第三次世界大戦はもう始まっている
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著者 | エマニュエル・トッド | |
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訳者 | 大野舞、編集部 | |
発行日 | 2022年(令和4年)6月20日 | |
発行元 | 文藝春秋 | |
ジャンル | ノンフィクション | |
形態 | 新書 | |
ページ数 | 206 | |
前作 | 『老人支配国家日本の危機』(2021年) | |
次作 | 『我々はどこから来て、今どこにいるのか』(2022年) | |
公式サイト | books.bunshun.jp | |
コード | ISBN 978-4-16-661367-0 | |
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『第三次世界大戦はもう始まっている』は、フランス人の歴史人口学者エマニュエル・トッドのインタビュー集。ウクライナ問題と米国のロシア恐怖症とロシアのウクライナ侵攻に関する評論である。米国の国際政治学者ジョン・ミアシャイマーの動画[1][2]の影響を受けて発言されたインタビューが中心となっている。
本書のインタビューの一部は『文藝春秋』(2022年(令和4年)5月号、94-104頁)に「日本核武装のすすめ」として掲載された。本書は2022年(令和4年)6月20日に文春新書として発行された[注釈 1][注釈 2][注釈 3]。本書の抜粋は「文春オンライン」でも公開された[6][7]。
同じテーマのインタビューが『日経ビジネス』[8][9][10]・『中央公論』[11]・『Voice』[12]・『週刊ダイヤモンド』[13][14]に掲載され、NHK『ニュースウオッチ9』[15]やFNN『日曜報道 THE PRIME』[注釈 4]でも放送された。仏『フィガロ』紙でも同じテーマのインタビューが掲載され[19][20][21][22][23][24]、日本語訳がトッド, 片山 & 佐藤 (2023, pp. 173–203)に収録された。。
目次[編集]
- 第三次世界大戦はもう始まっている 13
- “冷酷な歴史家”として 15
- 「戦争の責任は米国とNATOにある」 17
- ウクライナはNATOの“事実上”の加盟国だった 18
- ミュンヘン会談よりキューバ危機 19
- 「NATOは東方に拡大しない」という約束 20
- ウクライナを「武装化」した米国と英国 22
- 「手遅れになる前にウクライナ軍を破壊する」が目的だった 23
- ウクライナ軍が抵抗するほど戦争は激化 24
- 米国にとっても「死活問題」に 25
- 我々はすでに第三次世界大戦に突入した 27
- 「二〇世紀最大の地政学的大惨事」 28
- 冷戦後の米露関係 30
- 戦争前の各国の思惑 31
- 超大国は一つだけより二つ以上ある方がいい 32
- 起きてしまった事態に皆が驚いた 33
- 米国の誤算 34
- ロシアにとっても予想外 36
- 共同体家族のロシアと核家族のウクライナ 37
- 「国家」として存在していなかったウクライナ 39
- 「親EU派」とは「ネオナチ」 41
- ネオナチと手を組んだヨーロッパ 42
- 家族構造とイデオロギーの一致 43
- 共産主義を生んだロシアの家族構造 45
- 家族構造の違いから生じたホロドモールの惨劇 46
- ボリシェヴィズムが初期から定着したラトビアの家族構造 47
- 「ヨーロッパ最後の独裁者」を擁するベラルーシの家族構造 48
- 「近代化の波」は常にロシアからやって来た 49
- 国家建設に成功したロシアと失敗したウクライナ 51
- プーチンの誤算 52
- ロシアはすでに実質的に勝利している 54
- 西欧の誤算 56
- 欺瞞に満ちた西欧の“道徳的態度” 57
- オリガルヒへの制裁は無意味 58
- 「ロシア恐怖症」 60
- 暴力の連鎖 61
- 「消耗戦」が始まる 63
- 中国はロシアを支援する 64
- 米国と西側の経済は耐えられるか 65
- 経済の真の実力はGDPでは測れない 66
- ウクライナ相手に貿易赤字だった米国 67
- 経済における「バーチャル」と「リアル」の戦い 69
- 対露制裁で欧州は犠牲者に 70
- 米国の戦略目標に二重に合致したウクライナ 71
- NATOと日米安保の目的は日独の封じ込め 73
- 現実から乖離したゼレンスキー演説 74
- エストニアとラトビアという例外 76
- 予測可能な国と予測不能な国 77
- ポーランドの動きに注意せよ 79
- 最も予測不能な米国 80
- 「ネオコン一家」ケーガン一族 81
- 世界を“戦場”に変える米国 83
- 米国の“危うさ”は日本にとって最大のリスク 84
- 核を持つとは国家として自律すること 85
- 「核共有」も「核の傘」も幻想にすぎない 87
- 米国に対する怒り 88
- 西洋は「世界」の一部でしかない 89
- 長期的に見て国益はどこにあるか 90
- 「ウクライナ問題」をつくったのはロシアでなくEUだ 91
- 「ロシア恐怖症」は米国の衰退の現れだ 111
- 「ウクライナ戦争」の人類学 133
- 第二次世界大戦より第一次世界大戦に似ている 135
- 軍事面での予想外の事態 136
- 経済面での予想外の事態 137
- 正しかったミアシャイマーの指摘 139
- ミアシャイマーへの反論 140
- 米国は戦争にさらにコミットする 141
- 時代遅れの「戦車」と「空母」 143
- 米国の戦略家の“夢”を実現 145
- ポーランドの存在感 146
- “真のNATO”に独仏は入っていない 147
- ウクライナの分割 148
- この戦争の“非道徳的な側面” 150
- ウクライナ西部のポーランド編入 151
- ウクライナ侵攻に対する各国の反応 152
- 家族構造における父権性の強度 153
- 人類学から見た世界の“安定性” 160
- 「民主主義陣営VS専制主義陣営」という分類は無意味 162
- 露中の「権威的民主主義」 163
- ロシアと中国の違い 164
- ロシアの女性とキリスト教 165
- 現在の英米は「自由民主主義」とは呼べない 167
- 「リベラル寡頭制陣営VS権威的民主主義陣営」 169
- 日本・北欧・ドイツ 170
- リベラル寡頭制陣営の「民族主義的な傾向」 171
- 権威的民主主義陣営の「生産力」に依存 172
- 「高度な軍事技術」よりも「兵器の生産力」 173
- 米露の生産力 175
- ヨーロッパ経済はインフレに耐えられるか 177
- 真の経済力は「エンジニア」で測られる 184
- 本来、この戦争は簡単に避けられた 188
- 西洋社会が虚無から抜け出すための戦争 189
- 第一次世界大戦は中産階級の集団的狂気 190
- 英国は病んでいる 192
- 「地政゠精神分析学」が必要だ 193
- なぜ中国よりもロシアが憎悪の対象になったのか 194
- 「反露感情」で経済的に自殺するドイツ? 196
- 現時点では一歩引いた方がいい 198
- マリウポリから脱出したフランス人の証言 200
- 「ウクライナに兵器を送るべきだ」の冷酷さ 201
- 米国が“参戦国”として前面に 203
- “軍事支援”でウクライナを破壊している米国 204
収録情報[編集]
第一章と第四章は、ロシアのウクライナ侵攻が始まった2022年(令和4年)2月24日より後に収録されたインタビューであり、ウクライナ戦争がテーマになっている。インタビューアーは大野舞で日本語訳が最初に出版されたものである。一方、第二章と第三章は、ロシアのウクライナ侵攻が始まる前に公開されたインタビューと評論であり、原文はインターネットで全文公開されている。第二章はウクライナ問題がテーマのインタビューであり、第三章は米国のロシア恐怖症がテーマの評論である。
- 第三次世界大戦はもう始まっている
- 「ウクライナ問題」をつくったのはロシアでなくEUだ
- 原題
- We Live in a World of Ailing Powers.
