カズオ・イシグロ

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カズオ・イシグロ
Kazuo Ishiguro by Kubik.JPG
ポーランドクラクフにて(2005年10月29日)
誕生 1954年11月8日(62歳)
日本の旗 日本 長崎県長崎市
職業 小説家
国籍 イギリスの旗 イギリス
活動期間 1981年 -
ジャンル 小説
代表作 日の名残り
デビュー作 遠い山なみの光
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カズオ・イシグロ(Kazuo Ishiguro OBE, 漢字表記:石黒 一雄1954年11月8日 - )は、長崎県出身の日系イギリス人作家である。1989年に長編小説『日の名残り』でイギリス最高の文学賞ブッカー賞を受賞した。ロンドン在住。

経歴[編集]

生い立ち[編集]

長崎県長崎市で生まれる。1960年、5歳の時に海洋学者の父親が北海で油田調査をすることになり、一家でサリー州ギルドフォードに移住、現地の小学校・グラマースクールに通う。卒業後にギャップ・イヤーを取り、北米を旅行したりデモテープを制作しレコード会社に送ったりしていた[1]

1978年ケント大学英文学科、1980年にはイースト・アングリア大学大学院創作学科を卒業する。当初はミュージシャンを目指すも、文学者に進路を転じた。

1982年、イギリスに帰化する[2]。1986年にイギリス人ローナ・アン・マクドゥーガルと結婚する。

作家活動[編集]

1982年、英国に在住する長崎女性の回想を描いた処女作『女たちの遠い夏』(日本語版はのち『遠い山なみの光』と改題、原題:A Pale View of Hills) で王立文学協会賞を受賞し、9か国語に翻訳される。

1986年、戦前の思想を持ち続けた日本人を描いた第2作『浮世の画家』(原題:An Artist of the Floating World) でウィットブレッド賞を受賞する。

1989年、英国貴族邸の執事を描いた第3作『日の名残り』でブッカー賞を受賞する。この作品は1993年に英米合作のもと、ジェームズ・アイヴォリー監督・アンソニー・ホプキンス主演で映画化された。

1995年、第4作『充たされざる者』(原題: The Unconsoled) を出版する。

2000年、戦前の上海租界を描いた第5作『わたしたちが孤児だったころ』(原題:When We Were Orphans) を出版、発売と同時にベストセラーとなった。

2005年、『わたしを離さないで』を出版する。2005年のブッカー賞の最終候補に選ばれる。この作品も後に映画化されている。同年公開の英中合作映画『上海の伯爵夫人』の脚本を担当した。

人物[編集]

1995年に大英帝国勲章(オフィサー)、1998年にフランス芸術文化勲章を受章している。2008年には『タイムズ』紙上で、「1945年以降の英文学で最も重要な50人の作家」の一人に選ばれた。自身に対する高い評価について、移民の流入によりイギリス社会が大きく変動している中で、マイノリティーに属しながら伝統的な英文学の素養を基にする作品が多民族主義への回答となり得ると思われたためであろうと述べている。現代作家で最も注目している一人として村上春樹を挙げている[3]

日本との関わり[編集]

両親とも日本人で、本人も成人するまで日本国籍であったが、幼年期に渡英しており、日本語はほとんど話すことができないという。最初の2作は日本を舞台に書かれたものであるが、自身の作品には日本の小説との類似性はほとんどないと語っている。1990年のインタビューでは「もし偽名で作品を書いて、表紙に別人の写真を載せれば『日本の作家を思わせる』などという読者は誰もいないだろう」と述べている[4]谷崎潤一郎など多少の影響を与えた日本人作家はいるものの、むしろ小津安二郎成瀬巳喜男などの日本映画により強く影響されているとイシグロは語っている[5]

1989年に国際交流基金の短期滞在プログラムで再来日し、大江健三郎と対談した際、最初の2作で描いた日本は想像の産物であったと語り、「私はこの他国、強い絆を感じていた非常に重要な他国の、強いイメージを頭の中に抱えながら育った。英国で私はいつも、この想像上の日本というものを頭の中で思い描いていた」と述べた[6]

作品[編集]

長編小説[編集]

邦題 原題 出版年
遠い山なみの光 [7] A Pale View of Hills [8] 1982年
浮世の画家 An Artist of the Floating World [9] 1986年
日の名残り The Remains of the Day [10] 1989年
充たされざる者 The Unconsoled [11] 1995年
わたしたちが孤児だったころ When We Were Orphans [12] 2000年
わたしを離さないで Never Let Me Go [13] 2005年
忘れられた巨人 The Buried Giant [14] 2015年

短編小説[編集]

邦題 原題 出版年
‘A Strange and Sometimes Sadness’, ‘Waiting for J’, and ‘Getting Poisoned’ in Introduction 7: Stories by New Writers 1981年
戦争のすんだ夏 ‘The Summer after the War’  1990年
夕餉 ‘A Family Supper’ 1990年
日の暮れた村 ‘A Village After Dark’ [15] 2001年
夜想曲集――音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 Nocturnes: Five Stories of Music and Nightfall [16][17]  2009年

脚本[編集]

参考文献[編集]

  • 特集 カズオ・イシグロ 水声通信 no.26(水声社、2008年)

脚注[編集]

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  1. ^ Barry Lewis (2000). Kazuo Ishiguro. Manchester University Press. 
  2. ^ Author's bio Granta 43 (1993). p 91
  3. ^ 文學界』2006年8月号
  4. ^ Interview with Allan Vorda and Kim Herzinger. "Stuck on the Margins: An Interview with Kazuo Ishiguro." Face to Face: Interviews with Contemporary Novelists. Rice University Press, 1994. p. 25. ISBN 0-8926-3323-9
  5. ^ Interview with Gregory Mason. "An Interview with Kazuo Ishiguro." Contemporary Literature XXX.3 (1989). p. 336.
  6. ^ Interview with Kenzaburo Oe. "The Novelist in Today's World: A Conversation." boundary 2 18. 3 (1991) p. 110.
  7. ^ 筑摩書房より『女たちの遠い夏』のタイトルで刊行されたが、早川書房から文庫版を刊行するさいに改題。
  8. ^ 英語版 A Pale View of Hills https://en.wikipedia.org/wiki/A_Pale_View_of_Hills
  9. ^ 英語版 An Artist of the Floating World https://en.wikipedia.org/wiki/An_Artist_of_the_Floating_World
  10. ^ 英語版 The Remains of the Day https://en.wikipedia.org/wiki/The_Remains_of_the_Day
  11. ^ 英語版 The Unconsoled https://en.wikipedia.org/wiki/The_Unconsoled
  12. ^ 英語版 When We Were Orphans https://en.wikipedia.org/wiki/When_We_Were_Orphans
  13. ^ 英語版 Never Let Me Go https://en.wikipedia.org/wiki/Never_Let_Me_Go_(novel)
  14. ^ 英語版 The Buried Giant https://en.wikipedia.org/wiki/The_Buried_Giant
  15. ^ 原文 http://www.newyorker.com/magazine/2001/05/21/a-village-after-dark
  16. ^ ‘Crooner’、‘Come Rain or Come Shine’、‘Malvern Hills’、‘Nocturne’、‘Cellists’ の五篇を所収。
  17. ^ 英語版 https://en.wikipedia.org/wiki/Nocturnes_(book)

関連項目[編集]