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マンハッタン無宿

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
マンハッタン無宿
Coogan's Bluff
監督 ドン・シーゲル
脚本 ハーマン・ミラー
ディーン・リーズナー
ハワード・ロッドマン
製作 ドン・シーゲル
製作総指揮 リチャード・E・ライアンズ
クリント・イーストウッド
出演者 クリント・イーストウッド
音楽 ラロ・シフリン
撮影 バド・サッカリー
編集 サム・E・ワックスマン
製作会社 ユニバーサル・ピクチャーズ
配給 ユニバーサル映画
公開 アメリカ合衆国の旗 1968年10月2日
日本の旗 1969年2月15日
上映時間 93分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 $1,500,000[1]
興行収入 アメリカ合衆国の旗 $3,110,000[2]
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マンハッタン無宿』(マンハッタンむしゅく 原題:Coogan's Bluff)は、ドン・シーゲルが監督・製作した1968年アメリカ合衆国犯罪スリラーアクション映画

概要

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ダーティハリー』のドン・シーゲルとクリント・イーストウッドが初めてコンビを組んだ作品。

本作の設定はのちにテレビドラマ警部マクロード』に転用された(同じハーマン・ミラーが脚本を担当)[3]

映画のタイトルは、ニューヨーク市の自然のランドマークであるクーガンズ・ブラフに由来。

あらすじ

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アリゾナ州保安官助手を務めるクーガンは、強引な捜査手法で同僚から避けられる一匹狼的な存在だった。上司のマクリー保安官は厄介払いを兼ねて、クーガンをニューヨークに派遣し、凶悪犯リンガーマンの身柄を引き取ってくるように命令する。クーガンは早速ニューヨーク市警を訪れるが、責任者のマッケルロイ警部補から「リンガーマンは精神病院に入院中で、釈放の手続きが済むまで待っていろ」と追い返されてしまう。クーガンは市警で出会った女性犯罪人専門の保護官ジュリーと交際しながら時間を潰すが、手続きに時間がかかっていることに苛立ち、精神病院から強引にリンガーマンを連れ出してしまう。しかし、クーガンは空港に到着した途端、リンガーマンの情婦リニーと彼女の仲間に襲われ、リンガーマンに逃げられてしまう。

19世紀の価値観と倫理観を20世紀に体現したウォルト・クーガンとして、イーストウッドは都市の風景を闊歩し、ルールを破り、助けを求めた人々を怒らせる。マッケルロイ警部補(警察署長)役のリー・J・コッブは、イーストウッドに「ここにはシステムがある。大したことじゃないけど、私たちはそれを気に入っているんだ」と怒って言う。[4]

責任を感じたクーガンは単独で捜査を始め、リンガーマンの母親のアパートを訪れ尋問するが、その帰りに市警の捜査官たちに連行されてしまう。クーガンはマッケルロイから「捜査権のないニューヨークでの捜査を止めろ」と警告され、さらに彼から連絡を受けたマクリーが帰還命令を出したため、クーガンはニューヨークを離れざるを得なくなった。クーガンはジュリーのアパートに向かい、彼女の目を盗んでリニーの情報を手に入れ彼女の元に向かう。リニーの案内でリンガーマンの居場所に向かうが、そこにはリンガーマンはおらず、クーガンは彼の仲間たちに襲われる。警官が駆け付けたためクーガンは現場を離れて宿泊先に戻るが、リニーから話を聞いたジュリーが現れ口論になる。

クーガンは再びリニーのアパートに乗り込み、彼女を脅してリンガーマンの元に案内させる。リンガーマンはバイクに乗り込み逃亡し、クーガンも通行人のバイクを借りて追跡を始める。追跡の末にリンガーマンを取り押さえるが、そこにマッケルロイが警官を引き連れて現れる。クーガンからリンガーマンを引き取ったマッケルロイは、彼の違法捜査を不問にし、「引き渡しの手続きをするから、今度こそ大人しく待っていて欲しい」と伝え、クーガンもそれを受け入れる。手続きが終わりリンガーマンを引き取ったクーガンは、見送りに来たマッケルロイとジュリーと別れを交わしてニューヨークを去っていく。