- 聞き手
- マチェイ・ノーウィッキ(Maciej Nowicki)
- 初出
- Aspen Review, 2017年(平成29年)3月15日
- 翻訳
- 編集部
- 「ロシア恐怖症」は米国の衰退の現れだ
- 原題
- La russophobie traduit la chute d'une Amérique brisée.
- 初出
- Élucid, 2021年(令和3年)11月22日
- 翻訳
- 大野舞
- 「ウクライナ戦争」の人類学
- 収録日
- 2022年(令和4年)4月20日
- 注釈
- 収録後に一部加筆。
- 翻訳
- 大野舞
背景[編集]
ウクライナに残された核兵器[編集]
世界第三位の核戦力[編集]
国際政治学者のアンドリー・グレンコによると、1991年(平成3年)にウクライナがソ連から独立した時点で、ウクライナが保有していた核兵器は、176発の大陸間弾道ミサイル、1500発以上の戦略的核弾頭、2800発以上の戦術的核弾頭であった[25]。すなわち、「米露に次ぎ、世界第三位の核戦力であり、中国、イギリス、フランスよりも多かった」[25]という。グレンコによると、ウクライナの核廃絶の歴史は以下のようになる[26]。
- 1990年(平成2年)7月16日
- ウクライナ・ソビエト社会主義共和国の最高会議は「ウクライナ主権宣言」を採択。
- 1991年(平成3年)8月24日
- ウクライナは独立宣言をし、正式に独立国家となる。
- 1992年(平成4年)-1993年(平成5年)
- ウクライナ政府はウクライナの核兵器の処分方法を米露の代表団と交渉。
- 1993年(平成5年)9月3日
- ウクライナのクラフチュク大統領とロシアのエリツィン大統領がウクライナの全ての核弾頭・高濃縮ウラン・軍用プルトニウムをロシアに移動することに決定。(マッサンドラ合意)
- 1994年(平成6年)11月16日
- ウクライナが核拡散防止条約(NPT)に加盟。ウクライナは自国の核兵器の完全放棄を実施し、将来、非核保有国になることを表明。
- 1994年(平成6年)12月5日
- ウクライナ・ベラルーシ・カザフスタンとアメリカ・イギリス・ロシアがブダペスト覚書に署名。その内容は、ウクライナ・ベラルーシ・カザフスタンが核不拡散条約(NPT)に加盟することと引き換えに、アメリカ・イギリス・ロシアが3ヵ国の安全を保障するというもの。
- 1996年(平成8年)6月2日
- ウクライナは正式に非核保有国となる。
正しかったミアシャイマーの指摘[編集]
また、アメリカの国際政治学者ジョン・ミアシャイマーは1993年(平成5年)の夏の時点で、「ウクライナは1656発の戦略核兵器を全て残している。それらはアメリカを狙ったものだが、ロシアへ発射するようにプログラミング可能である」と解説した[27]。具体的には、「130基のSS-19S(各6弾頭)、46基のSS-24S(各10弾頭)、30機のBear-HおよびBlackjack(合計416発の核弾頭を搭載可能)であり、合計すると1656発の戦略核兵器になる」[注釈 5]と解説した。ミアシャイマーによれば、「ウクライナが核保有国であることには二つの利点がある。一つ目は、核兵器はロシアとウクライナとの間の平和を維持するために絶対に必要であり、ウクライナは通常兵器だけでは核武装したロシアから自国を防衛できず、アメリカを含むどの国も、実効的な安全保障を提供することができない。ウクライナの核兵器はロシアの侵略に対する唯一の確実な抑止力なのだ。〔中略〕二つ目は、ウクライナが残された核兵器をロシアに移動することはありそうにもないが、〔もしそうなれば〕その状態は最も危険なものとなる。〔中略〕ウクライナに核問題に向き合うように圧力をかけることは、ロシアを刺激して戦争の危険性を増すことになり、それはウクライナにとってさらに恐ろしい事態になり、アメリカも露宇間の危機を取り除くことができなくなる」[注釈 6][注釈 7]という。
どの国もウクライナを守らなかった[編集]
アンドリー・グレンコは、「二〇一八年の現在において、核兵器の早期的な廃棄は過ちであったことは明らかである」[30]と述べて、「どれほど国内外情勢が激しかろうと、ウクライナの核兵器を守るために力を尽すべきであったし、外交交渉においては引き延ばし作戦を取るべきであった」[31]と解説した。さらに「〔前略〕長年にわたる交渉のなかで、ウクライナの核兵器をNATO(北大西洋条約機構)の核体制に組み込む方法を探るか」[31]、またはアメリカがウクライナの核保有を「黙認するよう働きかけるべきであった」[31]と説明した。そして、「もしこのような交渉をし、この要求の一部だけでも西側に認めさせることができれば、〔中略〕二〇一四年から今日まで続いているロシアとの戦争も回避できたかもしれない」[32]と解説した。
「NATOは東方に拡大しない」という約束[編集]
NATOの東方拡大とは、中東欧諸国をNATOの一員に組み込むことである。トッドは、「一九九〇年の時点で、『NATOは東方に拡大しない』といった“約束”がなされていました」[33]と解説し、編集部の注釈として、
当時のソ連書記長ゴルバチョフに対し、一九九〇年二月九日、アメリカのベーカー国務長官が「NATOを東方へは一インチたりとも拡大しないと約束する」と伝え、翌日にはコール西独首相が「NATOはその活動範囲を広げるべきではない」と伝えている
と記されているように、「NATO不拡大の約束」は存在したという説が有力である。
ジャック・マトロックの証言[編集]
国際政治・米国金融アナリストの伊藤貫は、駐露大使を務めたアメリカ国務省官僚のジャック・マトロックの証言を引用して、「ベーカー国務長官はゴルバチョフとシュワルナゼに面と向かって、「we give you iron-clad guarantees that NATO will not extend one inch to the east」(「『我々はNATOを一インチたりとも東方に拡張しない』という鉄の保障を提供します」)と明言している」と説明し、「マトロック大使は、その場に同席していた!」と解説している[34]。
「NATO不拡大の約束」は存在しなかった?[編集]
一方、国際政治学者の袴田茂樹は、ロシアメディアの『新時代』(2016年1月18日号)に掲載されたB・ユナノフの記事や『独立新聞』(2015年12月15日号)に掲載されたN・グリビンスキーの論文および同紙の(2022年1月17日号)に掲載されたA・アルバトフの記事を引用して、「NATO不拡大の約束」は存在しなかったと説明し、「NATO不拡大の約束」が破られたためにウクライナ戦争を始めたというプーチンの主張は「全くの間違いまたは意図的なフェイク情報」だと解説している[35]。
