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キ82 (航空機)

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出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』

キ82は、大日本帝国陸軍が計画した重爆撃機。実機の製作には至っていない。

概要

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1940年（昭和15年）、同年の陸軍航空本部研究方針によって[1][2]、従来型の「重爆甲」（のちの四式重爆撃機に相当）と並ぶ[2][3]速度を重視した重爆撃機「重爆乙」[2][3][4]としてキ82の計画が立てられ[1][2]、同年5月に中島飛行機に対して試作指示がなされた[3][4]。陸軍が示した基礎設計要項にある性能は、エンジンは双発または3発、最大速度が670 km/h、常用高度が5,000 - 8,000 m、行動半径が最大1,500 km + 2時間というものだった[3][5]。当初は1942年（昭和17年）11月に試作機を完成、翌1943年（昭和18年）7月に審査を完了させる予定だった[3]。

これを受けた中島は[3]1940年12月から研究に着手しており、中翼配置の双発機として[6]、中島「ハ45」[1][2][3][4][7][8]または「ハ145」空冷星型18気筒エンジンを搭載する第1案[3][4][8][9]「キ82甲」[8]と、中島で試作されていた「ハ39」液冷W型18気筒エンジン（離昇2,100 hp）を搭載し[1][2][3][4][8][10]、翼面冷却を採用する第2案[1][2][3][4][11]「キ82乙」[8]、三菱重工業が試作した「ハ203」液冷H型24気筒エンジン（離昇2,600 hp）を搭載する案[12][13]、中島「ハ107」空冷星型18気筒エンジン[14][15]（離昇2,200 hp）を搭載する案などが計画された[14]。キ82甲は最大速度650 km/h（ハ145搭載時）[1][3][5][8]、キ82乙は最大速度650 - 670 km/h（翼面冷却不採用の場合には610 - 630 km/h）[1][3][4][16]、ハ203搭載案は最大速度642 km/h[3][16]、ハ107搭載案は最大速度603 - 620 km/hを発揮すると計算されていた[16]。

各案が検討された後、試作機のエンジンはハ45、もしくはハ45をメタノール噴射式にした「ハ45M」を、増加試作機および整備機のエンジンはハ145を用いるものとされ[3][17]、キ82甲が選ばれた形になった[8]。また、キ82乙は研究機的な扱いに落ち着いている[4][8]。1942年3月の時点では、1943年6月よりハ45装備の実験機3機を、1944年（昭和19年）3月よりハ145装備の試作機3機と増加試作機5機を順次製作し、1944年12月に審査完了とする予定だったが[3]、四式重爆の開発が順調に進み[1][2][4]最大速度630 - 640 km/h程度の[4]高速機となる目処がたったため[1][2][4]、実大模型が製作されたのみで[4][8][18]試作は中止された[1][2][3][4][19]。

派生型として、重爆乙の存在意義である四式重爆以上の高速を発揮するべく[4][20]、三菱「ハ211」空冷星型18気筒エンジン（離昇2,200 hp）を装備して[4][12][21]最大速度を670 km/hまで引き上げた「キ82性能向上型」の計画があり[3][21]、1943年8月末に試作機を完成させる予定だったが[22]、こちらも実現していない[3]。また、ドイツとの協同開発を念頭に[23][24]1941年11月頃から[23]1942年秋にかけて[24]陸軍航空技術研究所が進めた「独逸派遣協同設計団候補者計画」では[23][24]、キ82を基にした、ハ145を[25]2基あるいは串形に4基装備する高速重爆撃機の試案を中島が担当していたが[25][26]、設計は具体化せずに終わっている[25]。

諸元（キ82甲・計画値）

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出典：『日本陸軍試作機大鑑』 78頁[3]、『日本陸軍機の計画物語』 84頁[5]、『日本航空学術史（1910－1945）』 417頁[8]。

  • 全長：15.65 m
  • 全幅：19.25 m
  • 全高：4.65 m
  • 主翼面積：45.0 m2
  • 全備重量：9,500 - 9,950 kg
  • エンジン：
    • 中島 ハ45 空冷星型18気筒（離昇1,800 hp） × 2（実験機）
    • 中島 ハ145 空冷星型18気筒（離昇2,000 hp） × 2（試作機・増加試作機）
  • 最大速度：580 km/h（実験機）、650 km/h（試作機・増加試作機）
  • 航続距離：3,000 km + 2時間（要求値）
  • 常用高度：5,000 - 8,000 m（要求値）
  • 翼面荷重：211.0 - 221.0 kg/m2
  • 武装：いずれも要求値
  • 乗員：4名

脚注

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[脚注の使い方]
  1. ^ a b c d e f g h i j 歴史群像編集部 2011, p. 65.
  2. ^ a b c d e f g h i j 佐原晃 2006, p. 128.
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 秋本実 2008, p. 78.
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 航空情報 1974, p. 223.
  5. ^ a b c 安藤成雄 1980, p. 84.
  6. ^ 安藤成雄 1980, p. 75,84.
  7. ^ 安藤成雄 1980, p. 80,81,84,87.
  8. ^ a b c d e f g h i j 日本航空学術史編集委員会 1990, p. 417.
  9. ^ 安藤成雄 1980, p. 81,84,87.
  10. ^ 安藤成雄 1980, p. 77,80,81,84,87.
  11. ^ 安藤成雄 1980, p. 80,81.
  12. ^ a b 秋本実 2008, p. 78,238.
  13. ^ 安藤成雄 1980, p. 80,81,84.
  14. ^ a b 安藤成雄 1980, p. 77,80,81,84.
  15. ^ 秋本実 2008, p. 237.
  16. ^ a b c 安藤成雄 1980, p. 81,84.
  17. ^ 安藤成雄 1980, p. 87.
  18. ^ 安藤成雄 1980, p. 75,87.
  19. ^ 安藤成雄 1980, p. 76,87.
  20. ^ 安藤成雄 2008, p. 81.
  21. ^ a b 安藤成雄 2008, p. 81,87.
  22. ^ 安藤成雄 2008, p. 87.
  23. ^ a b c 佐原晃 2006, p. 80.
  24. ^ a b c 秋本実 2008, p. 197.
  25. ^ a b c 佐原晃 2006, p. 136.
  26. ^ 秋本実 2008, p. 199.

参考文献

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  • 歴史群像編集部 編『決定版 日本の陸軍機』学研パブリッシング、2011年、65頁。ISBN 978-4-05-606220-5。 
  • 佐原晃『日本陸軍の試作・計画機 1943〜1945』イカロス出版、2006年、80,128,136頁。ISBN 978-4-87149-801-2。 
  • 秋本実『日本陸軍試作機大鑑』酣燈社、2008年、78,197,199,237,238頁。ISBN 978-4-87357-233-8。 
  • 航空情報 編『太平洋戦争日本陸軍機』酣燈社、1974年、223頁。全国書誌番号:77018865。 
  • 安藤成雄『日本陸軍機の計画物語』航空ジャーナル社、1980年、75 - 77,80,81,84,87頁。全国書誌番号:81009568。 
  • 日本航空学術史編集委員会 編『日本航空学術史（1910－1945）』日本航空学術史編集委員会、1990年、417頁。全国書誌番号:90036751。 

関連項目

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  • キ75 - キ82の掩護を予定して計画が進められていた遠距離戦闘機。


命名法制定
(1933年)
以前
機体 (キ)
滑空機 (ク)
気球
その他
関連項目
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