福岡伸一

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福岡 伸一(ふくおか しんいち、1959年9月29日 - )は、日本の生物学者青山学院大学教授。専攻は分子生物学農学博士京都大学、1987年)。東京都出身。

略歴[編集]

  • 1982年3月 京都大学農学部食品工学科卒業
  • 1987年3月 京都大学大学院農学研究科食品工学専攻博士後期課程修了
  • 1988年7月 ロックフェラー大学ポストドクトラル・フェロー(分子細胞生物学研究室 1989年2月まで)
  • 1989年3月 ハーバード大学医学部ポストドクトラル・フェロー(1991年7月まで)
  • 1991年8月 京都大学食糧科学研究所講師
  • 1994年4月 京都大学食糧科学研究所助教授
  • 2001年4月 京都大学大学院農学研究科助教授
  • 2004年4月 青山学院大学理工学部化学・生命科学科教授
  • 2011年4月 青山学院大学総合文化政策学部教授

活動[編集]

狂牛病問題などで新聞・雑誌に頻繁に登場している。雑誌の随筆や新聞の文化面、読書面の常連筆者でもある[1]。また、有限責任中間法人ロハスクラブ理事も務めている。また、一般に向けた科学書の翻訳・執筆を行っている。2007年の「生物と無生物のあいだ」は65万部を超えるベストセラーとなった[1]
美術ではヨハネス・フェルメールの熱心なファン。現存画は必ず所蔵されている場で鑑賞することをポリシーとしており[2]、著書の発表や絵画展の企画にも携わっている。

主張[編集]

生命観[編集]

同位体でマークしたアミノ酸を用い、タンパク質など生体を構成する物質は極めて素早く入れ替わり、作り替えられていることを実証したルドルフ・シェーンハイマーRudolph Schoenheimer)の実験に強く共鳴し、再評価を行った(ただし、「生物と無生物のあいだ」で書かれているように、シェーンハイマーが決して無視されていたわけではないことには注意)。これに基づき、「生命は流れの中のよどみ」という考え方を自著で繰り返し述べている。また、「世界は分けてもわからない」などでホーリズムを主張している。

動的平衡[編集]

ルドルフ・シェーンハイマーの提唱した「生命の動的状態(dynamic state)」という概念を拡張し、生命の定義に動的平衡(dynamic equilibrium)という概念を提示し、「生命とは動的平衡にある流れである」とした。生物は動的に平衡[3] な状態を作り出している。生物というのは平衡が崩れると、その事態に対してリアクション反応)を起こすのである。そして福岡は、(研究者が意図的に遺伝子を欠損させた)ノックアウトマウスの(研究者の予想から見ると意外な)実験結果なども踏まえて、従来の生命の定義の設問は浅はかで見落としがある、見落としているのは時間だ、とし、生命を機械に譬えるのは無理があるとする。機械には時間が無く原理的にはどの部分から作ることもでき部品を抜き取ったり交換することもでき生物に見られる一回性というものが欠如しているが、生物には時間があり、つまり不可逆的な時間の流れがあり、その流れに沿って折りたたまれ、一度おりたたんだら二度と解くことのできないものとして生物は存在している、とした。

プリオンについて[編集]

コッホの三原則を満たしていないなどの理由から、現在の世の中では主流となっているBSEプリオン原因説に懐疑論を投げかけている。著書『プリオン説はほんとうか?』ではBSEのウイルス原因説を提示して話題を呼んだが、これに関しては多くの生物学者から反論を受けている。

進化論[編集]

チャールズ・ダーウィン進化論に対して、完全ではないという考えを持っている。 文學界2008年8月号で、川上未映子との対談において、進化を説明するための一つの説としてジャン=バティスト・ラマルク用不用説を持ち出している。 その他にも、進化には「複合的な要因」が考えられるのではないかといった議論、またニッチを引き合いに出して今西進化論へ共感を示すなど、進化論以外の道に注目する姿勢を見せている。

人物[編集]

受賞歴[編集]

著書[編集]

単著[編集]

  • もう牛を食べても安心か』(文春新書、2004年)
  • 『プリオン説はほんとうか? タンパク質病原体説をめぐるミステリー』(講談社・ブルーバックス、2005年)
  • 『ロハスの思考』(木楽舎・ソトコト新書、2006年)
  • 生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書、2007年)
  • 『生命と食』(岩波ブックレット、2008年) 
  • できそこないの男たち』(光文社新書、2008年)
  • 『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』(木楽舎、2009年)
  • 『世界は分けてもわからない』(講談社現代新書、2009年)
  • 『ルリボシカミキリの青』(文藝春秋、2010年)
  • 『フェルメール 光の王国』(木楽舎、2011年)

共著[編集]

  • 生物が生物である理由 分子生物学 太田光,田中裕二 (講談社 2008年、 爆笑問題のニッポンの教養)
  • 盛山正仁(著), 福岡伸一(編) 『生物多様性100問』 (木楽舎、2010年 )

翻訳[編集]

  • ヒューマンボディショップ 臓器売買と生命操作の裏側 A.キンブレル 化学同人 1995.7
  • 七つの科学事件ファイル 科学論争の顛末 H.コリンズ,T.ピンチ 化学同人 1997.2
  • キャリー・マリス『マリス博士の奇想天外な人生』早川書房、2000 のちハヤカワ文庫
  • リチャード・ドーキンス『虹の解体 いかにして科学は驚異への扉を開いたか』早川書房、2001 
  • マッキー生化学 分子から解き明かす生命 Trudy McKee,James R.McKee 市川厚監修 監訳 化学同人 2003.10
  • Yの真実 危うい男たちの進化論 スティーヴ・ジョーンズ 岸本紀子共訳 化学同人 2004.8
  • モッタイナイで地球は緑になる ワンガリ・マータイ 木楽舎 2005.6
  • 築地 テオドル・ベスター 和波雅子共訳 木楽舎 2007.1
  • エレファントム 象はなぜ遠い記憶を語るのか ライアル・ワトソン 高橋紀子共訳 木楽舎 2009.6
  • 思考する豚 ライアル・ワトソン 木楽舎 2009.11

対談集[編集]

出演[編集]

テレビ[編集]

ラジオ[編集]

CM[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ a b c 後掲参考文献の朝日新聞より。
  2. ^ 『フェルメール 光の王国』
  3. ^ 「逆方向の流れが釣り合っている」という主張しているのではなく、化学的に定常状態と呼ぶ状態。
  4. ^ 2009年の第2回新書大賞では『できそこないの男たち』で第2位、2010年の第3回新書大賞では『世界は分けてもわからない』で第8位。

参考文献[編集]

  • 朝日新聞2010年4月3日付b1面「フロントランナー 美を愛でる遺伝子ハンター」

外部リンク[編集]