核を廃棄したのが失敗だった[編集]
また、名古屋商科大学ビジネススクール教授の原田泰は、ブダペスト覚書を重視して、「NATOの拡大よりもミンスク合意の違反よりも、ブダペスト合意違反こそが重要ではないか」[36]と問題提起して、ウクライナがブダペスト覚書により核を廃絶する代わりに核を保有する五大国が安全保証したにもかかわらず、2014年(平成26年)のロシアによるクリミアの併合でどの国も(ロシアに経済制裁をした以外では)ウクライナの安全保障のために何もしなかったため、ブダペスト覚書が反故にされてしまい、その結果として「核を保有した国は永久に核を放棄せず、安全のためには核を保有するしかない、と考える国が拡大する」[37]と説明している。さらに、2014年(平成26年)のクリミア危機や2022年(令和4年)のウクライナ戦争について、「ウクライナは、核を廃棄したのが失敗だった、核を維持していたらこんなひどい目に合わずにすんだ、と思うだろう」[38]と解説している。
NATOの東方拡大と紛争の歴史[編集]
- 1999年(平成11年)3月12日
- 第一次東方拡大で、ポーランド・ハンガリー・チェコの三ヵ国がNATOに加盟。
- 2004年(平成16年)3月29日
- 第二次東方拡大で、バルト三国(エストニア・ラトビア・リトアニア)と、ルーマニア・ブルガリア・スロバキア・スロベニアの七ヵ国がNATOに加盟。
- 2008年(平成20年)4月2日-4月4日
- NATOの首脳会議で「グルジア(現・ジョージア)とウクライナを将来的にNATOに組み込む」ことが宣言。
- 2008年(平成20年)8月7日-8月16日
- ロシアとグルジアとの間で南オセチア紛争が勃発。
- 2014年(平成26年)2月22日
- ウクライナで、「ユーロマイダン革命」と呼ばれるクーデタが発生。
- 2014年(平成26年)2月23日-
- クリミア危機とウクライナ紛争が勃発。
第一次・二次東方拡大[編集]
1999年(平成11年)の第一次東方拡大ではポーランド・ハンガリー・チェコの三ヵ国がNATOに加盟し[33][39]、2004年(平成16年)の第二次東方拡大ではバルト三国(エストニア・ラトビア・リトアニア)と、ルーマニア・ブルガリア・スロバキア・スロベニアの七ヵ国がNATOに加盟[33][39]した。ロシアはこれらの2回のNATOの東方拡大を受け入れることになった[33]。
南オセチア紛争[編集]
しかし、さらに、2008年(平成20年)4月にブカレストで開催されたNATOの首脳会議で「グルジア(現・ジョージア)とウクライナを将来的にNATOに組み込む」ことが宣言される[40]と、「その直後、プーチンは緊急記者会見を開き、『強力な国際機構が国境を接するということはわが国の安全保障への直接的な脅威と見なされる』と主張」[40]し、ロシアとグルジアとの間で南オセチア紛争が勃発した。
ユーロマイダン革命とクリミア危機・ウクライナ紛争[編集]
2014年(平成26年)2月22日、ウクライナで、「ユーロマイダン革命」と呼ばれるクーデタが発生し親露派のヤヌコビッチ政権が倒される[40]と、ロシアはクリミアを編入(クリミア危機)し、親露派が東部のドンバス地方を実効支配[40]すること(ウクライナ紛争)になった。
内容[編集]
トッドは、2022年(令和4年)2月24日に勃発したウクライナ戦争に関して、「西洋諸国では、地政学的思考や戦略的思考がまったく姿を消してしまい、皆が感情に流されています」[41]と指摘し、それに対して、米国では「この戦争が、地政学的・戦略的視点からも論じられている」[41]として、国際政治学者のジョン・ミアシャイマーの説を紹介している。
ミアシャイマーの説[編集]
「戦争の責任は米国とNATOにある」[編集]
ミアシャイマーによれば、「いま起きている戦争〔ウクライナ戦争〕の責任は、プーチンやロシアではなく、アメリカとNATOにある」[41][注釈 8]。
ウクライナはNATOの“事実上”の加盟国だった[編集]
それに対して、「アメリカとイギリスが、高性能の兵器を大量に送り、軍事顧問団も派遣して、ウクライナを『武装化』して」[42][注釈 9]、ウクライナはNATOの“事実上”(de facto)の加盟国[42]になった。
「手遅れになる前にウクライナ軍を破壊する」が目的だった[編集]
こうした動きに対してロシアは「日増しに強くなるウクライナ軍を手遅れになる前に破壊する」[42][注釈 10]必要があり、それがウクライナ戦争の原因になったのである。
ミアシャイマーの説とトッドの説との違い[編集]
そして、ミアシャイマーは、「ロシアはアメリカやNATOよりも決然たる態度でこの戦争に挑むので、いかなる犠牲を払ってでもロシアが勝利するだろう」[43][注釈 11]と述べている[注釈 12]が、トッドは別の意見を述べている。
米国にとっても「死活問題」に[編集]
すなわち、「もし、ロシアの勝利を阻止できなかったとしたら、〔中略〕アメリカの威信が傷つき、アメリカ主導の国際秩序が揺るがされることになる」[45]ので、「ウクライナ問題は、アメリカにとっても、それほどの『死活問題』」[45]になり、「アメリカはこの戦争に、彼〔ミアシャイマー〕が想像する以上に深くのめり込む可能性がある」[45]という[注釈 13]。
グローバル化するウクライナ戦争[編集]
トッドによると、本来は「ローカルな問題」[47]であったウクライナ戦争がアメリカや西側諸国を巻き込む形で「グローバル化=世界戦争化」[48]してしまったため、「我々はすでに第三次世界大戦に突入した」[49]という。そして、「ウクライナ軍は、アメリカとイギリスの指導と訓練によって再組織化され、歩兵に加えて、対戦車砲や対空砲も備えています。とくにアメリカの軍事衛星による支援が、ウクライナ軍の抵抗に決定的に寄与しています」[49]と説明し、その結果「ロシアとアメリカの間の軍事的衝突は、すでに始まっているのです」[49]と解説している。
中国はロシアを支援する[編集]
トッドによると、『環球時報』[注釈 14]を読めばわかるように、中国政府と中国の国民は「圧倒的にロシアに親近感を抱いている」[50]。さらに、もしロシアが倒されれば次に狙われるのは中国になるから、中国は「最終的にはロシアを支援するのではないか」[51]と予想している。さらに、「中国には、戦争が長期化するなかで、ロシアを利用してアメリカの武器備蓄を枯渇させることで、アメリカの弱体化を図るという選択肢が残されています」[52]と指摘し、「巨大な生産能力を持つ中国からすると、ロシアに軍需品を供給するだけで、アメリカを疲弊させることができるのです」[53]と説明し、ウクライナ戦争を長期化させることで米露両国が疲弊して中国が有利に成り得ると解説している。
