軍事費

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2005年における世界の軍事支出

軍事費(ぐんじひ、: Military budget)とは、軍隊や時には準軍事組織を含む国や地方単位での、将兵に払う人件費安全保障に関わる資材の新規調達経費や維持経費、それらを使って訓練し運用する経費軍事政策軍事作戦に関する各種の費用の総計である。

日本では、戦争はせずまた自衛隊は軍隊ではないという建前から、自衛隊用語(言い換え、ダブルスピーク)により「防衛費」と呼ばれる。

概説[編集]

軍事費というのは、ある国家から見て、戦争が起きていない時(=平時)においては、軍の維持費という性格を持ち、戦時においては戦費という性格を持っている。

軍事費というのは、狭義には、陸軍海軍空軍人件費給料採用の費用 等)、装備の維持や拡張などのための経費を指す。つまり狭義には、おおむね陸・海・空各軍の所管経費を合算したものとして計算される。

だが、国ごとに予算上の分類方法は異なっており、軍人恩給費や軍備拡張の財源確保のために発行する公債の元利償還の費用(=利子の支払い)なども含んでいる場合があり、広義にはそれらも軍事費に含むことがある。

したがって、一言で「軍事費」と言っても、国ごとに指す内容がいくらか異なっていることがある。よって、比較をする場合などは、若干の補正をしたほうがよい場合がある。

軍事費の内訳としては一般に、人件費関係が最も大きな比率を占める。

軍事費の出所は基本的に、ひとりひとりの国民が払っている税金である。他にも戦争が迫っている時などに政府が必要に迫られて発行する公債によって調達するお金(借金)も加わる。

軍隊と経済[編集]

軍事力を持つということ、つまり軍隊を持ちそれを維持するには、将兵の人件費類に加えて、兵器の開発・調達費、日常的な訓練の経費、弾薬燃料の備蓄費用などがかかる。国家が軍事力を維持するには、その経済的な基盤が必要となるわけである。

もっとも、経済的視点から見ると、軍隊というのは非生産組織であるため[1]投資が行われても再生産によって投資金額が回収されることはなく、ひたすら消費するのみである[2]。一般論として言うと、好況時に軍隊・軍事部門に労働力が奪われることは民間部門の経済活動を阻害する場合が多い。ただし、不況時などで民間企業が必要とする以上の労働力がある場合には、過剰な労働人口に対して軍需産業や軍隊で雇用および福利厚生を提供する性質も備えており、彼らによって消費が維持されることによって景気の過度な落ち込みも抑制される効果が期待される。また、公共事業に準ずる任務を負った大規模な投資によるインフラ整備や、科学技術やそれを担う生産部門などのノウハウ継承にも貢献するなど、一概に「非生産的」とは言い切れない側面もある。

様々な経済モデル

軍事費の規模を導くモデルのひとつとして、ルイス・フライ・リチャードソンのモデルがある。これは、X,Yをそれぞれ軍備、kは脅威係数、aは消耗係数、gはY国へのX国の警戒感として、△X=kY-aX+gという式で現す。要するに、X国の軍事費の規模はY国の脅威をX国の武力で相殺した上でのY国に対する警戒度を足したものだと考えて表現している。

またフリードマン・モデルにおいては、UはX国の軍備有効度、IはXの消耗係数、KはXの脅威係数として、Uk=I×X2乗+K×(X-Y)2乗で現す。このモデルでは両国の勢力の差が2乗されることによって強調されている。


軍事費情報の用途[編集]

軍事費情報は様々な用いられ方をしている。

例えば、中央政府が国家予算を決める時に用いられる(たとえば日本では国会の予算委員会などで予算の適正な配分について検討・吟味する過程でそのデータが用いられることがある)。例えば、福祉関係の予算額などと比較されて、国民にとっての意味や意味の無さが議論されることがある。

また、世界の軍事情勢の分析のために用いられることがある。具体的には、比較のしにくい軍事力というものを、端的にひとつの数字で示すためにしばしば用いられている。

軍事力比較

軍事費は各国ごとの軍事力の比較にしばしば用いられてはいるが、国ごとにその定義・内訳には大きな差異があり、さらに物価水準や購買力平価の差異もあるので、それらを考慮しなければ、あまり正確な比較とはならない。

軍事費は、各国の軍事力比較に用いられるひとつの要素ではあるが、軍事力というのは、軍事費だけでなく、将兵の士気や錬度・戦闘経験、兵器の性能や可用性、指揮能力、工業生産能力や食糧生産能力、国内資源量、軍事戦略や地理的環境、社会体制など、数値的要素および非数値的な要素、多角的な要素が関わるために、軍事費だけを単純に比較するだけでは十分ではない。

歴史上の軍事費[編集]

1898年2月、Saturday Review誌は1897年当時の列強による対税収比の軍事支出水準を概説した。 [3]

参考文献[編集]

  • Gallik, D. 1988. World Military Expenditures and Arms Transfers, 1987. U.S. Arms Control and Disarmament Agency. Washington, D.C.: Government Printing Office.
  • Hobkirk, M. D. 1983. The Politics of Defense Budgeting: A Study of Organization and Resource Allocation in the United Kingdom and the United States. Washington, D.C.: National Defense University Press.
  • Kennedy, P. 1987. The Rise and Fall of the Great Powers. New York: Random House.
    • ケネディ著、鈴木主税訳『大国の興亡 1500年から2000年までの経済の変遷と軍事闘争』草思社、決定版、1993年
  • Lee, W. T. 1977. The Estimation of Soviet Defense Expenditures, 1955-75: An Unconventional Approach. New York: Praeger.
  • Maroni, A. C. 1984. The Defense Budget. in Presidential Leadership and National Security: Style, Institutions, and Politics, ed. S. C. Sarkesian. Boulder, Colo.: Westview Press.
  • Poole, J. B., and A. J. F. Brown, 1982. Bibliographic Note: A Survey of National Defense Statements. Survival 24:220-28.

注記[編集]

  1. ^ つまり生産性がゼロである
  2. ^ エコノミスト」のハーストはこの点を取り上げてあらゆる軍備は浪費であると論じた。同時に世界的かつ恒久的な平和が実現されるまでは軍備は絶対に必要であるとも論じた。またアダム・スミスも軍事費の必要性は国家にとって防衛の必要から普遍的にあると論じた。
  3. ^ Frank Harris (editor) (February 1898). Saturday Review Magazine. 

関連項目[編集]