Vol.53 (2010) No.5 October p.647-648, {{DOI|10.4295/audiology.53.647}} |
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{{日本の感染症法における感染症}} |
{{日本の感染症法における感染症}} |
2016年2月12日 (金) 05:12時点における版
流行性耳下腺炎のデータ | |
ICD-10 | B26 |
統計 | 出展: |
世界の患者数 | 人 (20xx年xx月xx日) |
日本の患者数 | 人 (20xx年xx月xx日) |
学会 | |
日本 | |
世界 |
流行性耳下腺炎(りゅうこうせいじかせんえん)は、ムンプスウイルスの感染によって発生するウイルス性の病気。一般にはおたふく風邪として知られる。1967年にワクチンが開発される以前は、小児の疾患として全世界で一般的であり、今日でも発展途上国では脅威となっている。
原因
原因はパラミクソウイルス科のムンプスウイルスで、飛沫感染、ならびに接触感染により感染する。2歳から12歳の子供への感染が一般的であるが、他の年齢でも感染することもある。通常耳下腺が関わるが、上記年齢層よりも年上の人間が感染した場合、耳下腺、[睾丸]]、卵巣、中枢神経系、膵臓、前立腺、胸等、他の器官も関わることがある。場合によっては、治った後も生殖機能に後遺症が残る。
潜伏期間は通常12日 - 14日である。
臨床像
発生に季節性は無く[1]、感染しても症状が出ない不顕感染の場合もある。しかし、一般的に成人が感染すると症状が重い場合が多い。日本では、ワクチン接種が任意となり接種率は約20%[2]から30%とされている。このため初感染が高年齢となり、合併症を伴う成人ムンプスの増加が懸念されている[1]。また、突発性難聴を示した患者の中には、抗ムンプスIgM抗体陽性者があり不顕感染でありながら突発性難聴を生じた可能性が示されている[3][4]。
一般に、ワクチン接種や一度野生株に自然感染すると一生有効な免疫を獲得するとされている。しかし、再感染例も報告されている[5]。抗体価の減少による再感染の理由として、かつては周期的な小流行に伴う刺激により抗体価が維持されてきたが、流行による刺激が無くなり徐々に抗体価が下がってきたのではないかと考える専門家もいる[5]。
症状
- 顔面の疼痛
- 発症から12 - 24時間以内に唾液腺(耳下腺)の腫脹(60 - 70%で発生)。2日目に最もひどく3 - 4日でゆっくり消失。
- 発熱
- 38 - 39℃の発熱が3 - 5日間。
- 頭痛
- 咽頭痛
- こめかみや顎の腫脹。但し、約30%の患者ではこの腫脹が認められないとする報告がある[1][。
- 膵炎
合併症
- 無菌性髄膜炎
- 10人に1人と合併症としては最多[6](40%が耳下腺の腫脹無しで発生)。
- 難聴(ムンプス難聴)
- 重篤な難治性難聴が後遺症として残ることがある。頻度は教科書的には希もしくは1万5000人に1人程度とされていることが多いが、近年はもっと高頻度とする報告が多く、184 - 533人に1人とする調査結果もある[7]。国立感染症研究所は、2001年の1年間の全国のムンプス難聴受療患者数は 650人と推計している[8]。
- 睾丸の痛み、拡大
- 思春期以降に感染した男性の約20%で精巣炎・副精巣炎。両方の精巣が侵されることは少ないため、不妊症になることもあるが頻度は高くない[9]
- 陰嚢腫脹
診断
身体検査で唾液腺の腫脹を確認する。通常この病気は臨床の根拠で診断され、試験室での確定検査は必要ないが、一般的には血清学的診断を行う。RT‐PCR 法でウイルス遺伝子を検出すれば、ワクチン株と野生株の鑑別ができる[10]。
類似の耳下腺炎症状を呈する他感染症は、パラインフルエンザウイルス、コクサッキーウイルスなどによるもので、軽度の痛みの耳下腺腫脹を繰り返し、1 - 2週間で自然に軽快する。『流行性耳下腺炎に何度もかかる』という場合、疑う必要がある。
治療
流行性耳下腺炎の特異的治療法は存在しない。首やほかの腫脹箇所を冷やしたり暖めたりすることで症状が軽減される場合もある。また、アセトアミノフェンやイブプロフェンを鎮痛のために経口投与する(ライ症候群発症の可能性のため、アスピリンをウイルス性疾患を持つ子供には投与しない)。また、暖かい塩水のうがい薬、柔らかい食物、および特別な流動食は、兆候を軽減するかもしれない。発熱による脱水症状を軽減するため水分の摂取を行う。酸味のある果実ジュースは、飲み込む際に耳下腺の痛みを感じさせる場合がある。膵炎により強い吐き気や嘔吐が生じた場合は輸液を行う。
予防
ワクチン接種