ミアシャイマーによると、ウクライナ戦争の「最大の勝者は中国」になるという[54]。第一の理由は、ウクライナ戦争のためアメリカが東アジアへの「
国際政治・米国金融アナリストの伊藤貫によると、今回の「米露戦争〔ウクライナ戦争のこと〕長期化で利益を得るのはチャイナ」[56]になるという。その理由は、米露戦争の長期化により、「アメリカは中国封じ込め政策を遂行する能力を失っていくから」[56]だという。そして、その結果、「強烈なダメージを被るのは、勿論、日本」[56]になるという。
ブレジンスキーの説[編集]
トッドは、アメリカの国際政治学者ズビグネフ・ブレジンスキーの説を紹介して、「ウクライナなしではロシアは帝国になれない」[47]、ロシアが「アメリカに対抗しうる帝国となるのを防ぐには、ウクライナをロシアから引き離せばよい」[47]と解説している[注釈 15][注釈 16][注釈 17]。
米国の戦略目標に二重に合致したウクライナ[編集]
トッドによると、冷戦後のロシアに対する米国の戦略目標は以下の二つになるという[59]。
- ロシアの解体
- ロシアと米国の対立構造を維持して、ヨーロッパとロシアの接近を阻止する
そして、この戦略目標を達成するために選ばれたのがウクライナだったという[60]。このことは「ブレジンスキーの本[61][62]を読めば一目瞭然」[60]だという[注釈 18]。
NATOと日米安保の目的は日独の封じ込め[編集]
トッドは、「極論すれば、NATOや日米安保は、ドイツや日本という『同盟国』を守るものではありません」[64]と説明し、それらは「アメリカの支配力を維持し、とくにドイツと日本という重要な『保護領』を維持するため」[65]にあると解説している[注釈 19]。
日本核武装のすすめ[編集]
米国の“危うさ”は日本にとって最大のリスク[編集]
トッドによると、アメリカの行動は「予測不能で多大なリスクとなり得る」[67]ため、アメリカは「最も予測不能」な国になる[67]という。その理由として、アメリカには中枢が存在せず、「誰が権力を握っているのか分からない」[67]からだという。そして、このようなアメリカの予測不能性による“危うさ”は「同盟国日本にとっては最大のリスク」[68]になるという。したがって、本当にアメリカは信頼できるのか? アメリカに頼り切ってよいのか? という疑問が生まれるので、「こうした疑いを払えない以上、日本は核を持つべきだと私は考えます」[69]と提言している。
核を持つとは国家として自律すること[編集]
トッドによれば、「核の保有は、〔中略〕『同盟』から抜け出し、真の『自律』を得るための手段」[69]であるという。したがって、「核を持つことは国家として“自律すること”」[70]であり、「核を持たないことは、他国の思惑やその時々の状況という“偶然に身を任せること”」[70]だという。そして、ウクライナ危機が画期となり、第二次世界大戦後、「通常戦」は小国が行うものという常識が変わったという。つまり、核を持つ大国のロシアが「通常戦」を行ったため、従来は核は「通常戦」を避けるはずのものだったのが、逆に核を持つことで「通常戦」が行われるという新たな状態が生じたという[70]。この影響を受けて、「中国が同じような行動に出ないとも限りません」[70]と説明している。したがって、「日本には再軍備が必要になるでしょう。そしてもし完全な安全を確保したいのであれば、核兵器を保有するしかありません」[70]と提言している。
一方、国際政治学者のジョン・ミアシャイマーは、2022年ロシアのウクライナ侵攻により「日本の核武装を論じる人々もいます」[71]と認めつつ、「米国は日本を核武装させたいとは思っていないでしょう」[71]と説明し、「米国の『核の傘』が日本にしっかりかかっていれば、日本に核武装の必要はない」[71]と解説している。ただし、米国がウクライナ戦争に固執して東アジアへの
「核共有」も「核の傘」も幻想にすぎない[編集]
トッドによれば、「『核共有』という概念は完全にナンセンス」[72]であり、「『核の傘』も幻想」[72]にすぎないという。その理由は「使用すれば自国も核攻撃を受けるリスクのある核兵器は、原理的に他国のためには使えないから」[72]だという。さらに具体的に言い換えて、例えば「中国や北朝鮮にアメリカ本土を核攻撃できる能力があれば、アメリカが自国の核を使って日本を守ることは絶対にあり得ません」という。したがって、「自国で核を保有するか、しないのか。それ以外に選択肢はない」[72]という。さらに、バランス・オブ・パワーを重視する観点から、「核の不均衡は、それ自体が不安定要因となります」[73]と説明し、「中国に加えて北朝鮮も実質的に核保有国になるなかで、日本の核保有は、むしろ地域の安定化につながるでしょう」[73]と解説している。
長期的に見て国益はどこにあるか[編集]
トッドは、「台頭する中国と均衡をとるためには、日本はロシアを必要とする、という地政学的条件に変わりはありません」[74]と説明し、「西側に追い込まれたロシアが中国と接近し、中国に軍事技術を提供することこそ、日本にとって悪夢です」[74]と解説した。さらに、「アメリカを喜ばせるために多少の制裁は加えるにしても、ロシアと良好な関係を維持することは、あらゆる面で、日本の国益に適います」[74]と説明し、「決して見失ってはならないのは、『長期的に見て国益はどこにあるか』です」[74]と結論づけた。
「ロシア恐怖症」は米国の衰退の現れだ[編集]
トッドは、「アメリカとロシアを“歴史的ペア”として見る」[75]ことにより、「体系だった地政学的アプローチを進める」[75]ことができると述べて、以下のようにアメリカとロシアの現状を分析している。
- 乳幼児死亡率
- 1990年(平成2年)の時点では、ロシアの出生1000人あたりの乳幼児死亡率は18.4だったが、2019年(令和元年)には4.9に低下し、アメリカの5.4を下回った[76]。2022年(令和4年)時点での最新情報ではロシアが4.9、アメリカが5.6となり差が広がった[77]。
- 平均寿命
- 平均寿命はアメリカが低下傾向にあるのに対して、ロシアはまだアメリカに遅れをとっているものの上昇傾向にある[78]。
- 自殺率
- OECDの調査によると、ロシアでは自殺率が低下しており、2019年(令和元年)には10万人あたり11.5人で、アメリカの10万人あたり13.9人を下回った[79]。
