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北朝鮮によるミサイル発射実験 (2016年)

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2016年の北朝鮮によるミサイル発射実験(2016ねんのきたちょうせんによるミサイルはっしゃじっけん)とは、平壌時間2016年2月7日9時01分ごろ(UTC+8:30)に、北朝鮮人工衛星打ち上げ用ロケット「光明星」と称する飛翔体を[1]南方に向けて発射した事象を、弾道ミサイルの発射実験と見なしたもの。本記事においては打上げられた衛星についても記述する。

概要

平壌時間UTC+8:30)2016年2月7日9時31分頃、北朝鮮北西部の平安北道の東倉里にある西海衛星発射場において、地球観測衛星光明星4号ロケット打ち上げと称して「光明星」と呼ぶ飛翔体を南に向けて発射した。飛翔体は沖縄県上空を通過して、飛翔体の一部が宇宙空間で軌道に乗ったと見られている[2]

北朝鮮は2月2日に、国際機関に対して、打ち上げ期間を8日-25日の間で日本時間の午前7時30分-午後0時30分の間に「衛星を打ち上げる」とし、落下予告区域を事前に通知していたが、6日には打ち上げ期間を7日-14日の間に変更しており、朝鮮半島の緊張を高めるとして、アメリカ・韓国・日本・中国は弾頭ミサイル発射を自制するように求めていた。

今回発射した飛翔体「光明星」は、国際機関に事前に通知していた落下予告区域が前回の銀河3号の発射の時とほぼ同じであるが、射程が前回発射での推定10,000 kmを超える推定12,000-13,000 kmとの見方を示しており、銀河3号と同級か[3]銀河3号と同じくテポドン2号改良型とみられている[4][5]。今回の発射では、飛翔体の破壊処置は行われなかった[5]

北朝鮮は「人工衛星の打ち上げに成功した」と述べているものの、国際電気通信連合(ITU)は、人工衛星から発する電波ビーコンが受信できないと、公式に発表している。ただし、何らかの物体が地球上の極軌道を周回している事は、北アメリカ航空宇宙防衛司令部(NORAD)が確認。 この物体は2023年においてもなお飛行を続けているものと見られている[6]

影響

各国の対応

解除当日には、衆議院本会議で北朝鮮への抗議決議を全会一致で採択した。決議は北朝鮮に対し、弾道ミサイルの開発を直ちに断念するよう強く求めると共に、日本国政府に対し独自の制裁措置を採ることを求める内容となっており、これを受けて安倍は「我が国独自の措置の具体的内容の検討を速やかに進め、毅然かつ断固とした措置をとっていく」などと述べた[15]。また、朝鮮学校に補助金を出している自治体に対し、中止を求める通知を出す方向で検討に入った[16]
制裁措置の1つに「北朝鮮籍人物の日本入国禁止」があるが、「文化スポーツは以前から切り離してきた」とし、2月末から大阪府で開かれるサッカー女子リオデジャネイロ五輪アジア最終予選で、北朝鮮代表の日本への入国を、例外的に認めることとした[17]
また、在日本大韓民国民団(民団)の関係者ら15人が、千代田区富士見にある在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)本部前で「北朝鮮はミサイル開発を中止しろ」などと抗議の声を上げた[18]

北朝鮮の反発

  • 祖国平和統一委員会は11日、以下の声明を発表した[20][21]
    • 17時(UST+8時間30分)迄に、開城工業団地に滞在する韓国人全員を追放する。
    • 北朝鮮側の労働者も撤収させる。
    • 韓国側の企業と関係機関の設備、物資、製品をはじめとする全ての資産を凍結する。
    • 追放対象者による韓国側への私物以外の物資持ち出しを禁止する。
    • 製品などは北朝鮮の開城市人民委員会が管理する。
    • 開城工業団地と隣接する軍事境界線を全面封鎖し、韓国側と結ぶ南北管理区域の陸路を遮断し、開城工団地区を閉鎖して軍事統制区域にする。
    • 南北の軍事連絡通信と板門店の連絡通路を閉鎖する。
  • 北朝鮮は12日、拉致問題の特別調査委員会の解体を宣言した[22]
  • 朝鮮総連は、日本政府が独自制裁の強化を決めたことについて「北朝鮮の脅威を煽り、在日朝鮮人の生活を不当に規制する暴挙だ」と非難するとともに、「拉致被害者などの再調査を約束した2014年の日朝政府間合意を一方的に破棄する行為であり、今後の動きに影響を与える」との見方を示した[23]