幼児期の予防接種が欠かせないとされている全世界105カ国(2004年時点)ではMMRワクチンとして定期接種を行っているが、日本ではMMR接種の行われた1988年から1993年迄の期間を除き、任意接種としておたふくかぜワクチンの単独接種が行われており、一部の自治体では公費助成が行われている。
おたふくかぜワクチンの抗体陽転率は90 - 98%と他のワクチンと比べて低いが、流行時の有効率は星野株で約90%とされている。ワクチン接種後のおたふくかぜ罹患の多くは二次性ワクチン不全と考えられており、MMRを接種する多くの国では2回接種により二次性ワクチン不全を防いでいる。
予防効果
ワクチンの2回接種率が高い米国で、2006年1月から年末までに、18 - 24歳の大学生を中心に計6,584人が発症、85人が入院、死亡0人と言う20年ぶりの流行が発生した。疫学的な調査の結果、ワクチン2回接種でも予防効果は不十分である事が示唆された[11]。レポートによれば、18 - 24歳で1,020人中858人(84%)が2回接種を受けていたが発症している。詳細はNEJM誌2008年4月10日号に掲載されている[12]。
予後
予後は一般的によい。耳下腺の腫脹がなくなれば感染力はなくなる。高度感音性難聴になることがあるが、頻度は1万分の1から数百分の1と、文献により異なる。男性が不妊症になることもある。
各国において
日本
日本において、流行性耳下腺炎の予防接種は一歳以上の子供への任意接種となっている。
また、学校保健安全法上の学校感染症に指定されており、感染時は出席停止などの処置が執られる。5類感染症定点把握疾患指定。
脚注
- ^ a b c 竹島慎一、吉本武史、志賀裕二ほか、【原著】成人無菌性髄膜炎の臨床的検討(第2報)―ムンプス髄膜炎13例について― 臨床神経学 Vol.55 (2015) No.9 p.630-636, doi:10.5692/clinicalneurol.cn-000718
- ^ 石川敏夫、市村恵一、ムンプス難聴の臨床統計 耳鼻咽喉科臨床 Vol.97 (2004) No.4 P285-290, doi:10.5631/jibirin.97.285
- ^ 内田真哉、松波達也、鈴木敏弘ほか、抗ムンプスIgM抗体陽性の突発難聴 AUDIOLOGY JAPAN Vol.43 (2000) No.5 P419-420, doi:10.4295/audiology.43.419
- ^ 内田真哉、鈴木敏弘、久育男、健常者および急性感音難聴患者の抗ムンプスIgM抗体陽性率 AUDIOLOGY JAPAN Vol.46 (2003) No.5 P291-292, doi:10.4295/audiology.46.291
- ^ a b 大屋耕子、再感染によるムンプス難聴例 耳鼻咽喉科臨床 Vol.96 (2003) No.6 P499-502, doi:10.5631/jibirin.96.499
- ^ 病気とワクチン おたふくかぜ 北里第一三共ワクチン
- ^ ムンプス難聴の発生頻度調査 (PDF) 近畿外来小児科学研究グループ、2004年[リンク切れ]
- ^ ムンプス難聴と聴覚補償 国立感染症研究所 IASR Vol. 34 p. 228-230: 2013年8月号
- ^ 流行性耳下腺炎 メルクマニュアル
- ^ 流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)国立感染症研究所
- ^ 大西淳子「おたふくかぜ、ワクチン2回接種でも青年期の発症防げず: 2006年に米国で起こったアウトブレイクの調査結果」『日経メディカルオンライン』、日経BP、2008年4月22日。
- ^ Gustavo H Dayan; M Patricia Quinlisk; Amy A Parker; et.cl. (April 10, 2008). “Recent Resurgence of Mumps in the United States” (英語). NEJM 358 (15): 1580-1589. ISSN 0028-4793. OCLC 4639215595. PMID 18403766 .
関連項目
外部リンク
- 流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ) - 国立感染症研究所感染症情報センター
- おたふくかぜワクチンの公費助成について - 厚生労働省健康局結核感染症課
- 橋本裕美、ムンプス難聴の発生頻度調査-小児科外来40施設によるprospective study- AUDIOLOGY JAPAN Vol.53 (2010) No.5 October p.647-648, doi:10.4295/audiology.53.647