そして、上記の乳幼児死亡率と自殺率に基づくと、トッドは「ロシアの復活とアメリカの危機」[80]が見えてくると結論している。さらに、その観点から「冷戦を捉え直す」[81]と、「ソ連圏の一方的な敗北」[82]ではなく「アメリカモデルも東西対決から無傷で抜け出したわけではない」[82]ことになるという。すなわち、冷戦は「米ソの相互破壊」[83]で終結し、「アメリカの内部システムは崩壊した」[82]ことになり、それを理解するには「(トクヴィルが最初に提供した)アメリカとロシアを一つのペアとして捉えるシステム解析」[84]が有効な手段になるという[注釈 20]。
「ウクライナ戦争」の人類学[編集]
ウクライナ侵攻に対する各国の反応[編集]
トッドは、ウクライナ侵攻に対する各国の反応を
- 「非難して制裁を科す国」
- 「非難するが制裁はしない国」
- 「非難も制裁もしない国」
- 「支持する国」
に分類して図示し[86]、「①『非難して制裁を科す国』は“世界の大半を占める国々”ではなく“一部の特定の国々”である」[87]と説明している。具体的には、アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドというアングロサクソン諸国と、ヨーロッパ諸国、それに加えて、日本・韓国という広義の「西洋」で、そこにラテンアメリカ諸国が少しだけ加わっている[88]と解説している。すなわち、「西洋は『世界』の一部でしかないのです」[89]と結論づけている。
“軍事支援”でウクライナを破壊している米国[編集]
トッドによれば、ウクライナ戦争を主導しているのはアメリカとイギリスであり[90]、アメリカの軍事支援はアメリカが“事実上”この戦争に参加していることを意味する[91]。そして、アメリカの軍事支援は以下の3つを意味するという[91]。
- ロシア軍の相手は、アメリカの軍事システムとウクライナ軍である。
- もしロシア軍の相手がアメリカならば一切の遠慮なくウクライナを破壊できることになる。
- ロシアは「ウクライナという弱い国を相手にする強国」ではなく「アメリカという大国を相手にする弱い国」になる。
その結果、「ロシアは、アメリカが期待したほど、世界から孤立することはないでしょう」と予測している[91]。
最後に、ウクライナ戦争の今後の展開を予想するのは難しいが、「長期戦」「持久戦」になる可能性が高く[91]、戦争が長引けば長引くほどウクライナは破壊されていく[92]ので、「アメリカは“支援”することで、実はウクライナを“破壊”している」[92]という。
脚注[編集]
注釈[編集]
- ^ 2022年7月28日の時点で Amazon.co.jp の 西洋史 の 売れ筋ランキングで1位になった[3]。
- ^ 2022年7月30日の時点で Amazon.co.jp の 軍事問題 の 売れ筋ランキングで1位になった[4]。
- ^ 2022年7月31日の時点で Amazon.co.jp の アメリカ・中南米の地理・地域研究 の 売れ筋ランキングで1位になった[5]。
- ^ 2022年11月06日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』にトッドが出演し、ジャーナリストの木村太郎や元大阪府知事の橋下徹とウクライナ戦争に関する議論をおこない、
と発言した[16][17][18]。「私は日本が独自の安全保障政策を持つべきだと確信している。しかし、日本には人口(減少)問題がある。唯一の安全保障は、何度も言うが、核を持つことだ。核を持つことは、攻撃的な軍事政策を行うこととはまったく異なる。むしろ逆だ。新たな立場をとるということだ。核を持てば安全であり、(米国の戦争に巻き込まれず)中立的な立場をとることができる。日本がその気になれば、の話だが。」
- ^ ジョン・ミアシャイマーは1993年(平成5年)にForeign Affairsに掲載された"The Case for a Ukrainian Nuclear Deterrent"で以下のように解説している[27]。
ミアシャイマーの論文 原文 邦訳 True to its word, Ukraine moved all of its tactical nuclear weapons to Russia between January and May 1992. However, none of Ukraine's 1,656 strategic nuclear weapons have been transferred to Russia. That force, which is aimed at the United States but could be programmed to strike Russia, includes 130 SS-19S (6 warheads each), 46 SS-24S (10 warheads each), and 30 Bear-H and Blackjack bombers (together carrying 416 bombs), making a total of 1,656 nuclear weapons. その言葉通り、1992年(平成4年)の1月から3月にかけて、ウクライナは全ての戦術核兵器をロシアに移動した。しかし、ウクライナは1656発の戦略核兵器を全て残している。それらはアメリカを狙ったものだが、ロシアへ発射するようにプログラミング可能である。〔具体的には〕130基のSS-19S(各6弾頭)、46基のSS-24S(各10弾頭)、30機のBear-HおよびBlackjack(合計416発の核弾頭を搭載可能)であり、合計すると1656発の戦略核兵器になる。 - ^ ジョン・ミアシャイマーは1993年(平成5年)にForeign Affairsに掲載された"The Case for a Ukrainian Nuclear Deterrent"で以下のように解説している[28]。。
ミアシャイマーの論文 原文 邦訳 A nuclear Ukraine makes sense for two reasons. First, it is imperative to maintain peace between Russia and Ukraine. That means ensuring that the Russians, who have a history of bad relations with Ukraine, do not move to reconquer it. Ukraine cannot defend itself against a nuclear-armed Russia with conventional weapons, and no state, including the United States, is going to extend to it a meaningful security guarantee. Ukrainian nuclear weapons are the only reliable deterrent to Russian aggression. If the U.S. aim is to enhance stability in Europe, the case against a nuclear-armed Ukraine is unpersuasive.