呼称について

今回の発射実験については、北朝鮮側は一貫して「非軍事目的の衛星の打ち上げである」と主張していることや、実際に衛星軌道にペイロードの投入に成功していることなどから、「ミサイル発射実験」ではなく「人工衛星用ロケット打ち上げ」と表記すべきではないかという意見がある[24]。実際日本の政党でも社会民主党は、今回の発射実験に対する談話を「ロケット」表記で発表している[25]

ただロケットと弾道ミサイルの打ち上げには技術面においてほぼ違いがないこと[26]、また北朝鮮は国連決議において「長距離弾道ミサイル技術を使う全ての発射」を禁止されていること、国によってはロケットとミサイルを言葉として区別していないところもあることなどから、そもそもそのような表記の問題について論争すること自体が無意味であるという意見もある[27]

なお本件を含め、北朝鮮は2016年に合計35発の飛翔体を発射している。[28]

衛星

光明星4号(Kwangmyŏngsŏng-4)
所属 朝鮮民主主義人民共和国の旗朝鮮宇宙空間技術委員会
国際標識番号 2016-009A
カタログ番号 41332
状態 運用は失敗?
(軌道投入には成功)
目的 地球観測
打上げ場所 朝鮮民主主義人民共和国の旗西海衛星発射場
打上げ機 光明星(KWANGMYONGSONG)
打上げ日時 2016年2月7日
00時30分00秒 (UTC)
軌道投入日 2016年2月
ST/SG/SER.E/768[29]
テンプレートを表示

人工衛星は、通信が途絶えて機能を果たしていないものの、2016年5月に国際連合宇宙局に地球観測衛星として登録された[30][31]

