キ73 (航空機)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

キ73は、大日本帝国陸軍が計画した偵察実験機。実機の製作には至っていない。連合軍が与えたコードネームは「Steve[1]

概要[編集]

1940年昭和15年)、陸軍は同年の研究方針によって超高速偵察実験機キ73を開発することとし[2][3]、試作発注は三菱重工業に対して行うものとされた[3]。同年6月28日、陸軍航空本部は三菱に設計基礎要項案を提示した。要求は最大水平速度750 km/h以上、行動半径6,000 km + 余裕1時間、常用高度5,000 m以上というもので、エンジンはこの時点では三菱「ハ203」または「ハ211」双発が予定されていた[2]

陸軍航空技術研究所(航技研)の当初の計画では、初号機は1942年(昭和17年)6月完成を目指すものとされていたが[2]、幾度か計画が変更され[2][3]、最終的に初号機完成は1944年(昭和19年)12月、審査完了は1945年(昭和20年)10月と予定された[3]。試作機2機と増加試作機3機が製作されることになっていたが[3]、計画のみで終了している[2][3]

機体は敵飛行場の航空偵察を想定した複座の高速機で[2][3]、偵察用の航空撮影装備[2][3]のほかに無線機を有する[3]。反面、武装は要求されていない[2]。三菱が進めた計画では[2]、エンジンは「ハ203」液冷H型24気筒(離昇2,600 hp)を用いる予定で[2][3]、エンジン数は単発・双発どちらをとるか決定されないままに終わったとする資料と[3]、双発で決定されていたとする資料がある[2]。目標とされた最大速度は800 km/h以上で[3]二重反転プロペラの使用も検討されていた[2][3]

また、安藤成雄技師を中心として[4]1941年(昭和16年)に航技研で作成された「飛行機の技術的要求条件の調査研究第六次(将来機基礎計画に関する研究)記事」で[4][5]第八案として盛り込まれた「試案高速機」のうち[5][6]、三菱「ハ211-II」空冷複列星型18気筒エンジン[7](離昇2,100 hp[8])4基を2基づつ前後に向け串型に配して双発形式で装備し[5][9]、最大速度870 km/h(高度8,500 m時)を発揮する案も[10]、キ73の案のひとつとして検討されていた[10]

なお、海外には「キ83の単発型」としてキ73のレジンキットを製作・販売している模型メーカーが存在する[11]

脚注[編集]

  1. ^ 『日本陸軍試作機大鑑』 231頁。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l 『日本陸軍試作機大鑑』 71頁。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m 『日本陸軍の試作・計画機 1943〜1945』 186頁。
  4. ^ a b 『日本陸軍試作機大鑑』 191頁。
  5. ^ a b c 『日本陸軍の試作・計画機 1943〜1945』 166頁。
  6. ^ 『日本陸軍試作機大鑑』 195頁。
  7. ^ 『日本陸軍の試作・計画機 1943〜1945』 166・167頁。
  8. ^ 『日本陸軍試作機大鑑』 238頁。
  9. ^ 『日本陸軍試作機大鑑』 195・196頁。
  10. ^ a b 『日本陸軍試作機大鑑』 196頁。
  11. ^ AIRCRAFT KITS - 1/72 scaleUnicraft Models(英語)、2020年10月13日閲覧。

参考文献[編集]

  • 秋本実『日本陸軍試作機大鑑』酣燈社、2008年、71・191・195・196・231・238頁。ISBN 978-4-87357-233-8
  • 佐原晃『日本陸軍の試作・計画機 1943〜1945』イカロス出版、2006年、166・167・186頁。ISBN 978-4-87149-801-2