Second, it is unlikely that Ukraine will transfer its remaining nuclear weapons to Russia, the state it fears most. The United States and its European allies can complain bitterly about this decision, but they are not in a position to force Ukraine to go nonnuclear. Moreover, pursuing a confrontation with Ukraine over the nuclear issue raises the risks of war by making the Russians more daring, the Ukrainians more fearful, and the Americans less able to defuse a crisis between them.ウクライナが核保有国であることには二つの利点がある。一つ目は、核兵器はロシアとウクライナとの間の平和を維持するために絶対に必要であるということだ。その意味するところは、ウクライナと険悪な歴史的関係を持つロシアに領土の再征服をさせないように安全を保障することなのだ。ウクライナは通常兵器だけでは核武装したロシアから自国を防衛できず、アメリカを含むどの国も、実効的な安全保障を提供することができない。ウクライナの核兵器はロシアの侵略に対する唯一の確実な抑止力なのだ。もし米国の目的がヨーロッパにおける安定性を増大することにあるとすれば、核武装したウクライナに反対するケースは説得力がないものになる。
二つ目は、ウクライナが残された核兵器をロシアに移動することはありそうにもないが、〔もしそうなれば〕その状態は最も危険なものとなる。この〔ウクライナの核兵器をロシアに移動するという〕決定に対して米国と西洋の同盟国は不満を表明することができるが、ウクライナに非核化への移行を強制する立場にはない。さらに、ウクライナに核問題に向き合うように圧力をかけることは、ロシアを刺激して戦争の危険性を増すことになり、それはウクライナにとってさらに恐ろしい事態になり、アメリカも露宇間の危機を取り除くことができなくなる。 - ^ 名古屋商科大学ビジネススクール教授の原田泰は(Mearsheimer 1993)について「ミアシャイマーの洞察力は素晴らしい」と絶賛している[29]。
- ^ ミアシャイマーの動画では以下のように解説されている。(22:23-22:43)
ミアシャイマーの動画 原文[1] 邦訳[2] Who bears responsibility for this? Do the Russians bear responsibility for this? I don't thik so. There's no question the Russians doing the dirty work. I don't want to make light of that fact. But the question is what caused the Russians to do this. And in my opinion the answer is very simple. The United States of America. 誰がこの〔ウクライナ戦争の〕責任を負うのでしょうか? ロシア人が責任を負うのでしょうか? 私はそう思いません。ロシア人が汚い仕事をしているのは疑問の余地がありません。私はその事実を軽視したくはありません。しかし、問題は「誰がロシア人に〔戦争を〕起こさせたのか?」ということです。そして、私の意見では、その答えはとても単純です。〔それは〕アメリカ合衆国なのです。 - ^ ミアシャイマーの動画では以下のように解説されている。(7:24-7:34)
ミアシャイマーの動画 原文[1] 邦訳[2] and you want to remember it's president Trump in December of 2017 who was under great pressure who decided to arm the Ukrainians. So we were arming the Ukrainians, we were trainig the Ukrainians and we were forming ever closer diplomatic ties with the Ukrainians. そして、覚えておいてほしいのですが、2017年12月に、大きな圧力を受けていたトランプ大統領は、ウクライナ人の武装化を決定したのです。我々〔アメリカ人〕はウクライナ人を武装させ、ウクライナ人を訓練し、ウクライナ人とそれまで以上に緊密は外交関係を結んでいたのです。 - ^ ミアシャイマーの動画では以下のように解説されている。(17:06-17:26)
ミアシャイマーの動画 原文[1] 邦訳[2] In fact what the Russians are going to do is they're going to crush the Ukrainians. They're going to bring the big guns. They're going to turn places like Kiev and other cities in Ukraine into rubble. 実際に、ロシア人がしようとしていることはウクライナを破壊することです。彼等は大砲を持ち込み、キエフ(キーウ)やウクライナの他の都市を瓦礫にするつもりです。 - ^ ミアシャイマーの動画では以下のように解説されている。(20:35-21:04)