出典

  1. ^ 北朝鮮「地球観測衛星『光明星4号』打ち上げに成功」 特別重大報道(全文)”. ハフィントンポスト (16-02-07). 16-06-23閲覧。
  2. ^ “北朝鮮の衛星「軌道に進入した」=韓国国防省”. CNN. (2016年2月9日). http://www.bbc.com/japanese/35529745 2016年2月9日閲覧。 
  3. ^ <北ミサイル発射>「銀河4号」ではなく「光明星号」登場させた北…理由は?”. 中央日報 (2016年2月8日). 2016年6月23日閲覧。
  4. ^ “北朝鮮がミサイル発射 沖縄上空通過、破壊措置はせず”. 朝日新聞. (2016年2月8日0時47分更新). http://www.asahi.com/articles/ASJ2664CSJ26UHBI01S.html 2016年2月8日閲覧。 
  5. ^ a b “北朝鮮が長距離ミサイル発射=推定射程1万2千キロ超-沖縄通過、破壊措置実施せず”. 時事通信. (2016年2月7日). http://www.jiji.com/jc/c?g=int&k=2016020700051 2016年2月8日閲覧。 
  6. ^ 北朝鮮の人工衛星2基、軌道を運行中だが…「機能しない死んだ衛星」”. 中央日報 (2023年5月18日). 2023年5月19日閲覧。
  7. ^ “モノレール一時運転停止 北朝鮮「ミサイル」問題で”. 琉球新報. (2016年2月7日14時0分). http://ryukyushimpo.jp/news/entry-217519.html 2016年2月7日閲覧。 
  8. ^ “米国、韓国のミサイル防衛システム開発を支援へ”. CNN. (2016年2月9日). http://www.bbc.com/japanese/35529690 2016年2月9日閲覧。 
  9. ^ “国際経済から北朝鮮締め出す 開城団地中断で米次官補”. 産経ニュース. (2016年2月11日10時50分). http://www.sankei.com/world/news/160211/wor1602110022-n1.html 2016年2月13日閲覧。 
  10. ^ “<北ミサイル発射>韓日国防相が電話会談…両国共助を強化”. 中央日報. (2016年2月9日8時37分). http://japanese.joins.com/article/818/211818.html?servcode=A00&sectcode=A10&cloc=jp 2016年2月9日閲覧。 
  11. ^ “朴大統領 対北朝鮮でオバマ・安倍氏と電話会談”. 聯合ニュース. (2016年2月9日13時24分). http://japanese.yonhapnews.co.kr/northkorea/2016/02/09/0300000000AJP20160209000400882.HTML 2016年2月9日閲覧。 
  12. ^ “韓国 北朝鮮・開城工業団地から撤退開始”. BBC. (2016年2月11日). http://www.bbc.com/japanese/35547204 2016年2月13日閲覧。 
  13. ^ “破壊措置命令で自衛隊が迎撃態勢 防衛省内にPAC3配備”. 産経ニュース. (2016年1月30日0時44分). https://www.sankei.com/article/20160130-XREQWFSLENLTVMILPX6P5SSPQM/ 2016年2月9日閲覧。 
  14. ^ “破壊措置命令を解除 中谷防衛相”. 産経ニュース. (2016年2月8日17時36分). https://www.sankei.com/article/20160208-L5WDGO4E3ZKKHLEBJGN3UJVCW4/ 2016年2月9日閲覧。 
  15. ^ “北朝鮮ミサイル発射、国会で抗議決議を採択”. TBS News i. (2016年2月9日14時10分). オリジナルの2016年2月9日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/20160209120924/http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2699180.html 2016年2月9日閲覧。 
  16. ^ “朝鮮学校への補助金、支出中止要請を検討 政府、自治体に”. 産経ニュース. (2016年2月18日0時25分). http://www.sankei.com/politics/news/160218/plt1602180005-n1.html 2016年2月18日閲覧。 
  17. ^ “北朝鮮選手の入国受け入れへ、サッカー女子五輪最終予選”. TBS News i. (2016年2月14日14時27分). オリジナルの2016年2月15日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/20160215040246/http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2702976.html 2016年2月15日閲覧。 
  18. ^ “民団が総連前で抗議行動 「ミサイル開発中止しろ」”. 産経ニュース. (2016年2月8日17時13分). http://www.sankei.com/world/news/160208/wor1602080033-n1.html 2016年2月9日閲覧。 
  19. ^ “安保理、ミサイル発射を強く非難 「重大な決議違反」”. 朝日新聞デジタル. (2016年2月8日19時14分). http://www.asahi.com/articles/ASJ2814FCJ27UHBI03V.html 2016年2月9日閲覧。 
  20. ^ “北朝鮮、開城工団から韓国人追放 資産凍結などを宣告 韓国の制裁措置に反発(1/2)”. 産経ニュース. (2016年2月11日18時28分). http://www.sankei.com/world/news/160211/wor1602110033-n1.html 2016年2月13日閲覧。 
  21. ^ “北朝鮮、開城工団から韓国人追放 資産凍結などを宣告 韓国の制裁措置に反発(2/2)”. 産経ニュース. (2016年2月11日18時28分). http://www.sankei.com/world/news/160211/wor1602110033-n2.html 2016年2月13日閲覧。 
  22. ^ “北朝鮮、拉致調査を全面中止へ 特別委の解体宣言”. 朝日新聞デジタル. (2016年2月12日23時12分). http://www.asahi.com/articles/ASJ2D7GMWJ2DUHBI02W.html 2016年2月13日閲覧。 
  23. ^ “北朝鮮への独自制裁強化に、朝鮮総連が反発”. 日テレNEWS24. (2016年2月12日19時40分). オリジナルの2016年2月13日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/20160213005816/http://www.news24.jp/articles/2016/02/12/10322281.html 2016年2月13日閲覧。 
  24. ^ 「北朝鮮ミサイル発射」という”大本営発表” - Yahoo!ニュース・2016年2月7日
  25. ^ 北朝鮮によるロケットの発射に抗議する(談話) - 社会民主党・2016年2月7日
  26. ^ 大貫, 剛 (2016年2月3日). “事実上のミサイル? 北朝鮮のロケットとミサイルの違いは”. sorae. 2020年2月27日閲覧。
  27. ^ ロケットとミサイルに違いは無い? 北朝鮮による衛星打ち上げと各国の報道比較 - Yahoo!ニュース・2016年2月7日
  28. ^ 外部リンク webcache.googleusercontent.com/からのアーカイヴ、5 Sep 2017 08:00:23 UTC閲覧。
  29. ^ ST/SG/SER.E/768
  30. ^ 北韓、二度目の人工衛星登録 KBS WORLD RADIO 2016年5月30日
  31. ^ North Korea registers satellite with UN NK NEWS 2016年5月27日

関連項目

外部リンク