キャスト

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役名 俳優 日本語吹替
フジテレビ 日本テレビ[5]
クーガン クリント・イーストウッド 山田康雄
マッケルロイ警部補 リー・J・コッブ 富田耕生 大平透
ジュリー スーザン・クラーク 武藤礼子 藤田淑子
リンガーマン ドン・ストラウド英語版 近石真介 渡部猛
リニー・レイブン ティシャ・スターリング英語版 杉山佳寿子 榊原良子
リンガーマンの母 ベティ・フィールド 沼波輝枝 麻生美代子
マクリー保安官 トム・タリー 雨森雅司 今西正男
ミリー メロディ・ジョンソン 小宮和枝
ジャクソン巡査部長 ジェームズ・エドワーズ 青野武
プッシー デイビッド・ドイル 広瀬正志
タクシー運転手 ルイ・ゾリッチ 大山高男
ジョー シーモア・カッセル 谷口節
ワンダフル・ディグビー アルバート・ポップウェル英語版 笹岡繁蔵
エレベーターの乗客 ドン・シーゲル(ノンクレジット)
不明
その他
木原正二郎
亀井三郎
鈴木れい子
高村章子
弥永和子
水鳥鉄夫
山口健
キートン山田
日本語版スタッフ
演出 山田悦司 左近允洋
翻訳 山田実 篠原慎
効果 スリー・サウンド PAG
調整 栗林秀年 飯塚秀保
制作 グロービジョン
解説 前田武彦 堀貞一郎
初回放送 1972年6月16日
ゴールデン洋画劇場[6]
1984年11月14日
水曜ロードショー[注 1]

音楽

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Lalo Schifrin Coogan's Bluff, film score [8]

製作

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ユニバーサル映画は、それまで反目していたクリント・イーストウッドに本作への出演を依頼し、100万ドルの出演料を提示して和解を求めた[9][10]。出演交渉はドン・シーゲルの元エージェントだったジェニングス・ラング英語版が担当し、ラングはイーストウッドの自宅で、彼がシーゲルと会談する手配を整えた。イーストウッドはシーゲルの初期の映画作品を3本観て、彼の実力に感銘を受け、これ以降二人は友人となり緊密なパートナーとなった[11]

映画のアイディアは、1967年にテレビドラマとして企画され、『ローハイド』の脚本家ハーマン・ミラー英語版ジャック・レアード英語版が脚本を担当した[12]。イーストウッドが出演を承諾した後、ハワード・ロッドマンを加えた三人の脚本家は、ロケハンのためにニューヨークモハーヴェ砂漠を訪れた[11]。しかし、イーストウッドは製作会議に突然現れ、ミラーが書いた脚本に難色を示した[11]。イーストウッドとシーゲルは、シーゲルと仕事をした経験があるディーン・リーズナー英語版を新しく脚本家として迎え入れた。イーストウッドはリーズナーとはコミュニケーションをとっていなかったが、リーズナーがクーガンとリニーが性行為をするシーンを批判して以降は意思の疎通を図るようになり[13] 、リーズナーはイーストウッドの意見を脚本に取り入れるようになった。主要キャストにはドン・ストラウド英語版リー・J・コッブスーザン・クラークティシャ・スターリング英語版が起用され、撮影は1967年11月から開始された[13]

ソフトでの差異

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本作はDVDの発売以降、理由は不明だが、一部シーン(約3分)のカット編集が行われたものが全世界でリリースされている。そのため、クーガンが事務所でリンガーマンの身柄をニューヨークから引き取るよう出張命令を受けるシーン、病院での短いシーン、そしてジュリーがニューヨーク近くの海を見渡せる展望台で話す場面がDVD以降はカットされている。なお、DVD以前のソフトにはこれらの編集がなく、ノーカットでリリースされていた[14]

注釈

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  1. ^ 2014年10月22日発売の『クリント・イーストウッド ブルーレイ・コレクション』に収録[7]

脚注

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  1. ^ Box Office Information for Coogan's Bluff. The Wrap. Retrieved April 5, 2013.
  2. ^ Coogan's Bluff, Box Office Information”. Box Office Mojo. 2012年11月13日閲覧。
  3. ^ Brode, D. Shooting Stars of the Small Screen: Encyclopedia of TV Western Actors, 1946-present. University of Texas Press (2009), p. 332. ISBN 9780292718494
  4. ^ Kass, Judith M. (1975). Don Seigel: The Hollywood Professionals, Volume 4 (1975 ed.). New York: Tanvity Press. p. 79-80. ISBN 0-498-01665-X 
  5. ^ マンハッタン無宿[吹]水曜ロードショー版”. www.star-ch.jp. 2023年4月14日閲覧。
  6. ^ 再放送:1976年12月15日『水曜ロードショー
  7. ^ クリント・イーストウッド ブルーレイ・コレクション”. db2.nbcuni.co.jp. 2023年4月14日閲覧。
  8. ^ Lalo Schifrin Coogan's Bluff, film score AllMusic” (英語). AllMusic. July 25, 2024閲覧。
  9. ^ McGillagan (1999), p.165
  10. ^ Munn, p. 70
  11. ^ a b c McGillagan (1999), p.167
  12. ^ McGillagan (1999), p.166
  13. ^ a b McGillagan (1999), p.169
  14. ^ Alternate Versions”. imdb. 2021年4月21日閲覧。

参考文献

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外部リンク

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