ミアシャイマーの動画 原文[1] 邦訳[2] The Americans do not care that much about Ukraine. The Americans have made it clear they are not even willing to fight and die for Ukraine. So it's not that important for us. For the Russians they have made it clear it's an existential threat. So the balance of resolve I believe favors them. So as we walk up the escalation ladder moving forward, my guess and it's just my guess is that the Russians will prevail not the Americans. アメリカ人はウクライナについてあまり気にしてはいません。アメリカ人はウクライナのために戦い死ぬつもりはないと明らかにしています。つまり、今回の戦争は、我々にとっては、あまり重要ではなく、ロシア人にとっては、明らかに存亡の危機なのです。よって、両者を比較すれば、ロシア人に勝機があると思われるのです。だから、我々がエスカレーションの段階を上げて前進していくと、私の予想では、アメリカ人ではなくロシア人が勝利することになるでしょう。 - ^ ただし、『文藝春秋』(2022年(令和4年)6月号)に掲載されたインタビューでは、「この戦争〔ウクライナ戦争〕がどのように終わるのか、まったく予想がつきません」[44]と語っている。さらに続けて、「米国とロシア、どちらかが一定の勝利をおさめるまで、相当に長く続くとみています」[44]と述べて戦争の長期化を予想している。ただし、「ロシアが負けそうになったときに核兵器を使用する」[44]場合には、「米国は核戦争へのエスカレーションの脅威によってすぐに戦争終結に動くでしょう」[44]と語っている。
- ^ 名古屋商科大学ビジネススクール教授の原田泰は、(ミアシャイマー 2022)と(トッド & 大野 2022)に関して、ミアシャイマーの説とトッドの説を同一視し、どちらも「ウクライナの立場はまったく考えられていない」[38]と説明し、「小国を大国の従属国、緩衝国にするのがリアリズムなのか」[46]と問題提起して、彼ら欧米知識人は「自由と人間の尊厳に大して冷笑的」[38]であり、「彼らは、屈辱の平和が欲しくて小国の自由を犠牲にしている」[38]と批判した。
- ^ 英語版はGlobal Timesである。
- ^ 『文藝春秋』に掲載されたインタビュー(トッド & 大野 2022, p. 57)では(ブレジンスキー 1998)が参考文献に挙げられているが、本書(トッド 2022, p. 27)では(ブレジンスキー 2003)が参考文献に挙げられている。
- ^ ズビグネフ・ブレジンスキーは1997年(平成9年)に出版された『ブレジンスキーの世界はこう動く(原著:The Grand Chessboard, 1997)』で以下のように解説している[57]。
ウクライナは、ユーラシアというチェス盤の上で、新たに重要な位置を占めるようになった国であり、地政上の要衝である。ウクライナが独立国になったこと自体が、ロシアの変化の一因になっているからだ。ウクライナの分離によって、ロシアはユーラシアの帝国ではなくなった。ウクライナを失っても、ロシアは帝国の地位を目指すことができるが、アジアの帝国という性格が強くなり、独立したばかりの中央アジア諸国への進出をはかる可能性が高い。そうなれば、再植民地化を嫌い、南のイスラム諸国の支援を受けるこれら諸国と泥沼の戦いになり、国力を弱めてゆくだろう。中国も、独立したばかりのこれらの国に関心を深めており、中央アジアでのロシア支配の復活に反対するだろう。しかし、ロシアがウクライナに対する支配を取り戻せば、五二〇〇万人の人口、豊富な資源、黒海へのアクセスを手に入れ、ヨーロッパからアジアにわたる大帝国になる手段を回復することになる。ウクライナが独立を失えば、中欧にすぐに影響が及び、ポーランドが統合ヨーロッパの東の辺境として、地政上の要衝になる。
- ^ ズビグネフ・ブレジンスキーは1997年(平成9年)に出版された『ブレジンスキーの世界はこう動く(原著:The Grand Chessboard, 1997)』で以下のように解説している[58]。
しかし、なによりも大切なのはウクライナだ。EUとNATOが拡大していけば、ウクライナはいずれ、これらへの加盟を望むかどうか、選択できる立場になる。EUとNATOが国境を接する隣国まで拡大し、国内改革が進んで加盟を申請できるようになれば、ウクライナは独立国家としての立場を維持するために、両組織への加盟を望む可能性が高い。それまでには時間がかかるが、欧米がいまの時点で、経済と安全保障での結びつきを強化していく一方で、加盟手続きを開始する現実的な時期として二〇〇五年から二〇一五年の一〇年間を示唆しはじめても、時期尚早とはいえない。こうすれば、ヨーロッパの拡大がポーランドとウクライナの国境で止まるのではないかとウクライナが恐れるリスクを軽減できる。
ロシアはNATO拡大に反対する姿勢をとっているが、一九九九年の中欧数か国への拡大は黙認するだろう。共産主義体制の崩壊後、ロシアと中欧の文化と社会の違いが拡大しているからである。これに対して、ウクライナのNATO加盟を黙認することは、ロシアにとってはるかに難しいだろう。これを認めれば、ウクライナがロシアとの運命共同体から完全に脱したことを認める結果になるからだ。しかし、ウクライナが独立国家として生き残るためには、ユーラシアの一部ではなく、中欧の一部にならなければならない。そして、中欧の一部になるには、NATO、EUと中欧諸国との結びつきに完全に参加しなければならない。この結びつきをロシアが認めれば、ロシア自体もヨーロッパの一部としての道を選択することになろう。ロシアがこれを拒否すれば、ロシア自体もヨーロッパの一部としての道を拒否し、「ユーラシア」国家として孤立する道を選ぶしかなくなる。
ここで留意しておくべき点は、ロシアがヨーロッパの一員になるにはウクライナもヨーロッパの一員になる必要があるが、ロシアがヨーロッパの一員にならなくても、ウクライナはヨーロッパの一員になれることである。ロシアがヨーロッパに自国の将来を託すのであれば、ウクライナが拡大ヨーロッパの一員になることが、ロシア自体の国益になる。そして、ウクライナとヨーロッパの関係が、ロシアにとって歴史の転換点になる可能性がある。しかし、これは、ロシアとヨーロッパの関係を決定づける時期までに、まだかなり時間があることも意味する。「決定づける」というのは、ウクライナがヨーロッパへの道を選択することで、ロシアが歴史の次の段階での進路を選択せざるをえなくなるからである。ヨーロッパの一部になるのか、それとも、ユーラシアの国として孤立し、純粋なヨーロッパでもなければ純粋なアジアでもなく、「近隣諸国」との泥沼の紛争に苦しむ国になるのか、ロシアは選択を迫られる。 - ^ ズビグネフ・ブレジンスキーは1997年(平成9年)に出版された『ブレジンスキーの世界はこう動く(原題:The Grand Chessboard, 1997)』で以下のように解説している[63]。
したがって、とくに重要な新独立国に政治的、経済的な支援を提供することが、ユーラシアの幅広い政策には不可欠である。なかでもとりわけ重要なのは、主権国家としてのウクライナの立場を強化する政策である(ウクライナは自国を中欧の一員だとみるようになって中欧との統合を深めている)。また、中央アジアを世界経済に開放する政策を進め(ロシアが障害となっているが)、アゼルバイジャン、ウズベキスタンなど、戦略上の要衝になっている国との協力関係を強化すべきである。
- ^ トッドは特に参考文献を挙げていないが、ズビグネフ・ブレジンスキーは1997年(平成9年)に出版された『ブレジンスキーの世界はこう動く(原題:The Grand Chessboard, 1997)』で以下のように解説している[66]。
ユーラシアの東端での日本の状況は、表面上、西端のドイツの状況と共通している。両国ともそれぞれの地域で、アメリカにとって第一の同盟国である。ヨーロッパとアジアでアメリカが影響力を維持できているのは、この二国との緊密な同盟関係のためだともいえるほどである。また、両国ともかなりの軍事力をもっているが、軍事的に独立していない。ドイツは軍事力をNATOに組み込まれて制約を受けており、日本は憲法(アメリカが作ったものである)と日米安全保障条約によって制約を受けている。貿易と金融では地域で圧倒的な力をもち、世界全体でみても、傑出した力をもっている。そして、両国とも世界の大国に準じた立場にあるといえるし、国連安全保障理事会の常任理事国としてその立場を認めるよう求める主張が拒否されつづけていることに苛立ちを感じている。
しかし、日本とドイツがそれぞれおかれている地政的状況はまったく異なり、それが両者の決定的な違いを生み出すとも考えられる。ドイツはNATOに加盟しているため、ヨーロッパ主要国と対等な同盟関係を築き、北大西洋条約で、アメリカとの間に相互防衛義務を負っている。一方、日米安全保障条約では、アメリカは日本を防衛する義務を負っているが、日本はアメリカ防衛のために形だけにしろ武力を行使する義務はない。つまり、日米安保条約は事実上、日本をアメリカの保護国とすることを規定している。 - ^ アレクシ・ド・トクヴィルは1835年(天保6年)に出版された『アメリカのデモクラシー』第一巻の末尾で以下のように述べている[85]。
今日、地球上に、異なる点から出発しながら同じゴールを目指して進んでいるように見える二大国民がある。それはロシア人とイギリス系アメリカ人である。
どちらも人の知らぬ間に大きくなった。人々の目が他に注がれているうちに、突如として第一級の国家の列に加わり、世界はほぼ同じ時期に両者の誕生と大きさを認識した。
他のあらゆる国民はすでに自然の引いた限界ほぼ達しており、後は守るだけであるが、両者は成長の途上にある。他のあらゆる国民は引き止められ、多大の努力を払わなければ前に進めないが、両者だけは軽やかにして速やかな足取りで行くべき道を歩き、その道がどこで終わるのか、いまだに目に見えない。
アメリカ人は自然がおいた障害と闘い、ロシア人は人間と戦う。一方は荒野と野蛮に挑み、他方はあらゆる武器を備えた文明と争う。それゆえ、アメリカ人の征服は農夫の鋤 でなされ、ロシア人のそれは兵士の剣で行なわれる。
目的の達成のために、前者は私人の利害に訴え、個人が力を揮い、理性を働かせるのに任せ、指令はしない。
後者は、いわば社会の全権を一人の男に集中させる。
一方の主な行動手段は自由であり、他方のそれは隷従である。
両者の出発点は異なり、たどる道筋も分かれる。にもかかわらず、どちらも神の隠された計画に召されて、いつの日か世界の半分の運命を手中に収めることになるように思われる。
出典[編集]
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- 原田泰『プーチンの失敗と民主主義国の強さ 自由を守るウクライナの戦いを経済学から読む』PHP研究所〈PHP新書 1337〉、2022年12月。ISBN 978-4-569-85292-8。 - 注釈:「第1章 自由のための戦いに冷笑的な知識人たち」に収録。
- Z・ブレジンスキー 著、山岡洋一 訳『ブレジンスキーの世界はこう動く 21世紀の地政戦略ゲーム』日本経済新聞社、1998年1月7日。ISBN 978-4-532-14631-3。 - 原タイトル:The Grand Chessboard: American Primacy And Its Geostrategic Imperatives (Basic Books, 1997).
- Z・ブレジンスキー 著、山岡洋一 訳『地政学で世界を読む 21世紀のユーラシア覇権ゲーム』日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2003年3月。ISBN 978-4-532-19169-6。 - 注釈:ブレジンスキー (1998)の改題。米同時テロ後の激動を踏まえ、著者の最新インタビューを新たに収録。
- Mearsheimer, John (1993), “The Case for a Ukrainian Nuclear Deterrent”, Foreign Affairs (Council on Foreign Relations) 72 (3 (Summer, 1993)): 50-66, doi:10.2307/20045622, JSTOR 20045622
- Mearsheimer, John (2022-03-03), John Mearsheimer Ukraine-Russia 2022 Analysis, YouTube
- ミアシャイマー, ジョン (2022-03-03), 世界的な米国際政治学者・ジョン・ミアシャイマー「ウクライナ戦争を起こした責任はアメリカにある!」【日本語字幕付き】, YouTube
- J・ミアシャイマー、奥山真司「この戦争の最大の勝者は中国だ プーチンが核ボタンを押すまで終わらない」『文藝春秋』第100巻第6号、文藝春秋、2022年6月1日、146-157頁。